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INTERVIEW

FEVER 333

2024.10.03UPDATE

2024年10月号掲載

FEVER 333

Member:Jason Aalon Butler(Vo)

Interviewer:菅谷 透 Translator:安江 幸子

オリジナル・メンバー2人の脱退を経て、2023年に4人体制でシーンにカムバックを果たしたFEVER 333が、現体制で初となるアルバム『Darker White』を完成させた。新作はこれまでの作品よりもさらに異ジャンルのクロスオーバーを強めた印象で、パワフル且つファンキーなマインドで現代社会へ変革のメッセージを伝えている。作品のテーマや、Mike Shinoda(LINKIN PARK)とのコラボレーションなど、中心人物のJason Aalon Butlerに様々な話を訊いた。

-新体制で初となるアルバムの発表、おめでとうございます。新メンバーのBrandon Davis(Gt)、April Kae(Ba)、Thomas Pridgen(Dr)について、どのような人となりなのか日本のファンへ紹介していただけますか?

素晴らしいミュージシャン、素晴らしいやつらだよ。純粋にいい時間を一緒に過ごしているという感じがあるんだ。特にこのプロジェクトでは全員が同じ立ち位置にいる。主なソングライティングや作詞、プロデュースは俺がやっているけど、ライヴではみんなでやっていて、とにかく俺の大好きなミュージシャンたちなんだ。一緒にやっていてすごく楽だし、自然体で臨める。そういう機会に恵まれて本当にラッキーだと思っているよ。

-バンドがとてもいい状態にあるようで、良かったです。ちなみに新体制発表時のインタビュー等で、現在のバンドについて説明する際に、"ファンク"という言葉をよく使っていらっしゃいましたが、具体的にはどのような面で"ファンク"なのでしょうか?

一定のレベルのフィーリングをそう呼んでいるんだ。ファンク、ヒップホップ、ロックといったグルーヴ主導型の音楽で得られる感覚や、そういった音楽との繋がり方だね。クラシックの教育を受けた人がクラシック音楽と繋がるのとは感覚が違う。ジャズとも違うかな。その感覚を、俺たちのカルチャーや音楽との関係に活かしたいんだ。ファンクやソウル、R&Bの感覚をね。例えばThomas Pridgenはゴスペル出身で、教会で素晴らしいシンガーたちとプレイしてきたんだ。そこで培ったフィーリングやエッセンスをロックに活かすとどうなるか、まずは俺自身が見てみたいというのがある。エキサイティングなラインナップだよ。

-グルーヴの話が出てきましたが、今回初めて専属ベーシストとしてAprilが在籍していますね。それも関係がありますか?

特にそういうわけではないんだ。俺はこのプロジェクトが絶えず進化しているものだと思っているから、どこかの時点でキーボードやサックスのプレイヤーが加入することだって、あり得ると考えている。あるいはそれまでと違うことを達成したいから、別のメンバーを入れるとかね。俺にとってはそんな感じに成長し続けていくプロジェクトだから、今回もその流れでこういうメンバーになったまでの話だよ。ただ、俺個人は、ステージでベースを"感じたい"というのがあった。少なくとも今やっている音楽ではそれが重要なんだ。ということで彼女が入ることになった。

-彼女が入ったことによって、リズム・セクションがさらに強化されたのではないでしょうか?

そう、こういう体制になってラッキーだよ。俺はリズム・セクションそのものが大好きなんだ。ただ、さっきも言ったけど、このプロジェクトは今後いろんな人を巻き込んでいろんなアプローチや楽器編成になる可能性がある。今後どうなるか楽しみだよ。

-ニュー・アルバム『Darker White』について詳しく伺います。まずはタイトルの由来や、作品のテーマを教えていただけますか?

これは世間的にタブーとされていたり、魅力がないと見なされたり、時には醜いとまで思われたりすることがあるカルチャーや社会を構成するグループの1つ――"層"の存在について、それが人によっては美しいもの、カルチャー的に共感できるもの、重要なものであると祝福するという内容なんだ。自分自身がカルチャーや変化の一部になったときの、そういうニュアンスをすべて含んでいる。俺自身の人となりや、(人種の)ミックスの人間としてロックやラップを聴いて育ってきたこと、ある意味いろいろなカルチャーと衝突しながら、そのうちどれか1つを選ぶ必要なんてないことに気付いたこと、それらの考え方を融合させてハイブリッドにすればいいと思ったこと、他人に理解されなくとも自分の愛することに美を見いだしてそれを祝福すること、みたいなものが現れている。

-たしかに様々なものが感じられるアルバムだと思います。有色人種的なカルチャーだけではなく、それ以外も。ニュー・アルバムでは、西海岸ヒップホップへのオマージュを込めた「New West Order」など、これまで以上にラップとメタル/パンクが融合しているように感じられました。サウンド面で意識したことを伺えますか?

今言っていたように、ヒップホップやエレクトロニックなプロダクション、ファンク、ソウルをもっと強調したいというのがあったね。この手の音楽をハイブリッド、クロスオーバーなジャンルとして、2024年から未来に持っていくというのかな。

-そのクロスオーバーというのは、先程お話にあった、ご自身が有色人種として過去に体験したことや、特にこの数年間に起こった人種差別的な様々な出来事も相まって、このサウンドを目指そうと思ったのでしょうか。

100パーセントそうだね。クロスオーバーにすることによって、自分の中での緩急や、様々なカルチャーの中でフリー・ラディカル(自由な急進派)としてやってきたことを表現できると思う。俺の母親はスコットランド人で、父親はアメリカのブラックなんだ。そういう環境で育つと、時には眩暈がしそうになることもある。"俺はいったい誰なんだ?"と思ってしまってね。でもだんだん、自分がそういういろいろなカルチャーの集合体であって、何かユニークなものを作ることができると考えるようになった。同時に自分が最も深く携わって育ってきたカルチャーや、育ってきた場所、関わってきた人たちのことを祝福できるってね。俺の成長過程ではそれがブラック・カルチャーだった。そんなわけで、そういうプライベートな面が自然に音楽に表れているんだけど、俺がここでやろうとしているのは、俺がここしばらくのプロジェクトで何を言おうとしたのか、人々にちゃんと見せることなんだ。前回のEP(2020年リリースの『Wrong Generation』)もそうだけど、俺自身の経験が俺の書いたものに反映されている。

-「Higher Power」は強力なラウド・ナンバーで、新たなアンセムとなりそうな楽曲です。この曲について詳しく伺えますか?

ありがとう! アルバムの曲順を「New West Order」→「Higher Power」にしたのには意図があるんだ。FEVER(FEVER 333)による新しいレベルのファンクやグルーヴをアルバムが始まるやいなや体験して、獰猛性や激しさを吸収してもらう。あの曲(「Higher Power」)の主題は、自分自身の中にスピリチュアルに近いパワーを見いだすということなんだ。自分が二の次の存在にされてしまったり、ノーマルと考えられているものや、人々に好まれるものの蚊帳の外に置かれたりといった逆境の中でもね。そんな状態にもとてもユニークで美しいものは存在する。その他との違いやユニークさの中にパワーを見いだして祝福しようという内容なんだ。

-なるほど。このアルバム自体が、どんな状況のリスナーも"Higher Power(崇高な力)"に導いてくれるような感じがしますね。

そういう狙いもあったんだ。そう言ってくれて嬉しいね。ありがとう。