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INTERVIEW

Edu Falaschi

2021.05.11UPDATE

2021年05月号掲載

Edu Falaschi

インタビュアー:菅谷 透

元ANGRAのフロントマンで、自身が率いるバンド・プロジェクトのALMAHや、ソロ・アーティストしての活動も行っているEdu Falaschiが、自身の名を冠したバンドでレコーディングした初のオリジナル・アルバムをリリースする。15世紀末のポルトガルから母国ブラジルを股に掛けた壮大なコンセプト・アルバムの本作は、まさにEduの本領発揮と言えるメロディック/プログレッシヴ・メタルが展開されており、シンガー/コンポーザーとしての彼の魅力を存分に堪能できる仕上がり。同郷のメタル・レジェンド Max Cavalera(ex-SEPULTURA/SOULFLY/CAVALERA CONSPIRACY etc.)や、大御所の歌姫 Elba Ramalhoのゲスト参加も大きなトピックと言えるだろう。そんな渾身のアルバムについて、Edu本人に大いに語ってもらった。

-少し前の話になりますが、2018年10月には"Rebirth Of Shadows Tour"としてANGRA時代の楽曲を再現するライヴを日本で行いました。そのときの思い出などあればうかがえますか?

日本ではいつもいい思い出ができるよ。2018年のツアーはものすごく久しぶりという意味でも印象深かったんだ。たしかその前は2008年とか2009年とか、そのくらいじゃなかったかな(※2011年にALMAHで来日)。また行けたなんて信じられなかったよ。日本も日本のファンも大好きだから、日本に行くというのはいつもとても光栄なことなんだ。超嬉しかったよ。

-2019年5月には、地元サンパウロでオーケストラと共演したスペシャル・コンサートを行っています。この公演はライヴ作品(2020年の『Temple Of Shadows In Concert』)としてもリリースされていますが、これまでにオーケストラとの共演はあったのでしょうか? また、コンサートを行ってみていかがでしたか?

オーケストラとの共演は初めてだったよ。ただ、アイディア自体はANGRA時代からあったんだ。『Temple Of Shadows』(2004年リリース)というアルバムを記念して、全部の曲を演奏するという話が出ていた。実際2005年に実現しようとしていたんだけど、どうしてできなかったのかは今となっては思い出せないんだ。そのあとソロに転向してから何年も経って、もし実現できたらファンが喜ぶんじゃないかとふと思ってね。それでアルバムの15周年に合わせてコンサートを開いたんだ。とてもクールだったよ。あのアルバムの曲を本物の大きなオーケストラと共演するのを観たということで、ファンもクレイジーなくらい喜んでくれたしね。

-ANGRA時代からのファンも多く訪れたのでしょうか。

そうだね。いろんな世代の人たちが来てくれたのが興味深かった。当時15歳とか18歳とかそのくらいだった古くからのファンが、15年経って30歳、35歳くらいになっていた。その間に結婚したり子供ができたりしていてね。クールだったよ。もちろん新しいファンも来ていたし、親子で来ていた人たちまでいたんだ。だから10歳とか8歳とか、キッズがたくさん来ていて嬉しかったよ。最高だったね。

-アルバムだけでなく、あなたのキャリアを称えるようなコンサートでもあったんですね。

そうだね。それは間違いないと思う。

-ANGRAのメンバーも喜んでくれましたか?

うーん......申し訳ないけど、もう"友達"って感じではないんだよね。ファンのためにもそのへんは正直に言うようにしているんだ。俺が2012年に脱退してからも連絡を取り合うようにはしていたけど、いろいろすれ違いがあってね。Kiko(Loureiro/Gt)はMEGADETHに行って、Rafael(Bittencourt/Gt)はANGRAを続けているけど方向性が変わったし、俺も別のことをやることにして、2017年に本格的にソロになったから。――正直、俺があのコンサートをやったことにちょっと嫉妬しているんじゃないかな(笑)。

