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INTERVIEW

Ethereal Sin

2023.03.27UPDATE

2023年04月号掲載

Ethereal Sin

Member:Yama Darkblaze(Vo) Seth Maelstrom(Ba)

Interviewer:杉江 由紀

-Meet Schattenclownさんとの馴れ初めはどのようなかたちだったのです?

Yama:こういうエクストリーム・メタルのジャンルはなかなか人材がいないですからね。周囲の人たちにも"誰かいない?"とリサーチをかけつつ一般公募もしまして、フィンランドのフェスに関しては、その公募で来たドラマーをまずはサポートで迎えることになったんです。ところが、出発当日に空港で、コロナワクチン関係の問題で彼だけ出国不能という状態になってしまったんですよ。

-えっ! そこからどうされたのですか?

Seth:どうしたんでしょうねー(笑)。

Yama:行くはずだった彼はもう飛行機に乗れないので、もうどうしようもなくてですね。なんとか乗れた僕らとしては搭乗中にいろいろ考えて、まず"ドラムは同期で流すか?"ということも意見としては出たんですよ。でも、さすがにこのジャンルでそれはだいぶカッコ悪いじゃないですか。

-たしかに。

Yama:やっぱり人力しかないよな、ということになったんですけど"じゃあ誰が?"ってなるわけですよ。ただ、私の本業というのがプロモーターでフィンランドにもコネクションは結構あるので、知り合いのバンドの連中に連絡をとって探してみたところ"何曲やるんだ? 8曲もやるのか! 半分の4曲くらいならなんとかする"って言ってくれるドラマー(SUOTANAのRauli Juopperi)は見つかったんです。

Seth:まぁ、本番まで時間がなかったからね。

Yama:いやほんとに。飛行機に乗っていたのがフェスの前々日で、我々がフィンランドに着くのはフェスの前日だったんで、その短い間に準備ができる人なんていないわけですよ。でも、彼はそのフェスの裏方を手伝ってるスタッフのひとりでもあったんで、なんとか手伝ってくれることになったんですね。

-そこから、あと4曲分のドラマーはどうされたのです?

Yama:もうひとり、フェスのメインステージにうちと同じ日に出るバンドのドラマー(THE DUSKFALLのSebastian Lindgren)が、"出番の時間がずれてるから手伝えるよ"と言ってくれて、それで半々ずつふたりに叩いてもらえることになりました。

Seth:それで飛行機内で曲を伝えて前日にフィンランドに着いて、すぐデータを渡して、当日の午前中にリハ入ったもんな。

-過酷すぎるミッションですね......。

Yama:突貫工事で4曲ずつ当日にふたりとリハをして、なんとか本番を迎えることができました。

-それで、要はMeet Schattenclownさんとの出会いというのは!?

Yama:話が遠回りしちゃいましたけど(笑)、一緒に行けなかったサポート・ドラマーに関しては、そこでメンタル的に折れてしまったのか、"ドラム自体をやめたい"ということを言っていたのでそこで終わりになり、また公募を再開したところMeetが応募してきたんですよ。で、うちのメンバーがTwitterで検索をしてみたところ、MeetはもともとEthereal Sinのファンだったらしくて(笑)、課題曲として出したものに対しても"やった! 好きな曲だ!"ってツイートしてたらしいんです。

-いい人材と出会えて良かったですねぇ。

Yama:前からライヴも観てたそうで、そこからの話は早かったですよ。スタジオに入ってみたらプレイ的にも良かったんで、やってもらうことになりました。

-Sethさんからすると、新しい相方 Meet Schattenclownさんと音を出していくなかで感じていらっしゃるのは、今のところどのような感覚ですか?

Seth:やっぱり、ドラマーが変わると全然違いますね。

Yama:へー。そういうもん? なんか普通にやってるよね?

Seth:違うて。めっちゃ大変やねんで! でも、あんまりクセがあるドラムではないので、そこまでどうしようもなく難しいってことではないですかね。

-SethさんからMeetさんに何かしらオーダーを出されるようなことはありました?

