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INTERVIEW

Mardelas

2022.09.06UPDATE

2022年09月号掲載

Mardelas

メンバー:蛇石 マリナ(Vo) 及川 樹京(Gt) 本石 久幸(Ba)

インタビュアー:杉江 由紀

未来を見据えながら作ったという今作『Mardelas Ⅳ』は、Mardelasが約4年ぶりに放つフル・アルバムとなる。往年の名作映画たちをモチーフに現代の情景を巧妙に描き出す、蛇石マリナの歌詞と圧倒的なヴォーカリゼイション。メイン・コンポーザーとしての力量のみならず、今作からは作詞も手掛けるようになった及川樹京のクリエイティヴィティ。初の作曲を手掛けている一方で、ベーシストとしてのセンスフルなプレイを各曲で聴かせる本石久幸のパフォーミング。各人の個性とこだわりを存分に生かしながら、トラディショナルな部分とモダンさを融合していったなかでの、Mardelasとしての新しい音楽のかたちがここには凝縮されて詰まっている。

-2018年に劇的なコンセプト・アルバム『Mardelas Ⅲ』で鮮烈なインパクトを放ちつつ、2019年にはバンドとしての原点回帰を果たした5曲入りEP『Ground ZERO』を発表したMardelasが、ここにきて約4年ぶりのフル・アルバムとなる4thアルバム『Mardelas Ⅳ』を発表することになりました。今作に向けての構想というのを、そもそもどのように練っていくことになったのかをまずは教えてください。

蛇石:前作の『Ground ZERO』がMardelasにとっての原点回帰をテーマとした作品だったということを踏まえると、今回のアルバムについては、"その先にあるもの"をイメージしながら作っていくことになりましたね。そして、この3年の間にはコロナのこともあったので、表現者としては、より受け手側の心に深く届くものを作りたいなという気持ちも大きかったんですよ。だから、今回は『Mardelas Ⅲ』のように完全なフィクションよりは、ある程度のリアリティを持った世界を描こうと思いましたし、方向性としては"その先にあるもの"=未来ということで、ちょっと近未来っぽいニュアンスも入れていくようにしていったんです。

-今作『Mardelas Ⅳ』からの大きな変化としては、なんと本石さんも今作では「Spider Thread」で初めて作曲を手掛けられたのだとか。

本石:メンバーから"書け"と言われて作ったんですよ(笑)。まぁでも、新しい風じゃないですけど自分も書いたほうが音楽的な幅は広がるんだろうなとは思ったし、うちのふたりが書かないような曲を作らないと意味がないなとも思ったんで、今回は個人的な趣味としてDREAM THEATERみたいな雰囲気の曲を作ってみました。

-一方、メイン・コンポーザーである及川さんが、今回のアルバム制作に向けて描いていらしたヴィジョンとはどのようなものだったのでしょう。

及川:サウンドとか楽曲アレンジのコンセプトに関しては、トラディショナルな部分とモダンさを融合してMardelasとしての新しい音楽を作っていこう、というのが今回の大きなテーマでしたね。ただ、新しさの中にも、僕が好きなハード・ロックとかの伝統的なロックの持ついい部分はちゃんと残していきたいと思っていたので、モダンな要素とそれをどう共存させていくのか? というのが大事なポイントでした。

-さじ加減が重要だったわけですね。

及川:そこは歌詞を書いていくうえでも意識したところで、先ほどマリナが言っていたように、僕も今回のアルバムでは時系列的に近未来のこととか、現代の社会問題とかを詞で書いているんですよ。それは音のモダンさの部分とリンクしているところでもあって、インターネットやSNSの普及によって起きているリアルな問題とか、その裏に渦巻く人間の汚い部分とか、そういうことを僕なりに表現していくことになりました。

-及川さんは今作に収録されている1曲目の「Burn Out!」、4曲目の「The Fox and The Grapes」、7曲目の「Force & Justice」で作詞と作曲をされていらっしゃいます。これはつまり、曲だけではなく詞を書くことの面白さにもいよいよ開眼されたということなのでしょうか。

及川:詞に関しては、ある意味コロナがきっかけだったところもあった気がしますね。(コロナ禍が)始まってからもう3年くらい経つし、そういうなかで自分の年齢も30代に入ってきて、昔は別に自分の考え方とか気持ちを世に伝えたい気持ちってまったくなかったんですけど、最近はそこも含めて表現していきたい気持ちがすごく出てきて、それで今回のアルバムでは計3曲の歌詞を書かせていただくことになりました。

-そう考えますと、このバンドにとっての4thアルバム『Mardelas Ⅳ』は、メンバー3人が持つそれぞれの創作意欲が今まで以上に色濃いかたちで結実した作品である、ということになりそうですね。

及川:たしかにそういうところはありますね。それぞれの芸術家な部分、こだわりがさらに強く出ちゃったみたいなアルバムになってると思います。

-ちなみに、約4年ぶりの音源であるという今作の中で最も古い曲というのは......?

