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INTERVIEW

HAZUKI

2024.10.22UPDATE

2024年10月号掲載

HAZUKI

Interviewer:杉江 由紀

-ところで。そういったライヴ映えする曲とは方向性が異なるものの、今作の中盤で聴ける「MOONLIGHT SLAVE」は個人的にとても刺さりました。

あぁ、やっぱり。たぶん、今回のアルバムは「MOONLIGHT SLAVE」が好きだっていう人が相当多いと思いますよ。客観的に聴いたとき、この曲とラストの「LOVE SONG」が"持ってく"アルバムなんだろうなって、僕も感じてますからね。というのもあり、サブスクだとこの曲(「MOONLIGHT SLAVE」)が先行配信のリード・チューンになってます。

-HAZUKIさんが、ここまでニュー・ウェーヴ色の強い曲を提示されるとはあまり予想していなかったのですが、なんでもこの「MOONLIGHT SLAVE」を作曲されたのはPABLOさんだとか。

そうなんですよ。今回のアルバムに向けて、PABLO君と、"今後HAZUKIプロジェクトでどういう曲をやっていきたいか"って話をいろいろしたときに、ちょうど僕はその頃BUCK-TICKしか聴いてない状態だったんですよね。当然、そんなニュー・ウェーヴな感じの曲を自分でもやってみたい気持ちはあるけど、僕はそこをルーツとして持ってないんで難しいというのがあったんです。でも、その点PABLO君はそのあたりも好きで詳しいですから。"ちょっと作ってみてください"とお願いしてできあがってきたのが、この曲だったんです。当時の仮タイトルはまんま"B-T LOVE"でした(笑)。

-BUCK-TICKと言えば、2020年9月に葉月の名義で発表されたアルバム『葬艶-FUNERAL-』では、「密室」をカバーしていらっしゃいましたよね。

昔からすごく好きなんです。でも、ニュー・ウェーヴ自体に対しての詳しい知識は持ってないし、一応lynch.だと「melt」(2005年リリースのミニ・アルバム『underneath the skin』収録曲)は僕の中のニュー・ウェーヴが出た曲ではあるんですが、今回は、そこをちゃんとルーツとして持ってる人に、関わってもらった上でやりたかったんですよね。これはPABLO君も言ってたことで、さらに細かいアレンジをしていくときに、しっかりしたルーツを持ってる人じゃないと、"どうしても偽物っぽくなる"のだけは避けたくて。より説得力のある音にするために、餅は餅屋でPABLO君以外にもYOW-ROWさんとか、その方面に詳しい方にやっていただいてます。これは餅屋が作ったニュー・ウェーヴですね。

-特にこの絶妙なギター音色は秀逸です。2024年に新譜でこの音を聴けるとは......!

あれ、散々やりとりして最終的にデモのテイクが生きになったやつなんですよ。本チャンのレコーディングでも録ってたんだけど、PABLO君に"いや、僕はデモのほうが好きでしたねー!"って言ってて、後から差し替えたんです(笑)。あの絶妙にピッチの気持ち悪い感じが、すごく気に入ってます。

-もはやこれは、BUCK-TICKさえ通り越してUKニュー・ウェーヴ黄金期な音ですよ。

当時の最先端な音ってやつですよね。この曲は作っていくのが面白くて、歌詞を書いてても楽しかったです。曲調がこれだけ特徴あるんで、それに合わせて書いていくだけで簡単にっていうのもあれですけど、楽しみながら書けました。

-内容としては、いい意味でずいぶんとコッテリしたものになっておりませんか。

これは"気持ち悪い"って思ってほしいっすね。女性が読んだときに"え。キモっ!"って言ってくれて全然いいんで。男が裏に隠してるエロさなんて、こんなもんでグロいですから。曲の持ってる気持ち悪さも含めて、40代を感じてほしいです(笑)。

-かと思うと、7曲目の「AMNESIA」はシリアスな響きを持った聴き応えのある楽曲となっております。こちらは、どのような生い立ちを持った曲になるのでしょう。

誕生秘話としてはですね、僕はゲーム配信をやってまして。あるとき、敵にやられちゃうとしばらく暇になるゲームをやってたんですよ。その暇な時間に、配信中だったんですけどギターを弾いててたまたまポロッと出てきたのが、この曲のAメロのフレーズでした。だから、当時の配信を観てた人は"あ、あの曲だ!"ってなるはずです。当時コメントで"めっちゃいい曲ですね"、"それ音源化してください"ってバーッと来てたんで、そのご期待に応えた曲だとも言えます。

