INTERVIEW
VOLBEAT
2025.06.05UPDATE
Member:Michael Poulsen(Gt/Vo)
Interviewer:山本 真由 Translator:安江 幸子
メタル、ハード・ロック、サイコビリー、パンク等多彩なエッセンスを盛り込んだ音楽性で、昨今の幅広いラウドロック・シーンにおいても異彩を放つデンマークの雄、VOLBEATが、9枚目となるアルバムを完成させた。今作は、約10年間共に活動したギタリスト Rob Caggianoの脱退後初のアルバムということもあり、心機一転、初心に帰ったフレッシュさを感じる作品だ。インタビューではフロントマンのMichael Poulsenに、そんな今作の内容や制作背景について詳しく語ってもらった。
俺たちは1stアルバムの頃より良くなっているけど、培ってきた知識や曲の構造は投げ捨てて、楽しもうってことにした
-前作『Servant Of The Mind』(2021年リリースの8thアルバム)以来のインタビュー(※前回インタビューは2021年12月号掲載)になります。この間に、バンドとしてはいろいろな変化があったようですが、まずはあなたの喉の手術やその後の調子について教えていただけますか? 新作を聴く限りは問題なく、絶好調に聴こえたのですが......。
それはありがとう! 回復具合は上々だよ。去年やった最後の手術が今のところ一番良かったね。3回に分けて手術したんだけど、最後のやつは青色レーザーというものを使って、残っていた悪い部分を全部取ったんだ。まぁ回復への道は長くて不快だったけど(苦笑)、とても興味深いものでもあった。ポジティヴな姿勢を保って、なんとか乗り越えて絶好調に戻ることができたと思う。新作も出るし......"New album, new throat(新しいアルバムは新しい喉で)"というわけだ(笑)!
-"New album, new throat"! いいキャッチフレーズになりますね。実際何もなかったかのように聞こえて、またあなたが最高の状態に戻ってきたことを喜んでいます。といっても治療中も休んでいたのは喉だけで、VOLBEATとしてのツアーは休んでいたものの、ギタリストとして新バンド ASINHELLに参加し、音楽活動を続けていましたね。こちらは、VOLBEATよりもヘヴィなアプローチのメタル・バンドで、あなたが昔やっていたDOMINUSのほうが近いかもしれませんが、このASINHELLでの活動はVOLBEATでの作曲や演奏にも影響を与えていますか?
そうだなぁ......少しは与えたかもしれないね。ただ、俺は作曲の経験が豊富だけど、大昔にデス・メタルの曲を書いていた頃は知識も経験もなくて、曲の構造なんて分かっていなかったんだ。リフが第一で、それにヴォーカルとグロウルを乗せたらすごくうまくいったという感じだった。俺が気に入っているデス・メタル・アルバムは、そんなに構造がしっかりしていなくてもとてもうまくいっていたんだよ。というわけでASINHELLの曲を書いたときも、17歳のガキに戻った気分で、ソングライティングの教科書的なものは無視したんだ。構造は後ろに追いやって、ひたすら楽しみながらいいリフを作って。
それで、ASINHELLのツアー中に次のVOLBEATのアルバムについて考え始めたときも、"こういうやり方はVOLBEATでも通用するんだろうか?"と思ったんだ。今までの経験を全部床に投げ捨てて、もう少しゆったり構えて臨むことにして。そんなわけで、最初に書いたのが、「In The Barn Of The Goat Giving Birth To Satan's Spawn In A Dying World Of Doom」だったんだ。
-あぁ、あの長いタイトルの(笑)。
(笑)そう、あの曲を持ってリハーサル室に行ったんだ。タイトルをJon(Larsen/Dr)とKaspar(Boye Larsen/Ba)に言ったら爆笑していたよ! "うわぁなんだよそれ! お前マジか!"って言われたね(笑)。
で、曲を聴かせたらKasparが"サビはどこだ?"なんて言うから"よく気付いたな。サビはないんだ!"と言ってやったよ(笑)。曲をじっくり聴くときというのは、みんなサビがいつ始まるのか気にするものなんだ。でも俺が大昔にデス・メタルのアルバムを作っていた頃は、サビなんて気にしていなかった。いつも他のものに関心がいっていたんだ。で、あの曲のクライマックスというかエッセンスは、あの長いタイトルにある。あれこそがみんながいつ出てくるか待ちわびる箇所になるんだ。サビを待つというより、"In The Barn Of The Goat Giving Birth To Satan's Spawn In A Dying World Of Doom"とシンガロングする瞬間を待つってことだ(笑)。最高だろう? 実に楽しいものになるよ。