蛇石:今年の1月に出したシングル『Infinite Trinity』に収録していた「G-Metal」ですね。本当だったら、私たちとしては去年の段階でアルバムを出したいというプランもあったんですけど、どうしてもコロナの影響でYouTubeでの配信に力を入れたりしていたところがありましたし、いったんはアルバムの制作をストップしていたんです。そのあと、出すことが決まってから、残り7割~8割くらいの曲たちを集中的に完成させていくことになりました。

-なるほど。なんでも「G-Metal」という曲タイトルは、90 年代にアメリカ西海岸でブームとなったヒップホップ"G-Funk"へのリスペクトと、メタルを融合した独自の造語でもあるそうですし、これはそれこそモダンな要素の強い楽曲ですよね。

蛇石:まさに、これはモダンってキーワードから"そういう曲"を作りたくてかたちにしていったものだったので、今思うとこのアルバムにとってのスタートラインであり核になっていった曲でした。

本石:この曲って休符の多いAメロのヒップホップ・テイストな部分はハネた感じですけど、サビは結構キャッチーなんですよね。曲にモダンな要素が含まれてるぶん、ベースのサウンドは90年代とかのトラディショナルな雰囲気を持ったものにしていきました。

及川:これは新しい部分を出していこうと作った最初の曲なんですけど、それでも自分たちがまったく通ってないことをやろうとすると、たぶん偽物になっちゃうんですよ。ヘヴィ・メタルの中でも、PANTERAとかってわりとラップっぽいところがあったりするじゃないですか。そういう僕が通ってきたものを生かして融合させながら、新しさを出していく曲にできたと思います。ギターもリフがソリッドな感じになってますし、モダンであるとは言っても、あくまでもハード・ロック/ヘヴィ・メタルなサウンドだと僕は思ってますから、全然無理とかはしてません。

-それから、先ほども少し触れさせていただきました本石さん作曲の「Spider Thread」ですが、この曲は、おそらく『Mardelas Ⅳ』の中で最もヘヴィで太い音に仕上がっているのではありませんか。

及川:これは7弦ギター使ってますしね。

本石:これはほとんど他はすべてできあがっている状態で、最後のほうに書き始めた曲だったんですよ。だから他の曲にはない変拍子的なテンポにしたかったですし、7弦を使う曲なんで、自ずと自分の中では"じゃあ、これはもうDREAM THEATERっぽい感じしかないじゃないですか!"となりまして(笑)。途中でテンポ・チェンジもしてるんで、曲作りのときの作業時間的には8割くらいをドラム・パートに割きましたね。

-及川さんの立場からすると、この本石さんの曲はどう映りました?

及川:まず、自分は絶対に書かないだろうなというタイプの曲だなと感じました。僕はシンセもあんなにたくさん入れないですし、全体的に凝ってるんでかなり時間をかけて作ったんだろうなとも思いましたね。いわゆるDREAM THEATERっぽさみたいなところに関しては、昔は僕も聴いてたんですけど最近は全然聴いてなかったんで、このところのPetrucci(John Petrucci/DREAM THEATER/Gt)がどんなアプローチをしているのか、一応ちょっとだけリサーチはしてみました。でも、それ以上にこの曲では、作曲者である本石さんの意向にできるだけ寄り添っていくことを意識しながら、ギター・ソロを作ったり、プレイしていったりすることを心掛けました。そういう意味でも、この曲は他の曲とはまた違った質感のものになったと思います。

-Mardelasの新戦力として、本石さんにはここからコンポーザーとしてのさらなる活躍を期待したいですよ。

本石:ほんとですか。ありがたいことにみんなも結構"いいね"って言ってくれてるんで、そんなふうに言われてしまうとハードルが上がっちゃいそうですね(笑)。

-なお、この「Spider Thread」の歌詞については芥川龍之介の"蜘蛛の糸"をモチーフにして欲しい、と本石さんがマリナさんにオーダーされたそうですね。

本石:そうなんですよ。人に話してもなかなか伝わりづらいんですけど、この曲にはサビのところに付点8分のディレイがかかったギターが入っていて、あれが個人的に蜘蛛のイメージが浮かんでくる音なんです。そこから連想して"蜘蛛の糸"のテーマで書いてほしいってオーダーしました。

及川:そう説明されても、俺は全然その感覚わかんなかった(笑)。

蛇石:でも、私的には歌詞のパターンとしては得意なタイプでしたよ。改めて"蜘蛛の糸"を読んだうえで原文からの引用も入れながら書いていきましたけど、話としてはこれってめちゃくちゃバッド・エンドじゃないですか。本石からは"光がある感じで終わってほしい"って言われていたんで、そこだけはちょっと自分なりの解釈を加えました。次のストーリーに繋がるような余韻を最後に少しだけ残すことにしたんです。音としても詞としてもこれはすごく重たい曲になっているだけに、結果としてそういうエンディングにして良かったなと思ってます。

