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INTERVIEW

SOFTSPOKEN

2025.02.20UPDATE

2025年02月号掲載

SOFTSPOKEN

Member:Sam Scheuer(Vo) Chris Wethington(Gt) Kevin Potts(Dr)

Interviewer:菅谷 透 Translator:安江 幸子

-コミュニティが密なおかげで、何回かに分けて作ってもまとまりがあるんですね。それは皆さんが"音楽の殉教者"だからというのもあるとは思いますが。

Kevin:いいこと言うね~。

Sam:パーフェクトだよ!

Chris:今の言葉、メモしておかないと(笑)。

-「TWYLAM」はソフトなパートから力強い歌メロへと移行し、リスナーを惹き込むナンバーです。この曲について伺えますか? タイトルは"the way you look at me"の頭文字だそうですね。

Chris:うん。

Sam:特にこの曲は歌詞に"martyr"が出てくることもあって、他の曲同士をEPとして結びつける役割も果たしていると思う。ダークでちょっと憎々しい感じのトーンがある曲だけど、これは俺のパーソナリティが時に極端になることを表しているんだ。すごく熱くなるときとすごく冷たくなるときがあるからね(笑)。俺が"仮面"を外して、自分の"Martyr"的な部分を受け入れようとしている......のかな(笑)? そして自分の信念を信頼し始めているんだ。自分たちがSOFTSPOKENとしてやっているものをね。全てが、外部の世界のことなんて気にせずに、"自分自身に正直であること"ということ1つに包括されるんだ。時にはみんなが俺のことを見る目がすごく嫌だったりするけどさ。いろんなことを意味するし、意味するものも人によって違う。特定のシチュエーションかもしれないし、自分の心の中にずっとキープしていたものかもしれない。人生には様々な犠牲がつきものだろ。一番愛している人たちに困惑させられたり、ネットで嫌なことを言われたり......そういうことを取り上げているけど、そんななかでも自分に誠実であることの大切さを歌っているんだ。そして自分じゃない自分になるような罠にハマらないようにってね。

-これが最後にできた曲なのでしょうか?

Sam:そうだね。

-この歌詞に"martyr"という単語を入れることによって、EP全体を要約するような感じだったのでしょうか。

Sam:そうだね。当時は、この曲が他よりも"上"にあるような確信はあったな。でもまさかタイトルになるとはね。ひとりでに自分の居場所を見つけたような感じだよ。なぁChris?

Chris:ああ。タイトルを付けたのは最後で。

Sam:いつも一貫したテーマはあったけど、この言葉が居場所を見つけたんだ。とてもクールだったね。

-「Invincible」はMVに使われている、Robert Kirkmanの同名のコミック・シリーズから着想を得た楽曲なのでしょうか?

Chris:いや、後付けなんだ。あの曲の歌詞の大半は僕が書いた。僕の知り合いの中毒との闘いがもともとのインスピレーションだった。それをもっと広げた感じかな。僕の知り合いにはいろんなことがあった。今は克服しているけど、それでも昔の行いで先入観を持たれてしまっている。そういう意味で「TWYLAM」にもちょっと通じるものがあるんだけどね。で、この曲は、他人が自分のことを諦めても自分自身のことは諦めちゃいけないということを歌っている。自分のことを信じて、不屈(Invincible)に生きろってね。その曲を書いた後で、("Invincible"のアニメ・)シリーズのシーズン3が発表されたんだ。"待てよ"と思って、そこからアイディアが膨らんでいった。その番組もまた、登場人物がスーパー・ヒーローなんだけど私生活がボロボロで、それでもスーパー・ヒーローでいようとする、みたいな感じで繋がっているんだ。

-それも偶然だったんでしょうか。

Chris:ああ。曲を書いた後で、ネタのピースを繋ぎ合わせていた途中の話だよ。

-もともとは友人からヒントを得たそうですが、彼を励ますために書いたのでしょうか。

Chris:というか、実はその人のために歌詞を書くように僕が雇われたんだ。もともとはSOFTSPOKENの曲ですらなかった。でも結局ボツになってね。だからスタジオにいたときにみんなに聴かせて"いい曲だから、自分たちでやっちゃおうぜ"という話になった。その男のストーリーにインスピレーションを受けてできた曲ではあるけどね。僕はSOFTSPOKENの外部にも曲が書けるから。ただ、最終的には僕たちのメッセージにぴったりの曲ができたんだ。"自分を信じろ"ということでね。

