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INTERVIEW

HOT MILK

2025.06.27UPDATE

2025年06月号掲載

HOT MILK

Member:Han Mee(Vo/Gt) Jim Shaw(Gt/Vo)

Interviewer:井上 光一 Translator:安江 幸子

2023年に日本デビューを果たし、11月に行われた初来日公演は見事ソールド・アウトを達成、今年の夏には"SUMMER SONIC 2025"での再来日が決定している、Han MeeとJim Shawの2人がフロントを務めるマンチェスター出身のHOT MILK。ハイブリッドな音楽スタイルをさらに進化させた2ndアルバム『Corporation P.O.P』のリリースを6月27日に控え、本誌ではHanとJimに再びインタビューを実施。新作に込めた想いや制作プロセス等を大いに語ってもらった。


曲を作るのは2人だけど、やること全てにバンドを絡ませたい


-2ndアルバム『Corporation P.O.P』の完成おめでとうございます! 6月27日にリリースを控えた現在(※取材は4月上旬)の率直な気持ちを聞かせてください。

Han:ちょっとナーヴァスってとこかなぁ(笑)。ちょっとね。かなり速いプロセスで書いたアルバムだから、急に"さぁできた"という感じで。だからちゃんと自分の中で――

Jim:消化する。

Han:そう、消化する時間があまりなかったんだよね。心から思っていることをすごくアグレッシヴな形で書いたの。みんなが気に入ってくれるかとかは考えなかった。気にしなかったというか。自分たちが気に入るかどうかをしっかり考えたの。そうやっていろんな考えを詰め込んだものを、いきなりみんなにジャッジされるところに送り込むわけだから、ちょっと怖いところもある。

Jim:うん。前作(2023年リリースの1stアルバム『A Call To The Void』)とはかなり違うと思う。コンセプト的にも音楽性的にもね。さっき君(Han)も言っていたけど、どんなふうに取られるか、ちょっとナーヴァスにはなるなぁ。

Han:様子を見るね。

-前作『A Call To The Void』は見事に全英チャートTOP40入りを果たしましたね。そのような結果は想像していましたか。

Jim:アルバムの曲を書いていたとき、そういうことは特に考えなかったような気がするな。アルバムが僕たちにどう作用するかばかり考えていたよ。例えばライヴではどうやってプレイするのか、どうやってファンと相互作用するのか。こざかしい話とか、絶賛されるのかどうかとかより、直感的なことのほうが気になっていたね。僕たちがバンドを始めたのはそれ(順位等)が理由じゃないから。

Han:自分たちがプレイしたくなるいい曲を書きたい。ひとえにそれだけだったね。これが成功するかというよりいいサウンドになるか、楽しいものになるか、みんなが身近に感じてくれるものになるか。それ以外のことが気になるんだったら、この生業をする理由としては正しくないと思うんだよね。

Jim:そうだね。

-2023年の11月には待望の初来日公演も実現しました。ソールド・アウト公演で盛り上がりましたね。HOT MILKとして初めての日本はどうでしたか。

Han:そりゃ最高だったよ! 素晴らしい経験だった。何せ生きている間に東京に行けることになるなんて思ってもみなかったもん。私はすごく小さな町の出身だから。

Jim:しかも初めてのショーがソールド・アウトになるなんてさ。

Han:クレイジーだよね。

Jim:かなりショッキングだったよね。......というか、何を期待していいのか分からなかったんだ。オーディエンスがどんな感じかとかね。世界中回っていると、オーディエンスが場所によって少しずつ違うことが分かるんだ。ドイツとイギリスもちょっと違うし、アメリカとも全然違うしね。ただ――

Han:とにかく楽しかった。

Jim:ものすごく楽しかった。

Han:文化人類学の勉強みたいなものだよね。自分と違う人たちのマインドがどのように作用するのかを学ぶ感じ。それって美しいことだと思う。すごく美しい体験だった。

Jim:そうだね。

Han:だからまた行くのが待ちきれない。今度("SUMMER SONIC 2025")は大阪にも初めて行くし(※にっこりと微笑む)、すごく楽しいことになると思う!