本石:ほんと、予想以上に素晴らしい歌詞がついたので僕としても嬉しいです(笑)。

-もちろん、この『Mardelas Ⅳ』には他にもたくさんの楽曲が収録されているわけですが、それらを見渡したときのひとつの傾向として、往年の名作である"ロッキー"や"ゴッドファーザー"、"ランボー"など映画を歌詞のモチーフにしているものが何曲か見受けられるように感じます。今回そこにフォーカスされた理由はなんだったのですか。

蛇石:さっき、モダンとトラディショナルの融合っていう言葉が及川から出てたと思うんですけど、実は今回そこをテーマに作っていこうという話は、メンバー同士で会話としては交わしてなかったんですね。でも、そういう考えはお互いにたぶん持っていたんだと思うんです。そういう意味で、私も詞を書いていくときに基本としては現代に即したことを書きたいんだけれども、それを表現していくときのヒントは、トラディショナルなオールド・ムービーから得ていきたいなと考えたんですよ。

-たまに古い映画を観ていると、無粋なのは承知ですが"今だったらスマホがあるのになぁ"などと思ってしまうこともあったりします。マリナさんが今回オールド・ムービーたちを歌詞の題材としていったときに、何か改めて感じられたことはありましたか?

蛇石:私も、いろいろと"今だったらこの映画はこういう展開になっていなかったんだろうな"と感じることはあります。でも、人の本質という部分は結局のところそんなに変わっていないんじゃないかなとも思いますね。

-そうしたなか、このアルバムの冒頭を飾っているのは「Burn Out!」です。この曲を今作の幕開けの場面に持ってきた理由はなんだったのでしょう。

及川:前作『Mardelas Ⅲ』や、EP『Ground ZERO』のときは、導入部として最初にSEっぽいインストを入れてたんですけどね。「Burn Out!」は曲自体の構成がSE的な感じから始まるので、持ってくるなら1曲目だろうということになったんです。というか、1曲目にすることを想定して、こういうアレンジにしたと言ったほうが正しいですね。

-と同時に、この「Burn Out!」は、Mardelasの十八番な部分が詰まったハードにしてキャッチーな楽曲でもありますね。

及川:だと思います。これが1曲目にくることで、ここから始まっていくアルバムに対する期待感を高めていくような役割も果たしてますね。歌詞に関しては、かなり僕の頭の中をリアルに投影したものになってるところがあるというか。コロナとかいろいろ大変なこともあるけど、そのなかでのここで終われない気持ちとか、終わったとしてもかまわないくらいの覚悟でやっている、ということをここでは言葉にしました。

-2曲目の「Expendable」はドラマチックな響きを持った曲であり、歌詞としては"ランボー"がモチーフとなっているようですが、もともと及川さんとしてはいかなるヴィジョンを前提に作られた曲だったのでしょうか。

及川:今回のコンセプトである、モダンとトラディショナルの融合の部分については、この曲が一番アルバムの中で振り切ったなというアレンジをしてますね。7弦ギターを使っているのでヘヴィさも出てると思いますし、Aメロの感じとかエフェクトっぽいシンセの入れ方、曲展開の仕方なんかは今までにちょっとない感じになってます。

-「Expendable」でのベース・プレイやベースの音作りにおいて、本石さんが重視されたのはどのようなことでしたか。

本石:ギターの7弦に対してベースも5弦を使っているので、当然ヘヴィな曲ではあるんですよ。ただ、音としてはそれだけじゃなく疾走感も出したかったんで、この曲についてはプレイ以前に楽器や機材選びでちょっと迷いましたね。手持ちのベースを全部試した結果、疾走感を出しやすいBacchusと、昔からよく使っててヘヴィな音に強いG&Lの2択に絞って、最後は後者を使うことにしました。エフェクターもいろいろ比べて試行錯誤はしましたけど、その甲斐あってなんとか納得のいく音になりましたね。

-「Expendable」とは消耗品を意味する言葉で、映画"ランボー"にて主人公が自身について"国にとっての消耗品なんだ"と言ったセリフを下敷きにして詞を作られたそうですが、マリナさんはここに昨今のエンタメ世界の事情を重ねたりもされたそうですね。

蛇石:映画としての"ランボー"の世界観を描きたかったというよりは、まさにそのひと言のセリフに考えさせられるところがあったんですよ。あれは自分が何者であるかを忘れるなよっていうメッセージですからね。つまり、自分が消耗品に成り下がるかどうかはあくまでも自分次第でもあるわけなんです。だから、自分が自分をどう扱うかっていうことについてのメッセージを、この詞ではメインにしていきました。ある意味、これは自戒の念を込めた自分へのメッセージでもあります。