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INTERVIEW

J

2021.11.02UPDATE

J

Interviewer:杉江 由紀

-それから、痛快にしてエモいドライヴ感を持った曲という点では「Night Flame」の仕上がりも素晴らしいと感じました。

ありがとうございます。これは8ビートの曲で、今までも同じようなスタイルの曲はほかにもいろいろ作ってきてはいるんですが、毎回レコーディングが終わると"次はこうしてみよう、ああしてみよう"っていうことがいつも続いてきていたんですよ。というのも、8 ビートというのが追求し出すとほんとに深くて。どこにドラムのキックを置いて、シンバルを置くかで全然もうノリが変わっちゃうんですね。「Night Flame」ではここまでに積み重ねてきた経験値を生かしながら、"もっとグルーヴさせたい!"という気持ちでドラムのmasuo君(Yoshio "masuo" Arimatsu)と一緒にひとつひとつキックの音の位置を検証しながら、徹底的に追求していきました。

-かなり職人的な取り組み方をされていったのですね。

これ、8ビートですけどね。実は16なんですよ、拍子の取り方は。

-なるほど、それであれだけの疾走感が醸し出されていたのですか。

そうなんです。リズムに徹底的にこだわるっていうのを始めたのは、今思うとあれは1997年に初めてソロとして作ったアルバム『PYROMANIA』からのことでした。あのときは、LUNA SEAでいったんバンドが止まったときでした。日本でライヴハウスから登り詰めていって東京ドーム公演などもやって、ある程度のところまでいった段階で、"じゃあ、今の自分は世界の中でどこにいるんだろう?"ということが知りたくなって。自分が"すげーなぁ!!"と思うロック・ミュージシャンに声を掛けてセッションしたんです。ガンズ(GUNS N' ROSES)のSLASH(Gt)や、THE CULTのメンバー(Billy Duffy(GT)、Scott Garrett(ex-Dr))とか、本物のロック・ミュージシャン、トップ・ミュージシャンたちと一緒にセッションをして作品を作っていったんですけど。今思えば、あの約25年前の自分は彼らから"音楽を、ロックを作る秘訣を盗んでやろう"とか"暴いてやろう"っていう意識だったんですよ。

-超野心的でいらしたのですね。

うん、日本のロックのためにもという思いもあった。だけど、そこには特別なことは何もなかったんです。だって、Billyなんて裸のギター1本を担いでスタジオに来たんですよ(笑)。

-えっ。こだわりの機材を持参とかではない?

全然。"機材、何使う?"って訊いたら"そこにあるものでいいよ"って。スタジオにあるマーシャルに直でそのまま突っ込んで、バーン! って鳴らして。でも、彼らはそれだけで完全に"彼らの音"にしてましたからね。SLASHにだって特別な秘密は何ひとつなかった。彼らが弾けばその音が生まれ、まさに正真正銘のロックだった。結局、彼ら自身がロックだったんです。そのあと、そのときのレコーディングに参加してくれたメンバーとは日本でhide兄のzilchと一緒にツアー("FIRE WIRE TOUR 2001 BURN SEVEN CITIES BURN")もやってね。あれはいい意味でとんでもないツアーだったんですよ。しかも、その最後には彼も呼んだんです。SEX PISTOLSのSteve Jones(Gt)を。

-すごいですね、それ。

僕もすごいと思いました。名古屋のライヴハウスのステージにSteve Jonesが立ってるって(笑)。彼は楽器さえ持ってきてなかったら"どれ弾く?"って訊いたら、即答で"Gibson!"って。でも、そんな状態でこれまたGibsonのギターをマーシャルに直で繋いでガーン! って弾いただけで、やっぱりSteve Jonesの音なんですよ。

-いわゆる弘法筆を選ばず、というやつですか。

本物のアーティストってそういうことなんですよね。結局、その人がロックだからなんです。あの97年から2000年くらいの間にソロとして経験したことの影響は未だに大きくて、今回のアルバムを作っていくうえでもそういう揺るがない自分だけの音みたいなものを追求したいなって終始思ってました。ロック・ミュージシャンとしてはあの領域まで行きたいよね、っていうふうに。

-なお、今作もそうですが、Jさんはソロ作品の中でいわゆるベース・ソロのくだりを作られることがまずありませんよね。ベーシストのソロ・アルバムとして考えると、これはなかなか珍しいことなのではないでしょうか。

