INTERVIEW
MUSE
2015.06.09UPDATE
2015年06月号掲載
Member:Chris Wolstenholme (Ba)
Interviewer:山口 智男
-ドローンズと人類の戦いというストーリーは現代社会のメタファーだと思うのですが。
たしかにそうだね。ドローンズを利用したり、人をドローンズにしてしまおうとしたりするサイコパスとか、世界や社会を牛耳っているサイコパスとか。そいつらはとてつもなく酷いことをするように人を操るんだ。何の思いやりもなければ、行動にも何の責任も取らない。リモコンで人を殺す奴らなんかが出てくる。今の社会にもそういうのがあるのは明らかだよね。世界のどこかで誰かがボタンをひとつ押すだけで、望み通りの場所で、何百万という人々が殺されてしまう。でもそのボタンを押した奴は、自分のやったことの重大さなんて考えもせずにその晩も眠りにつくんだ......そういうことにいっぱい触れたアルバムだね。君の言う通り、たしかにメタファー色の強いアルバムだと思うよ。
-前2作はセルフ・プロデュースでしたが、今回はプロデューサーを迎えています。しかもプロデューサーにRobert John"Mutt"Langeを起用したのはちょっと意外だったのですが、何を求めて彼を起用したのでしょうか?
Muttは知っての通り、素晴らしいキャリアの持ち主だからね。びっくりするくらい素晴らしいアルバムをたくさん手がけてきたんだ。しかも優れたソングライターでもある。ヒット曲もたくさん書いているしね。今回、プロデューサーを使いたいというのは初めから決めていたような気がする。実は『The 2nd Law』でもプロデューサーを起用しようとしたんだけど、一緒にやりたい人たちが、僕たちがレコーディングしたかった時期に都合が合わなくてさ。それで結局、自分たちでやることになった。だから今回はプロデューサーを起用することがとても重要だったんだ。コンセプト色の強いアルバムだからサウンドにも最初から最後まで一貫性が欲しかったし、それを確実にするためにもプロデューサーが必要だった。音的にも歌詞的にもコンセプトの焦点がブレないようにね。そういう"4人目の意見"があるのはいつだっていいことだから。それに、バンドとしても、プロデューサーを兼ねないといけないときより、少しストレスが和らぐんだ。プロデューサーをやっているときは楽器の演奏よりもコントロール・ルームで過ごす時間の方が長かったりするからね。プロデューサーをやるのも楽しいけど、バンドに専念できるのもまた楽しいものだよ。プレイのことだけ考えていればいいからね。今回はこうしてよかったよ。ほとんどの時間を演奏に費やすことができたんだ。あとはMuttや彼のアシスタントに任せればよかったからね。
―今回はそうすると、ロックに浸ることができたんですね。
そう! 演奏に没頭することができたから、ちゃんとした演奏ができたよ。『The 2nd Law』のときは演奏したら今度はリスニング・ブースに入って音を聴いて......という感じで、自分のパフォーマンスの審査員を自分でやっていたけど、そうするとときには間違ったものを追求してしまうことがあるからね。と言うのも、自分の楽器の音を聴いていると、完璧を求めすぎてしまうきらいがあるんだ。でも第三者的な目線で見れば、完璧って必ずしも最高のものじゃないからね。もっと感情の入る余地がないと。プロデューサーはそういう余地を見つけてくれるんだ。どんな演奏が最高か、どのテイクが最高かというのを第三者に仰ぐのはなかなか面白かったよ。
―YouTubeに歌詞と一緒に上がっていた曲だけでもかなりエモーショナルでしたから、残りの曲を楽しみにしているファンは多いでしょうね。アルバムのリリースを待たずにツアーが始まりますが、アルバムを曲順通りに再現するライヴをやることも考えているんですか?
そういう話は出てはいるね。最初からそうするかどうかはわからないけど。もうすぐアメリカでいくつかショーがあるんだ。今度もわりと小さな会場でのショーなんだけどね。ツアーのメインはフェス出演から始めるけど、フェスでアルバムを曲順通りに再現するのがうまくいくものかどうか僕にはわからないな。フェスではみんな、ただ楽しみたいだけだろうから(笑)。だからきっとヒット曲を多くやることになるだろうね。フェスで曲順通りの再現をやるとは思わないけど、アリーナ・ツアーなんかに突入したら、可能性としてはアリだね。実際話には出ているから。ストーリー性のあるアルバムだから、きっとうまくいくと思う。今までやったことがないことだからね。アルバムを最初から最後まで通しでやるショーがあるとしたら、このツアーで決まりだと思う。
-7月にはFUJI ROCK FESTIVAL出演も決まっています。そこではどんなライヴを見せもらえるでしょうか?
フジロックはいつも最高だよね! 僕たちもたしか2、3回は出演したと思うけど、毎回楽しんでいるよ。フジで好きなのは、ラインナップが超強力なところ。いつもすごいバンドがいっぱい出ているんだ。僕たち的にも助かるよ。あまりラインナップが強力じゃないフェスに出ると、僕たちみたいなヘッドライナーに全部プレッシャーがかかっちゃうからね(笑)。まぁ、それはともかくラインナップが強力だと、自分たちがステージに出るころにはオーディエンスが最高潮に盛り上がってくれているから、そういう意味でも助かるんだ。だから今回もフジを本当に楽しみにしているよ。今年は夏中、フェスに出ずっぱりなんだ。去年は1回も出なかったけどね。アメリカで何回か演奏した以外はツアー自体もあまりやらなかったから、フェスにまた出られるのは嬉しいね。フェスは毎回楽しいよ。今までのキャリアでも何回もやってきた。いつだったか、ひと夏に57回フェスに出た年があったな。フェスはとにかく楽しいんだ。
-ところでPsycho UK TourではTHE MARMOZETSがサポートを務めましたが、注目している新人はいますか? そう言えば、ROYAL BLOODのMike Kerrは、あなたのベース・プレイから影響を受けたそうですね。
THE MARMOZETSはすごいバンドだったよ! あいつらの存在は人に教えてもらったんだ。僕は一緒にやるまであまり知らなかった。曲を聴かせてもらって、これはすごいと思ったよ。まだ若いしね。本当に若いんだ。僕たちがこのバンドを始めたころよりも若いメンバーもいるんじゃないかな。THE MARMOZETSの演奏は毎晩観ていたけど、ミュージシャンとしてもとても優れているね。曲も本当にいい。ぜひチェックするべきだね。他の新人は最近あまり聴いていないんだ。アルバム作りに専念していたからね。大抵はツアーに出てから、いろいろな人がくれる新人のCDなんかの音源を聴くんだ。今回もいろいろな音に出会えるといいね。
-日本で会えることを楽しみにしています。最後に読者にメッセージをお願いします。
もちろん、日本に行くことは全員楽しみにしているよ。日本は僕たちが何度も訪れた国のひとつで、キャリアのごく初期から......1stアルバムのころから行っているんだ。毎回、最高の思いをさせてもらっているよ。ギグもいつもファンタスティックだし、日本のオーディエンスも世界最高の部類に入ると思うんだ。長い間応援してきてくれて、本当に感謝しているし、早くまたそっちに行きたいよ!