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INTERVIEW

BLIND CHANNEL

2024.03.01UPDATE

2024年03月号掲載

BLIND CHANNEL

Member:Niko Moilanen(Vo) Joonas Porko(Gt)

Interviewer:菅谷 透 Translator:安江 幸子

北欧フィンランドの6人組バンド、BLIND CHANNELが5thアルバム『Exit Emotions』を完成させた。2021年に行われたヨーロッパ最大の音楽の祭典"ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト"にフィンランド代表として出場、6位入賞を果たし注目を集めた彼ら。母国のチャートで1位を記録した前作『Lifestyles Of The Sick & Dangerous』(2022年リリースの4thアルバム)に続く最新アルバムは、"ヴァイオレント・ポップ"と名付けた自らの音楽性をさらに強化。USツアー("Still Panicking Tour")で共演したFROM ASHES TO NEWや、イギリスのシンガー・ソングライター RØRYといったゲストも迎え、リスナーの感情を解放する強力な楽曲を揃えている。今回激ロックでは、ツイン・ヴォーカルの一翼を担うNiko MoilanenとギタリストのJoonas Porkoに話を訊いた。


今回初めての試みは、曲を書いていた時点ですでに"どうやってライヴでプレイするか"を考えていたことなんだ


-バンドの次なる章として、ニュー・アルバム『Exit Emotions』がもうすぐリリースとなりますが(※取材は1月上旬)、今の心境をうかがえますか?

Joonas:もちろん超エキサイトしているよ。みんなに早く新曲を聴いてもらいたくてウズウズしているんだ。ライヴも楽しみだしね。日本にもできるだけ早く行きたいと思っているし、楽しみだ。正直言ってかなり見通しがいいよ。

Niko:そう、超楽しみなんだ。今年は俺たちにとってとても重要な1年になるよ。5作目のスタジオ・アルバムが出るし、そのあと俺たち史上最大規模のヘッドライン・ツアー("BLIND CHANNEL - EXIT EMOTIONS European Tour 2024")をやるからね! とても大事な1年だ。

-前作『Lifestyles Of The Sick & Dangerous』はGOOD CHARLOTTEの曲(「Lifestyles Of The Rich & Famous」)をもじったタイトルになっていましたが、本作のタイトルの由来についてうかがえますか? 最初のシングル「Flatline」の時点で"Exit emotions"というフレーズが登場していますね。

Niko:単なるフィーリングでね。新作を聴いてもらえれば、俺たちがここ数年で200以上のショーをこなしてきたことがわかると思う。今回はステージに出ていくときのフィーリングをとらえたいと思ったんだ。ステージに立ってショーをやるのが、俺たちにとってはセラピーみたいなものだからね。ライヴの観点から新作にアプローチしたのは間違いない。人生で何が起こっていても――いいこともあれば悪いこと、悲しいこともなんでもありだけど、ステージに立つとexit emotions(感情を旅立たせる)することができて、俺たちとオーディエンスだけで同じ瞬間を生きることができる。その瞬間を生きるために、ショーの間はそれまで抱えている感情を旅立たせるんだ。それがタイトルの裏にある意味だね。

Joonas:実はもともと"Exit Emo"というタイトルにするつもりだったんだ。それが当初のタイトルだったけど、今は"Exit Emotions"になった。気に入っているよ(笑)。

-"tions"をつけ加えたのはなぜですか?

Niko:俺たちはエモ・キッズで(笑)、あのシーンに関わっていると自負しているし、エモは俺たちにとって大きなものだけど、みんなになんらかのシーンやライフスタイルからexitしてほしくないしね。俺たちもエモからexitしたくないから、"emotions"からだけexitすることにしたんだ。

Joonas:誤解されたくなかったしね。

-BLIND CHANNELはエモだけではなく様々な音楽の要素がありますから、アルバムのタイトルに"tions"をつけるというのはそういう意味でもグッド・アイディアですよね。前作は"ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト"でのブレイクから始まった、成功やその代償などのある種自伝的なストーリーが描かれていましたが、本作で掲げたテーマやヴィジョンはありましたか?