-なお、「AMNESIA」の歌詞では"忘れる"ことがテーマとなっているようですね。

これもこういう曲の雰囲気がこの歌詞を書かせたとしか言いようがないんですけど、よく"人は生まれ変わる"みたいな話ってあるじゃないですか。その場合、今の自分が持っている意識や記憶は死んだ後にどうなるんだろう? ってのが前から疑問なんですよ。もしくは、生まれる前はどうだったんだろう? とか。簡単に言うと、これはそういうことを書いた詞ですね。まぁ、仮に次の人生にまでは記憶や意識を引き継げないとしても、僕の場合は幸いなことに作品というかたちで残していくことはできるので、それは良かったなって思います。

-一転して「QUEEN」は大変に派手な曲ですね。明徳さんのスラップも炸裂しております。この曲が生まれるに至った経緯とはどのようなものだったのですか。

今現在の話をすると、僕はバンドの音楽って全然聴いてなくてボカロばっかり聴いてるんですよね。感覚的に、かつてのヴィジュアル系に感じてた"普通のJ-POPとかJ-ROCKにはない斬新な表現"を、最近はボカロから感じることが多くて、曲の構成しかり歌詞の表現しかり、"何これ?"、"こんなんアリなんだ?"ってなるからすごく面白いんですよ。「霊蕾-laylay-」や「東京彩景 -TOKYO PSYCHE-」もそうなんですけど、この曲もボカロ・シーンからの影響を受けてできたものですね。

-HAZUKIさんは、根本的に"既存のものから逸脱した音楽"に対しての興味がお強いのですね。

そう、逸脱の仕方がおもろいんですよ。そういう意味では「QUEEN」もカオスだしぐちゃぐちゃで、和風なの? 和風じゃないの? なんなの? みたいになってると思います。

-スラップがバシバシななか、唐突に歌舞伎の要素が入ってきたりもしますものね。

小鼓の音とかもそうで、入れる予定のなかったものを試しに入れてみたら面白くなったっていう感じなんですよ。さすがにこういうハチャメチャなのは、lynch.じゃできないですね。申し訳なくて(笑)。

-これだけハジけ倒している「QUEEN」の音に対して、HAZUKIさんはどのような歌詞を乗せようと考えられたのですか。

これは悩みましたね。最初は和のテイストに引っ張られて、タイトルもよくありそうな"百花繚乱"とか、そんな感じになっちゃいそうだったんですけど、サビの歌詞で"半狂乱に舞え 我らの世界じゃ"っていうフレーズが出てきたときに、"これだ!"と思ったんですよ。語尾が"じゃ"っていうところで昔の日本のお姫様的な、僕がそういうキャラクターを演じたら面白いなと感じたんです。だから"QUEEN"なんです。あれはバチッと来ましたね。我ながら痺れました。

-かくして、いよいよ佳境を迎える今作は既発曲「Ω」と「9999」を経ての11曲目「AMEN」で、いきなり爽やかな風を吹かせることになりますね。ライヴでファンの皆さんがシンガロングできそうなパートもありますので、こちらはライヴを想定して作られた曲でもありそうです。

このアルバムの中で最初にできたのがこの曲で、去年[BURST SUMMER TOUR'2023 "反逆ノ行脚"]の最中に、楽屋でギターをジャカジャカしながら作ってたんですよ。これなんかはボカロ文化とは真逆な性質を持ってるタイプの曲で、逸脱とかではなくて最善のメロディを乗せていくことを意識しました。そして、曲が明るい場合は歌詞で明るいことを歌わないっていうのが、自分としてのベストなバランス感でしたね。

-『MAKE UP ØVERKILL』の最後を締めくくるのは、エモーショナルで美しい「LOVE SONG」です。こちらもPABLOさんが作られた曲なのだそうですね。

めちゃくちゃPTP(Pay money To my Pain)なんで、これは聴いたら僕の曲じゃないってすぐ分かるんじゃないですかね。アルバムを作っていくなかで、スタッフサイドからバラードが欲しいという話が出てきたときに、自分は作ることを想定してなくて脳内ストックとかもなかったんですけど、PABLO君に聞いてみたら"ストックはないけど、作れるよ"って言ってくれたんですよ。だったらせっかくだしと思って、僕から"PTPのこういう雰囲気でやってみたら面白くなると思うんですけど"と伝えたら、その日の夜か次の日の夜くらいにはワンコーラス分をすぐあげてきてくれました。

-その際の第一印象としてはどのようなことを感じられましたか。

"来た!"と思いましたね。この優しいコード感とかも僕にはできないなと。

-そこからどう歌い、何を詞で描こうと思われたのかも教えてください。

どう歌うかはそこまで考えてなかったですけど、PABLO君と僕が一緒に作るってところで、どうしても死んでいった仲間たちのことが浮かんできましたよね。そこに対しての歌になるよねって思いながらこの詞を書いたんですよ。そうしない選択肢もありましたけど、そこは抗わずにいきました。

