INTERVIEW
VOLBEAT
2021.12.01UPDATE
2021年12月号掲載
Member:Michael Poulsen(Vo/Gt)
Interviewer:山本 真由
デンマークが誇る世界的人気バンド VOLBEATが、結成20周年を迎えた今年、8枚目となるフル・アルバム『Servant Of The Mind』をリリース。全体的には、ヘヴィなサウンドがガツンと来る原点回帰のような趣向だが、そんな彼らのハードなサウンドと、ロカビリーやパンクを下敷きにしたキャッチーなサウンドが曲ごとに楽しめる、盛りだくさんな内容となっている。今回のインタビューでは、そんな今作についてはもちろん、パンデミックを経たバンドの近況や、彼らのインスピレーションについても深く語ってもらった。
-ニュー・アルバム『Servant Of The Mind』の完成、おめでとうございます! 12月に発売される(※取材は11月上旬)ので、ファンにとっては素晴らしいクリスマス・プレゼントになりますね。
そうなるといいね。悪夢に感じる曲がないといいけど(笑)!
-(笑)今回8枚目のフル・アルバムとなりますが、バンドの結成から約20年、これまでコンスタントにリリースを続け、順調に活動してこられた秘訣を教えてください。
"秘訣"と言うべきものかはわからないけど、正直言って自分ができることや好きなことに没頭しているだけだと思うね。いつも何かしら曲を書くためのインスピレーションを得ているし、書くのが大変と思ったことが一度もないんだ。特定の題材に関して書くときにいつもより時間がかかることはあるけどね。俺たちがこの生業を愛しているのはなんの秘密でもないし、大切なのは楽しみながらインスピレーションを得ることだと思う。楽しみやインスピレーションがなかったらなんにもないからね。もしそういう姿勢を"秘訣"と呼ぶならそれでいいと思うけど。
-なるほど。この2年間は、世界を揺るがすパンデミックもあり、多くのミュージシャンが活動に影響を受けましたが、VOLBEATの活動やあなた自身の生活はどう変わりましたか?
そうだな......俺たちは特に影響を受けなかったんだよね。経済的にはかなり潤っているから、そっち方面の心配はしなくてよかった。もちろん、生活のためにずっと活動していなければならなかった友人たちはそこら中にいたし、とても苦しんでいたバンドもいたけど、俺たちの場合は今リタイアしたいと思ったらしても問題ない状態なんだ。そんなことはしたくないけどね。
-しないでください(笑)。
今も活動意欲はあるし、ツアーもしていたいよ。でも、アメリカとヨーロッパのツアーがパンデミックのせいで延期になったと電話があったときのことを覚えている。そのときは俺たちみんな"わかった、様子を見よう"と思ったんだ。次の電話は、"パンデミックが終わりそうにないからすべてキャンセルになった"という知らせだった。フラストレーションになったのは言うまでもなかったよ。突然何もできなくなってしまったんだから。ファンをがっかりさせてしまうな......と少しの間思ったけど、このパンデミックでは俺たちだけじゃなくてみんな同じ状態だからね。家族や友達が無事かどうかにだけ気を向けることにしたよ。それと同時に、自宅には子供たちやカミさんがいるから、ようやくゆっくり一緒に過ごせると思ったし、ひたすら曲を書き続けることにした。通常はツアーの合間に曲を書いているから、ツアーに出て、そのあと何週間か家に帰って......の繰り返しで、曲を揃えるのに1年半くらいかかってしまうんだ。でも今回は中断させるものがないから、基本的に自宅でギター1本とだけで過ごすことができる。それでマネージメントに、"あのさ、俺アルバム1枚分曲書くから"と宣言したんだ。
-おぉ、それは......(笑)。
(笑)"パーフェクトじゃないか!"と言われたよ。そりゃ落ち込んでいる人もいたけど、俺はエネルギーが有り余っていたから、その置き場がわからなかったんだ。毎朝ランニングをして、エクササイズをして、家に帰ってもエネルギーが山ほど残っていた。それでギターを手に取った。そういう生活が3ヶ月続いて......アルバムができたってわけだ。
-たったの3ヶ月ですか。