自分とベースとの距離って、不思議だなって僕は常に感じてるんですよ。楽器を始めたばかりの頃は必死に練習していたし、少し弾けるようになってからは自分のベーシストとしてのスタイルを模索していた時期もあって、改めて考えてみると昔も今も変わっていないところがあるとすると、それは"誰でも弾けるようなフレーズを誰よりもカッコ良く弾きたい"っていう思いなんですよ。

-深いお言葉ですね、それは。

その思いが根底にあるからなのかは自分でもわかんないですけど、曲を作るときにベース・パートのフレーズを考えるのは常に最後なんです。

-ということは、その時点でソロを入れる余裕はなくなってしまっていると。

ベース・ソロはなくても、シンプルだとしてもその中にカッコ良さがちゃんと存在してないと絶対にダメ。自分で聴いてて気持ち悪くなっちゃう。あと、ベーシストだからこそ、ベースだけがヘンに目立ってうるさい音楽は好きじゃないんです(笑)。

-このインタビューの最初のほうで、Jさんは"バランス"について言及されておりましたが、そこもバランスが大事だとお考えなのですね。

僕は、ベースって奥ゆかしい楽器のひとつだと思うんですよ。ただ聴いている人の耳をガツガツ奪いに行くような、無意味なフレーズ合わせじゃなくて、ちょっとした曲の合間とかほんの隙間でも人をドキッ! とさせるようなベースを弾く人って存在するから。自分はそういうベーシストに憧れます。

-では、一方でヴォーカリストとしてのJさんは今作においてどのようなことを心掛けられましたか。

ベースから始めた音楽人生なので、ソロを始めた頃は歌うっていうことに対しての経験値が本当になかったし。だけど、だからといってソロの作品でゲスト・ヴォーカリストに歌ってもらうという選択肢は自分の中にはまったくなくて、たとえ上手く歌えなくてもソロ作品である以上は僕自身が歌うこと、僕が自分から発することで説得力が生まれるはずだし、自分の想いはほかの誰にも表現できないって思ったところから始まって、ずっと今に至っていますね。今回のアルバムでは歌に関してはもはやストレスとかも何もなく、録ってて楽しかったです。

-中でも、アルバムの最後を飾る「CHANGE」では、アーシーでスケール感のある曲を彩るJさんのワイルドなヴォーカリゼーションが大変映えておりますね。

ひと言、ひと言。ワンフレーズ、ワンフレーズを紡いでいくように歌えたかな。曲を作ったときに思った"自分に歌ってほしい歌"みたいなものを、わりと忠実に形にすることができました。

-そのほかにも今作には「HEAT」や「Over and Over」など聴きごたえのある楽曲が幾つも収録されておりますが、そんなこのアルバムにJさんが"LIGHTNING"というタイトルを冠した理由についても、ぜひ教えてください。

パンデミックになったときに今まで以上に自分と音楽について考えたという話をしましたけど、そんなときにまたロック・ミュージックに対して感じたんですよ。電流が走るような鮮烈な感覚を。音楽が好きな人だったら、誰でも絶対そういう経験をしたことってあると思うんです。僕はロック・ミュージックに出会ったときに、強烈なそれを感じて目覚めて、音楽を始めたし、今でもやっぱり自分はそういう音楽に取り憑かれたままだなって再確認したんです。その感覚を"LIGHTNING"というタイトルに表したんです。もし叶うなら、今度は僕の作ったこの音楽が誰かにとっての稲妻になってほしいという願いも込めて。

-そんな今作『LIGHTNING』は、聴いていると無性にライヴを観たくなってくるアルバムでもあります。11月3日からは"J LIVE 2021 -LIGHTNING- Special Circuit"が始まっていくことになりますが、ステージでこれらの曲たちを披露されていくことに対してJさんは今どのようなヴィジョンをお持ちでいらっしゃいますか。

コロナウイルスの状況も変化して、ライヴに関しても去年に比べればずいぶんとオープンな雰囲気にもなってきたと思うし、とにかく実際にライヴをやるタイミングでベストな方法をとりながら、この自分としても大好きな作品になったと感じている『LIGHTNING』というアルバムの曲たちを、ライヴでみんなと一緒に盛り上がることができたら嬉しいです。全席指定っていうスタイルでやるのは初めてのことだし、まだ制限もあるなかでのことではありますが、逆に今までにはなかった楽しみ方というのも必ずあるはずだからね。特別なライヴになると思うので僕も楽しみにしてますし、みんなも楽しみにしててください。