MENU

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

HOT MILK

2023.08.21UPDATE

2023年08月号掲載

HOT MILK

Member:Han Mee(Vo/Gt) Jim Shaw(Vo/Gt)

Interviewer:井上 光一 Translator:安江 幸子

THE SMITHSやOASIS、THE 1975など数えきれないほどのビッグなバンドを生み出してきたイギリスはマンチェスターから、新たなロック・スターが誕生! Han MeeとJim Shawのツイン・ヴォーカルを中心とする4人組が、待望のデビュー・アルバム『A Call To The Void』で日本上陸を果たす。本誌では早速HanとJimにインタビューを実施、ふたりの出会いから彼ら独自の音楽哲学など、様々なトピックを語ってもらった。

-デビュー・アルバム『A Call To The Void』の完成おめでとうございます! 本作でいよいよ日本デビューとなりますね。とてもワクワクする時期なのではないかと。

Han:怖い時期でもあるけど......(苦笑)。

Jim:超ワクワクしているよ! 1stアルバムを出すのに十分長い時間をかけたからね。"このままアルバム出さずにいくんじゃないの?"なんてジョークが流れていたくらいで(笑)。

Han:いろんな......懸案事項があって、それをようやく舵取りできるようになったんだと思う。簡単じゃなかったからね。今こうなって嬉しい。

Jim:僕たち史上最高の曲が書けたから、ようやく世に出ることになってすごくワクワクしているよ。

-本誌では初めての取材となりますが、おふたりにとって"日本とのインタビュー"は初めてですか?

Jim:2本目。

Han:1本目はほんの2分前に終わったところ(笑)。

-"初めの数本"に入ったということですね。本誌としては初めてなので、基本的な質問をいくつかさせてください。まずはおふたりそれぞれの自己紹介をお願いします。例えばふたりの出会い、そしてHOT MILKを結成する直接的なきっかけなどがあれば。

Han:うわー......(苦笑)。ちょっとダークでディープなストーリーなんだけどね。えぇと、私たちの出会い? ......事実上はTinder(マッチング・アプリ)で出会ったようなものなの。あまり誇りに思っていないけど(苦笑)。Jimとはバンドを始める4年くらい前から一緒にいる。ところがある出来事がふたりの身に起こって、私たちは深い悲しみを味わうことになってしまったの。それがきっかけで"曲でも一緒に書いてまたハッピーになろう"という話になってね。マンチェスターの(部屋の)リビング・ルームの床に座って......1月の雨の夜。暗かった。ワインを飲みながら書いていたら曲がいくつかできたの。"なるほど、こういうことが一緒に、しかも結構簡単にできるんだ"と思った。それほど上手くいったの。あれが決め手だった気がする。これは続けていくべきだって悟った。

Jim:そうだね。その前からずっと、ふたりとも音楽業界になんらかの形で関わっていきたいという気持ちが強かったんだ。でも心の底では、自分たちが演奏する側になりたいって思っていた。

Han:ふたりとも、何を犠牲にしてもいいという気持ちを持っていたの。自分と同じくらい......

Jim:まったく同じレベルで......

Han:コミットしている人に出会えるなんてものすごくレアなことだよね。今までやってきたバンドでも、私ほどコミットしていた人はいなかったって胸を張って言える。

Jim:そうだね。

Han:同じくらいコミットしている人に出会えて本当に良かった。

-それでメンバーを集めてバンドを結成したわけですね。その結成の場が、OASISのNoel Gallagherが『(What's The Story) Morning Glory?』(1995年)を書いたアパートだったという話は本当でしょうか。

Han:たぶん同じ建物だったんだと思う。

Jim:同じ棟のね。

Han:まったく同じ部屋だったかどうかはわからないけど、同じ建物だったの。Noelが当時のガールフレンドと一緒に住んでいたんじゃなかったかな。彼はそこで『(What's The Story) Morning Glory?』を書いたの。

-そこにはあなたも住んでいたのですか。

Han:そう、その頃はね。

-ということはそのアパートからまたもや名盤が出るということですね。

Han:あれほどの名盤じゃないかもしれないけど(笑)。

-"あのアパートに住めば名盤ができる"とジンクスになりますね。

Jim:(笑)

-結成当時からHOT MILKは積極的にライヴ活動を行っていますね。コロナ禍で思うように活動ができなかった時期もあったとは思いますが、HOT MILKは基本的にはライヴ・バンドのように思われます。YouTubeなどで動画もいろいろ上がっていますしね。ライヴ活動をかなり重視しているように見えますが。

Jim:間違いなくそうだね。ロック・バンドにとってのライヴ・ショーっていうのは"バター付きパン"(※訳注:生活必需品を例える慣用句)のようなもので、自分を魅せたり......

Han:自分らしくいられる場所。

Jim:ドラマチックにもなれるよね。なりたいものになれるし。オーディエンスもみんなそうなんだ。僕たちのギグはいつも安心して自分を出せる場にしているよ。なんのジャッジもされずに、自分のなりたいものそのものになれる場所。それが、僕たちにとってライヴ・ロック・シーンの大好きなところなんだ。超オープンだからね。

-HOT MILKは活動初期からFOO FIGHTERSなど素晴らしいバンドとのツアー経験がありますね。中でも2022年の初頭にはあなたたちと同じマンチェスターを拠点としているPALE WAVESのツアーをサポートしています。ギター・ロック・バンドとしてブレずに活動している彼女たちに何かアドバイスなどを貰いましたか。自分らしさを貫くにはどうしたらいいか、ですとか。

