INTERVIEW
VOLBEAT
2025.06.05UPDATE
Member:Michael Poulsen(Gt/Vo)
Interviewer:山本 真由 Translator:安江 幸子
世の中には守らないといけないルールが山程あるのに、それを作っているやつら本人が破っているのを目にするばかりだ
-いつも何かしら楽しみがあるのはいいことですよね。ありがとうございます。さてかなり速いスピードで新作ができあがったとのことですが、レコーディング・プロセスもかなりシンプルになったのでしょうか。前回のインタビューでは、Robがいた頃は彼専用のスタジオをブッキングする必要があったと言っていましたよね。
(笑)今のレコーディング方法は、1stのときに近いよ。まぁ俺たちはいつもわりと早いんだけど、RobにはRobの取り組み方というのがあるからね......とにかく永遠に(笑)、スタジオにいたがるんだ。でもそれは単にあいつのやり方だってことに過ぎない。そういうやり方が好みだってことなんだ。だからあいつがいた頃はスタジオを2つブッキングして、あいつにはあいつのやりたいことに専念してもらって、俺たちも自分のことをやって、でも日中に集まって一緒にやってという感じだった。それがお互いのやり方なんだから、それぞれリスペクトしないとね。
-なるほど。でも今回はそれがなかったからシンプルだったと。
そうだね。極めてシンプルだったよ。テイクの数もすごく少なかった。......考えてみてごらん。ステージに出てプレイするときは、チャンスが1回しかないんだよ?
-たしかにそうですね。
俺はそのスタンスでスタジオもやりたいんだ。手を掛けすぎず、考えすぎず、テイクもあまり録りすぎず。そういうメンタリティでスタジオに臨んでいるんだ。
-だからこそ自由な雰囲気があって、ライヴでの姿が想像しやすいアルバムになっているのですね。ソングライティングも本能的だったのでしょうか。例えば「By A Monster's Hand」は、ヘヴィでありながら親しみやすいメロディが際立つパートや、怒濤のギター・ソロ等、目まぐるしい曲の展開も楽しめる楽曲です。ああいう曲を作ることが可能だったのは、今回の状況ならではだったのでしょうか。
もちろん! 音楽のフレッシュなスピリットを保つことが全てだ。やりすぎたり、同じことを何度も繰り返したりしてしまったら、スピリットが窓から出ていってしまうからね。そうすると、エネルギーもスピリットも残っていない、聴こえるべき形でないサウンドの曲が残されてしまうんだ。俺たちはフレッシュなスピリットを保つことを最優先した。ところどころに間違いがあったり、音やテンポがちょっとズレていたりしてもその状態にしておいたんだ。ライヴでも同じことが起こり得るものだし、俺たちは自分たちがライヴ・バンドだってことを意識しているからね。ライヴだってテンポのズレは起こり得るものだし、スタジオだからと言って揃える必要なんてないだろう?
-曲の構造からしても、1曲の中でもテンポが変わることもありますしね。
そう、俺たちはいろんなテンポを使うのが好きなんだ。それから、クリックを全部の曲に使うのは嫌だと思ってね。昔みたいにただスタジオに入って生演奏するだけというほうが性に合っているんだ。ギターやヴォーカルをトッピングしてね。
-人間らしいオーガニックな感触を大切にしているのですね。
そうだね。
-ところで、「In The Barn Of The Goat Giving Birth To Satan's Spawn In A Dying World Of Doom」は、先行配信されるとそのタイトルの長さも話題となった楽曲ですが、そもそもどうしてこんなタイトルを思い付いたんでしょうか。VOLBEATらしいアメリカン・ルーツ・ロックの要素が色濃く出たナンバーですね。こういう曲はタイトル作りはもちろん、全行程かなり楽しんで作っているんじゃないでしょうか?
ものすごく楽しかったよ!......歌詞に関しては意外とシリアスなんだけど、世の中にはあまり直接的に言及しないほうがいいことがあるからね(笑)。世の中のダークな事柄を、変なタイトルと変な歌詞で"カモフラージュ"しているんだ。まぁ、あまりシリアスに取られても困るけど......(笑)。今の世の中に関するシリアスな話は行間を読んでもらうと分かる感じかな。VOLBEATには宗教的なメンバーがいないんだ。サタンを崇拝しているわけでもなければクリスチャンでもない。楽しいことが好きでスピリチュアルなやつらなんだ。でも、残念ながらヤギ(Goat)は長年の間、ものすごく悪いことのカモフラージュとして使われてきた。ヤギが可哀相だよ。
-ヤギがカモフラージュ?
邪悪なことの例えに使われてきたんだから(※キリスト教文化においてヤギは悪魔の象徴としてのイメージが強い)、ヤギは人類を訴えてもいいはずだよ(笑)。ヤギが悪いわけじゃないのに、人類の悪事に耐えてきたんだからね(笑)。全ての"悪者"は人類によって作られている。人類は、自分たちの悪い部分をカモフラージュする傾向があるんだ。ヤギが悪魔の象徴になっているのも、人間がヤギの仮面を被っているだけだ。みんな人間のでっち上げだよ。
アルバムのジャケットを見ると、ヤギが部屋の中を覗き込んでいてね。人間はベッドの中でよく眠っているかもしれないけど、外の世界には悪がたくさんあるんだ。『God Of Angels Trust』は、俺たちが強いられている世の中の宗教的な規則が、時にはその規則を作った者たち自身によって破壊されていることについて語っている。俺たちは起きてから寝るまで様々な物事に信頼を置いているんだ。多くの場合、その相手を自分より"高い位"に置いてね。その"相手"は宗教的な信条だったり、その他のものだったりする。宗教のルールを、それを支えている人たちが破っていることがよくあるんだ。宗教だけじゃない。世の中には俺たちが守らないといけないルールが山程あるのに、それを作っているやつら本人が破っているのを目にするばかりだ。
というわけで、"God Of Angels Trust"は、単語の最初の文字を合わせると"GOAT(ヤギ)"になるんだよ。
-はっ......"God Of Angels Trust"! 本当ですね! たしかに......素晴らしい!
