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INTERVIEW

ARCHITECTS

2022.10.14UPDATE

2022年10月号掲載

ARCHITECTS

Member:Sam Carter(Vo)

Interviewer:菅谷 透 Interview interpreted and translated by 川原 真理子

2021年リリースの前作『For Those That Wish To Exist』で、初となるUKアルバム・チャート1位を獲得したARCHITECTS。約1年半というハイペースで彼らより届けられた最新作『The Classic Symptoms Of A Broken Spirit』は、前作で提示した新たなスタイルを拡張しつつ、よりインダストリアル/エレクトロの要素を盛り込んだ作風に。アリーナ・クラスの会場を揺るがすことを見据えた、キャッチーでありながら強靭なヘヴィネスが詰まった、エネルギッシュな作品に仕上がっている。そんな本作について、フロントマンのSam Carterに話を訊いた。


このアルバムで、みんながあまり孤独や疲労を感じないようにできればと思っているんだ


-激ロックでのインタビューは2015年の来日時の取材以来となりますので、まずは近年のバンドの活動からうかがえればと思います。前作『For Those That Wish To Exist』はUKのアルバム・チャートでバンド初となる1位を獲得しましたが、この結果をご自身ではどのように捉えていますか?

素晴らしかったよ。それまではトップ10に入ったアルバムさえなかったんだから、あれはすごいことだった。期待もしていなくて、当たり前のように手に入れられるものだとも思っていなかったから、俺たちにとっては本当にスペシャルな瞬間だったよ。あのときはすごくクールだなと思ったけど、今振り返ってみると、考えれば考えるほどすごいことだったんだなって思う。

-2020年11月にはロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでの無観客ライヴを行い、2021年12月にはアビー・ロード・スタジオでのオーケストラを従えたパフォーマンスも配信するなど、配信ライヴも積極的に行っていました。こうした取り組みを行ったのはなぜでしょうか?

ロイヤル・アルバート・ホールの無観客ライヴは、配信ライヴをやりたかったけど、でき得る限りクールにしたかったからなんだ。配信ライヴをやったバンドをいくつか観たけど、場所はリハーサル・スペースとかだった。俺たちはまともにツアーすることができない状況で、もしツアーができていたら新曲をプレイしていただろうから、そろそろファンのためにライヴをやるころだと思ったんだ。ロックダウン中にやれて本当に良かったよ。オンラインでファンと繋がることができたんだからね。ほとんど彼らがそこにいるような気分になれた。だから、あれはとっても楽しかったよ。そのあと、またああいったことをやろうと考えた。相変わらずまともなライヴができる状況ではなかったし、かねてからアビー・ロードでアルバムをレコーディングしたいと考えていたから、最新アルバムをオーケストラと共演できるなんて素晴らしいことだと思ったんだ。

-また、今年5月には1万人規模の会場であるアレクサンドラ・パレスでのヘッドライン・ショーも行っています。大観衆の前でのライヴを行うというのはコロナ禍になってからそう多くはなかったのではないかと思いますが、ライヴを行ってみて改めて感じたものはありましたか?

すごく良かったよ。コロナ禍になってから、ライヴはまだUKでしかやれていないから、他の国々にもちゃんと行くのを楽しみにしているんだ。でも、あれは本当にスペシャルだったな。『For Those That Wish To Exist』に伴う小規模なライヴはUKでやってきていて、一番多くて2,000人、一番少なくて400人ほどだったから、ロンドンの大観衆の前でプレイして、UK中でアリーナ・ツアーができたことには圧倒されたよ。俺たちが一番得意とすることをまたやれるようになって、すごく嬉しかった。本当に本当にスペシャルだったね。アリー・パリー(アレクサンドラ・パレス)は、ステージから見える光景がまるで人の海といった会場なんだ。本当にいい。完璧に平らな会場で、ステージからはすごい光景なんだ。

-前作から約1年半という非常に短いスパンで、ニュー・アルバム『The Classic Symptoms Of A Broken Spirit』がリリースとなります。なぜこのような短期間でのリリースになったのでしょうか?

コロナ禍前に『For Those That Wish To Exist』の曲はすでに書き上がっていたから、ロックダウンが始まったころ、あとはレコーディングだけすればよかったんだ。そして知ってのとおりロックダウンはそれからもう約2年続いたから、前作が出てからはみんなで一緒に作業をして、曲作りをする時間に充てて、バンドの活動を続けたよ。互いにクリエイティヴになることを楽しんでいたんだ。でないと、1日のうち何もしない時間が多くなってしまっていただろうからね(笑)!

