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INTERVIEW

アルルカン

2022.08.08UPDATE

2022年08月号掲載

アルルカン

Member:暁(Vo) 奈緒(Gt) 來堵(Gt) 祥平(Ba) 堕門(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

-さて、ここから「PICTURES」の歌詞の内容についてもお話をうかがっていこうと思いますが、この歌詞は、いわばアルルカンの約9年にわたる歴史を5分数十秒の尺の中で赤裸々に語り続けるものとなっておりますよね。メンバーのみなさんは、この歌詞が暁さんから提示されたときにどのようなことを感じられたのでしょうか。

來堵:初見では"あぁ、暁の言葉だなぁ"って感じました。でも、ちょっと不思議なところもあるんですよ。このストーリーの中には自分もいるせいか、俯瞰で捉えようとしてもなかなかそうはできないところがあるんですよね。聴いてるとちょっと複雑な心境になることもあるし、これは彼の書いた言葉がそれだけ強い力を持ってるっていうことなんだろうなと思ってます。それに、聴き終わったときには精神的に強くあれるっていうのもほんとに大きな特徴で。自分たちの曲ではあるものの、聴いててもプレイしてても何か大きな力を貰える曲ですね。

祥平:この詞の中で言葉になってることは、どれも自分たちが見てきたことであり、一生懸命に向き合ってきたことではあるんですけど、そのうえでの今の自分たちの強い想いがこの詞には詰まってるなと感じますね。アルルカンの今を、ここからもっと自信を持って発信していきたい気持ちも込めたものになったな、という手応えをこの曲や詞からは感じてます。

堕門:僕は、最初にこの詞を見たときは結構衝撃的でした。個人的に、いつも新しい曲ができるたび"次はどんな言葉が出てくるんだろう?"って暁の歌詞を楽しみにしているところはあるんですよ。でも、今回はその期待をまた大きく超えるものが出てきたからすごくびっくりしました。ここまでアルルカンを約9年間やってきて、そのなかで起きてきたことがそのままいろいろ詰まってたから、正直"えっ? そうくる!?"って驚きましたね(笑)。

-中には、"その年最後のツアーはメンバーとの仲も最悪だった"というフレーズなども出てきますが、メンバーの中から、"そこまで曝け出さなくてもいいのでは"と意見が出るようなことはありませんでした?

奈緒:いや、意外とそういうのはなかったですね。

暁:むしろ、そこは書いた僕のほうがあとからちょっと気にしてたくらいかも。レコーディングを始めてから、ちょっと"これでほんとに良かったのかな?"って思ったことはあったんですよね。"彼女が居なきゃ多分ダメだった俺がダメだった"とか出てくるし。といっても、その彼女っていうのはマネージャーのことなんですけど。でも、変に気を使って歌詞を変えるのも違うなと思って、結局そこもそのままにしました。

奈緒:聴いてる側に刺さる言葉がいっぱい詰まった詞になったし、この詞がついたことで、「PICTURES」はいい意味でまさにぶっ飛んだ曲になったと思います。

-この「PICTURES」は聴き終わったとき、5分数十秒の曲であるという以上に、1本の音楽ドキュメント映画や音楽伝記モノの映画を観終わったかのような、ボリューム感と感慨を得ることができますね。

暁:自分たちとしても、現時点でやれるだけのことはやりきってるし、純粋に"いいものを作ったな"という手応えもあるんですよ。あとはもう、それをどう受け取ってくれるかは聴き手側次第なのかなと思ってます。別に、俺たちの約9年間をすべて知ってくれてる人じゃないとわかりませんって内容ではないし、前回の『MONSTER』からアルルカンのことを知ってくれた人たちも含めて、よりいろんな人たちに向けて、"うちらはこんなバンドです"っていうことを示せた曲になってるのは間違いないです。激ロックを読んでくれてる人たちにも、この曲がアルルカンの自己紹介的な1曲として届いてくれたら嬉しいかな。

-先ほどは、この「PICTURES」のことを映画のような曲だとも申し上げましたが、よくよく考えるとこれは海外ドラマで言う、第2シーズンに向けての第1シーズン総集編的な内容だとも言えそうです。