-「Throw Me Your Roses」はラウドなサウンドと、ソフトなサウンドの切り替えが大胆な楽曲になっていますね。

Kevin:この曲はライティングのプロセスが好きだったね。一緒に曲を書いたんだ。通常は1人のアイディアから始まったり、1人のアイディアが曲の大半を占めたりするけど、この曲は今のところ一番コラボ的な要素が強かった。全員の脳味噌を1つのボウルに入れたらこんなのができましたって感じ。だからこそ今のところこの曲が一番楽しいね。曲を書いた後すごくいい気分だった。曲として成り立たせるという意味では、Chrisが例えばギターのパートに関する理想像をしっかり持っていて共有していたから、"Kevin、これにドラムのパートを付けてくれ"とか"Sam、歌詞ノートを出してくれ"なんて言って、それぞれのフレーヴァーを投入していったんだ。いつもの俺たちらしくまとまったよ。クールなプロセスだった。君も言ったように静かな部分とラウドな部分があって、サビがキャッチーで、うまくできたと思う。

-この曲はグループとして作ったということでしたが、いつもは一緒に書かないのでしょうか。

Kevin:うん。みんなフル・タイムの本業を持っていて忙しいから、当然すごく難しいんだ。ただ集まるだけでもそうしょっちゅうはできない。集まるのは通常、ショーが近いときに練習するときくらいなんだ。だから曲を書く時間というのはとても限られていて、"1時間空いたから、ラッシュ・アワーになる前に家に帰って曲を書こう"とか。この曲を作ったのは、練習の拠点の場所を作って間もない頃だったと思う。その場にいるだけでもワクワクしたから、"今日は仕事をサボって一緒にここで過ごそう!"なんて感じになってさ(笑)。

-(笑)

Kevin:わざわざ時間を取ってそうしたんだ。通常はChrisが1人でギターのパートを山程書いて、Samもギターを片手にたくさん自分のパートを書いて......そういうのを組み合わせることから作り始めるよ。この曲は一緒に過ごしているときにライティングのプロセスを丸1曲通じてやったけど。コラボという意味では他の曲と変わらないけど、全過程を顔を突き合わせながらやったってことだね。

-前のインタビューでSamとKevinが一緒に建物の塗装や改装工事の仕事をしていて、KevinがSamの上司だと聞きました。あのMVは仕事場で書いたんでしょうか。

Kevin:(笑)よく聞かれるんだよね。実はその練習場に屋根裏部屋があって、(大家が)改装しようという話がずっと立ち消えになっているんだ。よく"SOFTSPOKENはどうしていつもビデオをKevinの仕事場で撮っているんだ?"なんて言われるよ(笑)。仕事場で絶対に撮らないわけじゃないけど、Samにはあまりやらないように言っているんだ。俺はあいつを時給で雇っているから、仕事中にやられると困るんだよ(笑)!......ってそれは冗談だけど(笑)、あのMVは練習場の屋根裏部屋で撮ったんだ。改装が手付かずの場所でね。

Sam:もしかしたら「TWYLAM」のMVもそこで撮るかも。屋根裏に上がったら何か新しいコンセプトを思いつくかもしれない。真新しい家具とか古い本とかランプとか、そういう小道具を使ってさ(笑)。

-そして最終的にはDIYで改装してしまうと。

Kevin:ぜひそうしたいね。

Sam:いいね! 実際あの場所を俺たちのものにしたいという考えもあるし。

-「I Against Me」は前回触れているので割愛するとして、「Oblivion」は自分自身の暗くて深い穴について歌った楽曲とのことですが、この曲についても詳しく伺えますか?

Sam:この曲と「Alone」と「Lovetok」はコロナ禍中に書いたんだ。あれは俺とChrisとSOFTSPOKENにとって本当に大変な時期だった。それまで本当によく働いたし、実際西海岸で大きなツアーをやるはずだったんだ。それがコロナ禍のせいでキャンセルになってしまった。そんな状態だったんだ。いち早くTikTokを使ってもみたけど、ただでさえ自分たちの音楽を世に出すためにいろんなプラットフォームを使っているのに、全てにフォーカスするというのは土台無理な話でさ。それでコロナ禍のときはパソコンでひたすら曲を書いていた。アコースティック・ギターも使ってね。歌詞はと言うと、俺はエネルギーや欲望を音楽に注ぎすぎてしまったんだ。それがコロナ禍で全てが止まって、俺の物事へのアプローチが変わっていった。すごく堪えたよ。あの曲の中では"Sinking deeper into oblivion"(忘却へと さらに深く沈んでゆく中)なんてフレーズも出てくるんだけど、とにかくブラックホールにはまってしまったような気分になっていたんだよね(苦笑)。まぁ単なるメタファーだけど、自分の頭の中で自分自身を見失ってしまっていたんだ。心に闇を抱えていたつらい時代だった気がする。少し鬱っぽい感じだったというか。その頃はネット上でもネガティヴなことがたくさん起こっていたと思う。目の前であらゆることが目まぐるしく変わっていたから、もう圧倒されてしまって、負のスパイラルみたいな感じだったんだ。自分の心を見失ってしまうようなね。Chrisも本当につらいことがたくさんあったんだ。まぁ、みんなそうだよね。時にはそれを曲にしないとやってられないこともあるよ(笑)。この曲は鬱を掘り下げた曲でもあるな。自分の中の闘いや、それを克服していくこと。今苦しんでいる人がいたらぜひ聴いてほしいね。君の気持ちは分かるよという感じだから(笑)。

