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INTERVIEW

LM.C

2022.04.08UPDATE

2022年04月号掲載

LM.C

Member:maya(Vo) Aiji(Gt)

Interviewer:杉江 由紀

異彩を放つ"見事に混沌たる世界"を凝縮した今回のアルバムに冠せられたタイトルは、なんとも不穏な"怪物園"だ。昨秋に15周年を迎え、現在は今年9月まで続く15周年イヤーの中でLM.Cがここに完成させた作品は、ここまでに培ってきたものを生かしながらも、ここにきてより核心にまで踏み込んだ新境地を感じさせるものに仕上がっていると言っていい。現在進行中の"LM.C TOUR 2022 「怪物園」"と、9月に控えているLINE CUBE SHIBUYAでの15周年イヤーを締めくくるワンマン公演も含めて、アルバム『怪物園』を生み出したLM.Cだからこそ体現することができる、より臨場感にあふれたライヴもぜひ味わってみていただきたい。


とことんヘヴィに、とことんポップに、とことんダークに


-LM.Cにとっては2018年夏に発表された『FUTURE SENSATION』以来となる、待望のフル・アルバム『怪物園』が、ようやくここに完成しましたね。サブスク全盛の時代において、今作についてはコンセプチュアルな全体像を持たせることにより、アルバムとしての存在感を強く感じさせる仕上がりになっていると感じますが、この『怪物園』に向けてのヴィジョンは何を切っ掛けにどのようにして固まっていったものだったのでしょうか。

Aiji:統計学的に見ると、現代の人たちが集中して音楽に向き合えるのって、せいぜい20分くらいだっていう話があるじゃないですか。それこそサブスクとかもあって音楽の聴き方が変化してきているなかで、もはや40分とか50分のアルバムを聴いてもらうっていうのは難しいんじゃないの? って考えは我々の中でもあるにはあったし、特にmayaは"今どき、アルバムって聴かれますかね?"ってスタンスではあったんだけど、それでもとにかくずっと曲は作り続けていましたね。去年の12月くらいの段階で、やっぱり出すならフル・アルバムにしようかという話になったんですよ。

maya:ひとつには、"怪物園"というタイトルを思いついたことで、アルバムにしたときのイメージが自分の中でもしやすくなった、っていうのはありました。あともうひとつの理由があるとしたら、Aijiさんがフルのアルバムを出したそうだったからかな(笑)。

Aiji:なんか急に理由が安っぽくなるじゃん(笑)。

-あはは(笑)。それだけではなく、おそらくファン・ニーズというのもあったはずですよね。2020年の4月にツアー・パンフ+CD『Brand New Songs』が発売されて以降、ライヴ活動は続けられていた一方で新しい音源は発表されていなかったわけですから。

Aiji:そういう新曲を聴きたいと思ってくれてたみんなの気持ちにはもちろん応えられていると思うし、音源としての形態はどうあれ自分たちとしても納得のいくいい作品ができたので、結果としてはこれで良かったのかなと思いますね。

-それにしてもですよ。当初、この"怪物園"というタイトルと最新アーティスト写真だけが先行して情報解禁になったときには、かなり驚きました。言葉の響きといい、暗い影でおふたりの目元が隠された写真といい、なんとも言えないただならぬ不穏な雰囲気を感じたのです。もともとLM.Cはポップでキラキラした空気感を纏うことの多かったアーティストですので、余計にものものしさを感じてしまったのかもしれません。

maya:あぁ、あの打ち出し方に関してはきっとみんなそういう感覚を持ったでしょうね。自分の中では曲制作をしていくなかで「Elephant in the Room」、「Panic Time」、「End of the End」あたりが詞まで完成して揃った時点で、なんとなく『怪物園』に向けた道筋が見えた気がした感じだったかなぁ。それまでは、2020年の4月に出した『Brand New Songs』に入ってた「Happy Zombies」、「Campanella」、「No Emotion」の3曲は今作に収録しないつもりだったんですけどね。というのも、2022年と2020年の曲を1枚に収めるのはどうしてもタイムラグがあるし、それぞれの曲の立ち位置や詞の内容と世界的な流れの面でもちょっと微妙かなと思って。