Han:彼女たちとツアーした頃の私たちはもう自分らしさが何かわかっていたと思う。だから一緒にツアーしたときは単なる友達だったね。似たマインドセットの人たちとつるめて嬉しかった。彼女たちのやり方は私たちとちょっと違うんだよね。私たちのほうが激しいし(笑)、私たちの曲のほうがずっとヘヴィだし。だからライヴ・ショーも全然違うけど、共通点はあると思う。あのツアーで彼女たちととても仲良くなれたしね。

Jim:そうだね。

-また、これまでに特に記憶に残るライヴがあれば教えてください。

Han:ヘッドライン・ショーはやっぱり強烈だったね。今まで注いできた労力、書いてきた曲、そして書いたときに味わった心の痛みの集大成だから。それをまだ会ったことのない友達や家族みたいな感じの人たちが歌ってくれたりして......その人たちのことをすでにわかっているような気がするの。最高の気分だよ。他のバンドとのツアーもいつも楽しいけど、特にFOO FIGHTERSとのツアーはいつまでも心の大きな一部を占めることになると思う。今年と来年また一緒にツアーできるから、すごく楽しみ。バンドとして成長した状態で回れるからね。

-また彼らとツアーすることになったのですね!

Han:そうなのよ。

Jim:フェスではいつも素晴らしい体験ができていると思う。今まで出たフェスはどこもオーディエンスが驚くほど良かったんだ。例えば今年の"Download Festival"とか......僕たちはメイン・ステージだったんだけど、出ていったら人が海みたいになっていて、今にもと待ち構えてくれていたんだ。あのときの感覚は何物にも代えられないね。あれがあるからどんな苦難もフラストレーションも、そしてバンドのアップダウンも厭わずにやっていけるんだ。不安もみんなあれがあれば報われる。

Han:そうね。私たち、家に閉じこもって作曲するために生きているわけじゃないから。曲を書いて、家を出て、ギグをするため。そういうこと。

Jim:世界を見て、素晴らしい人たちにも会ってね。

-その忙しいライヴ・スケジュールの合間を縫って、HOT MILKは現時点で3枚のEPをリリースしています。デビュー・アルバムのリリースを控えた今、現在のあなたたちから見て改めてこの3枚がどのような作品だったのか語っていただけますか。まずは2019年にリリースしたデビューEPの『Are You Feeling Alive?』。

Han:振り返ってみて思うのは、あれは私たちが......

Jim:自分たちがどんなものなのか手探りで見極めようとしていた作品だね。

Han:うん。今も好きな曲がいくつかあるし、自分たちがどんな人間なのかを見極めるために重要だったEPだと思う。それだけじゃなくて、どうやって一緒に曲を書くのかも。

Jim:そうだね。"ハロー、僕たちはHOT MILKです"と思い切った意思表示をした作品だね。これが何かの始まりになる、これからみんなを旅に連れていくよ、みたいな感じ。4曲にとどめておいて良かったと思っているんだ。誰かの前に提示するにはちょうどいいくらいの量だからね。

Han:うん。

-新しいバンドとしてちょうどいい量、という意味でしょうか。

Jim:そう、その通りだよ。これから何が起こるのかを垣間見せる感じ。

Han:たしか次のEP(2021年リリースの『I Just Wanna Know What Happens When I'm Dead』)は5曲だったんじゃないかな。その次(2022年リリースの『The King And Queen Of Gasoline』)が6曲で(笑)。少しずつアルバムに向けてギアを入れていった感じでね。EPたちは今振り返ってみても誇りに思うけど、同時に今はずいぶん変わったなって思う。私たちの仕事には終わりがないからね。

Jim:旅だから。

Han:私はまだ自分たちのサウンドに満足してないの。私たち、まだそんな境地じゃない。

-常に進化し続けて。

Han:いつも。いつもよ。5年後このバンドがどんなサウンドになっているかなんてわからないし、すごくエキサイティングなことだと思う。

-EPはそれぞれが、その時点までに培ってきたもののスナップショットみたいな感じになりますね。

Han:100パーセントそう! みんなその時点での私たちの人生のスナップショット。そういうのがあるのっていいことだと思う。歳を重ねたときに振り返るものがあるってことだからね。"そうか、あれはあのときか"みたいな。

Jim:そうだね。バンドとしての密度が高まっていくのも感じられるんだ。自分たちが何を望んでいて、そのためにどうやって進化していけばいいのかを体得していって、フォーカスができるユニットになりつつある気がする。僕個人で言うと、初めて自分でプロデュースしたのが......(※Hanに向かって)僕、1stのプロデュースってしたっけ?

Han:やったとしても少しじゃない?

Jim:『I Just Wanna Know What Happens When I'm Dead』は本格的にプロダクション面に携わった作品だから憶えているんだ。あれ以降は自分がプロデュースしているんだけど、今振り返ると"あれは違うプロデュースの仕方にすれば良かった"なんて思ったりするよ。アルバムを作るときにそっちモードになったのがあのEPなんだ。

-そのEPはたしかMusic For Nationsと契約後初の作品ですね。

Jim:そうだったね。

-そういう意味でそれまでとマインドセットが違ったりしましたか。

Jim:そう、そう思うね。初めて一体となって......曲そのものだけじゃなくて全体のパッケージを意識するようになった。ここはもう少し枠からはみ出てもいいとか、ビデオをコンセプトのあるものにするとか......曲を机の上に広げて、さぁどういうふうにやってみよう? みたいなね。

Han:あれはたしか今までで一番忙しなく作ったんじゃなかったかな......ともあれ、どのEPでも実験しているし、どれも内容が違うの。それぞれ独自の問題がありつつ、どれも素晴らしいことが起こってああなった。みんなかわいい子供たちみたいなものよ。作って、育てて、世の中に送り出して。