INTERVIEW
JUDAS PRIEST
2018.03.07UPDATE
2018年03月号掲載
Member:Richie Faulkner(Gt)
Interviewer:荒金 良介
JUDAS PRIESTの18thアルバム『Firepower』が完成した。今作はバンド黄金期に作品に関わったTom Allomを30年ぶりに再起用、さらに売れっ子のAndy Sneapとの共同プロデュースを敢行し、盤石のプリースト・サウンドを作り上げている。だが、2月にあまりにもショッキングなニュースが。オリジナル・メンバーのGlenn Tiptonが10年前からパーキンソン病を患っており、3月から始まるワールド・ツアーはAndyが代役を務める形になるというのだ。今回話を訊いた時点ではそのニュースを聞く前だったこともあり、そこには触れていない。ただ、Richie Faulknerの言葉の節々から今作におけるGlennの貢献ぶりも語られており、バンドは水面下で大変な状況を抱えながら制作に臨んでいたことが想像できる。バンドの揺るぎない信念を刻みつけた今作について、じっくりと話を訊いた。
-最初に遡った質問になりますけど、イギリスはカムデンにあるライヴハウス"METALWORKS"であなたはJUDAS PRIESTのカバー・バンドをやっており、それからJUDAS PRIESTに電撃加入しましたね。僕も一度METALWORKSでUFO、Ozzy Osbourneなどのカバー・バンドを観たことがあり、ここであなたがプレイし、JUDAS PRIEST加入というシンデレラ・ストーリーを作ったのかと感動を覚えました。バンドに加入が決まったときは正直どんな気持ちでしたか?
面白い質問だね。METALWORKSは俺が本格的な経験を積んだところなんだ。毎週日曜日の午後3時から夜中の12時までやっていてね。ものすごく勉強になったよ。音楽的にも素晴らしい練習になった。ライヴのときオーディエンスとどう交流するのか、酒はどのくらい飲んだ方がいいのか、どのくらい飲まない方がいいのか(笑)。......そういうことをたくさん学んだんだ。いろんなシチュエーションへの対応をね。そして、そう、勤勉なメタルのカバー・バンドだったら、PRIEST(JUDAS PRIEST)をやらずにはいられないんだ(笑)。PRIEST、IRON MAIDEN、BLACK SABBATH、DEEP PURPLE、UFO......そういうバンドの素晴らしい曲は定番だからね。バンド加入の話をすると、PRIESTのマネージメントから電話を貰って、そこからいろんなことが芋づる式に進んでいった。そのときに"JUDAS PRIESTの曲を何か知っているか"って聞かれたんだけど、セットリストの半分以上はカバー・バンドの経験から知っているものだったよ。JUDAS PRIESTっていうのは、みんなの成長過程の中で必ず出会うバンドのひとつなんだ。ロックやメタルが好きでもそうじゃなくても、社会生活の一部になっているんだよ。ハード・ロックやメタルが好きじゃなくても知っている人が多い、注目を集めるバンドだよね。特にハード・ロックのカバー・バンドをやっている身にとってはものすごい存在だよ。俺はバンドのエネルギーもさることながら、このバンドが象徴しているものに惹かれているんだ。バンドが体現しているものはなんなのか、それが世界中の何百万もの人々にとって何を意味するのか。俺に素晴らしい教育を与えてくれた、俺にとって大きな価値のあるバンドなんだ。
-未だにMETALWORKSでライヴ出演することもあるみたいですね?
もちろんさ! ロンドンにいるときは行くよ。今も毎週日曜日に営業しているしね。昔ほど長時間ではもうやっていないみたいだけど、夜からやっているね。今も行くときは数曲やっているよ。たまにScott Travis(Dr)と一緒に行って、LED ZEPPELINをやったりするんだ。とにかく素晴らしい時間を、素晴らしい音楽と素晴らしい人々と過ごせる場所だよ。
-時にはご自分の曲をやることもあるんですか?
それがまだなんだよ。というか、PRIESTの曲はやるんだけど、俺が曲作りに参加するようになってからの曲はまだなんだ。今度やってみようかな。なかなか面白い経験になりそうだ(笑)。
-JUDAS PRIESTは伝統と歴史のあるメタル・バンドであり、しかもあなたはK. K. Downing(※2011年までJUDAS PRIESTのギタリストとして在籍)という大きな穴を埋める役割を担わなければいけませんでした。加入当時は相当なプレッシャーがあったのではと推測するのですが、いかがですか?