-しかしながら、結果としてその3曲はアルバム『怪物園』の中でそれぞれに重要な役割を果たすことになっていませんか。

maya:そうなんですよね。その3曲は今もライヴでずっと活躍しているわけだし、アルバムに入れないままにしておくと、"踊り場でずっと待ってる子たち"みたいになっちゃいそうな気もしてたから、新曲の「Elephant in the Room」、「Panic Time」、「End of the End」ができたときに、これと『Brand New Songs』の曲たちが一緒に収まるかたちのアルバムを作るという選択肢はあるのかな? と想像することにしてみたんです。そうしたら、まずは「Elephant in the Room」と「Panic Time」、「Happy Zombies」あたりのイメージがだんだんと大枠の中でリンクしていって、この"怪物園"というタイトルを思いついたんですよ。そこからは、自然と「Campanella」と「No Emotion」も『怪物園』の中に居場所を見つけていくことができました。

-LM.Cは2013年に、「My Favorite Monster」という曲をシングル表題曲としてリリースしたことがありましたけれど、あのときがあくまでもポップなモードだったのに対し、今回の『怪物園』については、タイトルが漢字3文字になった途端に、やたらと得体の知れない印象を色濃く感じてしまいます。このアプローチの違いは興味深いですね。

maya:切っ掛けとしては"怪物園"というタイトルをひらめきました、っていうところがとにかく大きいんですよ。それに、LM.Cはここまでの15年の中で、今までと違うことを常に追い求め続けてきたところもかなりありますからね。その中でも『怪物園』が持つ存在感は、これまでの流れから結構大きくハミ出したと言えるのかもしれない。

-「Elephant in the Room」の歌詞には"見事に混沌たる世界"というフレーズがありますけれど、この言葉はアルバム『怪物園』の内容を如実に表してもいますね。

maya:うん、そうだと思います。『怪物園』で表現してる怪物っていうのはいわゆるモンスターとか、西洋的なホラー、そして誰もが想像するような怪物ともまた違うものですからね。この時代とか、この地球上に巻き起こっていることを踏まえながら聴いてもらうと、いろんな縮図になってる作品だと捉えることもできるだろうし、受け取る人によっていろんな聴き方や楽しみ方をできる作品になったと思うので、そういうところがこのアルバムはすごくいいなと自分でも感じてます。

-つまり、今作における怪物というのは限りなく概念的なものなのでしょうね。

maya:特定の見た目をした何かではないのは確かです。

-ところで。今作『怪物園』の中でいうと、「End of the End」は昨年10月にNAGANO CLUB JUNK BOXで行われた[LM.C LIVE 2021 -The Best Live Ever Vol.9- "End of the End"]のファイナルにて初生披露されたものでしたよね。15周年イヤーが始まるというめでたいタイミングで「End of the End」とは、なかなか意味深だなとも当時は感じたのですが、このたび初めて歌詞カードを見ながら曲を聴いたことで"なるほど、そういうことだったのか"と思うところが多々ありました。

maya:2020年に入って、それまでの活動に比べると、何事も思うようにはいかないなぁっていう日々が続いていたなかでも、Aijiさんはずっと曲を作り続けてくれてたんですけどね。自分はあの頃、なんにもする気が起きなかったんですよ。でも、そんな時間が続いていったときに、いよいよ何かをかたちにするべきときが来たんじゃないかとなって、ようやく作ることができたのが「End of the End」でした。今作の中の新曲第1弾だったわけです。

-"こんなはずじゃなかった/そんな話さえ過去のモノ"とは、まさに2020年にコロナ禍が勃発した頃のことを振り返った表現なわけですね。そして、そこで絶妙に繋がってくるのが、ちょうどアルバムの中で「End of the End」の前に位置している「Happy Zombies」になると思うのですが、こちらはなんとコロナ禍が発生する以前に書かれたものであるにも関わらず、"どんなウイルスも怖気付くほどシャイン"というフレーズを含んだものでした。言うなれば、予言と実際の現実がここでは並んだことになります。

maya:世の中の状況とかを直接的なかたちで作品中に反映させることって、自分はあんまり好ましく思っていないはずなんですけどね。それなのに、まったく意図せず「Happy Zombies」は結果として現実とリンクしちゃったっていう。そして、流れ的に「End of the End」に関しては"いい加減、これはもうちゃんと向き合わないと、ここから先に何も生まれないな"とある種の覚悟をして書いたものでもありました。今思っていることや、今の自分が置かれている状況をあえてそのままかたちにしたんです。

