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INTERVIEW

Ethereal Sin

2023.03.27UPDATE

2023年04月号掲載

Ethereal Sin

Member:Yama Darkblaze(Vo) Seth Maelstrom(Ba)

Interviewer:杉江 由紀

"鎮魂ノ刻"は今ここに終焉し、魂は浄化され、また新たな命へと転生していくことになるのだろう。前作の外伝的続編になるという『Time of Requiem - Part 2』を今ここに発表したEthereal Sinは、コロナ禍前にはドイツの"Wacken Open Air"をはじめとした海外公演にも積極的に参加してきたバンドであり、今年1月にもなんと3年ぶりの欧州ツアーを敢行したという。日出づる国より世界へと放たれる、熾烈にして深い鎮魂歌たち。それは時に殺伐とした空気感を放ちながら、聴き手を圧倒しては魅了する。今作より新ドラマー、Meet Schattenclownを迎えたことで、ますますEthereal Sinは凶暴化したようだ。

 

"最近ぬるくなった"とか感じていた方たちがいるのであれば"これをくらえ!"って


-前作『Time of Requiem Part 1』(2021年リリース)の続編となるアルバム『Time of Requiem - Part 2』がこのたび発表となりましたが、これに先立つかたちでEthereal Sinは今年1月に欧州ツアーを敢行されていたそうですね。

Yama:5ヶ国で6公演を全7日でやってきました。ちょうど1月はヨーロッパに寒波が来ていたので、だいたいどこも気温はマイナスで寒かったです。

-今冬のヨーロッパは例年よりも温かいとかで、スペインのマラガではすでに海で泳いでいる人がいるというニュース映像なども見かけましたが、やはり地域によってはそれなりの寒さでしたか。

Yama:たしかに1月前半まではわりと暖冬だったらしいんですけど、我々が行った時期からちょうど寒波が到来したようです。

Seth:今年はロシア上空にマイナス60℃以下の寒波が来てて、それがヨーロッパにも流れて来てたみたいですね。

-そういえば、1月には東京でも珍しくマイナス3℃くらいまで下がった時期がありました。あの寒波もその影響だったのでしょうか。

Yama:まさにそうなんですよ。我々がヨーロッパから帰ってきた到着日に、日本にもその寒波が来てました(笑)。

-Ethereal Sinはもともと海外での活動にも積極的でしたけれど、今回のツアーはコロナ発生後としては初だったわけですよね。各地の状況というのはいかがでしたか。

Yama:去年の6月に単発でフィンランドのフェス("Metal Capital Festival")には出ましたけど、たしかにツアーはコロナ禍後としては初でしたね。初日がオランダ、ベルギー、イギリスはロンドンとマンチェスター、フランス、最後はスイスという流れで回ったんですが、前回ヨーロッパに行ったのがちょうど2020年の2月で、帰ってきたら日本が鎖国状態になる直前という感じだったんで、やっぱりロンドンとかパリでは客側の熱量がこの3年でだいぶ変化してましたね。それぞれでいろいろ溜まっていたものがあるのか、みんなの楽しもうとする熱量が非常に高いなとやっている側としては感じました。ただ、いわゆる主要都市以外の場所では、逆に以前よりも閑散としている印象のところもありましたね。

-日本もそうですが、やはり海外のエンタメ業界も"すべてがもと通り"とはそう簡単にいかないようです。

Yama:おそらく、多くの人にとってライヴに行くということが以前と比べるとスペシャルなことになったんでしょう。何年もライヴに行かないライフスタイルに慣れてしまったせいか、前だったらライヴがあるなら全部行く! という感じだった人たちも、とりあえず1ヶ所に絞るとか海外でもあるみたいです。

-つまり、数はどうあれ、現場に来てくださるファンの方たちの思い入れはそのぶんだけ強くコアになっているということなのですね。

Yama:そうだと思いますよ。本当に好きな人たちが選んで来てくれているんだな、ということは感じました。

-今回の欧州ツアーにおいて、今作『Time of Requiem - Part 2』からの楽曲をいち早くプレイする機会はあったのでしょうか。

Yama:「The Empire's Fate」だけですがやってきました。結構反応良かったですね。

-ちなみに、前作『Time of Requiem Part 1』の取材(※2021年8月号掲載)段階で、続編を出す予定があるというお話をしてくださっておりましたけれど、そこから『Time of Requiem - Part 2』が完成へと至った経緯について、まずは流れを少しご説明いただけますでしょうか。

Yama:実は『Time of Requiem Part 1』を作った時点で、曲は結構たくさん作っちゃっていたんですよね。コロナ禍だったんで、ライヴができないぶんその時間を曲作りにあてられたものですから、これは1枚のアルバムには入り切らないねということになって。前作ができた段階でこの間の欧州ツアーで演奏してきた「The Empire's Fate」と、その他にも「Shiden」、「Dawn, Nightfall and the Earth」、「Face the Light in the Abyss」の計4曲は録りやミックスもほぼ終わっていたので、次の続編に入れようということになったわけなんです。

-では、そこに新たに数曲を加えたのが今作『Time of Requiem - Part 2』なのですね。

Yama:はい。でも、当初はその4曲をEPとして出すという話もあったんですよ。

Seth:ライヴの音源もプラスして出そうか、とかね。

Yama:そうそう。いくつかアイディアはあったんですけど、そのあと「999 Swords」、「Nightmare never muted」、「Setsuna」を私が書いて、「Blizzard Forest」はギターのKikka(Schwarzfleet)が書いてそこまでで8曲が揃ったのかな。さらに、そこに足りない要素を加えていくかたちで、より激しい曲になっている「After a Thousand Years」と、アルバムの最後を締めくくる曲として「Appiyehi Dukkha」を書いて、全10曲というかたちになりました。