新作(『God Of Angels Trust』)はそういうアプローチで1曲ずつ作っていったんだ。次に考え付いたのが「By A Monster's Hand」。2回目の"And it goes on and on and on"の後でコーラスが来ることをみんな予測するだろうけど、急にテンポが速くなって、派手なギター・リフと変態的なギター・ソロが出てくる。それでもうまくいくんだ。とても楽しかったよ。俺が曲を月曜日に書いて、火曜日にみんなでリハーサルして、水曜日に俺がもう1曲書いて、それを木曜日にリハーサルしたら週末だ。そうやっているうちに10曲できた。リハーサル中に作った曲も2つあったな。気が付けばアルバム1枚分の素材ができていた。ここまでたったの1ヶ月くらいだったよ。
それで、"Jacob Hansen(プロデューサー)のスタジオでも同じアプローチで臨んだらどうだろう?"という話になったんだ。あまりテイクを録らず、ゲストも入れないで生演奏で録音して。そうしたら13日でレコーディングが終わったんだ。
-うわぁ、それは短いですね。
全行程まとめると6週間くらいだったかな。すごくうまくいったよ。原点に戻ってやり直したような気分だった。物事が一巡したというか、自分のしっぽの先を掴んだような感じだったね。そうしたらどうする? また最初からやり直せばいいんだ! 1stアルバム(2005年リリースの『The Strength / The Sound / The Songs』)みたいにね。俺たちはあの頃よりミュージシャンとして良くなっているけど、この間培ってきた知識や曲の構造は窓から投げ捨てて、いいリフを書いて、楽しもうってことにした。
-ということはASINHELLでの経験も今回の新作に繋がっているんですね。ちなみに作り始めた時期というのは、あなたの喉の調子やメンバーのスケジュール等、いろいろなことが整ったタイミングだったということでしょうか。それとも、もともと、いつアルバムを制作し始めるといった目標のようなものがあったのでしょうか?
ASINHELLのツアーを始める前の時点で、すでにいくつか曲のネタがあったんだ。それで、ツアーから帰ってからすぐ作り始めることができた。ASINHELLのツアーから2週間後くらいにはもうリハーサル・ルームにいたよ。10曲とんとん拍子にできて、しかも目指したサウンドになっていたからすぐスタジオに入って......という感じで、全てがかなり速く進んでいったね。
-いつもながら、常に何かしら作業しているんですね。......ところで少し時系列が前後しますが、2023年には、約10年にわたって共に活動してきたギタリストのRob Caggianoの脱退が発表されました。Robはアメリカに住んでいてデンマークに住んでいる他のメンバーとは離れていましたし、単に物理的な理由で一緒に活動するのが難しくなったということでしょうか?
SNSにステートメントを載せたんだけど、あれが全てだよ。あまり詳しく話すつもりはないんだ。これが現実であって......まぁ結婚みたいなものだよ。永遠に続くと思っても、そうなるときもあれば、ならないときもあるという意味でね。そうならないときというのは、関係があまりうまくいかないときなんだ。Robと俺たちも同じで、どうにも解決できないことがあったから、別々の道を行ってお互い前進することにしたってことだね。
-なるほど。話してくださってありがとうございます。今の質問をしたのは、今回のアルバムが、新スタートの作品とあなたが言っていたことと関連していたからなんですよね。今回は、サポート・ギタリストのFlemming C. Lund(THE ARCANE ORDER)が、アルバムにも参加してリードを弾いているようですが、彼はどんなギタリストですか? また、正式メンバーをオーディションしようと思ったことはありますか?
そう、Flemmingはニュー・アルバムのソロを全部弾いているんだ。VOLBEATの年内のツアーにも全部コミットしてくれている。素晴らしい仕事をしているよ。音もいいしね。あいつとは俺が17歳の頃からの付き合いなんだ。
-そうだったんですね。それは気心知れた仲でしょう。
その昔俺がDOMINUSというデス・メタル・バンドをやっていた頃、あいつはAUTUMN LEAVESという別のデス・メタル・バンドをやっていて、大昔からの付き合いだし、今回ヘルプしてくれてありがたいよ。......現時点ではその日そのときを大切にしている感じなんだ。何しろ今は世の中がクレイジーな状態だし、いつ何が起こるか分からないからね。だから今(※取材は4月中旬)はこれから出るアルバムとツアーに全力投球して、その後で来年のことを決めようと思っているよ。
-Flemmingは年内一緒にツアーもするんですね。
ああ。今のあいつはVOLBEATの他のメンバーとなんら変わらない扱いだよ。ただ、今は音楽シーン一つとってもあまりにいろんなことがありすぎるし、世の中全体が基本的にそんな感じだから、1ステップごとに集中して取り組みたい。それだけなんだ。この先何が起こるか分からないからね。