Jim:ああ。すごく楽しみだよ。

Han:すごく楽しみ。

-日本の後もツアー漬けの忙しい日々を送っていたと思います。特に夏は出ずっぱりでしたが『Corporation P.O.P』の制作はいつ頃始まったのでしょうか。先程のHanの話ですと短い時間に作り上げたとのことでしたが。また、本作は共同プロデュースとしてZach JonesとKJ Strockがクレジットされていますが、彼等を起用した経緯もお聞かせください。

Han:彼等のスタジオがすごく素敵なところだって聞いたの。アンプがたくさんあるって......。

Jim:それが全ての始まりだったね。前回のアルバムは基本的に僕のベッドルームで作ったもので、"箱の中"に入っていたんだ。つまり全部がプラグインで、ノートパソコンという"箱"で作ったものだった。

Han:デジタルでね。

Jim:そう、デジタルだった。今回は回帰したかったんだ。

Han:アナログに。

Jim:そう! 実際に"触れて"。

Han:本物のアンプ、本物のシンセを使って。

Jim:温かみを求めていたからね。

Han:ノブに実際に触れて回すことで微調整してね。もっと生々しい感触を得たかった。

Jim:クリエイティヴになってね。

Han:よりライヴ感を求めて。それで彼等のところに行ったの。彼等はLAにすごくクールなスタジオを持っているんだけど、そこがすごくポジティヴなスペースだと思って。

Jim:僕と同じマインドセットで、極度の技術オタクなんだ(笑)。僕たちがスタジオに出向きもしないうちからペダル(エフェクター)やシンセ、アンプの話をしていたよ。"これはどうだ?"、"これを使う?"、"これなんてどう?"なんて感じで(笑)。すごく楽しかったよ。あっという間でもあった。初日にスタジオに着くまでほとんど何も準備する時間がなかったんだ。

-なんと。

Han:まぁ、メモくらいはあったけどね。

Jim:ほんの少しだったけど。

Han:何をやりたいのか、アイディア的なものが少しはあった。でも曲的には何一つなくて、全て3週間でやったの。

Jim:まず何をやったかというと......デカいホワイトボードを買ったんだ。で、こんな感じに書いていった。"1曲目:アグレッシヴなオープナー。2曲目:フェス向けの跳ねる感じのやつ。3曲目は......"という感じにマッピングしていったんだ。

Han:全体的に1つの旅になるような感じにしたくて。スタートからフィニッシュまでね。

-ということは、曲順や各曲のムードがどうあるべきかはかなり意図的に進めていったのでしょうか。

Han:そう。曲から曲へと流れがあるようにしたかったから。一息入れる箇所も欲しかったし、エモーショナルになる前にはその前段階も欲しかったし。みんなが"ゾーンに入る"ことができるようにしたかった。

Jim:僕たちはいつもアルバムを最初から最後まで聴くのが好きなんだ。ランダムに聴くんじゃなくてね。だから曲の置きどころを分析するのにたくさん時間をかけたよ。場当たり的な順番に聴かれてしまうと、アーティスティックな意味での全体性が少し失われてしまうような気がするんだ。

Han:まぁアルバムそれぞれではあるけど。今回は"旅"を念頭に置いて書いていて。私たちにとって理想的なアルバムの在り方を実現するためにね。......と言ってもプレッシャーをかけるわけじゃないよ? どうしても(最初から最後まで通しで聴け)ってわけじゃないから(笑)。

-初めはほぼまっさらの状態からスタートしたのですね。それから曲のムードをマッピングして、そのシナリオに沿った曲を書いたと。

Han&Jim:(※頷く)

-『Corporation P.O.P』は、あらゆる面で前作からの進化を感じさせる素晴らしい作品となりましたね。ソングライティングの点においてもバンド・アンサンブルの点においても、HOT MILKというバンドがネクスト・レベルに達したことを、実感されているのではないですか。

Jim:楽器が上手くなったなと実感しているよ(笑)。今度はライヴにこの曲たちを持っていくことになるからね。

Han:すごく難しいけど(苦笑)。

Jim:とんでもなく難しいよ(※頭を抱える)!

Han:このバンドは私とJimだけで始めて、そこにTom(Paton/Ba)と(Harry)Deller(Dr)が加わってくれたのは、曲をライヴでやりたいと思ったからなの。今も曲を作るのは私たち2人だけど、やること全てにバンド全体を絡ませたいの。私たちはバンドだし、ライヴは4人でやっているからね。今は4人のハマり具合も今まで以上にタイトだと思うし、お互いの才能の限界をテストし合っている感じ(笑)。だからこそ、4人全員が同じ立場にいることが大事だと考えてる。今回の曲を実際にライヴでやったら......4人が1つになって、きっとすごくクールなことになると思う。