INTERVIEW
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2015.03.09UPDATE
2015年03月号掲載
Member:加藤小判 (Vo) 否戸田雲仙 (Gt) 木須利茶 (Gt) 陣下須 (Ba) 茶道済 (Dr)
Interviewer:荒金 良介
-曲作りの行程から今までと違うんですね。
否戸田:そうですね。今回の作品を作るときに、自分たちのアーティスト写真をずっと見てたんですよ。"こいつらがどんな音を出すだろう"って考えたら、天狗だし、和風のメロディだろうと。和風な音をロック・サウンドに落とし込むことは、他にやってるバンドさんいますけど、今回は"日本クラウン"という演歌に強いレーベルだし、面白いんじゃないかと。それで琴っぽい音やメロディもオリエンタルな感じを意識したら、僕らに合うんじゃないかって。
-確かにありそうでなかったアプローチですね。
否戸田:自分たちでもやってないなと思いました(笑)。
加藤:ヴォーカルも勢いでライヴ感を重視してやっていたけど、今回はメジャーだし、たくさんの人に聴いてもらいたかったので、もっとレベルを上げたくて。「AKANE-CHAN」も3テイク録ったり、「Sweet Candy」の歌い出しにもこだわって、耳に残るようなマネしたくなる歌い方を心がけました。
陣:ベースに関しても生ドラムと絡むことで、ノリが良くなりましたからね。多少粗く聴こえるところもあるけど、それを含めてグルーヴなのかなって。
木須:生感が出たアルバムになったし、ギターに関して言えば締め切りを延ばしてまでこだわりました。出せるものは全部出し切れたと思います。
-茶道さんは初のレコーディングになったわけですが、どうでした?
茶道:ドラム録りを最初にやったんですけど、陣君も言ってたけど粗っぽさを意識したし、キレイにまとめるつもりもなくて。そこにみんなが乗って作り上げることができました。特に「AKANE-CHAN」は気持ちが入りましたね。
否戸田:ドラムに関してはとにかく勢いを出して欲しくて。こだわり抜いたというより、茶道のエモーションを詰め込んだ感じです。他の楽器のフレーズは作り込んだけど、ドラムはライヴ感を出したかったですからね。今まで作ってきた3枚のアルバムの中でこれが僕らっぽい曲だなと気づくこともあったし。僕らが予想してない曲で盛り上がることもあったんですよ。やっぱり、ライヴハウスのお客さんとのやり取りの中で気づくことが多いんですよね。"あっ、こういうのが天狗っぽいのかな"って。それをよりわかりやすくパッケージしたのが今作ですね。
-ライヴのフィードバックを曲に活かして?
否戸田:はい。天狗っぽさをきれいに散りばめることができたと思います。今まではただ乗れたらいいというか、漠然としたイメージでやっていた部分もあるんですよ。でもライヴをやるうえで僕らとお客さんのテンションが合致することが大事ですからね。もちろん歌詞やメロディは重要だけど、そこばかりに意識を置くと、歌詞やメロディを知ってる人にしか伝わらないから。イントロからこういうテンションで始まって、ここからガン!とギターが鳴り響くとか、ライヴでパッと演奏したときの衝動的な間やタイミングを意識しました。四つ打ちのシンセで始まって、それからドーン!とくるとか、アレンジによって聴く人と音を共有する気持ちが生まれると思うんですよ。今回はそこを心がけました。「Sweet Candy」みたいにいきなり歌メロで始まったり、「FiVE PEOPLE SURRENDERS」は天狗のデジタル・ロックの部分を強調して、茶道の生ドラムとデジタル・ビートを混ぜたんですよ。四つ打ちだけど、なかなか歌が始まらず、サビに来てドーン!みたいな。お客さんがワクワクするサウンドをイメージしました。
-従来の天狗らしいデジタル感は残しつつ、ポップ性とライヴ感も高まってるし、その融合が絶妙だなと思いました。あまり似たサウンドのバンドが思い浮かばないですね。
否戸田:そこはすごくこだわってます。今このスタイルって、珍しくないと思うんですよ。むしろ同期入れてないバンドの方が少ないですからね。今まではドラムが同期でここまでゴリゴリやってるバンドはいなかったけど、ドラムが入ることで普通のバンドと差別化できないから悩んだんですよ。でもポップさ、ロックさ、デジタルのバランス感は他のバンドさんはいないラインだと思います。僕らはどうしてもギミック優先になりがちだけど、それだけで終わっていたら、潰れちゃうのは体験してますからね。圧倒的にオリジナリティのあるものを作りたくて。
-作品の中身についてですが、1曲目からカバー曲「天体観測」で始まりますね。これには正直驚きました。
否戸田:今までストイックでマジメな話をしましたけど、ギミックも天狗の魅力ですからね。アルバムの1曲目って大事じゃないですか。視聴機で1曲目を聴いたときに、"なんだこれは?!"と思って欲しいから。僕らの曲じゃなくてもいいんじゃないかと(笑)。あと、以前ELLEGARDENの「ジターバグ」のカバーをやったときに気づいたんですけど、カバーをやることで僕らの個性が見えやすいんですよ。だから、人の曲をカバーするけど、アレンジは僕らなりのアプローチでやってます。まあ、他のバンドさんは1曲目から人のカバーはやらないだろうし。
-しかもメジャー1発目の作品で!
否戸田:にもかかわらず、推し曲ではないですからね(笑)。そこも天狗らしさというか、ゲスい感じが出てるかなと。でも若い子でBUMP OF CHICKENさんの曲だと知らなくて、"いい曲作るよねえ"みたいな反応もあるので、それはラッキーですね(笑)。