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INTERVIEW

Edu Falaschi

2021.05.11UPDATE

2021年05月号掲載

Edu Falaschi

インタビュアー:菅谷 透

ついに自分にとっての「Bohemian Rhapsody」を書けたぞ! と思ったんだ


-実際今作は、ANGRAのころからのファンなら思わずガッツポーズしてしまうであろう、パワー・メタル・ナンバーの「The Ancestry」から幕を開けます。9分以上に及ぶプログレッシヴな楽曲や、叙情的なバラードなど、多彩な楽曲が収められていますが、コンポーザー/プロデューサーとして、どのように曲作りを進めていきましたか?

さっきの話になるけど、まずはアルバムのコンセプトを作って、どんなことを題材にしようか決めた。それがメインだね。ストーリーは1500年にヨーロッパで始まった預言から始まって、歴史がテーマだから壮大なんだ。だから壮大な曲の詰まった壮大なアルバムを作ろうと考えた。その路線でいこうと決めてから、今度はアルバムの"地図"のようなものを作った。速い曲だけでもダメだし、バラードだけでもダメだし、プログレッシヴな曲だけでもダメだからね。その"地図"で、最初にパワー・メタルを配置したんだ。オーケストラの音も入った壮大な曲で、歴史のスタートを告げることにした。強力なパワー・メタルでいきなり爆発するような感じにすることによって"俺はシーンに戻ってきたぞ!"と宣言しているんだ。そこからはアルバムの中で曲がバランス良く配置されるようにした。速い曲、ミッド・テンポの曲、バラード、また速い曲、バラード、プログレッシヴ......そんな感じで曲を作っていったよ。

-Track.7「Land Ahoy」で舞台がブラジルに移ると、徐々にラテン/トライバルなサウンドも加わりますが、こうしたアレンジメントの巧みさも今作の聴きどころになるかと思います。メタルでいろんなことができるんだなという感じですが、アレンジや音作りでこだわった点はありますか?

あの曲は俺にとってアルバムを要約したような意味合いを持っているんだ。"アルバムを代表する曲はどれですか"と訊かれたら、これだと答えるね。歌詞ではジョージ(※物語の主人公)がブラジルを"発見"するとても重要な瞬間を歌っている。"Vera Cruz"という新しい"島"を発見するから、タイトルが"Land Ahoy"なんだ。"Ahoy"は船乗りたちが陸地を見つけたときに使う言葉だからね。"Land Ahoy!"と叫ぶんだ(笑)。アルバム全体のコンセプトを体現している重要な曲だと考えているよ。この曲は最初から全部のパートが揃っていたわけじゃなかったけど、旅のような曲にしたいという意図はあったんだ。この曲を聴いたファンが、俺や歴史上の人物たちと一緒にカラベル船(※当時スペインやポルトガルで乗られていた小型の帆船)に乗って旅しているような気分になってほしいと思ってね。だからこの曲はとても複雑な構成になっていて、多彩な要素やニュアンスが織り込まれている。いかにもブラジル的なパーカッションが入っている箇所もあるし、とても美しいアコースティック・ギターもあるし、ポエティックでロマンチックなコーラスもある。(※その部分を裏声で歌う)聴き進めていくと航海しているような気分になれるんだ。想像できるかい? 1500年に、シンプルな造りの小さな船が、ポルトガルからはるばるブラジルまでやって来るんだ。海は巨大だし、大嵐もあるし、危険だらけだ。いかに冒険だったことか。航海中に死んだ人もたくさんいるだろうしね。

-そうですね......。

何せ9~11ヶ月も航海していたらしいからね。とんでもない旅だよ。だからこの曲にはいろんな瞬間や感情がひとつの曲の中に詰まっているんだ。旅自体も穏やかだと思えばハードになったり、ものすごく過酷になったりして、死人も出て、でも陸地を見つけたときには嬉しくて......そういう冒険を実感できるようなものを作りたかったんだ。最終的に曲を書き終えたときに、ギタリストに対してこう言ったよ。"俺、自分の「Bohemian Rhapsody」(QUEEN)を書いた気がする"ってね。ついに自分にとっての「Bohemian Rhapsody」を書けたぞ! と思ったんだ。

-なるほど。ひとつの曲の中でいろんなストーリーがあって......。

そう! 複雑でね。作曲家として自分の中で最高レベルのものを書けたと思ったんだ。過去にも「Spread Your Fire」とか「Nova Era」、「Heroes Of Sand」、「Bleeding Heart」(『Rebirth』収録曲)みたいな重要な曲を書いてはきたけど、「Land Ahoy」は......これは今の俺の意見であって将来はどう思うかわからないけど、名曲になる予感がするよ。

-このアルバムの代表曲だというのがわかる気がします。ところで歌唱面では、切れ味鋭いハイトーンに、低いレンジのヴォーカルやシャウトなど......。

ラ~~~(※高らかに歌いながら)強い声も出るよ(笑)!

