INTERVIEW
MASTODON
2014.06.24UPDATE
Member:Bill Kelliher (Gt/Vo)
Interviewer:荒金 良介
-周りの環境やレコーディング自体の雰囲気はいかがでしたか?
いいところだったよ。正確にはナッシュヴィルじゃなくて、テネシー州フランクリンというところでやったんだ。ナッシュヴィルから30分くらい南にいったところで、民家はまばらで、馬が馬小屋の周りにうろうろしている。とても静かなところだよ。冬だったからとても寒かったな(笑)。そこも結構小さなスタジオだったからプライバシーはあまりなかったけど、その分物事に関わりあうことができた。
-今作は歌とメロディを押し出した、よりスタジアムで映えそうなスケールの大きな曲調が多い印象を受けました。この感想を聞いてどう思われますか?
いい印象を受けてくれたね。まあ、確かにスタジアム公演はよくやるしね(笑)。でも特にスタジアムでの演奏を意図したわけではないんだ。むしろロックンロールなアルバムだよ。『The Hunter』と同様、エネルギーに満ちたアップビートなアルバムだね。ギター・ソロやヴォーカルのハーモニーやメロディが色々ある、キャッチーで短い曲もある。時にはそういう短い曲の方が、書くのが難しかったりするんだよな。楽そうに聴こえてもね。ともあれ、デカいスタジアムやアリーナで演奏するのが楽しみだよ。合うと思うしね。大勢に向けてプレイすると、複雑な音楽も消化して聴くことがいつもできるとは限らない。複雑な曲を書くのをやめたという意味ではないよ。今でも複雑ではあるからね。ただ、複雑の方向性が違ってきたような気がする。俺にとっては洗練度が増して、ヴォーカル面で複雑になって、進化した気がするね。
-1stシングルの「High Road」ですが、とりわけメロディ・ラインがポップな印象を受けました。
うん、いいと思うよ(笑)。俺があれを書き始めたときは、神経症的というか、ヘヴィで手に負えないような感じだった。でもフレットボード上のポジショニングを変えてみたらシンプルな感じになったんだ。そこにBrannが"曲がいいね。特にコーラス部分にいいメロディがある"と言ってきたから、すぐさまその部分に集中して取り組むことにした。自宅スタジオでね。ヴォーカルを考えて、あいつがヴァースを考えて、真ん中辺は一緒に考えたのかな。そうしたら、今までやったこともないような感じの曲ができたんだ。『Remission 』時代を彷彿とさせる、という人もいるね。昔の面影もあれば、新しいものもある。とてもポップではあるけど、とてもメタル的なポップさなんだ。
-ですね、キャッチーだなと。
うん。アルバム全体にキャッチーなリフやメロディが散りばめられているよ。
-「High Road」を1stシングルに選んだ理由を教えてもらえますか?
あれは俺たちじゃなくて、レコード会社が選んだんだ。何がベストか良く分かっているからね。俺的にはどの曲でもあり得たけどね。どれもグレイトだから。「Chimes At Midnight」が選ばれたかも知れないし、「Diamond In The Witch House」だったかも知れない。どれもシングルになり得る、キャッチーなクオリティがあると思う。よく考え抜かれた、ヴァース→コーラスの流れがあるからね。
-アルバム名は曲名から取られてますよね。なぜこのアルバム名にしたのでしょうか?また、この楽曲に込められたメッセージがあれば解説してもらえますか?