Seth:ないです。調整が必要なところは僕が彼に合わせました。

-さすがです。新メンバーが入ってそう時間が経ってはいないなか、その言葉はそうそう言えるものではないはずですよ。

Yama:基本的に、今回のレコーディングでは仮ドラムやプリプロしたものを録ってあった曲に関しては、Meetが前任ドラマーのプレイを基本はなぞるようにやってくれましたし、まったくドラムのフレーズが決まっていなかった最後にできた2曲(「After a Thousand Years」と「Appiyehi Dukkha」)は、Ethereal Sinらしさを意識したうえで、自分の音を出してくれたように感じられましたからね。結局、リズム隊の両者が歩み寄っていたところがあったんだと思います。

-バンドの音の土台に変化があったことを考えると、前作『Time of Requiem Part 1』と今作『Time of Requiem - Part 2』の雰囲気に違いがあるのは、当然でもありますね。

Yama:もっと言うと、『Part 1』のときって、ギターも制作中はまだSyngolet Nollruneが正式加入前だったんで、実質Kikka Schwarzfleetがひとりで弾いてたんですよ。そこも今回はふたりで弾いてますから、ある意味、バンドとしての音は違っていて当然なんです。

-紆余曲折といいますか、様々な過程を経たうえで『Time of Requiem - Part 2』が完成した今、Yamaさんはこの作品に対していかなる手応えを感じていらっしゃいますか。

Yama:これが面白いもので、自分としては前述のように、『Part 1』の外伝として作ったアルバムなので、いろいろと実験的な要素も盛り込んだ作品になったなと感じているんですよ。「Face the Light in the Abyss」では、ゴシック/ドゥーム的な重さが出せたと思いますし、「Nightmare never muted」は、昔ながらのスラッシュ・メタルの要素が強く出ているなど、自分的には今までやってなかったことに挑戦しているんです。だけど、さっきのSethの話もそうですし、レコード会社の方やライナーノーツを書いてくれたライターの方たちの受け止め方を聞くと、口を揃えて"原点回帰しましたね"とか、"今回はすごくブラック・メタルの感じが強いですね"とか、"昔みたいに荒々しくなりましたね"って言われるんですよ。そこがちょっと不思議だなと感じてます(笑)。

-今作は曲調がバラエティに富んでいるが故に、「After a Thousand Years」の激しさが突出して目立つ、というのはあるかもしれません。

Yama:あと、自分では意識していなかったんですけど、今回はブラストビートが多いらしいんですよ。

Seth:多いよ。あんまり意識はしてなかったんだ? 一応Ethereal Sinは根本的にブラック・メタルなんで、僕はすごくいいと思います。

Yama:Meetが速いの得意だしね。これまではBPM 200くらいまでの曲しかなかったんですけど、そこのリミッターも今作で突破することができました。ただし、Meetも実を言うと"240はさすがにしんどかった"らしいです(笑)。

-あらゆる面で、今作『Time of Requiem - Part 2』は、Ethereal Sinにとって大きな分岐点となる作品になったようですね。なお、このアルバムを世に出したあとの動きとして今のところ何か決まっている予定などはございますか?

Yama:詳しいことはまだ確定してないんですが、秋には国内と国外でのライヴを予定してますね。それから、作品の面で言うとこのアルバムで"鎮魂ノ刻シリーズ"は締めくくりになりまして、『Part 1』で鎮められた魂が『Part 2』で浄化されたことになります。だから、また次は別の物語とコンセプトで表現をしていくことになるんですよ。もちろん、和の世界観そのものは変わりませんが、きっと今後は衣装や曲調も含めて新しい展開にしていくことになるはずです。ぜひ、Ethereal Sin先生の次回作にご期待ください。俺たちの戦いはこれからだ! という感じでしょうか? いや、そのフラグはまずいな(笑)。