Niko:ライヴの観点はこのアルバムでとても重要なんだ。俺たちはいつも自分たちや周りの人々について、自分たちの視点で曲を書いている。この2年間、俺たちはたくさんライヴをやってきた。ツアーにも出たし、俺たちの中で大きな位置を占めている。今回初めての試みは、曲を書いていた時点ですでに"どうやってライヴでプレイするか"を考えていたことなんだ。それまではそうしたことがなかった。プロセスを過去の作品と比べてみると、以前はただ曲を書いてレコーディングして、リリースしてから何ヶ月か経ったところで"さて、ライヴではどうやる?"と話し合っていた。でも今回は曲を書きながら"これはライヴではどんな感じになるだろう"、"どうやって演奏しようか"という話をしていたんだ。だから今回はライヴ感が重要な位置を占めていると思うね。ここにある曲はみんなライヴで体験されるべきなんだ。みんなにはアルバムを聴いてからショーに来て、本当はどんな曲なのかを目の当たりにしてほしい。

Joonas:ここ2年間くらいものすごく労力を費やして、生活も一変した。その様子が歌詞や曲のヴァイブからもわかると思う。だよな、Niko?

Niko:ああ、間違いないね。哲学に近い感じすらある。"さぁ、今すぐ感情を旅立たせて"みたいな感じじゃなくて、プロセスを歌詞にしているんだよね。アルバムの中で、そのための方法を模索しているんだ。どうすれば感情を旅立たせることができるのか。その方法はあるのか。感情って時にはうんざりさせられることもあるからね(笑)。哲学に近いアプローチで......ほら、自分の感情と付き合っていけるのは自分しかいないだろう? だからそのための方法を自分で見いださないといけないんだ。

Joonas:そうだね。このアルバムは自分たちのためだけじゃなくて、オーディエンスのみんなのためにも書いたんだ。

Niko:ああ、間違いないね。

-サウンド面で言うと、名刺代わりの作品という要素のあった前作よりもさらにヘヴィな、ニューメタル寄りの音作りが強調されつつ、メロディアスな部分もより強化されていて、バンドが掲げている"ヴァイオレント・ポップ"がさらに極まったような印象を受けました。サウンド面で意識したことはありますか? ライヴを念頭に置いた曲作りということでしたが。

Niko:もう少しヘヴィにしたいと思ったんだ。俺にとって、前作の『Lifestyles of the Sick & Dangerous』はピカピカの新車みたいな感じだった。フィンランドの才能あるプロデューサーでありDJでもあるAlex(Aleksi Kaunisvesi)が新しいメンバーとして入ったこともあって、ピカピカの新車みたいだった。で、このアルバムはモンスター・トラックなんだ(笑)。俺たちはたくさんの時間をアメリカで過ごした。アメリカに行ったのは初めてで、過去のアルバムでは行ったことがなかった。初めてアメリカに行って現地のヴァイブがとても気に入ってさ。あっちで出会ったバンド、人々、アーティストも。あの雰囲気を吸い込んだ俺たちは、ヘヴィなアルバムを作りたいと考えた。片手にバド・ライト(ビール)、もう片手にホットドッグを持ってモンスター・トラックで旅をしている、そんな感じのヴァイブを再現したかった。同時にライヴ的なアプローチもしてね。全体的にはザクザクした感じが少し強くなったんじゃないかな。

Joonas:俺もそう思う。

-Aleksiの名前が出てきましたが、彼のDJのスクラッチ音やSEも、聴くたびに発見があるような緻密なレイヤリングが施されていますが、彼のサウンドメイキングについてはどう思われますか。

Joonas:他のメンバーもそうだけど、彼も前作からうまくなったと思う。しかも以前はDJキッドだったのが、今じゃメタルのことしか考えていない(笑)。

-そうなんですね!

Joonas:もちろん超才能があるから、エレクトロニック・ミュージックのやり方を心得ているけどね。なんて言えばいいかな......Niko、どう思う?

Niko:Aleksiはものすごく才能があるし、情熱も強いんだ。彼の一番すごいところは、全部の曲を書き終わって、レコーディングもプロデュースも終わったあとで、日が暮れてみんながスタジオを出ても、アイツだけは残っていることだね。いつも最後にスタジオを出るんだ。アルバムのメイキングの中で、プロダクションのクリエイティヴ面をコントロールしているからね。それからAleksiはライヴ・ショーに大きな衝撃を受けたように見えるんだ。以前はキーボード・プレイヤーみたいにこんな感じで(※キーボードを指で叩く真似)シンセをクールに弾いているイメージだったけど、今はビッグでファッキンなドラムスに夢中なんだ(※ドラムを叩く真似)。SLIPKNOTみたいにね。

Joonas:パーカッション担当みたいな感じだね。

Niko:そうだね。AleksiのDJセットはどんどんブルータルでアグレッシヴになっているよ。

-本作では前作に引き続き、ONE OK ROCKのプロデュースやBRING ME THE HORIZONのミックスを手掛けたDan Lancasterや、Johnny Andrews(「Deadzone」)などの制作陣が参加しています。彼らを起用した経緯や、仕事してみての感想についてうかがえますか?