-(笑)まさにあなたの魅力を存分に堪能できるような仕上がりです。ヴォーカリストとしてはどのようなことを意識しましたか?

ファンにとってスペシャルなものにしたかったんだ。ソロ・アーティストとして初めてのアルバムだしね。しかも偶然にも、今年は俺がプロフェッショナルなシンガーになって30周年なんだ。Edu Falaschiの30年間を網羅したようなものを作ろうと思ったんだよ。

-"ベスト・オブEdu"的な。

そう! メニューみたいなものだよ。ファンが好きなものを選べるんだ。SYMBOLS時代の要素もあれば、『Rebirth』、『Temple Of Shadows』時代の要素もあるということでね。でも何よりも大事なのは、パッションを持って考えるということだ。ファンが自分の声を聴いて"感情がこもっている"と思ってくれるようなものを作ることをね。フィーリングも愛も。それが俺の主な目標だったんだ。テクニックの話だけじゃなくてね。とにかく自分の声を通じて、"ありがとう"と言いたかったんだ。30年間応援してくれてありがとうと。そのためにも自分が持っているものすべて、自分ができることすべてを今みんなに捧げたいんだ。もうすぐ50歳だしね。この歳でこういう歌を歌うのは結構大変なんだけどさ(笑)。でもベストを尽くしたよ。ファンもきっとこのアルバムではとてもスペシャルなものを期待してくれていると思うから、まずは声の調子を整えてからアルバムを録音することにした。練習に練習を重ねて、やっとそのときが来たと思えたときに録音したから、『Rebirth』や『Temple Of Shadows』時代と同じような高い音が出ている。テクニックを比べてくれたら当時と同じだってわかると思うよ。

-本当ですよね。逆流性食道炎に苦しんだ時期もあったというのに、大復活ですよね。

そう、逆流性食道炎の影響でひどい声だった時期があったよ。だからこそ、今は"それでも俺を信じ続けてくれてありがとう"と言いたい気持ちなんだ。"待っていてくれてありがとう!"とね。

-ファンもほっとすると同時に嬉しいでしょうね。

そういう意味でも、このアルバムが俺にとっていかに大切かは誰にもわからないかもしれないね(笑)。

-ところで、アルバムにはもうひとり素晴らしいシンガーが参加していますね。作品を締めくくる「Rainha Do Luar」では、ブラジルの歌姫 Elba Ramalhoとデュエットを披露しています。

彼女はブラジルではものすごく有名で、超大物だよ! メタルやロックじゃなくて、ブラジルの曲を歌う人なんだ。俺は子供のころから彼女の大ファンだった。父親がファンだったからね。この曲ができたときに、"女性の声が欲しい"と思ってさ。しかもポルトガル語で歌ってもらうというのが大事だった。いろんな名前が候補に挙がったけど、心の中では子供のころから大好きだったElbaのことがあったんだ。それで......Max Cavaleraのときと似た感じだったけど、マネージャーに"彼女と仕事をしているような人の連絡先って知っている?"と聞いた。"ある男を知っているから、彼に相談してみよう。それでどうなるか様子を見よう"と言ってくれたよ。その後ある日家で曲を書いていたら、知らない番号から着信があった。"ハロー?"と出たら彼女だったんだ(笑)!

-彼女から直々に電話をくれたんですね!

そうなんだよ! 思わず"嘘だろ!"と言ってしまったよ(笑)。そうしたら彼女は"曲を聴いたわ。音楽そのものもあなたの声も、何もかもが本当に素晴らしい。ぜひ参加させて"と言ってくれたんだ! 心臓が止まるかと思ったね(笑)。Oh my god......夢みたいだ......と思ったよ。それで俺はリオデジャネイロに飛んで、彼女の声を録った。本当に優しい人だったよ! どんなに素敵な人だったか、言葉では言い尽くせないくらいだった。

-真のスーパー・スターですね。

素晴らしい人だったよ......。自分の人生の中で大切なことをやっているときは、時に疲れることもあるけど、頑張ってなんとか乗り切っていけばこんな形で夢が叶うこともあるんだと思ったね。彼女の声が入っているなんてファンタスティックだよ! 信じられないくらい素晴らしい歌い方をしてくれたんだ。このアルバムは何もかも......うまく言えないけど、マジックみたいな感じなんだ。何もかもがしっくりはまったしね。すごく自然な流れで、みんな曲を聴いて"ぜひ参加したい"と言ってくれた。とても穏やかに、自然に展開していったんだ。だからこそこのアルバムは"真実"のフィーリングを表現することができているんだと思う。心から満足しているよ。

-こういうふうに30年の努力が実るのは素晴らしいですね。ちなみにYouTubeでは、アルバム冒頭である「Burden」のヴィジュアル・トレーラーが公開されていますが、Track.2以降も作る予定はあるのでしょうか?