暁:あぁ、その表現わかりやすいですね。この前、どこかでこの歌詞に対しては"等身大ですね"みたいなことを言われたんだけど、"等身大"っていうのはやや現状維持みたいなニュアンスがあるように感じるし、なぜこの詞を今の僕が良しとしているのかと言えば、すべては過去でなおかつ先を見てるからなんですよ。ここに書いたのはどれも"あのときはこうでした"っていうだけのことで、今の自分はもっとそれより高いところを見ることができてるんですね。もし、それができてない状態で、"昔はあんだけしんどかったんや"みたいなテンションで過去を振り返るだけのものだったら、今ここでこういうものは絶対世の中へは出してない。あくまでもこれは、俺たちがこの先に進んでいくために必要なひとつのステップなんです。

-壮大且つ長いストーリーが描かれている反面で、この「PICTURES」における結論は至ってシンプルですものね。最後の最後に響く、"さぁ これからの話をしよう"というあの高らかな言葉こそが何よりもの主題であって、そこまでの5分は、もはやそのための装置であると解釈してもいいくらいなのではないでしょうか。

暁:でも、ちょっと不思議な感覚ではありますよ。当時の僕を知ってる人、知らないけど痛みを想像した人が、これを聴いて苦しくなったり悲しくなったり。そういうつもりではなかったから少し驚いてるし、同時に少し嬉しい気持ちもある。だからこそ前を向いてるバンドのエネルギーにも共鳴してほしい。最後には前向きな気持ちになりましたっていう声が、この曲はやっぱ一番嬉しい。

-「PICTURES」にはそれだけの説得力があるということでしょうね。

暁:とは言っても、別にこれが厳かな曲とかではなくて。聴いて面白がってもらうくらいの感じでも全然いいし、ポエトリー・リーディングをしてると言っても韻だってまったく踏んでないし、わざとそうしてるしそういう面でのカッコいい/カッコ悪いを問う曲ではないんです。人によっては"なんかUVERworldみたい"って言ってる人もいるけど、日本ではポエトリーと言えば不可思議/wonderboyっていう人がいて、最近だったらMOROHAがいて、そこに影響与えてる野狐禅、竹原ピストルさんがいて、手法として取り入れてるアーティストで言えばamazarashi、きのこ帝国、花譜さんの曲を僕は聴いたりしてました。だからたくさんの音楽の中で根づいてるジャンルであり手法やと思うんですけどね。

-見方によってはサンボマスターであったり、佐野元春であったり、他にも様々なアーティストのみならず、昨今ではアイドルも含めてジャンル、世代を問わずにそれぞれにポエトリー・リーディング的な表現アプローチをしてきているケースは多々あるかと。

暁:そのへんはもしかしたら、激ロックとか読んでる人のほうが、普通に聴いて"いいじゃん"って、ライトな感じで柔軟に受け止めてくれるケースが多いかもしれないですね。今回の「PICTURES」は、コアなヴィジュアル系が好きな人ほど拒否反応が出るパターンが多い気がするけど、もちろん俺たちは誰かを切り捨てるためにこの曲を作ったわけでもないし、とにかく前に進むために今この曲が必要なんだっていうことですから。最終的には、聴いた人たちみんなに"アルルカン、いいよね"って感じてもらえたらいいなって思ってはいるんですよ。こういう取材とか言葉で説明する場も大切にしたいとは思ってますが、それ以上に最後は音でみんなの気持ちを動かしたいんです。

-そんなこの曲に、タイトルとして"PICTURES"という言葉を冠した理由についても、ぜひ教えていただけますでしょうか。

暁:これは奈緒が付けてくれたんですよ。

奈緒:この歌詞自体は暁のことをフィーチャーした内容で彼が主人公になってますけど、聴いていくとそれぞれにとっても自分のことが重なるシーンってあるなと思ったんです。それって、思い出の数々を一枚一枚の写真とかスライドに例えることができるんじゃないかなと思って、"PICTURES"という言葉を使うことにしました。