-"無愛想な現実も 終わらせて update"というフレーズには救いを感じますよ。

maya:今回の『怪物園』の中では、立ち位置的に「Happy Zombies」と「End of the End」は共に"ここまでのLM.C"の姿勢を継承したものになってるからでしょうね。

-もっとも、サウンドの面からいけば「End of the End」はギター・リフもヘヴィですし、全体像としてもエッジ感がかなり際立っておりますので、LM.Cとしてはこれまで以上に先鋭的な音を体現したことになるのではありませんか。

Aiji:2016年に出した『VEDA』っていうアルバム以降、自分的にはどこか原点回帰的なモードになってきてるんですよね。10代の頃の自分が聴きたかった音とか、当時の自分が今のスキルを持ってたらきっとこういうものを作ったんじゃないかとか、あの頃の自分が聴いたらテンションあがるだろうな、というニュアンスで曲、音を作ることが増えてるんです。だから、この『怪物園』を作っていくうえでも、自分にとってのロックの原体験的な要素は必然的に反映されていくことになりました。

-LM.CはEDM的なサウンドも得意ですが、こと『怪物園』は激ロックの読者にも響きやすいような楽曲が多く収録されていますよね。

Aiji:響いてほしいな、という願いはありますよ。ロック少年でもロック青年でもいいけど、ロックが好きな人たちに聴いてほしいという思いは当然あります。

-ギターの音自体はずいぶんと歪んでいるにも関わらず、全体としては洗練された音にメイキングされている手腕はさすがです。

Aiji:LM.Cなりの、ここまで15年かけて培ってきたバランスは大事にしてますよ。どんなトーンの曲でもメロディ自体はキャッチーだし、何ひとつ捨ててないんで。

-先ほども話題に出てきた「Elephant in the Room」は、その最たるものとも言えそうです。このアレンジは大胆で刺激的ですね。

Aiji:サビまでは俺のギターとmayaの歌とリズムだけでベースの音が入ってないですから、よりソリッドに聴こえると思います。

-そういえば、この"Elephant in the Room"という不思議なタイトルは、どのような発想から生まれたものだったのですか?

maya:これは慣用句なんです。どういう意味だと思います?

-本来は象が部屋の中にいる、というケースはまずありえないわけですから......。

maya:いるはずのないものがいる=誰もそれに触れない、っていう状況を表す慣用句なんです。暗黙の了解なのか、触れてはいけないのか、何しろ"あれ? ここに象いるけど"って誰も言えない状況を英語で表した言葉なんですよ。

-その意味もかんがみたうえで歌詞を読み解いていくと、これもまた抽象的にではありますが、昨今のmayaさんが感じてきたことを表した歌詞であることが見えてきますね。

maya:今っていうものと重なる部分はそれなりにあるでしょうね。でも、ひとつの物語としても成り立っているものではあるんです。

-その点、物語としての恐ろしさを感じたのは「Valhalla」ですよ。アルバムが完成した時期を考えると、世界情勢が激変したタイミングよりも先に生まれていた曲のはずなのに、このタイトルが意味するのは北欧神話の戦神の宮殿の名であり、歌詞には"愚かさとは/正しくあるということだけに/取り憑かれること"と出てきます。コロナ禍を見越していたとも解釈できる「Happy Zombies」に続いての、予言シリーズになってません??

maya:たしかにそうなっちゃったな、という気は自分でもしてます。まったく思いがけず重なっちゃいましたねぇ。

-テーマがテーマだけに「Valhalla」のサウンドはことさらヘヴィですが、この音を作っていく際に重視されたのはどのようなことでしたか。

Aiji:「Valhalla」は今までの感覚だったら、LM.Cでやるべきじゃないとまでは思わないまでも、守備範囲になくてもいいところにあるムードを持った曲だったんですよ。今回はそこのリミッターが外れたというか、さっきの原点回帰なゾーンにさらに入ったところで産まれてきた曲のひとつですね。でも、自分の昔からのキャリアを知ってる人からしたら、こういうダークなタイプの曲をやるのは全然普通に感じると思いますよ。LM.Cとして表現するうえで意識したのはとことんヘヴィに、とことんポップに、とことんダークにっていうことかな。