他の曲についてはまだわからないんだ。何しろあの手のものを作るのはものすごく大変だからね(笑)。ああいうのを全曲に作るのって想像できる? かなり大変だと思うよ(笑)。さっき君は"映画のような"的な言葉を使っていたけど、ファンには音を聴くだけでなくヴィジュアライズもしてもらいたいんだ。歴史や曲に関してね。それでグラフィック・トレーラーを作ることにしたんだ。特に冒頭に関してはしっかりシーンを見てもらって、歴史の概要がわかるようにしたかった。あれを作って良かったよ。例えば「Face Of The Storm」は戦争の話で、悪VS善という感じなんだ。悪の命を受けた"ネロ騎士団"が"キリスト騎士団"と戦う。ファンには実際にその戦闘状態の音を聴いてもらいたいと思ったんだ。俺が"今こそ戦いのときだ"と歌詞の中で宣言するだけじゃなくてね。目をつむってその部分を聴いたら、実際に戦いの場面が頭の中に浮かんでくるような。剣と剣がぶつかり合う音とか、全部入れてね。それが当初からの俺のアイディアだったんだ。イントロの曲「Burden」も同じだよ。赤ちゃんの声、剣のぶつかり合い、扉が開く音......目の前でそういうのが展開していくようにしたかったんだ。"さぁ聴こう"って音楽だけじゃなくてね。音楽を通してもうひとつ、新しい経験をしてもらいたいよ。

-アルバム完成を経て、今後どのような活動を予定しているのか教えていただけますか? 例えばストリーミング・ライヴですとか。それともコロナ禍後のライヴについてすでに話が出ているのでしょうか。

俺はとてもポジティヴな人間だから、今年はわからないけど、できれば来年の1、2月あたりにコンサートができればと思っているんだ。アルバムを出したら今度はビデオ・クリップをいくつか作って、アルバムの宣伝をしたい。インタビューも受けるし、もしかしたら年末に向けてシングルを作るかもしれないね。

-シングルとはこのアルバムから? それともまったく新しいものを?

新しい曲を作りたいね。今はどれもまだアイディア段階だからどうなるかわからないけど。でもメインのゴールはやっぱりツアーでこのアルバムを宣伝することだね。このアルバムはものすごく壮大で複雑な歴史が舞台になっているから、ものすごく壮大なツアーを組んでくれないかとコンサート・プロモーターたちに相談しているんだ。壮大というのはコンサートの回数じゃなくて、プロダクション的な意味でね。例えば劇場で、観客は椅子に座ってコンサートを観るんだ。これから演出について考えるつもりだよ。大きな船をステージに登場させたりしたいね。複雑なプロダクションになると思うから時間をかけて練りたいね。少なくともブラジルでは、そういう映画みたいなツアーをしたいと思っているんだ。ステージ上でバンドだけじゃなくて、美しい光景も展開されているような感じのをね。ファンには特別な経験をしてもらいたいんだ。ストーリーの一部だけでもそういう演出にできればと思っている。スペシャル・ゲストを呼ぶとか、そういう話を持ち掛けているんだ。とても複雑だけど可能ではあるからね。俺はファンに変わったものを与えることが大好きなアーティストなんだ。家を出てコンサートに行くんだから、何かスペシャルなものを見て帰らないと。ステージに出ていってプレイするだけでお金を貰って帰るバンドは好きじゃない。だから自分がアーティストやバンドを観に行くときは、そのひとときにちゃんとした"経験"が欲しいんだ。自分の人生にとって何かスペシャルなものを観たい。今度のツアーではそういうものをファンに提供したいんだ。

-『Vera Cruz』はアルバム本体以上に壮大なプロジェクトになりそうですね。楽しみです。日本にまた来られるようになるにはコロナ禍もあってもう少し時間がかかりそうですが、楽しみにしています。最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。

来年にはこのアルバムを引っ提げたツアーで日本に行けることを願っているよ。日本のプロモーターにも、壮大なプロダクションでのコンサートを可能性だけでも探ってくれるように相談しているんだ。日本のファンにはとにかく"ありがとう"と言いたいね。このインタビューの機会をくれたことにもありがとう。2001年に初めて日本に行ったときから、日本のファンにはとても助けられたし、応援してもらってきた。その恩は決して忘れない。だから日本は第2の故郷のようなものだと思っているんだ。俺はブラジル人だけど、魂の一部は日本人みたいなものだよ。......実は娘が日本人なんだ。知ってた? 娘はブラジル人だけど、俺の元妻が日系人なんだ。"チエミ"という名前だよ。

-そういう日本とのご縁もあったとは。

(※照れ笑いしながら)俺にとって日本は本当に大切な場所だから......本当にありがとう。そしてファンのみんなが『Vera Cruz』を楽しんでくれることを願っているよ。壮大で、濃くて、複雑なアルバムなんだ。"真実"の本当の意味を感じ取ってくれるといいね。(※日本語で)アリガトウゴザイマシタ! みんな、健康でいよう!