INTERVIEW
Mardelas
2019.05.21UPDATE
2019年05月号掲載
Member:蛇石 マリナ(Vo) 及川 樹京(Gt)
Interviewer:山本 真由
女性ロック・ヴォーカリスト、蛇石マリナ率いるHR/HMバンド Mardelas。彼らが、前作アルバム『Mardelas Ⅲ』以来、約1年ぶりとなる新作をリリースする。前作は"新宿歌舞伎町を舞台とした任侠ドラマ"をテーマとしたコンセプト・アルバムだったが、そういった歌謡曲的な独特の世界観は残しつつも、今作はテーマをガラッと変えて近未来の"壊滅都市"的なイメージを打ち出した作品だ。ギター・ソロとのスリリングな掛け合いも印象的なキーボード演奏や、シンフォニック・メタルの様式美も感じさせるオープニング・トラックの作曲、編曲でLIGHT BRINGERのMaoが参加していることも話題の今作。その制作のプロセスや収録楽曲について、メンバーの蛇石マリナと及川樹京に答えてもらった。
今作は現代から近未来をイメージしていてMardelasの未来を占う作品という意味も込められています
-ニューEP『Ground ZERO』の完成、おめでとうございます。作品ができあがって、ご自身での満足度はいかがですか?
及川:ありがとうございます。今回はマスタリングが終わるまでまったく気が抜けないような状況でしたが、最後までこだわり抜いて最高の仕上がりになったなと感じています。個人的には作る前からバンド人生の集大成となる作品にしたいと力が入っていたのもあり、かなり気合の入った作品になりましたね。
蛇石:今回は特に、みんなよく頑張ったなという達成感が強いです。ひとりひとりの気合の入り方もいつも以上なので、その気迫を感じてもらえたら嬉しいです。歌のコンディションも良かったですし、これまでの持ち味だった"エモさ"をさらに超えることができたのではないかと自負しております。
-今作は、2018年5月にリリースされた3rdフル・アルバム『Mardelas Ⅲ』以来、約1年ぶりの新作となります。"新宿歌舞伎町を舞台とした任侠ドラマ"というコンセプトのインパクトが非常に強かった前作の反響はかなり大きかったのではないでしょうか?
蛇石:そうですね。基本的に同じような作品を作って守りに入るようなことはしたくないので、毎回勝負を仕掛けているつもりです。前回は3枚目ということ、本石(久幸/Ba)の加入もあり、他のバンドにはないようなイメージを新たに作ってみたかったこと、音楽性や世界観もある程度統一した作品にしたかったので思い切ってコンセプト・アルバムにしました。毎回アーティスト写真を公開したときのみなさんの反応が興味深くて、それも楽しみのひとつではあります。
及川:前作は、マリナ主導で作り上げていった作品というイメージで、好きにやってもらいました。自分は普段と変わらないイメージだったみたいで個人的にはそんなにツッコミはありませんでした(笑)。サウンド面の話になりますけど、ベーシスト交代後に打ち出した3rdでの重厚なサウンドはかなり好評で、やっと自分の理想に近づけたかなという自信にも繋がりました。
-それを踏まえて、今作はアーティスト写真も含め、イメージがガラッと変わった印象です。今回のコンセプトやストーリーについて、教えていただけますか?
蛇石:1stアルバムからずっとシリーズ化されている"魔界都市新宿歌舞伎町シリーズ"を今回どう料理するかはかなり考えました。音楽的に"原点回帰"しようという話はもともとメンバーと話していたので、じゃあ一度全部"壊してしまえ"と。なので今回は、"音楽性のテーマ先行でこういったイメージ作りをした"というのが、前回と違うところのひとつだと思います。"アポカリプス"をテーマにしようと決めて、参考にしたのは"ウォーキング・デッド"などですね。観たことある方はわかると思うんですが、ああいったゾンビで溢れた世界の終焉で、人間らしさを保ちながら生きるってすごく難しいことだと思うんです。それはゾンビの世界だけではなくて、大災害だったり戦争だったり、今も世界のどこかで起こっている異常事態すべてに共通して言えることだと思います。そんな異常事態の中で剥き出しになる人間の汚い部分や美しく見える部分を考えたときに、音楽業界で抗う自分たちにも重なったんですよね。正直言ってクリーンな世界ではないと思うんです。特にメタル業界は保守的でカテゴライズしたがる人も多いし、新しいことをやれば必ず叩かれます。型にはまった曲を作った方がウケるし本当は楽なんですよね。極端に言えばテンポを上げまくって足数手数を増やして、ひたすら速弾き、イントロで"イヤァー!"って叫びましょうみたいな(笑)。それでも、そんな厳しく不条理とも言える世界でMardelasはどう自分らしくアーティスティックに生きていたいのか、"アポカリプス"の世界観はあくまでもそれのメタファーなんです。また、時系列で言うと前作は現代だったのに対し、今作は現代から近未来をイメージしていて、Mardelasの未来を占う作品という意味も込められています。
-アーティスト写真もジャケット写真も、歌詞に出てきた"壊滅都市"的なデザインですが、こういったヴィジュアル面のアイディアも蛇石さんを中心にメンバーのみなさんで考えているのでしょうか?
