INTERVIEW
LM.C
2022.04.08UPDATE
2022年04月号掲載
Member:maya(Vo) Aiji(Gt)
Interviewer:杉江 由紀
-なお、今作『怪物園』は、そんな「Valhalla」のあとに「No Emotion」へと展開していく構成になっております。このアルバムのこの位置に入ることで、「No Emotion」は新たな使命を持った感がありますね。ブースターになっているように聴こえます。
maya:思った以上に『怪物園』にハマる曲だったんだな、ということは感じます。言うなれば、アルバムの中に既発シングル曲が入ったときの役割もちゃんとしてくれてますね。
-それから、「Panic Time」についてはすでに始まっている"LM.C TOUR 2022 「怪物園」"の中で大活躍している曲となります。こちらはメロディ運びが独特ですね。
Aiji:これは歌メロから作ったもので、日本の童謡に近い作りになってるものなんですよ。アレンジ的にはライヴのことを意識していたので、意図的にシンプルにしてますね。ギターを重ねて必要以上に厚くしよう、とかはしてません。なるべく余分なものは入れずに、ギター1本で引っ張っていってます。
maya:この"Panic Time"っていうタイトルは、純粋に曲から受けるイメージをもとに付けたものでしたね。曲がこれだけ炸裂してるからなのか、歌詞もそれに沿っていくかのごとく言葉が生まれていって、仕上がりとしては、このアルバムじゃなかったらこうはなってなかったのかもしれないという完成形になった気がします。
-さて。ここで今作におけるもうひとつの仕掛けにも触れておきたいのですが、既発曲である「Campanella」と8曲目に収録されている新曲「Lost Summer」は、詞の面でも音の面でも相関関係を持ったものになっているように感じました。考えすぎですか?
maya:いや、そんなことはないです。そこまで直接的に繋がっているわけではないですけど、「Lost Summer」のほうは2020年夏の出来事をこれもわりとリアルに歌っているもので、「Campanella」はその入り口みたいなものなんです。
-鍵盤の音も「Campanella」と「Lost Summer」では近いものを使っていらっしゃいますよね。
Aiji:そうっすね。2曲が続いているものだという認識は自分の中にもありましたから、そこは意図してそうしました。
-「Campanella」が発表されたのは2020年2月でしたし、この曲のレコーディングが終わって、ツアー・パンフレット用のインタビューをさせていただいた頃は"中国で未知なる謎の感染症が流行っているらしい"という状況下でしたが、その際にmayaさんは"これはSF的なフィクションで、カンパネルラっていう名前の未確認物体が突如として地球を滅ぼしにやってくるんですよ。「2001年宇宙の旅」でいうモノリス的なものですね。つまり、何をしてようとしていまいと、頑張ろうが頑張るまいが、未知なる驚異によって簡単に日常や人生は終わっていってしまう。だったら、気楽に行こうぜ! っていう歌詞なんです"と語られていました。そのことを思うと、今回の「Lost Summer」は、"未知なる驚異"が感染症というかたちをもって発生してしまった世界の話を、今度はノンフィクションとして描いたものになるのでしょうね。
maya:そういうことになります、まさに。切り取り方の違いで、別の曲になったというか。「Lost Summer」に関しても、本来的にはあまりシチュエーションを特定できるものにはしたくなかったんですけど、さっきの「End of the End」を書いたときと同じ理由で、"そのままありのまま"な詞にしたんです。
-あぁ、それで「Lost Summer」には"終わりの終わりへと向かう"と「End of the End」に繋がるフレーズが入っているのですね。とても腑に落ちます。ちなみに、この曲ではPlastic Treeの佐藤ケンケン(Dr)さんが、"Hi-Hat Groove&Cymbals"というかたちでの参加をされているようですが、これはどういった経緯でのことだったのです?
Aiji:LM.Cの音源では基本的にビートはいつも打ち込みなんですけど、それでも「Lost Summer」に関してはヒューマンなニュアンス、グルーヴがどうしても欲しいなと思って、レコーディングはいったん終わってたんですけど、急遽ケンケンにスタジオに来てもらってハイハットとシンバルだけ叩いてもらって、差し替えました。
-かくして、今作の中では「Campanella」と「Lost Summer」の間に、はさまれるように収録されているのが「Montage」になります。なんでも、こちらは今作中で最も古い歴史を持つ曲になるのだとか。
Aiji:もともと「Montage」の原曲ができたのは2018年でしたからね。いつか音源化させたいとは思いながらも、今のかたちにはなっていなかったものなんです。ただ、今回このアルバムに入れるのにあたってはサビのメロを変えました。
-「End of the End」の歌詞さながらに"update"されたわけですね。
maya:「Montage」は原曲ができたのは2018年ですけど、歌詞は『怪物園』の中で一番最後にできた最新のものなんですよ。
-内容的には、この世におけるあらゆる矛盾に通じることが描かれている印象です。"御都合主義"、"クレショフ効果"という単語を用いながら現世の不条理を歌う一方、"脈絡など無い愛で構わない"とも歌いつつ"守り抜きたい場所があるよ/今も"という今ここにきての所信表明までされていて、そこに潔さを感じました。
maya:全体としてはいつでもどんな場面でもどんな人にでも通ずるような書き方をしてますけど、これを書いた状態は今までにないものだったんですよね。我々はYouTubeの公式チャンネルで"LM.C Streaming Club"という配信をやってるんですが、そこで音声のみですけど流しながら詞を書いたんです。
-作詞の生中継ということですか?!