-それは、世界中のほとんどのバンドに当てはまったでしょうね。

そうだね、まさしくそうだ。

-新作の"The Classic Symptoms Of A Broken Spirit"というタイトルの由来を教えていただけますか?

今の世界の状態を見回してみると、この惑星のことを熱心に気に掛けている人たちがいる。みんなのことを親身になって考えて、くじけそうになっている人たちを気に掛けて、ポジティヴになって、ポジティヴなメッセージを発信しているけど、こんなご時世だと意味がないように思えるんだ。どのみち聞き流されてしまうからね。だから、このアルバム・タイトルはお先真っ暗というか、かなりうんざりした気持ちを表しているんだ。

-でも、いくばくかの希望があるのでは?

ほんのちょっとだけ。ちょっとはあるさ。人間って諦めてしまいそうになるときがあるよね? もう山に登れないって思うこともあるけど、そういうときは果敢に戦うために元気を取り戻す時間が必要なんだ。

-資料によると、前作がパンデミックによりほとんどリモートで制作されたなか、本作では一緒に集まって制作することができたということですが、実際にスタジオで集まったときはどのような気分でしたか?

たしかに、前作はほとんどリモートでやったんだ。リモートでなかったとしても1、2人しか同時にいられなかったから、俺とDan(Searle/Dr)だけでヴォーカルをやることもあったし、ドラム録りのときはまだ最初のころだったからDanしか入れなかった。Ali(Alex Dean)のベースは自宅で録ったし、Josh(Middleton)のギターも自宅で録った。だから、ああいった形でやったものがアルバムになっていくのを見るのは、かなり不思議な状況だったよ。今回は、またみんなでひとつの場所にいられることを最大限に活用したんだ。UKのルールによると、5人なら同時に一緒にいてもいいってことになっていた。変なルールだったけど。でもそれだと、みんなで一緒にリハーサルして、それまでよりクリエイティヴになることができたんだ。

-新鮮でしたか?

ああ、とっても良かったよ。特に「When We Were Young」みたいな曲は会話から生まれたから、同じ部屋に一緒にいなかったらできなかった。すごく早くできたし、すごく楽しかった。みんなで一緒にすごく頑張ったよ。アルバムに何が必要なのか、何が欠けているのかといったことを話し合ったんだ。みんなで一緒に集まって、超集中してやれて本当に良かったよ。

-前作は2020年の世界情勢と人類の未来に迫る脅威からインスピレーションを得た、ダークな作風でしたが、今作ではどのような題材をテーマに掲げているのでしょうか?

引き続きダークだ。それは消えていない。次に起こることに対する恐怖とか、不安を覚えることとかね。『For Those That Wish To Exist』は、起こっていること、そしてそれに対して俺たちがいかにほとんど何もできていないかについての会話のようなものだった。何かを完璧にやらないといけないのは俺たちではなく、世界中の化石燃料や悲惨なガスを大量に使っている大企業だということもね。大半は彼らが使っているから、俺がまともにリサイクルしているからと言って世界を救えるわけじゃない(苦笑)。そういうことを考えると、かなり悲しいよね。かなり悲しい世界だよ。だからこのアルバムで、みんながあまり孤独や疲労を感じないようにできればと思っているんだ。

-サウンド面ではインダストリアル/エレクトロをさらに取り入れつつ、どこかポジティヴな要素も感じさせる仕上がりになっていると思いました。ソングライティングではどのようなことを心掛けましたか?

バンドとしての幅を広げようとしたんだ。そのために、君が言ったようなインダストリアルな方向に進んだんだよ。前作でよく使ったストリングスから離れて、サブ・ベースやシンセ・ベースといったエレクトロニックな楽器に行ったんだ。そうしてヘヴィにしたいという衝動に駆られたんだよ。シンセを使って、レベルアップした曲に仕上げたかったんだ。楽しくもあったよ。時間をかけてこれだと思う音を見つけて、やり方を突き止めていった。俺たちはシンセやサブの使い方に長けていなかったから、時間をかけていろいろと試して突き止めていくのが楽しかったんだ。いろいろと試しながらうまくいくものといかないことを突き止めることが主な目的だった。最終的にはうまくいったと思うな。

-前作では様々な規制がありましたが、今回はそれがなかったことで、みんなで集まってより自由にいろいろなことを試すことができたのでは?

そのとおり! みんなと一緒にいて、そっちの世界に行けて良かったよ。互いを追い込んで、"それはいいね"、"それは良くないね"といった反応がすぐに返って来るところが良かったね。前作では、メールを送って、向こうから返って来るまで待たないといけなかったんだから。