蛇石:そうです、私が中心になって考えています。世界観とインパクトを重視してアイディアを提案しました。今まで"魔界都市"という"都市"で生きてきたので、今回も漠然とした"荒野"ではなく"壊滅都市"というワードにこだわりましたね。テーマはいつも私発信ですが、これまでと違うのは樹京がメインで衣装監督をしていることですね。メンバーそれぞれの個性を生かしつつ、カッコ良さを追求しました。
-昨年はアルバムのリリース・ツアー以外にも海外公演を行うなど、ライヴ活動も精力的に行われていましたが、今作の制作にはいつごろ着手したのでしょうか?
蛇石:1月の後半くらいから本格的に始まりましたね。ライヴも結構入っていたので、合間を縫いながら少しずつ進めました。樹京と私でそれぞれ曲出しをして、全員でスタジオにこもってアレンジ作業をするといういつものルーティンに追加して、Mao(LIGHT BRINGER)君にもキーボードのアレンジをしてもらうという流れでした。
及川:実はリード・トラック「Apocalypse」のリフのイメージは、3rdアルバムの制作時期にはできていたのですが、3rdアルバムに入れるのは盛りだくさんすぎるかなということで今作に入れることとなりました。その他の楽曲含め、本格的に新譜に向けて制作に取り掛かったのは1月くらいですかね。まだ発表してない楽曲ですが、実は昨年末は別件で制作をしていたりもしたので。
-また、制作過程のお話でも少し触れられていますが、今作ではLIGHT BRINGERのキーボーディスト Maoさんがゲスト・アーティストとして参加されていますね。彼を起用した経緯や、今作でキーボードを重要視した理由について教えてください。
及川:端的に言うと飲みの席で自分が誘った感じですね(笑)。もともと自分はキーボードがメンバーにいるバンドのサウンドも好きで。例えば、STRATOVARIUS、Janne Da Arcとか。なので、そういうアレンジもしてみたいと常々思っていました。でも、メンバーにキーボードがいないのに打ち込みでシンセを入れすぎるのも微妙だなと感じることも多くて、今までそういうアレンジはあえてしてきませんでした。昨年、Mardelasとして3枚目のフル・アルバムを出して、正直自分のやりたいことはやりきったと少し感じていて、次どうするかなとふと考えたときに"あ、これだな"と思いました。そんななか、Mao君がMardelasのライヴに来てくれたことがあって、その打ち上げで隣の席になったんですよ。そのときに話が盛り上がって、今回参加してくれることになりました。担当ディレクターもその場にいたので話が早かったです(笑)。
蛇石:私そのときは全然違う席で飲んでたので、いつの間にやらすごく盛り上がっててなんのこっちゃって感じだったんですけど、経緯を説明してもらったら"すごく面白い企画になりそう!"って興奮したのを覚えています。
-Maoさんは今回、作曲やアレンジにも参加されているということで、いつもと制作のプロセスに変化はありましたか?
及川:基本的にはいつも通り自分がDTM環境でアレンジまで作り込んでメンバーに投げるというプロセスは変わらずでした。今までと異なる点としては、キーボード・アレンジを自分でせずMao君に完全に任せることができたので、その点ではかなり楽でした。楽という言い方が正しいかわからないですけど、彼のアレンジ・センスは素晴らしいので気持ち的にも完全に委ねることができましたね。キーボード・アレンジに関しては、まずMao君から案を貰って、そこから何度か電話したりしながら自分のイメージを伝えて洗練してもらいました。