MENU バンドTシャツ

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

(sic)boy

2025.11.27UPDATE

(sic)boy

Interviewer:吉羽 さおり

心や環境、人間関係でも気付くことが多かった。それが曲に表れている

-アルバムのタイトルにもなった"DOUKE"という言葉、これは道化、ピエロのことだと思いますが、これはどういったイメージから出てきた言葉だったんですか?

今回は自分の世界観を1つの舞台だとして、そこで喜怒哀楽を振り回すピエロみたいな、そういう立ち回りを自分のアルバムの中でしてみようと思ったんです。相変わらず、悲しい曲が多いんですけど。そんななかでも、内側を見つめ直すようなこれまで3部作とも違って、今回は自分の内側や世界を、舞台、悲劇や喜劇のようにお客さんに"魅せる"みたいな、そういった意味でよりシアトリカルに、ドラマチックに表現してみようということでの"DOUKE"でもあります。人から見られてどうなのかとか、ちょっとパラノイドっぽい世界観になったかなと思います。

-より自分自身をエンターテイメント化するというものだったと思いますが、そうして客観視するに至ったのは、何が大きかったんでしょう?

ベクトルが内側に向いているだけだとどうしてもひとりよがりな作品になっちゃうので。それでアルバム3枚作ったし(笑)。今回は挑戦的な意味も込めて、そういう歌詞とかを書いていたんですよね。

-自分を俯瞰するような作業、自分の感情面をデフォルメしたりドラマチックに描いたりすることもあったと思いますが、それで改めて気付くようなこともありましたか? 意外とこういう考えもできるんだなとか、やっぱり闇は深いなと思うのかとか。

"楽しい曲書きたいな"みたいなことは思いましたね(笑)。さっきも「色のない夜」でもおっしゃってくれてましたが、結局着地するのはダークな感じだったりするんですけど、ただダークだったり、傷ついていたりとか、ナイーヴさだけを描きたいわけじゃないよなっていう。苦しみながらもなんとかもがく姿なんかを、ステージのように人にいろんな方向から見られながら、ドタバタドタバタやってるのも意外と悪くないんじゃないかなって。そういう意味での"DOUKE"かなって。

-一歩引いてみることで、自分を救ってもあげられそうですしね。

気持ち的にはそうですね。制作は、自分をいろいろ見つめ直す期間にもなったかなって。心に関しても、環境に関しても、自分の周り、人間関係でも気付くことが多かったので。それが曲に表れているのかなと思います。あと、ムカつくことが多かったですね、普通に(笑)。その怒りが結構、前に出ちゃったかなとも思います。でも、それが楽しくて。みんなそうなんじゃないかな、怒りをエナジーにして曲を作るのは人間としては寂しいことですけど、でもどんな職業の人でもそういう嫌なことは多いと思うので。そういう意味では、2024年、2025年っぽい流れになったかなと思います。

-アルバムのリード曲は、Tidoさんとの「DISTORTED世界」です。これはどのように作っていったんですか?

Tidoは、(フィンランドから)日本に来るたびに一緒にご飯食べたりとか、セッションしたりしていて。日本のカルチャーやアニメが好きで、日本語もちょっと喋れたりするんです。で、たまーにふらっと日本に来ては、一緒に作ってたという感じなんですよ。この曲は、Tidoってめちゃくちゃギターが上手で、"ギターできれいなフレーズができたから、これで歌ってみて?"くらいの感じでしたね。トラックの作り方とかも面白くて、めちゃくちゃ早いんです。こうっていうのが決まったらサーっと作っていく感じで。それを聴きながら僕がひたすら歌詞を書いていくんです。KMさんやChakiさんはわりとじっくりと煮詰めていく感じの制作スタイルなんですけど、Tidoは毎回レースしてる感じで。ワクワクするんですよね。誰も急かしてないのに、2人で"なんならもう1、2曲作るか"くらいのスピード感で、1日で2、3曲作った日もあるし。逆にトラックがめっちゃいい感じにできても、今このテンション感では歌詞は書けないかもってなったら、じゃあ次に行こうっていう。楽しいセッションですね、毎回。

-この曲は混沌とした世界の中で戦っている、もがいている曲ですが、トラック的にはその戦っている熱さやボルテージとは違う、爽快感とでも言いますか、軽快さがありますね。

歌詞は、もちろん英訳したものをシェアはしているんですけど、僕は日本語のノリよりもどちらかというとサウンド感を意識して作るほうなので。そういった意味で、そのギャップが面白いところがありますね。この曲のリリックは僕の中で悩んで変えたんです。いいトラックだったぶん、歌詞は悩みましたね。結果、いい曲になったなと気に入ってます。