たったの3ヶ月だよ。歌詞も曲も全部その3ヶ月の間に書き上げた。我ながら早かったね。それほどインスピレーションが強かったんだ。で、できたものを(プロデューサーの)Jacob Hansenのスタジオに持っていった。バンドの他のメンバーには、"もうスタジオをブッキングしたから"と言ってね。"えっ、なんだって?"と言われたけど(笑)。"スタジオをブッキングしたから仕事しようぜ"と言ったよ。レコーディングには2週間半くらいしかかからなかったし、そっちもとても早かったね。俺にとっても、もちろんパンデミックは悲しいことだし、誰もが大きな衝撃を受けたと思う。でもそれを除いてはVOLBEATとしてはとても有意義な時間になった。ほとんど生まれ変わったような気分だよ。最初からやり直しているような気がするんだ。すべてが始まったときのことを思い出したからね。久しぶりに曲の要素がヘヴィになったのもそういうところから来ているんだと思う。
-パンデミックにもめげず、肉体的にも音楽的にも、これまでにないほど健康的な時期を過ごされたようですね。良かったです。
そうだね。
-ちなみに"スタジオに行った"とのことですが、デンマークではロックダウンなどはなかったんでしょうか。
あったよ。でもスタジオ入りしたころには解除されていたんだ。ちなみに、通常スタジオにはギター・テックとかドラム・テックとか、いろんなスタッフが入るんだけど、今回は4人だけだったんだ。
-メンバー3人とJacobですね。
俺とKaspar(Boye Larsen/Ba)とJon(Larsen/Dr)とJacob。数日後にギター・テックがちょっと立ち寄ってくれたけどね。Rob(Caggiano/Gt)はニューヨークにいたから、あいつには"あのさ、今新しいアルバムを録音したんだ。ちょっとソロ入れてくれない?"とほとんど事後報告みたいな感じだった(笑)。
-(笑)
"えっ、何をしたって!?"って聞き返されたけどね(笑)。"新しいアルバムを作ったんだよ!"と答えたよ(笑)!
-(爆笑)
それで"ソロを入れてくれ"と頼んで、曲をRobに送ったら、ニューヨークでソロを全部録音してくれたんだ。スタジオではソーシャル・ディスタンスを保って、仕事もとっととやって......素晴らしくうまくいったよ。素晴らしい結果になった。
-なるほど。Robとリモートでレコーディングしたのが、これまでのアルバムとの制作プロセスの違いでしょうか。
初期のアルバムのころも、ものすごく仕事が速かったんだ。まだ若かったし予算もとても少なかったからね。Robが加入したら、あいつは仕事のやり方やリハーサルでのスタジオの使い方が全然違っていたんだ。スタジオに関してものすごく細かくてね。セッティングだけで永遠にかかってしまうような感じだよ(笑)。ものすごく才能とこだわりがあるから、たったひとつの音にスタジオで10日間かけることだってあった。
-そうですか......。
人生はあっという間だからね、そんな暇はない。だからRobがバンドに加入してからは、スタジオを2部屋ブッキングするようにしているんだ。片方で俺たちが作業している間にRobだけ別の部屋に入ってね(笑)。でも今回はあいつがニューヨークにいるから待ち時間がいらなくて、昔みたいに作業することができたんだ。あいつもそれで構わないと言ってくれたしね。今回はそれでとてもうまくいったよ。すべてが自然な流れで進んでいってね。昔は3テイクだけ録ってその中からベストなものを選ぶというやり方だった。今回もそれに近かったね。あまりたくさんのテイクを検討したくはなかったし。
-シンプルなやり方だったんですね。
とてもシンプルだったよ。あまり音を重ねることもしなかったしね。17~8歳のころに戻ったような気分だったよ。
-それもあって近年の作品よりライヴ感が強いのかもしれませんね。あなたは公式資料にて"今作のテーマは、1stアルバム(2005年リリースの『The Strength / The Sound / The Songs』)を聴き直してから今の俺たちを聴いてもらえれば、このバンドが特徴的なサウンドをキープしながらどのようにスタイルを発展させていったかがわかる"と語っていますが、今作はまさにそんなVOLBEATのルーツや幅広い表現方法が凝縮されたような作品ですね。今作には、これまでの活動を総括するような役割もあったのでしょうか。20周年の節目ですし。