maya:ちょっと思いつきでやってみようかなと(笑)。なんなら、こっちは無言とかたまにちょっと言葉を発したり、たまにギターを弾いてコードを確認したりするくらいで、あとはただずっと詞を書いてるなか、コメント欄でひたすら応援されるっていう状態はなかなか面白かったです。"これはどっちの言葉がいいと思う?"って意見を貰ったりもしたし。だから、そういう仲間と一緒にいる時間とか、みんなの存在を改めてリアルタイムに感じたときに出てきたのが、"守り抜きたい場所があるよ/今も"みたいな言葉だったんですよ。この2年以上、自分に限らずエンターテイメントの世界で舞台に立つ人たちは、誰もが応援してくれる人たちの存在の大きさを再認識することになったと思うんです。この詞には、"15年経っても、未だに仲間でいてくれてるみんなってすごいな"という気持ちを込めました。みんなとはお互いに支え合っている関係なんだな、と改めて感じましたね。
-ここからのLM.Cは、アルバム『怪物園』を引っ提げての"LM.C TOUR 2022 「怪物園」"で、今度はライヴ・バンドとしての魅力を全開にしていくことになると思いますし、来たる9月25日には、昨年10月から続いてきた15周年イヤーの最後を締めくくる、LINE CUBE SHIBUYAでのワンマン公演も控えております。激ロック読者の中には、LM.Cのライヴをまだ体験したことがない方もいらっしゃるかもしれませんので、ここは最後に"LM.Cのライヴはここがすごい!"というところをわかりやすくアピールをしていただいてもよろしいでしょうか。
Aiji:何より、俺らが自由に好き勝手やってるところですかね(笑)。mayaなんて、セットリストおかまいなしでその場のノリで曲順を変えちゃうことがよくあるし、演出ではない本物の生感がすごくあるっていうのは、LM.Cだからこその魅力なんじゃないかと思います。来てもらえれば、その日その瞬間にしか味わえない感覚を味わってもらえるはずですよ。
-LM.Cはおふたりのロック・ユニットである反面、ライヴでは長年のお付き合いがあるDracoVirgoのベーシスト mACKAzさん、LiSAさんのサポートなどもされているドラマー 石井悠也さんが脇を固めるかたちで、放っている音は完全にバンドですものね。
Aiji:そうそう、俺ら自身もライヴの場ではバンドの楽しさを思いっきり体感できるんですよ。そこはほんと、もう10年以上もサポートのふたりと一緒にやってこられたおかげだと思うし、我々はとても恵まれていたなと感じてます。バンドだって10年続くケースはそんなに多くないわけだしね(笑)。今やってるツアーも、みんなですごくハッピーに楽しませてもらってます。
maya:こうして『怪物園』も完成したことだし、今は15年イヤーの只中でもあるわけで、ここはライヴ・パフォーマンスの面でも、新しいところに行きたいなっていう気持ちが自分としてはかなりありますね。1本ごとに"やりきる"ようにしていきたいです。
Aiji:そのうえで、9月25日のLINE CUBE SHIBUYAは15周年のシメとして、お祭り的なニュアンスも含んだライヴにしていけたらいいなと思ってます。
-できることなら、今年の夏はライヴを通じて、"Lost Summer"をLM.Cとファンのみなさんで目一杯に取り戻せるといいですね。
maya:そこ大事ですよ。まさに「Lost Summer」で歌ってますけど、この2年に限らず人生の中でのすべてを"なかったこと"にはしたくないんです。そのためにも活動を続けていくことには大事な意義があると思うし、そうじゃないとあの夏が浮かばれない。やりきれないですもん。あの季節を経たからこそ生まれたのが『怪物園』だし、それはLM.Cにとって必然性のあることだから、ここからは「Elephant in the Room」で歌ってる"見事に混沌たる世界"を、ライヴでも楽しんでもらいたいかな。