FEATURE
FEVER 333
2019.01.16UPDATE
2019年01月号掲載
Writer 荒金 良介
FEVER 333(読み:フィーバー・スリー・スリー・スリー)。このバンド名が脳裏に刻まれるのには、たった1本のライヴ・パフォーマンスを観るだけで十分であった。アメリカはロサンゼルス発の異形ハードコア・トリオは、いきなり"FUJI ROCK FESTIVAL '18"で初来日。同フェス最終日にあたる3日目"WHITE STAGE"のトップバッターを飾り、観る者の度肝を抜くステージングを展開した。SEが流れるやいなや、黒い服装に身を包んだJason Aalon Butler(Vo)がひとりで登場。顔も黒い布で覆われ、これから何が始まるんだろう、という不気味な演出に会場は静まり返る。そして、ドラム・セットの前に掛けられた白い布が落ちると、Stephen Harrison(Gt)、Aric Improta(Dr)が姿を見せ、ド頭からエンジン全開で、ステージを縦横に駆け巡る野性味溢れる演奏を叩きつけてきた。その様相は最大級の賛辞を込めて、まさに"ケダモノ"である。しかし、驚くのはまだ早かった。曲が進むにつれて、メンバー3人はなぜか、よくわからないけれど、服を脱ぎ捨て、パンツ一丁になってパフォーマンスを継続。ライヴ後半にはJason、Stephenはステージから離れ、ステージ上手側の中継車によじ登り、車の上で絶叫と演奏を繰り広げるぶっ飛びようで観客を大いに沸かせた。頭のネジが数10本抜け落ちたような、中庸に収まらない振り切れっぷりにビックリ仰天。メンタルというより、フィジカルにとことん訴え掛ける音像は、昨今いそうでいなかった稀有なバンドと言っても過言ではない。その模様はYouTubeでもライヴ生配信されていたので、現場にいた人も、画面越しに観た人も、"FEVER 333"というバンド名が忘れようにも忘れられない存在としてインプットされたに違いない。ライヴは最高のプロモーションになりうる。その言葉を改めて実感させてくれたのが、FEVER 333のハイエナジーな演奏だった。
改めてここでバンドの成り立ちをおさらいしたい。元LETLIVE.のJasonが元THE CHARIOTのStephen、NIGHT VERSESのAricに声を掛け、2017年に結成された。そのメンバー3人をGOLDFINGERのJohn Feldmann(Vo/Gt)、BLINK-182のTravis Barker(Dr)のふたり体制で完全バックアップし、同年3月に1st EP『Made An America』をデジタル・リリース。日本盤はボーナス・トラックとして「Made An America」、「Walking In My Shoes」のアコースティック・バージョンを含む全9曲入りで2018年7月に発売された。そのデビューEPを聴いて、真っ先にRAGE AGAINST THE MACHINEを思い浮かべた人は多いのではないか。アジテート感満載のJasonのラップ・ヴォーカルは、Zack De La Rocha(RAGE AGAINST THE MACHINE/Vo)に通じる激しい怒りが脈打っている。そう、FEVER 333も社会や世の中にする対する違和を物申すレベル・ミュージックなのだ。"俺らが今作ろうとしている音楽は、これから起こる新たな革命のサウンド・トラックなんだ"というJasonの言葉は、RAGE AGAINST THE MACHINEに通底する反逆の音楽であることを何より証明している。"FUJI ROCK FESTIVAL '18"のライヴがそうだったように、本能剥き出しで襲い掛かる衝動的なサウンドが印象的だったデビューEP。それを経て、ついに彼らの1stアルバム『Strength In Numb333rs』が世に放たれることになった。
剥き出しの野獣性とキャッチーなメロディが同居した会心の一撃作
前作『Made An America』収録の「Soul'd Me Out」は、豪快なスクリームに加えて宙空に広がる優美な歌メロも絡めて聴かせてくれたけれど、今作はキャッチーなメロディ・ラインにさらなる磨きをかけ、ライヴを意識したコーラス・ワークを増やすなど、持ち前の獰猛なアグレッションはそのままに進化と深化を遂げている。スクリーム、ラップと聴き手を瞬時に焚きつける凄味を見せる一方で、シンガロング・メロディにも力点を置いたアプローチが際立つ。1stシングルとしてカットされた「Burn It」におけるサビの爽快な突き抜け具合は、今作で新たなレベルに到達したことを物語っているようだ。
続く「Animal」ではライヴハウスに留まらず、アリーナ・ロック的な壮大なコーラスを導入し、楽曲のスケールを一段と高めることに奏功している。振り返れば、FEVER 333は昨年BRING ME THE HORIZONのサポートを務め、イギリスを含むヨーロッパ・ツアーを行った。その経験が今作に直接的な影響を与えているのかどうかは判別できないが、音源発表以降にライヴを積み重ねてきたことで、彼らの音楽的ヴィジョンも変容しているのだろう。「Coup D'etalk」を聴くと、混沌としたリズムの中で突如飛び出す、LINKIN PARKを彷彿させる歌メロにもドキッとさせられた。作品全体を通しても、荒々しい野獣性と爽やかな美メロが共存しており、FEVER 333がアンダーグラウンドからオーバーグラウンドまで射程に収めた表現力で勝負している。また、前作は2~3分台のコンパクトな楽曲が並んでいたのに対して、今作には7分台の曲調を2曲収録。「Inglewood/3」はラップとR&B調の歌メロを使い分けたミドル・テンポの曲調だ。中盤過ぎには煮えくり返った激高シャウトを織り込み、動静の起伏に富む展開で聴かせる。「Out Of Control/3」もエクスペリメンタル且つドラマチックな進行に興奮させられる楽曲で、奇をてらったというより、彼らの底知れない表現欲求が爆発した印象を受けた。さらにストリングスを大々的にフィーチャーした「Am I Here?」の切実な旋律なども新境地と言っていいだろう。その意味でも楽曲の個性や作品全体の流れにおいても、考え抜かれた傑作フル・アルバムに仕上がっている。
そして、早くも"FUJI ROCK FESTIVAL '18"以来、約7ヶ月という短いインターバルで単独来日公演が発表された彼ら。2019年3月に大阪、東京の2公演を行うことになっている。前作と今作の楽曲を踏まえて、どんなセットリストで挑むのか楽しみだ。それ以上に今作の楽曲がライヴでどう"変化"するのか、これは現場で体感しなければわからないだろう。後悔しないためにも、FEVER 333のライヴにぜひ足を運んでもらいたい。
▼リリース情報
FEVER 333
1stフル・アルバム
『Strength In Numb333rs』
[WARNER MUSIC JAPAN]
2019.01.18 ON SALE!!
WPCR-18162/¥1,980(税別)
amazon TOWER RECORDS HMV iTunes
1. ...
2. Burn It
3. Animal
4. Prey For Me/3
5. One Of Us
6. Inglewood/3
7. The Innocent
8. Out Of Control/3
9. Am I Here?
10. Coup D'étalk
11. Trigger ※ボーナス・トラック
12. Vandals ※ボーナス・トラック
▼来日公演情報
"FEVER 333"
2019年3月4日(月)梅田CLUB QUATTRO
2019年3月5日(火)恵比寿LIQUIDROOM
OPEN 18:00 / START 19:00
前売 ¥5,500
■一般発売中
チケットぴあ ローソンチケット イープラス
企画制作:SMASH
協力:WARNER MUSIC JAPAN
詳細はこちら
FEVER 333『Strength In Numb333rs』特集!!
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