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INTERVIEW

ADAM at

2022.06.14UPDATE

2022年06月号掲載

ADAM at

Interviewer:石角 友香

『OUTLAST』の「OUTLAST」って曲を起点に、日本のインスト・シーンが、変わったって誰かが思ってくれたら、それはそれで嬉しいこと


-面白いもんですよね。メタルはメタルで普遍的に若い人が好むと。一方でSergio Mendes的な音楽もある。この曲はある種普遍的なものの融合かもしれないですね。

どの時代でも新しい音楽っていうのが生まれてきたと思うんです。もちろんTHE BEATLESだって新しかったし、ミクスチャーの文化ももちろん新しかったし。インストの界隈で新しい音楽ももちろん出てはいるんですけども、インスト・ミュージックのシーンっていうのは、比較的その日が当たらない場所ではあるんです。興味を持たれない、知らないっていう好きでも嫌いでもないところにもいたりもするので。故にどんどんチャレンジしてもいいんじゃないかなっていうのは思ったりもしますね。メジャーなところにいて失敗したら"全然良くなかったよ"って言われたりもするけど、失敗したところで、そんなに脚光を浴びているようなシーンにいるわけじゃないので。新しいことをやるに越したことないのかなとか思ったりしますよ。そのなかでもしこの先、ADAM atの『OUTLAST』の「OUTLAST」って曲を起点に、日本のインスト・シーンが変わったって誰かが思ってくれたら、それはそれで嬉しいことですしね。

-最近、歌を聴きたいからイントロを短くしたり、ギター・ソロを飛ばして聴いたりする話もありましたが。

Marty Friedmanのね(笑)。

-インストは逆に言葉にとらわれないから、入ってきやすいんじゃないかと思うんですよね。歌しか聴かない、ってことは実はないんじゃないかと。

ありがたいです、本当に。こっちはずっと推してるんですけど、路地裏入って2回ぐらい曲がったところに店があるので、なかなかちょっと行きづらいんですよね(笑)。いつも赤提灯をつけてますんで。

-そして小説"猫と竜"のコラボが今回も収録されています。

そうですね。「kurobane」と「shirotae」の2曲です。

-ハードな楽曲がある一方で、「shirotae」は散歩や移動しながら聴くのにも似合いそうな曲で。

そうですね。こっちのほうがたぶん本業なので(笑)。

-どっちも本業だと思いますが(笑)。

基本的に興味を持ってもらうことが一番で。聴いてくださる方の日常の中でかけやすい曲だとかね、散歩だとかジョギングだとかドライブのときなんかに楽しくなるような曲を作れたらいいなと常に思ってますね。

-その"猫と竜"のコラボレーションは続いていますが、子供と魔法を使える猫の冒険っていうテーマがいいですね。

本当にそうなんですよ。もちろん漫画の世界、小説の世界の中ではあるんですけれども、音楽で取り入れるっていうのも、小説の世界に行けるひとつの鍵になるのかなと思ったりしてまして。想像することはご自由なんで、本を読んでいただいてね、外を歩いたときにその曲を聴いてもらってちょっとした日常が異世界風に感じたら、それはそれで日常が楽しくなるのかなとか思ったりしますよね。

-いくつかの登場人物――猫がいますが(笑)、シロタエちゃんはどういう存在なんですかね?

シロタエちゃんはですね、一緒にいる女の子が、おてんばで魔法の才能があるんですけどちょっと面倒くさがりな子で、そこに対してああでもないこうでもないとかいろいろ教えてあげる元気な猫ですかね。

-そういう入り口があるとちっちゃい子も楽しめそうな感じがします。

そうですね。例えば町の中にいる猫を見て、魔法が使えそうな気がすると思ったらもうその時点でね、異世界の感じがしますから。

-最強ですよね、この猫たちは。癒しでもあり。

我々は常に魔法をかけられていて。僕はアレルギーという魔法をかけられてます(笑)。もう"ライフライン"が全部止まるんですよ。鼻、口含めて。なんでもう"しょうがない、ジャケットの中だけでも猫飼おう"みたいな感じで、このジャケットの猫はうちの子です(笑)。

-ここからもイメージが広がりますし。相対するクロバネは全然違うキャラクターなんですね。

クロバネは強いんですよ。英雄ですね。

-で、この「kurobane」は、"パーカッションはスパイス"だというインスピレーションがあったそうで。

(笑)そうなんですよ、本当に。パーカッションを足せば足すほどトゥー・マッチになっちゃうんじゃないか? みたいなことが最初あったんですよね。それが去年、松下ぱなおさんにアレンジしていただいたときに、"それが何か悪いんですか"ってどんどん足してくださって、最終的に非常にいいパーカッションのアレンジになって。で、今回レコーディング当日までパーカッションを入れる気はあんまりなかったんですけど、ちょっと入れてみたら"これも欲しい、あれも欲しい"ってなってしまって、スパイスカレー的な感じがする。

-これが音階だと喧嘩しちゃう?