Joonas:初めてDanと仕事したのは(前作収録の)「Dark Side」だったと思う。ミキシング・エンジニアだったんだけど、あの曲をすごく気に入ってくれてね。あれをきっかけに彼と知り合いになって、いろいろ話し合って、最終的には全曲のミックスを担当したんじゃなかったかな。その後、今度は曲も一緒に作ろうという話になったんだ。それでロンドンに行って、彼と2日間いいセッションをやった。すごくうまくいって、2曲できたんだ。Danが一部一緒に書いてくれた。

-2日間で2曲ですか。すごいですね。

Niko:ああ。前作『Lifestyles Of The Sick & Dangerous』は完全に俺たちだけで曲を書いたし、プロダクションも大半は自分たちでやった。それはAlexが新しく入ったばかりだったから、ソングライティングやバンドとしてのケミストリーをAlexと見いだして、再構築する必要があったからなんだ。でも今回は自分たちのやり方に固執したくなかった。進化し続けて、もっともっといい音楽を作り続けていきたいから、そのためにはフィンランドを出て、新しい人たちとセッションをやって、ソングライティングのフレッシュなアプローチを見いだす必要があった。それで「Flatline」はドイツはベルリンの人たち(BLYNEなど)と一緒に作って、それからDan Lancasterや、「Die Another Day」でフィーチャーされているRØRYと作って、その後アメリカに行って現地のソングライターたちと曲を書いた。そのひとりがJohnny Andrewsだったんだ。彼は本当に素晴らしい人だったよ。アメリカのラジオ局で何がウケるかを心得ていたんだ。俺たちはすでにアメリカをツアーしていたから、アメリカのロック系ラジオ局で曲をかけてもらう必要があった。Johnny Andrewsはその方法を知っていたから、コーチングしてくれたんだ。"ロック系ラジオ局でかけてもらいたかったら、こんな感じにするといい"なんて言ってね。そうして生まれたのが「Deadzone」なんだ。

Joonas:そうだったね。そうしてビルボードのメインストリーム・ロック・チャートのトップ30に入ったんだ。

Niko:そう! Johnny Andrewsは自分のやっていることをわかっているよね。

-それはすごいですね。おめでとうございます。

Joonas:それから、FEVER 333のJason Aalon Butler(Vo)とも1曲書いたんだ。

-そうなんですね! どの曲ですか?

Niko:「Wolves In California」。

-「Wolves In California」でしたか。強烈なラップ・ヴォーカルのイントロからクリーン・パートへシームレスに移行するのが印象的な楽曲ですね。

Niko:Jasonがスタジオに来てくれたんだ。同じレーベル(Century Media)だし、どこかの時点でぜひ何か一緒にやりたかった。俺たちがLAに行ったときJasonがスタジオに来てくれたんだけど、俺たちが長い間温めていたタイトルがあってね。......フィンランドではオオカミって普通にいるものなんだけど、LAに行くと"マジか! そっちだとオオカミなんて本当にいるんだ"なんて言われる。で、フィンランドの極夜の話もしたんだ。長い間まったく太陽が昇らない時期のことでね。それでオオカミとか極夜とか、俺たちにとってベーシックなものが、ヨーロッパの他の地域やアメリカのオーディエンスにとってはとても異国情緒があってスペシャルなものなんだって気づいたんだ。それで、そういうものについて曲を書きたいと考えた。「Wolves In California」はアメリカでの体験を書いている。あっちではフィンランドってすごく過剰宣伝されているんだよね。あの曲を聴くとフィンランドを体験することができるから、とてもスペシャルなことだと思う。

-たしか"俺の国では太陽が昇らない"みたいな歌詞でしたよね。

Niko:あれはアルバムの中でもベストな一節だよ! "The night is darkest just before the dawn/But where I'm from the sun don't rise at all(夜が一番暗いのは明ける直前だってさ/だけど俺のふるさとでは太陽がまったく昇らないんだ)"っていうんだけどさ。

-その一節が大好きです。

Niko:俺もすごく気に入っているよ!

Joonas:曲を書いたときもスペシャルなひとときだったよね。初めてアメリカで曲を書いて、まさに"カリフォルニアにオオカミがいる(Wolves In California)という感じだったし(笑)。Jasonは謙虚な超ナイス・ガイだったよ。FEVER 333も素晴らしいバンドだし、彼は素晴らしいソングライターでもあるんだ。

Niko:彼が俺にちゃんとしたラップの仕方を教えてくれたんだ。あの曲での俺のラップ・ヴォーカルをプロデュースしてくれた。あんなに火を噴いたことはなかったよ!

Joonas:本当だよね!