-あの頃はみんな大変でしたよね。ミュージシャンがツアーできなかったり、集まってセッションしたりすることすらままならなかった時代で。そんななか、この曲を書くという作業は自分自身へのセラピーのようなものにもなったのでしょうか。

Sam:それは確かだね! 怒りを込めた曲でもあるし、諦めかけた気持ちを書いた曲でもある。世の中いろいろな変化があるし、それに順応していく過程の曲なのかもしれないな。若いときに聴いた曲にもそういうものがあるから、その追体験なのかもしれない。今俺たちがこういうことができるのはいいことだよ。今苦しんでいるキッズもいるだろうからね。大人もそうだけど。そういう人たちが俺たちの音楽を見つけて"あぁ、こういう内容の曲を聴いたことがある。蘇らせているんだな"と思ってくれると嬉しいよ。1つの曲が、その人を闇から救い出してくれることがあるんだ。

-となると曲を出すたびに、ご自分としては歴史が一巡したような気になる?

Sam:分からないな。でもそうしようとしているのかもしれない。俺の好きな映画の1つが"スクール・オブ・ロック"で、(主演の)ジャック・ブラックが1つの曲を取り上げるんだけど......時流に乗りたいと思いつつ、心に従っているところがあるんだよね。いつかは俺たちが時流に乗る機が熟すのかな(笑)。

Kevin:いいね。

-「Alone」はEPの中でも特にエモーショナルでしたね。

Sam:ああ。俺は独りぼっちになること、ヘタするとホームレスになってしまうことをことのほか恐れていたんだ。それが現実に起こることとして見えてきたというか。というか昔から恐れていたことだった。俺はいつも家族と関係が近くて、家族の側にいるのが好きだから。この曲はコロナ禍中に観た番組にもインスピレーションを受けたんだ。妻と一緒に荒れ野の番組を観ていたんだよね。その名も"ALONE(ALONE ~孤独のサバイバー~)"だ(笑)。俺が1人になることを恐れていたのと、その番組の参加者が荒れ野に出ていくことがリンクしたんだよ。彼等がドロップ・アウトする一番の理由は、家族と離れて家が恋しくなったからだった。あれは堪えただろうね......自分自身をそういうシチュエーションに置いたらどんな感じがするだろうと思ったよ。人生で本当にそうなったらどうなってしまうのか、俺には分からない。

-今はそういう内なる苦しみを、ChrisやKevin等他のメンバーの力もあって、ポジティヴなものに変換できているんですね。

Sam:そうなんだよ! ミュージシャンの心程恵まれているものはないよ! 俺が断言する(笑)。俺たちには一番のはけ口があるんだ。

-他のメンバーはSamの歌詞にどうやって寄り添うのでしょうか。

Sam:素晴らしい質問だね! 最高。

Chris:「Oblivion」と「Alone」と「Lovetok」のときは、Kevinがまだ作曲に参加していなかったけど、僕たちは歌詞に携わって手伝うようにしているんだ。Kevinもそうだと思う。僕は英語の先生だったから、"Sam、この言葉を入れるのは変だ......でもこれがあったほうがいいよな"なんて言うことがあるよ(笑)。僕がギターのパートを考えているときもSamがアイディアを補ってくれたり、Kevinもアイディアを入れてくれたりする。それと同じことを歌詞でもやっているんだ。だから僕としては、全部の曲の歌詞と自分が繋がっている気がしている。僕個人の経験とは必ずしも関係していなくても、みんな自分なりに身近に感じられるものなんだ。この曲を聴いてくれる人たちにも共通のものもあるだろうね。個人的には「Oblivion」がとても好きだね。僕自身はラッキーなことに今までの人生であまり鬱に縁がなかったけど、親しい人たちの多くは経験があるから、それがどんな影響を与えるかを見てきたんだ。たぶん今回のEPの中で一番気に入っている曲の1つじゃないかな。ギターについてもね。歌詞に楽器の雰囲気を合わせてみた感じ。

