INTERVIEW
Edu Falaschi
2021.05.11UPDATE
2021年05月号掲載
Interviewer:菅谷 透
-アルバムの音楽的なものに取り掛かったのは、そうすると2019年、2020年でしょうか。
2020年の初めくらいかな。
-COVID-19の影響はありましたか? ブラジルは結構大変でしたよね。
俺はその前までツアーしていたんだよね。ブラジルでは2020年3月にすべてが閉まったんだ。俺が曲を書き始めたのが2020年1月で、ツアーも何もかもストップしてアルバム作りに専念することにした。そのあとコロナ禍がブラジルにも来て、経済が大打撃を受けて、すべてが閉まってしまったのが2020年3月。その時点で俺はすでにスタジオにいてアルバムの曲を書いていたんだ。だからコンサートのキャンセルをすることもなかったし、仕事がストップしたり、お金を失ったりとか、そういうこともなかったよ。アルバム作りに専念していたからね。運が良かったんだ。
-レコーディングはどうだったのでしょう? メンバーと集まれなかったりしたのでは。
それが、レコーディングを始めたのが2020年11月あたりだったから、ブラジルでは状況が少し良くなっていたところだったんだ。だからスタジオでレコーディングすることができた。もちろん全員マスクをしてね。手もちゃんと洗って(笑)、気をつけて作業したよ。でも通常どおりのレコーディングをすることができたんだ。
-今回は、ご自身の名前を冠したバンドでレコーディングした初めてのフル・アルバムになります。バンド・メンバーはAquiles Priesterをはじめ、前述の来日公演も含めてここ数年活動をともにされているようですね。
そう、全員同じメンバーだよ。
-読者のために各メンバーをご紹介いただけますか?
オーケー。ドラムはANGRA時代からの相棒、Aquiles Priester。あいつのことはみんな知っているよね。キーボードはFábio Lagunaで、こいつもANGRA出身なんだ。オフィシャル・メンバーではなかったけど、2001年から一緒にツアーしていたからメンバーみたいなものだね。だからいつも"2000年ごろのANGRAから3人参加している"と言っているんだよ。ギターはRoberto Barrosで、こいつは俺と一緒にプロダクションに携わっている。アルバムの作曲も手伝ってくれた。ブラジルではニュー・ギター・ヒーローみたいな存在でもあるんだ。本当にファンタスティックだよ! みんなあいつが参加している曲を楽しみにしているんだ。あいつが俺のバンドでANGRAの曲を弾くことになったとき、みんなが思っていたのは"こいつKiko Loureiroの曲やアレンジを弾けるのか?"みたいなことだった。でも実際コンサートでプレイを聴いたら"Oh my god! 信じられないくらい上手い"となったよ。何しろ本当に上手いからね! ファンタスティックなギタリストだよ。日本のファンはギターのアレンジにクレイジーなくらいこだわりがあるから(笑)、好きになってくれたよ。ものすごくテクニカルだし、速弾きも素晴らしいし、フィーリングも見事に表現してくれるんだ。みんなこのアルバムのギターを聴いたらエキサイトしてくれると思うよ。もうひとりのギタリストもファンタスティックで、Diogo Mafraという名前なんだ。あいつとはALMAHで一緒にやっている。ベーシストはRaphael Dafrasで、こいつもALMAHだ。このチームでライヴもレコーディングもやったんだ。――実はこのアルバムにはゲストもたくさん参加していてね。ブラジル音楽のパーカッションをやってもらったパーカッショニスト、それからピアニスト......そいつがファンタスティックなんだ。しゃべりすぎかな? それとも全部話していい?
-もちろんです。ちょうどゲストのことを訊こうと思っていたので。
俺が先走っちゃったな(笑)。オーケストレーションはPablo Gregが担当してくれたんだ。このアルバムは俺にとってとてもスペシャルなものになるとわかっていたからね。俺もキーボードを使ってオーケストラのアレンジを作ることはできるけど、特別なアルバムだからスペシャリストに作ってもらいたいと思ってさ。彼とはブラジルで出会ったんだけど、神の恵みだと思ったね! 今まで見たこともないような才能の持ち主なんだ。オーケストラのアレンジを聴いてもらえれば、まるで本物だと思うだろう?