-いいなって思うのは、曲の中で悩んだままなんですよね。"絶望はいつか答えをくれるかな"と終わって、解決はしてないんですけど、それをこの軽快なサウンドで歌うことで余白がある、希望があるようにも聴こえてきます。

ずっとクエスチョン・マークが続くみたいな曲ですよね。普通こういう曲だと、最後の1、2行で俺はこう思うんだって、ポジティヴに終わらせるか、ネガティヴに言い切るんですけど。クエスチョン・マークが続くことによって、世界からも浮遊したような感覚になって、それが面白いかなと思って。ずっと問い掛ける、考えさせられるような曲が自分でも好きだし、自分でも考えるし。そういった意味では、「DISTORTED世界」はいい内容なんじゃないかなって思います。

-12月3日からアルバムを携えた"(sic)boy DOUKE TOUR 2025"がスタートします(※取材日は11月上旬)。今作は魅せるというのが念頭にあった作品でしたが、ライヴもよりシアトリカルなステージになるんでしょうか?

ツアーは泥臭く、自分のできることを全力でという感じで。そういった意味では、このアルバムをどれだけ人に伝えられるかが勝負ですね。『DOUKE』の曲を人前で歌っていかに表現できるかが楽しみだし、観に来てほしいという思いもあるし。何よりも、上手く表現できるように準備しているところです。

-充実感のある制作だったと思いますし、改めて(sic)boyというアーティストの個性、ロック、パンク、エモ、ヒップホップを横断しつつ、オルタナティヴな存在だということを形にした作品だと思います。こうして作品を重ねてきて、今の自分の立ち位置としてはどういうところにいて、またこの先に見据えていることや芽生えている思いはありますか?

今年は、初めて"blacknails"というイベントを主催して、僕よりも若い世代の、いろんな音楽をミックスしたかっこいい音楽を作っている人たちともたくさん出会えたんです。そういう子たちも含めて、自分が先陣を切ってみんなで楽しい場所を作る意味があるなと思った年でもありましたね。あとは1stアルバム『CHAOS TAPE』の5周年イベント("(sic)boy CHAOS TAPE 5TH ANNIVERSARY PARTY Supported by Manhattan Records")があって、キャリアを重ねて気付くこともありました。これまでは内気な感じもあったんですけど、ここからはもっと外に向かって(sic)boyという存在を提示しなきゃいけないなと思いますね。全然満足はしてないし、立ち止まる気も全くないので。でも聴いてくれる人がいてのことなので、まずはこのアルバムがみんなにはどう映って、どう聴こえて、ツアーがどう見えるのかを確かめたいですね。そういう反応に対しても、昔よりも一喜一憂しなくなったし(笑)。そういった意味では、いい感じかなと思います。

-イベントのテーマ・ソングとなった「blacknails feat. MERI」(2025年6月配信リリース)でフィーチャリングしたMERIさんも若い世代だと思いますが、今後もそうした新たな才能と一緒に作っていきたい思いもありますか?

一緒に作ってみたいし、すごく興味深いですね。4、5歳下の子たちもいるんですけど、刺激だらけだし面白いんですよ。今まではわりと先輩におんぶに抱っこみたいな感じで、先輩とたくさん曲を作ってきたんですけど、これからは若い世代とも交流をして、いいところを吸収し合える存在になりたいですね。ほんと、みんなライヴとかエネルギッシュなんですよ。自分ももっと頑張らなきゃなって思った(笑)。今年27歳になったんですけど、下の世代の子たちのエナジーとか爆発力を見て奮い立ったので。来年もそういうイベントや曲を見せられたらいいし、"blacknails"というイベントも規模をデカくするだけじゃなく内容を濃くしていきたいので、期待していてほしいですね。

TOUR INFORMATION
" (sic)boy TOUR 2025"


12月3日(水)仙台 MACANA Support Act:kegøn
12月14日(日)高松 MONSTER Support Act:釈迦坊主
12月19日(金)福岡 Be-1 Support Act:MERI
12月21日(日)金沢 AZ Support Act:vividboooy
12月25日(木)名古屋 CLUB QUATTRO Support Act:lilbesh ramko
12月26日(金)大阪 Yogibo METAVALLEY Support Act:kegøn
12月28日(日)Zepp Shinjuku (TOKYO) Support Act:lilbesh ramko
[チケット]
■一般発売中
購入はこちら