いいプレッシャーだったね。さっきの話になるけど、俺はこのバンドが何を体現しているかを意識しながら育ってきたんだ。友達にもファンが多かったしね。PRIEST、IRON MAIDEN、METALLICA......みんなある程度体制に逆らっている感があって、自分たちの信じているものを守っていた。そういう姿は、俺にとっても世界中の人たちにとってもすごく魅力的なことなんだ。だからこの話が来たときは、それが何を意味しているか本能的にわかったよ。俺は彼らの信念の一部になるんだって思った。そのためには貰った機会を最大限に生かして、自分のベストを尽くして、決して引き下がらないことだ。加入の話を貰ったとき、俺は彼らから学んだことを生かして、自分の信じるものを守るチャンスを与えられたんだと感じたよ。そしてそれを実行した。それが正しい、やるべきことだと思ったからね。そう思えるのもPRIESTや、そういう他のバンドのおかげだよ。彼らがそういう姿勢を教えてくれて、それを実行しているわけだからね。
-あなたが初めて参加した前作『Redeemer Of Souls』(2014年リリースの17thアルバム)は作曲面においても積極的に参加していましたけど、そのときもそのスタンスで臨みましたか。
そうだね、関係はあると思うよ。俺はそれまでもソングライターではあったけどね。より自分をクリエイティヴに表現する機会を与えられたわけだけど、実は自然にそういう成り行きになったんだ。俺はツアーにノート・パソコンを持ち歩いて曲作りをしていて。外で録音したりしてね。ショウの合間にも何かアイディアを思いついたら録音しておくようにしていたんだ。そうしたらRob(Halford/Vo)やGlenn(Tipton/Gt)が俺の作っている音を耳にして、"クールじゃないか。PRIESTの曲のネタに盛り込めるかもしれないな"なんて言ってくれてね。実際曲作りのセッションが始まって、音を進展させる段階になってみると、自分の信じているものを守るためにいろいろやらないといけなかったけどね。レガシー、つまり自分の加入以前に生まれたものにリスペクトを払わないといけない。でも同時に自分自身のこともリスペクトして、自分だけの"声"を作らないといけないんだ。チャレンジとしては、自分は何を主張すべきなのか、どんな感情を音に込めるべきなのか、音的に、そしてクリエイティヴな意味でどうやって関わっていけばいいのかを見極めるのが大変だった。それが何を意味するかはわかっているからなおさらね。このバンドの価値もわかっているし、人々がこのバンドが大好きで、このアルバムを買ってくれるであろうということ、だから絶対にベストを尽くしたものを届けないといけないってことも重々わかっている。そしてバンドは、そういうものを届けるために俺に繋がりをくれたんだ。だからそうだね、そういう心積もりで臨んだよ。
-前作は全米最高位の6位を記録しました。それについてはどんな感想を持っていますか?
バンドにとってもヘヴィ・メタル全体にとっても素晴らしい栄誉だったと思う。他の魅力的な音楽と一緒に、チャートの上位に名を連ねるなんてね。ヘヴィ・メタルが2014年も健在なんだって、メッセージを打ち立てられたと思う。そして、あの位置に送り込んでくれたのもファンなんだ。だからこそメッセージの強さがいっそう際立つ。みんな自分の好きなものがはっきりしているから、お金をはたいてアルバムを買ってくれた。JUDAS PRIESTへの情熱の成せる業だよ。そりゃ、よくやったなって背中を叩いてもらえたりもしたけど、そういう結果を与えてくれたのはファンなんだ。彼らなしには俺たちはどうにもならないからね。それがどれほど価値のあるものなのかはちゃんと認識しておかなければいけない。ファンがいるからこそ、45年以上、50年近くもやってこられているわけだからね。......バンドが生まれたのは1969年だから、ファンがこのバンドと一緒に今までの軌跡を歩いてくれたんだ。素晴らしいことだよ。
早くみんなのスピーカーでぶっ放して聴いてほしいし、ライヴでも聴いてもらいたい
-そして、あなたにとって2作目になるニュー・アルバムがついに完成しました。作業を終えた今の率直な感想を教えていただけますか?
どんな感じか教えてあげるよ。......馬がレースに出る直前みたいな感じ。馬って、レースの前にゲートの内側でスタンバっているとき、今にも出たくてうずうずして、エネルギーが有り余っているだろう? 俺にとってはそんな感じなんだ。今俺たちの手元にあるアルバムは素晴らしくて、自分たちでもとても気に入っていて、誇りに思っている。こういう電話インタビューも、個人的にはすごくやりたくてやっているんだよ。俺たちやバンドのみんながどんなに新作を誇りに思っているか、みんなに早く聴いてもらいたくて、どんなにワクワクしているか、みんなに知ってもらいたいからね。もう少ししたらゲートが上がるから、一斉に走り出して、世界に音を聞かせるんだ。そうしたらみんながそれぞれの評価をすることができる。お気に入りの曲をピックアップしてもらったり、車で聴いてもらったり......いろんなことが始まると思うと本当にワクワクするんだ。このアルバムにはたくさんの情熱と愛が詰まっている。たくさんの創造力も、そして他とはひと味違う、俺たちならではの情熱の表し方もね。早くみんなのスピーカーでぶっ放して聴いてほしいし、ライヴでもみんなに聴いてもらいたいね。新作が出てツアーが始まって......と活動が再始動するときっていうのは、本当にワクワクする時期だよ。