-アッパーなナンバーの「Lovetok」で本編が終わるのがユニークでした。この曲についてはどう説明しますか。

Sam:ネット上のイメージに深くハマりすぎている人の話だね。"いいね"や"シェア"の数をやたら気にしているんだ。そういう人って多いよね。インフルエンサーもそうだと思うけど、どんな生活を送っているんだろう、というのがちょっとインスピレーションになっている気がする。でもあの曲で言いたいのは、ネット上の数で自分の価値が決まるというわけではないこと。君の人生はスマホ外のところにあるんだから、それを忘れちゃいけないよというね。アートでもなんでもそうだけど、ベストなものはいつだって本物の自分の心から生まれるものなんだ。

-"いいね"の数などで判断されてたまるか的な。

Sam:うん。と言うのも、この曲もコロナ禍中に書いたものだし、そういうことが問題になっていたからね。世の中が変わったなと思った。俺たちもマーケティングのアプローチとしてTikTokをやろうかとか、そんな話も出たしね。そうすると数字に翻弄されてしまって、ひどく堪えてしまったんだ。数字を門番みたいなやつらに見られて、"ノー"と判断されてしまう幻想まで思い浮かべてしまった。自分らしさに誠実でいて、オンラインの数値に惑わされないように、という気持ちを込めて書いたよ。何かに情熱を持っているならいい展開になるはずだからってね。と言いつつ、SNSがあるのは素晴らしいことだとも思っているんだ。このデジタルの時代にはファンと繋がることもできるしね。だからどう使うかが大事なんだ。ツールだからね。

-皆さんはSNSをいい形に利用していますよね。独自のファン・コミュニティも持っていますし。

Sam:そうだね。

-日本盤のボーナス・トラックは、ファン投票の上位3曲のスタジオ・ライヴ音源になっているようですね。音源をチェックできていないのですが、どのような仕上がりになっていますか?

Chris:しばらく前から話に出ていたんだ。レコーディングとライヴは違うからね。特にヴォーカルとKevinのドラムスは。最初に出した3曲「Lovetok」、「Alone」、「Oblivion」ではKevinが作曲に参加していなかったから、プレイの仕方もちょっと違うんだ。曲によってはSamがライヴではスクリーミングするけど音源ではしていなかったり、その逆だったりすることがある。メロディ・ラインをちょっと変えて歌ったりね。そんな感じで、ライヴは少し違うんだ。そういう意味で我ながら誇りに思っているのが、ショーに来た人が曲を知っていても予想したものと違うものを出せることだね。それでスタジオ・レコーディングをやってみようという話になった。実は、レコーディングは僕の兄貴が担当したんだ。スタジオを持っているからね。同じ曲だけど、さっきも話に出た"スパイス"が違う。僕たちをライヴで観てくれた人なら分かる感じだよ。

-ライヴではきっと即興的な部分が多いんですね。

Sam:そうなんだよ。そこが自分でも気に入っているんだ。"スタジオでやれば良かった"という瞬間が集まっているんだよ(笑)! KevinやDylanもいろんなクールなことをやってみせるから、そういうトーンが聴けるのもいいね。

-今後の活動予定について教えていただけますか?

Kevin:ショーはいくつか予定されているよ。"まだ言えないことがあって......"と言えるバンドにいるのって最高だよな(笑)! 今言えるのは、アルバムを引っ提げたショーが予定されていること。初日はバレンタイン・デーで......。

Chris:僕の誕生日。

Kevin:それが偶然とは思っていないんだ。「Lovetok」をバレンタイン・デーにリリース。歴史が一巡するだろう(笑)? バレンタイン・デーで、EPのツアーもその日始まって......そしてChrisの誕生日。たしか俺がバンドに入った当初にそうだって聞いたんだよね。初めての練習の日に。それで覚えているんだ。というわけでツアーはナッシュヴィルから始まる。まだ発表されていなかったり、本決まりじゃないものもあるけどね。それから日本でプレイする機会! ぜひまた欲しいね。絶対に実現させたいんだ。

-このインタビューが記事になったら、来日実現に貢献することを願っています。

Kevin:ぜひそうなるといいね!