-ええ。
キーボードで作ったとは思えないだろう? Pablo Gregという男のおかげで、このアルバムがいっそうスペシャルなものになったんだ。アルバムのレベルが10倍くらい上がったよ。ファンタスティックなんだ。俺にはたくさんの素晴らしい人が手を貸してくれている。素晴らしい人たちと仕事ができることを毎日神に感謝しているんだ。
-参加者と言えば、Max Cavalera(Vo/Gt/ex-SEPULTURA/SOULFLY/CAVALERA CONSPIRACY etc.)が「Face Of The Storm」に参加しています。本作のトピックのひとつと言えますが、彼とは付き合いが長いのでしょうか?
いや......というか友人ではあったけど、それほど親しくはなかったんだ。共通の友人はいたけどね。でもMaxのことは大好きで、彼の声にも才能にも惚れ込んでいるんだ。この曲を書いたときに、アグレッシヴなヴォーカルが欲しいと思ったんだけど、それは俺にはできないことだから(笑)、自分が心底惚れ込んでいる人にやってもらいたいと考えた。それでマネージャーに、Maxと仕事するのが夢だと相談したんだ。そうしたら"やってくれるかわからないけど、聞くだけ聞いてみよう"と言ってくれた。彼と仕事をしている人たちを通じて話を持ち掛けて様子を見ようという話になったんだ。それでこの曲のメインのパートを録音してから彼に送ってみた。そうしたら......俺の記憶する限り、Max Cavaleraが最後に自分のプロジェクト以外のものに参加したのはだいぶ昔のことだ。彼を他人のプロジェクトに参加させるのはすごく難しいことなんだよ。
-彼は自分のプロジェクトで忙しすぎるくらい忙しいですものね。
そう。だからダメもとで聞いてみたんだ。でも彼は曲を聴いたら、マネージャーを通じて"すごく気に入ったよ。ぜひやらせてくれ"と言ってくれた。Oh my god! という感じだったね。信じられない、俺の夢が叶うんだ! と思ったよ。それから友人になったんだ。このプロジェクトのあともいろんな話をするようになったし、この曲を書くのも一部手伝ってくれた。でもそれまでの俺はただのファンだったんだ。だから憧れの人と仕事ができたということだね(笑)。
-最初に曲を書いていたとき、すでにMaxのことを想定していたんでしょうか。
そうだね。最初に思いついたのが彼に参加してもらうことだったよ。というか本当のことを言うと、彼に捧げるつもりで書いたようなものだね(笑)。
-実際Maxが歌うにはうってつけのスラッシュ・チューンで、あなたの声とのブレンドもとてもいいですよね。
パーフェクトな歌い手だよ。彼を確保できて本当にハッピーなんだ。
-先ほど"自分のサウンドを模索していた"というような話がありましたね。これまでALMAHではモダンでグルーヴィなメタルを、Edu Falaschi名義ではアコースティック・カバー集などをリリースしていますが、今回はメロディックでプログレッシヴなサウンドが中心に据えられています。こうした方向性に至ったのはなぜでしょうか?
俺はいろんなタイプの音楽が大好きなんだ。ロックンロールも大好きだし、クラシックも、例えばチャイコフスキーとかが大好きだ。でも魂のメインはパワー・メタルとプログレッシヴ・メタルなんだ。ALMAHではグルーヴィなものをやってファンも喜んでくれたし、俺たちもハッピーだったけど、ファンも俺も心の中では俺がまたパワー・メタルを歌うことを望んでいた。プログレッシヴで、シュレッドが多くて。ANGRAを脱退してからの俺はALMAHに専念してきたけど、長年そうしているうちに心が"ルーツに戻って歌うべきだ"と語り掛けてきたんだ。俺のルーツのひとつだからね。ANGRAの前にやっていたSYMBOLSというバンドもパワー・メタルのバンドだったから、ANGRAをやる前からHELLOWEENやDREAM THEATERみたいな曲を作っていた。俺のスピリットの一部なんだと思う。それで、ソロでやっていこうと考えたときに、ルーツに戻るときがやってきたと感じたんだ。今回のアルバムの曲を作ったときは、人々が俺のソロのキャリアをANGRAやSYMBOLS時代の俺と結びつけてくれそうなものを作ろうと考えた。俺がソロになったとき、『Rebirth』や『Temple Of Shadows』を彷彿とさせるようなものを作ってほしいと言っている人が多かったけど、実は俺も心の中では同じことを考えていたんだ。パワー・メタルやプログレッシヴ・メタルへの想いを隠してはいられなかった。だから"出す"必要があったんだ。それでこういう形でこのアルバムを作ったんだ。そうすればSYMBOLSやANGRA時代からのEdu Falaschiの流れをわかってもらえると思ってね。
-本来のご自身の流れですね。
そう、自然の流れなんだ。