タイトルは、1年間(というサイクル)にゆるく基盤を置いているんだ。地球が太陽の周りをまわるのに1年かかるだろう? MASTODONとして、このバンドを形成する個人として、また1年を過ごす。そういう感じなんだ。曲や歌詞はかなりパーソナルだね。それぞれの曲が、俺たちの誰かのパーソナルな話に繋がっている。と言っても、リスナーは曲を聴いて自分なりの結論にたどり着けばいいと思うけどね。俺たちが歌っていることについてどう思うか、好きに考えていいと思うんだ。自由な解釈に委ねるよ。実生活で起こったことを書くことほどベターなものはない。フィクションもいいけど、俺たち自身は、去年の1年間に起こった色々なクレイジーなリアリティについて書くのが最適だと思ったんだ。色んな人がこの世を去っていったし、病気になったり傷ついたりした友人もいる。ポジティヴなこともたくさんあったけど、ネガティヴなことがたくさんあったんだ。とにかく色んなことを経験したよ。それがこのアルバムには詰まってる。俺たちもみんなと同じ人間だから、世間の出来事に影響を受けることがあるんだ。
-そういうネガティヴな経験を歌った曲でも、ポジティヴなパワーを感じますね。ネガティヴをポジティヴに昇華しようとしたのでしょうか。
かも知れないね。無意識にやっていたかもしれない。俺が書いたリフを聴いて、Blannが"今のリフ、何かハッピーな感じがするな"って言っていたこともあった。俺たちハッピーなのか?ハッピーなバンドなのか?なんてね。"分からない"と俺は言ったよ。俺がリフを書いたときは確かにハッピーだったけどね。それをそのまま曲の中に残しておいたんだ。イヤな気分をひっくり返して、ポジティヴなひねりを加えたいという気持ちはあったね。誰かが病気になったり死んだりというのは人生の流れの中では自然の摂理だけど。人間関係、家族、中毒......みんな、誰にでも起こりうることだけど、歌詞に織り込むことによってカタルシスを得たり、胸のつかえを取りたいと思ったんだろうね。そして、理解可能でリアルなものを作ろうと。
-特に思い入れの強い歌詞があれば教えてください。
う〜ん、あまり考えたことがなかったな。どれも素晴らしいと思うけどね。そうだな、「The Motherload」には"open up your eyes(目を開け)"......(小声で口ずさむ)......"wake up and fight, fight for the love and burning light(目覚め、戦うんだ。愛と燃える光のために)"という歌詞がある。あれは俺にとって身近な気がするね。俺自身のことを歌った曲ではないけど。あれはBrannが書いた曲で、俺はあいつの言いたいことを知っている。とてもパーソナルな曲だけど、歌詞を見た瞬間、あいつが何の話をしているか分かったよ。鳥肌が立って、涙目になった。"何てことだ......とてもパーソナルなことを書いているじゃないかと思ったよ。あとはオープニングの「Tread Lightly」もいいね。
-今作のアルバムのアートワークも素晴しいですね。2枚組のアナログ盤もリリースされるそうですが、本当にアナログ所有力を掻き立てられます。これは作風ともリンクしているのでしょうか?
アートワークと中身に共通点はあると思う。アートワークには2匹の生き物がいるだろう?片方が善、片方が悪を表しているんだ。陰と陽みたいな感じだね。自分の中のバランス、中間点を探すみたいな。と同時に、とてもトリッピーなアートワークでもあるよね。ショッキングでもある。俺がこのバンドのことを知らない状態でこのアルバムを見かけたら、ジャケ買いするよ(笑)。それから、俺たちは毎回アナログ盤をリリースするようにしているんだ。アナログ盤を買いたい意欲が強い世代というのがいるからね。俺が子供の頃はアナログ盤とテープしかなくて、全部アナログで欲しいと思っていたよ。今も昔ほどではないけど集めているんだ。色んな色やヴァリエーションのアナログ盤を集めているキッズはたくさんいるよ。俺たちは"スーパー・ファン"と呼んでいるんだ。
-アルバム発表後もワールド・ツアーは続くわけですが、日本のファンに向けて最後にメッセージをもらえますか?
俺もそう思う。日本のファンが恋しいよ(笑)。最後に行ったのは津波の前だったからね。確かLOUD PARKだったと思う。俺自身は今年の初めに別のバンド(PRIMATE)で東京と名古屋に行ったんだ。楽しかったなぁ。日本は大好きだからね。おもちゃのショッピングに行ったよ。"まんだらけ"に行ったんだ。日本のアニメとかおもちゃが好きだからね。また日本に行って、日本のファンのためにプレイする日まで数えているんだ。と言っても、いつになるかは分からないけど、日本にはまた行く気満々なんだ。みんなのことを愛している。ファンでいてくれてありがとう!