INTERVIEW
A Ghost of Flare
2019.06.21UPDATE
2019年06月号掲載
Member:Yojiro(Vo) YU-TARO(Gt/Prog) Takuya(Ba)
Interviewer:荒金 良介
メタルコアの雄 A Ghost of Flareが、キャリア初となるフル・アルバム『Soulburner』を完成させた。これまで幾度かメンバー・チェンジがあったものの、現在は3ピース編成で固まり、ついに作り上げたフル作は新たな地平を切り拓いた野心漲る楽曲が揃っている。従来のアグレッシヴなサウンドを引き継ぎながらも、クリーン・ヴォーカルを大々的にフィーチャーした曲調に驚く人も多いだろう。メタルコアへのこだわりは捨てず、自分たちの個性を追求するスタンスが今作のオリジナリティに繋がっている。今後も音楽や活動の幅を広げていきたいと意欲を剥き出しにするメンバー3人に話を訊いた。
-今年でバンド結成10周年を迎えますよね?
YU-TARO:そうですね。メンバーも替わって、オリジナル・メンバーは僕だけになるんですけど。始めた当初、メタルコア・バンドは数えるくらいしかいなくて......。
-2009年だとそうかもしれないですね。
YU-TARO:メタルコア・シーン自体がそこまで浸透してなくて。そう考えると、今は10代の子がメタルコアをやってたりするから、それはすごいなと思います。当時はTOWER RECORDSにCDを置けることも貴重で、周りにそういうバンドもいなかったですからね。だから、この10年でシーン自体が変わったなと。バンドとしてはメンバーの出入りはあったけど、基本的には始めた頃とやりたいことは変わってないです。
-結成当時にやりたかった音楽というのは?
YU-TARO:メタルコア、叙情要素、日本語の3つのテイストを入れたバンドをやりたかったんです。そこは今と変わってないですね。
-その3つのテイストをミックスさせようと思ったのはどうしてだったんでしょうか?
YU-TARO:叙情派のハードコア、メタルコアが好きだったんですよね。当時のヴォーカルともウマが合って、そういうことをやろうと。envyとかPARKWAY DRIVEもめちゃくちゃ好きだし、それを自分たちなりに形にできたらいいなと思ったんです。
-なるほど。現在は3ピースということでいいんですか?
YU-TARO:はい。ライヴはサポート・メンバーを入れて、5人編成でやってます。
-Crystal Lakeと同じスタイルですね。
YU-TARO:そうですね(笑)。
Takuya:お客さんからの見られ方も、"(正式メンバーが)3人なんだ"って感じで、メンバーに対する注目度は上がっているように感じます。そのぶん、頑張らなきゃとは思いますけどね。
Yojiro:僕は、音楽的な部分で変わったと思うところはなくて。
Takuya:"この3人でAGOF(A Ghost of Flare)"という意識は強くなってると思いますね。
-メンバー内で聴いてる音楽は近いんですか?
YU-TARO:Yojiro君はめちゃくちゃ幅広いですね。
Yojiro:もともとSLIPKNOTやRISE AGAINSTとかも聴いていたんですけど、そういったいわゆるラウド系だけではなく、普段はアンビエント、ポップス、エレクトロ、テクノ、ハウスとか、いろいろ聴くんですよ。だからこそラウドとは違う畑のエッセンスも取り入れてやっていきたいと思ってます。その意味では、自分がヴォーカルになってからAGOFの色は変わったのかなと。それまではシャウトが多かったけど、僕が加入してからは、メロディを入れてクリーンで歌うパートが増えましたね。
-ヴォーカリストで影響を受けた人は?
Yojiro:RISE AGAINSTのTim McIlrath、LINKIN PARKのChester Bennington、SLIPKNOTのCorey Taylorです。この3人がデカいですね。特にRISE AGAINSTは政治/社会的なメッセージを発信しているようなバンドじゃないですか。確たる信念を持って本気で歌ってるその姿に感銘を受けて、バンドを始めたんですよ。ただ何も考えず社会に迎合してるのはかっこ良くないし、だからこそその反骨精神みたいなものに惹かれますね。
-Takuyaさんはどんな音楽を通ってきたんですか?
Takuya:小さい頃は"Mステ(ミュージックステーション)"っ子でした。日本のバンドがたくさん出てましたからね。スピッツ、L'Arc~en~Ciel、ジュディマリ(JUDY AND MARY)とかは今も好きで。高校でバンドを始めたんですけど、その頃はELLEGARDEN、RADWIMPSとかも聴きました。僕は福島の郡山出身なんですけど、地元のライヴハウスにはヘヴィなバンドがほとんどいなくて。先輩バンドがALL THAT REMAINSのカバーをやっているのを観て、"なんじゃこりゃ!"って衝撃を受けたんですよ。さっきも名前が出たPARKWAY DRIVEとか、BRING ME THE HORIZONを聴いて、東京でもそういうバンドをやろうと思い、いつの間にかこのバンドに入ってました(笑)。だから、ヘヴィな音楽のツボはみんな似ていて、今はそれがいい感じに楽曲にも出ているんじゃないかと。
-なるほど。
Takuya:ストリングスだったり、曲間のSEだったり、僕はそれをジャマしないようにベースを動かしていくという。だから、3人になってからはメンバーひとりひとりの個性は見えやすくなったんじゃないかと思いますね。
クリーン・ヴォーカルを入れたのは自分たちにとって挑戦だったけど、自信を持って出せるものになったと思う
-そして、バンド初のフル・アルバムになりますけど、これまでフル作を出さなかった理由は?
YU-TARO:これまでフル・アルバムを作ろうという話になったときに、バンドで足を止めなきゃいけない出来事が毎回起きてしまって。誰かの脱退だったり休止があったりしたので、やっとフルを出そうというタイミングになりました。
-今作を聴いて、すごくかっこ良かったです。最初に何か明確なヴィジョンはありました?
YU-TARO:自分たちらしさが出せたらいいなというのと、それにプラスして新しいエッセンスや進化も見せたくて。ここまで歌ってる曲は今までになかったし、僕ら的には新しい挑戦ですね。それもアルバムだからこそできることかなと。シングルでやると、みんなも戸惑うと思うけど、アルバムだといろんな一面も見せられますからね。どういうふうにとらえられるのかは楽しみです。
Yojiro:うん。これまでとは違うアプローチがたくさん入ってますね。
Takuya:オケが上がって、そこにヴォーカルが入ったものを聴いたときにこんな感じになるんだなって。彼の声が入ると、曲の印象もガラッと変わりますからね。
Yojiro:リスナーが持ってるAGOF像は正直気にしてなくて。クリーンに関しても妥協で入れたとかではなく、もともと歌が好きで単純に入れたいと思っていたんです。お客さんに合わせるというより、これが今の俺らだからついてこいよって感じのスタンスでやっていきたいし、だからこそ今後も今作のような幅広いアプローチをやっていきたいですね。
YU-TARO:クリーンを入れたことで引く人もいるかもしれないから、自分たちの中では逆に攻めたアルバムなんですよね。歌を入れて、売れ線を狙ったバンドもたくさん見てきたけど、僕らの中で歌を入れたのは挑戦なので。でも、自信を持って出せるものになったと思います。
-もうやりたい放題にやってしまおうと。
Yojiro:僕らは別にビジネスマンじゃないしね。