-アルバム『葬艶-FUNERAL-』では、PTPの「Another day comes」をカバーされていましたけれど、この「LOVE SONG」を聴いて改めて感じたのは、やはりHAZUKIさんはこれだけの歌を深く伝えられる方なのだなということでした。

なんだかんだ長く歌ってますからね(笑)。この詞も新人さんとか若い人には書けないだろうし。これはいろんな愛が詰まってるという意味での"LOVE SONG"なんですよ。ほんとにいろんなことがあったし、詞そのものは夢も希望もないけど、だからこそこの曲はたくさんのことを経験してきた大人の人たちにぜひ聴いてほしいですね。

-酸いも甘いも、多くのものがこれでもかと詰まった今作に"MAKE UP ØVERKILL"と冠した理由、そしてここに託した想いとはどのようなものですか。

"OVERKILL"っていう言葉は前から使いたいなと思ってましたし、"O"を"Ø"と表記するのは前作『EGØIST』やlynch.でもやってることで、自分の特徴みたいになってるんですよ。ただ、"ØVERKILL"だけだと芸がないなと思ったときに、メイクをして着飾った自分が見た目の部分も武器にしながら、この音楽で聴いてくれる人たちのことをØVERKILLするよ、ということを伝える意味で"MAKE UP ØVERKILL"としたんです。

-そして、アルバムと連動したツアー・タイトルのほうは、[HAZUKI「TOUR'24 "WAKE UP ØVERKILLER(S)"]となっているのですね。

MAKE UPもいいけど、覚醒するっていうのもいいなと思ったんですよ。しかもこれ、ロゴ的には"WAKE UP"の"W"は"M"を逆さにして使ってるんです。そういうこだわりも発揮してます(笑)。ツアー自体に関しては、シンプルにすげぇ歌を聴かせたいなっていうのがまず1つ。あと、アルバムが出たのが2年ぶりなのでようやくセットリストを変えられる、という喜びも大きいですね。3年目にして、奥行きの出たHAZUKIのライヴを皆さんに味わっていただくことができるんじゃないでしょうか。

-最後に、激ロック読者に向けてのメッセージをお願いいたします。

たぶん、激ロックを読んでる人ってバンドが好きだと思うんですよ。だから、ソロってなると"別にいいや"みたいになりがちなんでしょうけど、そこは"いいから聴け!"って言いたいです(笑)。今なんてサブスクで簡単に聴けるんだから、まずはいいから聴いてみろと。これは強く訴えたいところですね。僕は本っっ当に素晴らしいアルバムができたと思ってるので、偏見とかなしに聴いてみてください。もちろん素晴らしいソロ・アーティストの方はたくさんいらっしゃいますけども、よくあるソロに対する今までの価値観を吹っ飛ばすくらいのことはやってるし、1曲だったら5分もかからないんで、あなたの5分を僕にください。

RELEASE INFORMATION

HAZUKI
2nd ALBUM
『MAKE UP ØVERKILL』
2024.10.23 ON SALE!!
[プレッヂ]

HYDEINSIDE.jpg
【初回限定盤】CD+Blu-ray
PLDG-006~7/¥13,200(税込)

HYDEINSIDE.jpg
【通常盤】CD
PLDG-008/¥3,300(税込)

[CD]
1. (2.0)
2. ØVERKILL
3. 東京彩景 -TOKYO PSYCHE-
4. 魔ノユメ
5. 霊蕾-laylay-
6. MOONLIGHT SLAVE
7. AMNESIA
8. QUEEN
9. Ω
10. 9999
11. AMEN
12. LOVE SONG

[Blu-ray] ※初回限定盤のみ
・BURST SUMMER TOUR'2023 "反逆ノ行脚" 2023.8.27名古屋Electric Lady Land公演ライヴ映像
・INSANE SPRING TOUR'2024"惨逆ノ行脚" -the encore- 2024.4.18 新宿LOFT公演ライヴ映像(HAZUKIオーディオコメンタリー(副音声)付)

TOUR INFORMATION

[HAZUKI TOUR'24 "WAKE UP ØVERKILLER(S)"]
10月22日(火)渋谷ストリームホール ※-XANADU MEMBERS ONLY-
10月30日(水)HEAVEN'S ROCKさいたま新都心 VJ-3
11月1日(金)柏PALOOZA
11月7日(木)仙台 MACANA
11月9日(土)札幌 cube garden
11月22日(金)INSA Fukuoka
11月24日(日)広島 Live space Reed
11月26日(火)ESAKA MUSE
11月27日(水)NAGOYA JAMMIN'
12月10日(火)Zepp Shinjuku (TOKYO)
[チケット]
オールスタンディング ¥7,000(税込/D別)
■一般発売中(10月22日公演除く)
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