ははは(笑)。
-このアルバムを理解する鍵のようなものですね。考えてみれば、"Scapegoat(生贄)"なんて言葉もありますものね。
その通りだよ(笑)!
-タイトルのからくりを教えてくださってありがとうございます。多様な楽曲が集まったアルバムですが、特にお気に入りの1曲を挙げるとしたら?
正直言ってまだ分からないんだ。どの曲もこれからライヴでプレイするのが楽しみだけどね。今はまだツアーの準備中だから、まだ1曲もやっていない状態なんだ。新曲は全曲リハーサルしているよ。ライヴは今のところ20曲で、うち6曲を新曲にする予定だ。その6曲はところどころで入れ替えようと思っている。......という感じだけど、今は全曲リハーサル中だから、どの曲をライヴでやるのが好きになるかまだ分からない。昔の曲も好きだし、ライヴでやるのがより楽しい曲というのは今後出てくるだろうね。少なくとも、「In The Barn Of The Goat Giving Birth To Satan's Spawn In A Dying World Of Doom」をオーディエンスがシンガロングしてくれるかどうかは今から楽しみだよ(笑)。
-たしかに(笑)。ツアーのリハーサルをすでに始めているのですね。今作は自由度が高く、直感的なアプローチで迷いなく作られた印象ではありますが、逆にこれまでと違ったプロセスで苦労した点等はあるのでしょうか? 例えばリハーサルのときに、作るときのアプローチが違ったからやりにくいとか。
そこは長年の経験の活かしどころだよ。常にインスピレーションも得ているしね。同世代のミュージシャンが、いろいろ経験した後で、虚しさのブラックホールみたいなのにはまってしまうのを結構見てきたけど、俺の場合はそういうことが一切ないのがありがたいね。常に何かを料理している状態なんだ。その状態を楽しめているからいいんだろうな。いつも何かしらインスピレーションを得てそこから何かに取り掛かっているからね。とはいえ、これ程アルバムを出した後だと、楽になるということはないんだ。でも長年の間に培ったライティングの知識やライヴでの経験があるから、それで補ってうまくやれるということだね。
-なるほど。アプローチは違っても、これまでの経験や常に得ているインスピレーションを駆使すれば、新曲を書くのにもプレイするのにも役立つのですね。
そういうことだね。楽しくやっていられる限りは、新曲も作っていけると思っているよ。
-アルバム・リリース後の予定についても教えてください。6月には北米、秋にはヨーロッパ・ツアー("Greatest Of All Tours Worldwide")が決まっていますね。2014年のジャパン・ツアー以来、なかなか来日が実現していませんが、日本での公演のチャンスはありそうですか?
新作を出してツアーの行き先について話し合うときには、毎回日本が候補に挙がっているんだ。みんな声を上げて"日本!"と言っているよ。これまで何回か行ったことがあるけど、いつも素晴らしい経験ができているし、何しろこことは全然違うところだからね。全員が素晴らしい思い出を作って帰っているよ。ただ残念ながらまた日本に行くことが叶っていない。ヨーロッパのバンドにとって、日本に行ける状況になるには条件があまりに多いんだ。経済的なコストも膨大だし、予算を組むのも大変でね。でも俺たちが心から行きたいと思っているのは確かだよ。
-ありがとうございます。激ロックでも何度もインタビューをしていますし、このこと自体が日本のファンの来日への期待の高まりだと思っていただければ。
ありがとう。本当にありがとう。
-ところで先日は、バンドのYouTubeチャンネルでイギリスのデス・メタル・バンド、BENEDICTIONのニュー・アルバム(『Ravage Of Empires』)をおすすめする動画をアップしていましたが、他にも日本のファンにぜひ聴いてほしい作品やおすすめのバンドなどありましたら、ぜひ教えてください。
いつもいろいろ聴いているからねぇ。......そうだ、MANIC STREET PREACHERSの新作(『Critical Thinking』)! 最高だよ。俺はMANIC STREET PREACHERSの大ファンなんだ。ぜひチェックしてみてくれ。
-ありがとうございます。あれはいいアルバムですよね。最後に、VOLBEATの来日を待ち望んでいる日本のファンにメッセージをお願いします。「In The Barn Of The Goat Giving Birth To Satan's Spawn In A Dying World Of Doom」をみんなで大合唱したいですしね。
(笑)日本行きは俺たちがぜひやりたいことだから、どうか辛抱強く待っていてほしい。ずっとサポートしてくれて本当にありがとう。みんなの幸運を祈っているよ。そして......ヤギと納屋で仲良く待っていてくれ(笑)!