INTERVIEW
眩暈SIREN
2017.02.16UPDATE
2017年02月号掲載
Member:京寺(Vo) オオサワ レイ(Gt) ウエノルカ(Pf/Vo)
Interviewer:山本 真由
-また、オリジナルなリリック・センスで紡ぐ厭世的な詞世界も印象的ですが、ひとつひとつの言葉選びや楽曲のストーリー性などは、バンドのコンセプトに合わせるように制作されているのでしょうか?
ウエノ:僕らの作曲スタイルとしては、ほとんどの場合僕か、レイが歌なしの状態のトラックを作って、それに京寺が歌詞とメロディを乗せる、っていうやり方です。いわゆるトラック先行ってやつですね。トラックを上げた段階で、京寺から"どんなイメージか"とか"どんな気持ちで作ったか"とか聞き取りが入るので、それとトラックをガイドに歌詞とメロディを乗せてもらってます。完全に丸投げする場合もあります(笑)。なのでたぶん、"トラックのイメージ+京寺の歌いたいこと"なのかなーと思います。
-では、新作『六花』についてですが、タイトルの"六花"は雪のことですよね。この言葉をタイトルに選んだ理由は?
レイ:同じ人間がこの世界にひとりとして存在しないというのを、同じ形になる物がひとつも存在しない雪の結晶の"六花"という言葉に言い換えてます。みんな違ってみんないい精神です。
-エレクトロなイントロ曲「前口上」(Track.1)での始まりは、静かに徐々に気持ちを高めてくれますが、このインストをオープニングに入れるアイディアは、ミニ・アルバムを制作し始めた段階で決まっていたのでしょうか?
ウエノ:これは初めて全国流通した『ジュブナイル論』からシリーズ化の流れです(笑)。僕がアルバムの1曲目にちょっとした何かしらが入ってるのが好きで、小説でいうなら前書きみたいな、そんなことをしたいってメンバーに提案したのが始まりです。手口としては、次に続く曲と同じ調にしてます。今回は次に続く曲がビート感強めの曲なので、テンポと全体の雰囲気も合わせたら、"「偽物の宴」(Track.2)がもっと映えるかなー"って思いながら作りました。まぁ宴って言ってますから、お通しみたいなもんですかね(笑)。この手のトラック作りも楽しいので、今後ももっといろいろ試してみたいです。
-リード・トラックでもある「偽物の宴」は、日本人好みな響きのメロディ、ダンサブルなリズム、泣きのギターなど、キャッチーな要素が満載で、シニカルな歌詞とのギャップも面白いなと思いました。この楽曲はライヴでの盛り上がりなども念頭に置いて制作されたのでしょうか?
レイ:曲ができたときはライヴ映えしそうだな、とかは思いますが、制作段階では基本的に周りのことは一切考えず、自分たちがいいと感じる曲を書いてるだけです。あんまり考えちゃうとそこに足を引っ張られて、選択肢が狭まってしまう気がするので。
-また、「その嘘に近い」(Track.3)や「ギンガムファッツ」(Track.4)は、ハードコア要素が強い反面、静と動の振れ幅が大きい楽曲になっているという印象を受けましたが、こうしたアグレッシヴな楽曲に繊細なパートを盛り込むことは、難しい作業ですか?
ウエノ:んー、どうだろう......。あまりそういうことを考えたことはなかったですね......。"この曲、ここまでハードにやってきたし、そろそろ静かにしとこっか? ねぇ?"くらいの感覚だと思います(笑)。1曲を通して、くどく聞こえるセクションがないようにしたいからっていうのもあるかもしれません。ただ基本的には"思うがままに"ですね。
レイ:メンバー全員、激しい曲と静かな曲のどちらとも好きなので、そこのバランスは無意識にしてると思います。特に難しいとかは感じたことはないです。
-「灰虚」(Track.5)での、手を加えすぎない絶妙なヴォーカル・エフェクトや台詞的な部分も上手いなと感じたのですが、歌唱表現の多様さもこのバンドの魅力のひとつですね。使い分けなど意識されている点はありますか?
ウエノ:ここは京寺の腕の見せどころ的な部分だと思いますね。コーラス系は全部僕が担当していて、その観点から言えば、どうハモればメインがより際立つかとか、歌詞をより強調できるかとか、そういうことは考えながらやってます。あとは京寺、メンバーからのリクエスト(無茶振り)に答えながらレコーディングしてくっていうパターンです。4曲目の「ギンガムファッツ」のサビラストのバックで入れてるコーラス的なのは京寺の無茶振りシリーズです。個人的にはバック・コーラス系は好きなので、「偽物の宴」の途中途中で入るコーラスでもそうですが、「灰虚」でも"ウーウー"いってますね。バック・コーラスはウエノを始めとした上野合唱団が担当しています。まぁ、そのあたりはゴスペラーズ魂によるものです。
-また、「かぞえうた」(Track.6)は優しい曲調なのに、サビのバックのサウンドはわりと派手で、こういう楽曲だと盛り上がりにスクリームを入れたくなってしまったり、演出過多にしてしまいそうですが、この楽曲はあえてスクリームしないことの意味がすごく活きていると思いました。そこらへんは意識的なものだったのでしょうか?
ウエノ:おぉ、そこに突っ込んでいただけるとは......。まずこの曲ですが、僕がトラックを作った段階でのコンセプトは"眩暈SIREN流、スタジアム・ロック"でした。なので、楽器隊はとにかく"スタジアム感"を出すことに腐心しました。この曲のレコーディングのときは、僕はずっと狂ったように"スタジアム感!"と連呼してましたね。特にギター録りのときは、僕も付きっきりになることが多いんですけど、レイは相当ウザかったと思います(笑)。そんなコンセプトもあり、スクリームを入れることはかなり悩んでました。森田からは"入れた方がいい!!"ってすごく言われたので、後日また別の日に入れようかと思ってたのですが、録った段階の音源を聴いてるうちに、この曲にスクリームは求められていない気がしたので今回のアレンジになりました。決して別の日にレコーディングするのが面倒だったわけではありません。本当です。結果的にこの曲はこれが正解だったと思っています。ただひとつ残念なのは、"スタジアム感"を出したところで僕らはスタジアムでライヴできるような人気バンドではないということですね......(笑)。