暁:いいタイトルですよね。瞬間瞬間を切り取ったものではあるんだけど、映像とか心象みたいな意味もある言葉だし、複数形になってるところがまたいいなって思います。

-なお、シングルとしての『PICTURES』には、他にもカップリングとしてモダン且つデジタル色の強い「SPELL」、さらにバンド感が前面に出た爽快感の漂う「silly」(通常盤のみ)の2曲が収録されておりますが、今回の3曲はまたどれもライヴの場で映えていくことになりそうですね。

奈緒:「SPELL」に関しては、今回「PICTURES」の反動が出てこういうハードなテイストになったところがありますね(笑)。だから、これは完全にライヴで無茶苦茶やったろ! っていうモードの曲になってます。あと、一応「silly」のほうもライヴ曲として作ったんですけど、これは少し雰囲気や方向性が違いますね。みんなでグシャグシャになろうという感じではなくて、みんなの心がライヴでひとつになるように、青春ロックと呼んでもいいくらいの曲にしたいなと思って作った曲になります。

暁:「SPELL」の歌詞は遊びましたね。僕、歌詞を書くとつい苦しいとか悲しいとか、それでも闘えとかって暑苦しい内容になりがちなんですけど(笑)、これはちゃんと詞で遊べました。「silly」のほうは、自分が困ってるときとかに"お前、バカだなぁ"って笑い飛ばしながら一緒にいてくれる友達って、温かくていいよなという歌詞です。言葉でいろいろ言ってくれなくても、それだけでいいときってあるじゃないですか。歌としても、これは優しく歌い掛けるっていうことに挑戦しました。

-ここからアルルカンは今回の3曲を携えて、8月末には"アルルカン Presents「束の世界-SONOSEKAI-2022」"を開催し、さらに9月からは、全国ツアー"9th ANNIVERSARY TOUR「決意を前に」"へと突入していくことになります。そこに向けたみなさんの心境も最後にうかがえますか。

祥平:いつもと同じと言えば同じではあるんですけど、みんなで次のフェーズへと向けた新しい挑戦をしていく場にしていけたらいいなと思ってはいますね。

堕門:今の自分たちの音、姿を感じてもらいながらいいライヴをしていきたいっていう気持ちが僕は強いです。

奈緒:前回同様クオリティを上げたい、ということはこれまでと変わらず引き続き意識しながらやっていきたいと思ってます。あとはやっぱり、ここで『PICTURES』を出したからにはみんなにとっても、メンバーにとっても、その日その場にいる全員にとってのいい想い出を、たくさん増やしていくツアーにしていきたいですね。

來堵:今まで一番いろいろ考えてるかもしれないですね。この先のこととか、課題もいろいろあるし、答えはまだ出てないですけど、ツアー開始までにはもっとしっかりした状態で臨めるようにしたいと思ってます。奈緒も言ってたように、みんなと俺らにとっての大切な"PICTURES"をたくさん生み出しながら、9周年から10周年へと繋げていけるようにしたいです。

暁:この間ライヴで「MONSTER」と「PICTURES」を続けてやったとき、リハの時点から"これや!"ってメンバー全員のテンションがめちゃくちゃ上がったんですよ。俺たちにやれることってまだまだたくさんあって、次のツアーでは俺の見てるアルルカンの将来的なヴィジョンを、ライヴ・パフォーマンスというかたちで具現化していけるようにしたいと思ってます。『PICTURES』を聴いて"アルルカン、ここからどうなってっちゃうの!?"って心配になったやつも、『PICTURES』を聴いて"アルルカン、面白そうじゃん"って気になってくれた人も、全部を引っ張っていって確実にみんなにパワーを与えられる俺になりたい。っていうか、なります。

-11月26日にツアー・ファイナルとして開催される豊洲PIT公演では、より進化したアルルカンの音と世界をたっぷりと堪能させていただきたいものです。

暁:ワンマンはもちろんだし、今や他ジャンルの人たちとライヴとかイベントをやっても、全然イケちゃうのがアルルカンなんで。当然、今後のこともすべてお任せください(笑)。