......という見方もありだと思うけど、新作に取り組むことになるなんて正直誰も予想していなかったからね(笑)。通常は新作に取り組むということになると、そのプロセスがとても長くなるってわかってるものだけど、今回はリハーサル・ルームに俺とJonとKasparの3人きりでショーの予定もなかったし、生まれて初めてバンドを組んだときに戻ったような気分だったんだ。誰も自分たちのことを知らなくて、リハーサル・ルームの中でショーのブッキングを取りつけることをひたすら夢見て......オーディエンスはリハーサルを見に立ち寄ってくれる友達だけ。そんな状態に戻った感じ。"ショーのことは考えないでひたすら楽しもう、ショーはないんだから"、という感じだった。その状態に戻ったら、初期みたいにヘヴィなものが生まれてきたんだ。ものすごくヘヴィで、ものすごくインスピレーションが詰まっているものがね。というわけで、ヘヴィにはなったけど、この間のVOLBEATの進化もわかるものになっている。俺たちもソングライターとして成長したからね。初期のアルバムはリフ主体で、壮大なコーラスを書く力がなかったけど。今回は初期のリフを取り戻しつつ、後年のアルバムのように経験にも裏打ちされたものになっていると思うよ。壮大なコーラスも入っているしね。
-まったく同意です。昔と今の素晴らしいところを組み合わせた感じですね。
その通りだよ。
-その新作の収録曲についていくつか聞いていきたいと思います。シングル曲でもある「Shotgun Blues」は、引っ越し先で起こったホラーな出来事をモチーフにしているようですが、ちなみに今もその新居からインタビューを受けているのでしょうか。
ああ。
-ご自宅から受けてくださっているんですね。そこで不思議な体験をしたということですね?
そうなんだ。......実は幼いころから、"スピリチュアルな体験"とでも呼ぶべきものをたくさん経験してきたんだ。まだ人生のことがわかっていない、暗中模索中の小さな子供のころから、"これは普通じゃないぞ"となんとなく確信があったし、普通じゃないことなんだって受け入れていた気がする。まぁみんななんらかの形でそういうことはあると思うけど、そんなに小さいころから超自然的なことについて友達に話したりなんかしたら、変人扱いされるからね(苦笑)。だから話すのをやめたんだ。はみ出し者になるのはごめんだからね。
-なるほど。わかります。
それで話題に出すのをやめた。でも新しい家に引っ越すたびに怪奇現象が起こるんだ。その時々に付き合っていた女の子に話しても疑われるんだよね。今回引っ越した家は、とても大きくて歴史があるんだ。
-古いおうちなんですね。
ああ。......最初の3ヶ月間はまたもや怪奇現象の連続だった。フィアンセはもちろんビビっていたよ。霊媒者が2日間来て家を清めてくれたけど、あまりにいろんなことが起こるから1日で帰ってしまいそうになった(苦笑)。そのときの出来事は、すべてではないけど、アルバムのあちこちに登場するよ。すごく繊細でパーソナルな出来事だからあまり話したくないこともあるしね。話題に出すとその日のうちに変なことが起こるんだ。話さなければあまり考えなくて済むし、人生の一部としてやり過ごすことができるけど。で、霊媒者が言っていたのは、俺が引っ越すたびに死人の霊を一緒に連れてきてしまうということだった。
-なんと!
その霊たちは俺のエネルギーを使って生きているから、ある意味俺に寄生しているんだ。で、新しい家に何か精霊がいると、そいつと衝突してしまう。俺と一緒に引っ越してくる霊と、引っ越し先の家にいる霊が喧嘩するんだ。
-あの、今は霊同士仲良しなんでしょうか。
霊媒師が2日かけて家を清めてくれたから、そのおかげか平和になった気がするよ。もう喧嘩していないみたいだしね。壁や棚からものも落ちてこないよ。そんなわけで、引っ越した最初のうちはちょっと大変なんだ。今は静かになって、うるさくしているのは子供たちだけだよ(笑)。
-もしかしたらおうちの守り神になったのかもしれませんね。
そうだといいね。