おっしゃる通りで、ぶつかったりするんですけどね。音階だったらぶつかるところが、パーカッションはリズム、音色が全然違うので本当面白いんですよね。最初はほんの出来心からシェイカーを入れたんですけど、シェイカーを入れたあとにちょっとね、ウッドブロックを入れたくなって、ウッドブロック入れたら次は鈴だなとかギロだなとか、どんどん止まらなくなっていくんですよ。

-料理で言うと、しょっぱくなるとかじゃないんですよね。スパイスだから。

おっしゃる通り。僕、カレー作るのがすごく好きなんで、これ"パーカッションはカレーだな"と(笑)。ドラマーがカレー作るのそれかもしれないですね。ははは! 和食とかって比較的差し引きで素材の味を楽しんでってとこあるじゃないですか。スパイスは入れたもん勝ちみたいなとこが結構あって。もちろん素材の味が大事なんですけど。でも見たことないけど入れてみよう、ダメだったらこっちで誤魔化そうみたいな感じ(笑)、あれはね面白いですよね。

-音楽と料理が似てるっていう話が極めてわかる具体例ですね。

ありがとうございます。比較的ジャズなんかは京料理に近いとこがありますからね。ライヴが一番みたいなとことか。例えばメタルなんかは完全にジャンク・フードみたいな、ジャンク・フードというかもうがっつり肉料理みたいな感じがあるなかで、うちのはなんですかね......あ、スパイスカレーだみたいな(笑)。

-すごく腑に落ちました。

これパーカッションをやる人はブチ切れたりしてね。"全然違ぇよ!"みたいな感じで言われりして。

-いやいや、もう一曲一曲が新しくて。

常に新しいものにチャレンジしていかないと、"あのときが一番良かった"っていうのが一番嫌ですからね。いつまでも今作が一番いいなって言ってほしいなと思いますんで、来年にはこのアルバムを更新できるようなものを作らなきゃいけないと考えてます。

-リリース後に主催イベントを3回開催されるんですね。"ADAM at「INST-ALL FESTIVAL TOUR2022」"と命名されていますが、歌モノのアーティストも出演するんですね。

これに関してはですね、今までいろんなフェスも出させてもらったなかでインストが我々しかいなかったんで、その逆、僕らは常にこういう気持ちでやってんだっていうのを味わってもらおうかなという。歌モノのバンドがアウェイ、みたいな。珍しい例ですよね。

-全部面白そうです。歌モノの方々もそれぞれで。

根本には好きな人を呼べるうちに呼ぼうっていうのがまず一番にありますね。やりたいことをやる、好きな人呼ぶ、いつまた会えなくなるかわからないんでっていう。

-地元浜松は2日間の開催です。

(歌モノは)BRADIOとフラワーカンパニーズです。

-アウェイを感じるのは(笑)。そしてfox capture planとは死闘が繰り広げられそうです(笑)。

いやいや、向こうははちゃんとしてますから(笑)。ちゃんとしたミュージシャンですから。

-演奏においてはどちらも殴り合いって感じしますよ?

あそこもすごいですよ。楽器3つだとは思わないような音の洪水というか、本当に攻撃しあってるのに調和が取れているという、素晴らしい三角形になってますよね。

-ADAM atはホスト・バンドというか、主催なわけですけど、主催ならではの計画は何かありますか?

せっかくだからやりたいなと思ってますよね。素晴らしいミュージシャンの方々にご出演いただくので。ただただライヴしてもらうだけじゃちょっともったいないと思いますんでね。BRADIOにはローション大相撲やってもらうかな(笑)......そういうわけじゃないですけども、なんかコラボしたいなと思ってます。

-それぞれキャラクターが強い人たちなんで。

そうですね。ぜひお越しいただければと思ってますので。ただ、上野(上野恩賜公園野外ステージ)は比較的音量規制が厳しいところなので、ライトな感じでお届けすると思います。アコースティックっぽくするのかなと。

-フルのバンド・スタイルもアコースティックも両面観たい方は、上野にも浜松にも足をお運びいただければということで。

一昨年、コロナでできなかったんですよね。結局トーク・ライヴという形で、リモートでお届けしたんですけども。去年はワンマンって形にして、今年ようやくこうやってゲスト・バンドを呼ぶことができて。もちろんお客さんの席は半分ぐらいにしてはいるんですけども、続けてきて良かったなってたぶん思うんだろうなと。浜松という地元にみんなが来てくれるのがやっぱり一番嬉しいですから。