-"俺たちがやりたかったのに!"みたいな(笑)。

まぁ、でも向こうの立場からしたらそう思うのは間違いじゃないよ。素直にそう思うんじゃないかな。でも本当の話、今もあいつらのことは大好きだ。たくさんのことを共にしてきたし、いいこともたくさんあったし、一緒に成長してきたからね。KikoとRafaelとは2001年の『Rebirth』(4thアルバム)以来素晴らしい作品をたくさん作ることができた。美しい思い出が本当にたくさんあるんだ。今思い出すのはそういうことだよ。ケンカとかすれ違いじゃなくてね。嫉妬はされたかもしれないけど(笑)、すべてオーケーだ。向こうも俺が書いた曲を今でもプレイしてくれているしね。

-お互いアーティストとしてのリスペクトが今もあるということですね。

そうさ。例えば俺が書いた「Nova Era」(『Rebirth』収録曲)、「Spread Your Fire」、「Angels And Demons」(『Temple Of Shadows』収録曲)、他にもたくさんやってくれているしね。一番大切なのは音楽だと思うんだ。ケンカや相違や嫉妬じゃなくてね。つまるところ大切なのは音楽とファンだ。本当に大切なのはそれだと考えているよ。

-ここからはアルバム『Vera Cruz』についてうかがいます。日本ではちょうど2週間後(※取材は4月28日)に先行リリースされますが、他の国はいつですか?

ブラジルでは5月18日じゃなかったかな。ヨーロッパでも18日に配信リリースされるんだ。フィジカルはヨーロッパでは31日だったと思う。日本の20日くらいあとだね。日本はいつも最初だよ(笑)!

-発売を控えた今の心境をうかがえますか?

いろんな気持ちがあるよ。――ANGRAを脱退してからの俺は、アーティストとしての自分探しに苦労した時期があったんだ。そのあと2017年にソロ・コンサートをやることにした。アルバムじゃなくてね。ANGRA時代からの友人、Aquiles Priester(Dr)に会ったんだ。今も一緒にプレイしているけど、ANGRA時代も一緒だった。たしか10年ぶりくらいに再会して、ソロのキャリアをスタートさせることになったんだ。当初はみんなこれが成功するのかしないのかわからなかった。ソロ・ツアーとバンドは違うし、ソロとしてキャリアを成功させるのはバンドより少し難しいんだ。コンサートはブラジルでの7公演から始めたんだけど、チケットは3週間くらいでソールド・アウトになって、大成功だった。それで"もしかしたらこれは正しい方向に進んでいるんじゃないか"という手応えができたんだ。それが終わってから、マネージャーに"ツアーでは『Rebirth』と『Temple Of Shadows』の曲をやったけど、今度は何をやる?"と聞かれた。そんなときにブラジル人のファンに"『Temple Of Shadows』が15周年を迎えるのはご存じですか"と言われて、もしかしたらそれを祝うのもいいアイディアじゃないかと思ったんだ。あれはとても重要な作品だからね。それで、オーケストラと組んだ大規模なツアーをやることにした。ブラジルでは大成功だったよ。それが終わってから、またマネージャーにこう言われたんだ。"『Temple Of Shadows』の全曲演奏をやったんだから、今度は何か新しいことをやるのはどうだ?"とね。ただ俺には当初迷いがあって、ファンが本当に新しいものを望んでいるか、それともノスタルジックで古い曲しか聴きたがらないのかがわからなかったんだ。しばらく迷った末に出したのが、EPの『The Glory Of The Sacred Truth』(2018年リリース)だった。それが大成功してね。YouTubeでも100万回近く再生されたんだ。それで"あぁ、もしかしたら新しいアルバムを作るときなのかもしれない。新曲を作って未来のことを考えよう"と思ったんだよ。そうして新作のコンセプトを考えるようになった。俺たちはブラジルのバンドだから、ブラジルの音楽的な文化や歴史を見せるものにするのはどうだろうと思ったんだ。そうして作ることにしたのが『Vera Cruz』で、ブラジルの歴史について語っているアルバムだ。コンセプトの裏にはフィクションがあるけど、基本的には1500年あたりの、植民地時代のブラジルの文化についての話だね。大昔の話だけど、ポルトガル人がブラジルにやってきて、というかブラジルの大陸を"発見"した。その大陸が"Vera Cruz"と呼ばれていたんだ。

-タイトルの"Vera Cruz"はブラジルの名前だったんですね。

そう、ブラジルに初めて付いた名前だったんだ。

-確かポルトガル語で"真の十字架"という意味ですよね?