-今回の10曲を聴いていて感じたのは、もちろん前作『Time of Requiem Part 1』の続編ではあるのでしょうけれど、全体的な空気感や各曲のテイストについては、また前作とも違う雰囲気を感じるところがありまして、これは意図的にそうされたのでしょうか。それとも、結果的に前作とは異なる質感に仕上がったのでしょうか。

Yama:どちらかと言えば前者ですね。前作のコンセプトはジャパニーズ・ホラーでしたし、『Part 1(Time of Requiem Part 1)』と『Part 2(Time of Requiem - Part 2)』の関係性をわかりやすく言葉で表すなら、陰と陽の違いを持っているといいますか。当初は1枚目よりもポップとまではいかないまでも、もうちょっとポジティヴな要素は入れていきたいと思っていたんです。ただ、実際に新しく曲を書き足していくと、そのときの感覚というものが曲の中に反映されていくことになるせいか、曲が出揃ってみたら良く言うとかなりバラエティに富んでいた、悪く言うと、若干ですが散漫な印象になっているなと。それで、この『Part 2』については、『Part 1』とまったく同じように"ひとつの物語"としてくくるには無理があるという判断をしまして、立ち位置的には、『Time of Requiem Part 1』のスピンオフ作品としてまとめていくことになりました。

-『Time of Requiem - Part 2』は外伝でしたか。

Yama:『Time of Requiem Part 1』は、冒頭のインストから最後までがひとつの物語としていったん完結しているだけに、また同じようなことをやるのも少し違うかなと。変に手を加えたくないとも思いましたし、根底にあるテーマ自体は共通しているとしても、表現の仕方や物語としての角度を、『Time of Requiem - Part 2』では変えていくことにしたわけです。

-そのような違いがあったとなると、ベーシスト Sethさんとしても、前作のときとは何かしら違う視点を持って今作の制作に臨まれていくこともあったのでしょうか。

Seth:違いを最も感じたのは、最後に作った「After a Thousand Years」と「Appiyehi Dukkha」の2曲を作っていったときでしたね。個人的な意見を言うと、この2曲に関しては"最初の頃のEthereal Sinに戻ったんちゃうか?"って感じたところがあったんです。だから、この2曲は特に好きなんですよ。

-Ethereal Sinの原点を彷彿とさせるようなところが、「After a Thousand Years」と「Appiyehi Dukkha」の2曲にはあるわけですね。

Seth:そうなんですよ。むしろ、最近のEthereal Sinに対しては、"昔よりちょっと丸くなってるやろ"っていう不満があったんで(笑)、まさに「After a Thousand Years」は初期のEthereal Sin、本来このバンドが持っている暴力性とか残虐性が出てていいなって感じたんです。Yamaさんを除くと今のメンバーの中では僕が一番このバンドで古いんで、この曲からは昔みたいなアグレッシヴさを感じたんですよ。弾くの自体はしんどいですけど、気分的にはめちゃくちゃ上がります。

Yama:最近の曲は丸くなったというか、わりとドラマチックな方向にいくことが多かったですからね。その点、Sethが気に入ったという「After a Thousand Years」はストレートに激しい曲なんですよ。まぁ、Sethは散々、"今のEthereal Sinは牙が折れてる"とか"最近ぬるくなった"とか言ってましたけど(笑)、もし他にもそう感じていた方たちがいるのであれば"これをくらえ!"ってことですね。

Seth:最後の「Appiyehi Dukkha」もかなりいいですけど、個人的には「After a Thousand Years」が今回の推し曲です。

Yama:BPM的にも「After a Thousand Years」は240でバンド史上最速曲になってます。

-メイン・コンポーザーであるYamaさんご自身の推し曲はどちらになります?

Yama:私は9曲目の「Setsuna」です。これは歌詞も含めて悲しい曲で、自分で書いた曲ながら大好きです。

-前作では「Ouka」で日本語が効果的に使われていましたが、「Setsuna」もサビは日本語になっているところが印象的です。やはり"鎮魂ノ刻シリーズ"では、和の意識や日本のバンドならではの表現が詞に多く見られますね。

Yama:「The Empire's Fate」は日露戦争、そして「Shiden」は第二次世界大戦を描いたものですし、「Appiyehi Dukkha」では仏教の概念について表現しています。どれも外伝として必要な物語だったんですよ。

-ところで、今作『Time of Requiem - Part 2』からは、新ドラマーとしてMeet Schattenclownさんがレコーディングに参加されることになったそうですが、彼はいつどのような経緯で加入されることになったのでしょうか。

Yama:それがですね。『Part 1』が出たのが21年の8月だったんですけど、そこから半年後くらいには『Part 2』を出そうということで、レコーディングも始めようかとなったんですが、そのタイミングで前任ドラマー(Gensui Fitzgerald)が病気で活動できなくなってしまったんですよ。一応、何曲かは仮ドラムを録り終わったものはありましたし、僕らとしても彼の復帰を待ったんですが、病状的に先が見えないということもあり、そこからまったくレコーディングが進められなくなってしまったんです。しかも、2022年の6月にはフィンランドのフェスも決まっていたので、苦渋の判断ではあったものの次のドラムを急いで探さなきゃ! となり、そのときに見つかったのがMeet Schattenclownだったんですよ。