そうだね、"Cruz"が"十字架"という意味で......英語だったら"The True Cross"、"The Real Cross"みたいな感じかな。1500年にポルトガル人がインドに行こうとして大洋を航海していたんだ。でもなぜか(笑)、ブラジルに辿り着いた。別方向に行ってしまったんだ(笑)。辿り着いたところにはたくさんの原住民がいた。"おぉ、インドに着いたぞ"と彼らは思ったわけだけど、結局インドじゃなかったことに気づいたんだ。"そうか、新大陸なのか"ということで、その土地に新しい名前を付けることにした。その最初に付けた名前が"Vera Cruz"だったんだ。実は彼らは、ブラジルが島だと思っていたんだけどね(笑)。だからフルネームは"ヴェラ・クルス島"だったんだ。アルバムのタイトルはそこから採ったよ。コンセプトも歌詞も時代設定がこの時期、1500年になっている。すべてそこに繋がっているんだ。

-このアイディアを思いついたのはいつごろになるのでしょうか?

コンセプトを考え始めたのが『Temple Of Shadows』のコンサートのあとくらいだった。マネージャーには"ファンのためにも何かスペシャルなものを作りたい"と言ったよ。『Temple Of Shadows』の歴史の延長線上にあるようなものができたらいいなと。あれもコンセプト・アルバムで歴史もの(※11世紀の十字軍がテーマ)だったからね。ただ、"『Temple Of Shadows』パート2"とは銘打たなかったからあからさまではないけど。ハードコアで勘の鋭いファンなら"あぁ、あっちはああだからこっちはこうなのか"と気づいてくれそうな要素は入っているよ(笑)。このアルバムはちょっとメロドラマみたいな感じ。1500年が舞台の歴史とロマンスのドラマで、宗教的なテーマもあるし......宗教、信念、ブラジルの"発見"、あとブラジルに実在した人物も出てくる。例えばブラジルを"発見"したペドロ・アルヴァレス・カブラルも登場するんだ。フィクションと実際の歴史が絡み合っている感じだね。とても興味深い内容になっているよ。

-アルバム制作にあたり、リサーチはたくさん行ったのでしょうか。それともブラジル人なら誰でも知っているような歴史なのでしょうか。

膨大なリサーチをしたよ。ブラジルの"発見"についての文献をたくさん読んだし、宗教などについても読んだ。ファンにとって興味深い内容になるようにね。将来的にはこのストーリーを本にして出版しようと考えているんだ。

-コンセプト自体作るのにものすごく時間がかかったのでは。

そうだね。1年だ。ライターにも手伝ってもらってね。ブラジル人の詩人なんだけど、その人に全体を手伝ってもらったんだ。歌詞もストーリーもね。というのも、ディテールが細かいものを作りたかったから、プロのライターの力を借りたいと考えたんだ。俺はシンガーで作曲家だけど作家じゃないからね(笑)。それで迎えたのがFábio Caldeiraだった。ブラジルではとても有名な作家であり詩人であり、作曲家でもある人だよ。彼に手伝ってもらったおかげで、とても美しく、なおかつ複雑なものができたんだ。ただのメタル・アルバムじゃないよ(笑)!

-まさにそうですね。曲とストーリーは同時進行だったのでしょうか。

まずは大まかなコンセプトを作って、それから曲を書き始めて......インストゥルメンタルとかヴォーカルのメロディとかだね。そのあと、作ったコンセプトをもとに歌詞を書いたんだ。メロディを作り終わってからだね。アルバム全部の曲を作り終えるのには1年半くらいかかったかな。