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FEATURE

BiS

2014.03.11UPDATE

2014年03月号掲載

"アイドルを殺したのは誰?"――年内に解散を発表した異端アイドルBiSのラスト・オリジナル・アルバム

Writer 沖 さやこ

年末、見る気もないテレビをつけっぱなしにしながら仕事をしていたら、テレビから流れていたバラエティ番組にBiSがゲストとして登場した。偶然も偶然だった。"あ、BiSだ"と作業中の手を止めてその番組を見ていたら、テレビの中の司会者がこう言った――"BiSの皆さんは日本武道館公演ののちに解散"。ええええ!? なんだってー!? 本当に!? ドッキリじゃなくて? とテレビの前で取り乱してしまった。その後も半信半疑のままだったが、それからしばらくして日本武道館予定だった解散ライヴが横浜アリーナで開催されることが公式発表された。BiSは本当に解散してしまうらしい。新メンバーであるコショージメグミが加わったばかりだというのに。そんな彼女たちのラスト・オリジナル・アルバム『WHO KiLLED IDOL?』は、まさしくBiSの集大成と言うべき壮大な作品となった。

上田剛士(AA=)プロデュース「STUPiG」、難波章浩(NAMBA69)作曲「Hi」、津田紀昭(KEMURI)プロデュース「MURA-MURA」、松隈ケンタ(SCRAMBLES)プロデュース「DiE」「Fly」「Hide out cut」、ヒダカトオル作曲「BiSimulation」と、これまで発表されたシングル収録曲以外にも、仙台発の正統派アイドル・グループ、Dorothy Little Happyとの連名でリリースされた「GET YOU」などを含む全15曲を収録。これだけ既発曲が多いとなると中だるみするのでは?と思われるかもしれないがそんなことはない。『WHO KiLLED IDOL?』は耳に馴染んだ曲たちも新鮮に響くほどにバラエティに富んだ名曲揃いであり、ドラマティックな作品なのだ。これは必ず最初は曲順通りに聴くことをおススメする

まずアルバムは壮大なバラード「primal.2」で幕を開ける。この曲はBiSの代表曲のひとつでもある「primal」の続編で、GLAYのHISASHIがギターで参加。彼の哀愁と強さを感じさせるギター・ソロと、ヴァイオリンの音色が優雅に響く。コショージメグミが作詞を担当した「no regret」はソフト・タッチなワルツで始まり、サビでパンク調に切り替わる瞬間の着火性がたまらない。「マグマト」はレトロなサイケ・ポップに四つ打ちが心地よく、BiSの女性的な面を小悪魔的に魅せる。「GET YOU」でポップに染め上げると、「MMGK」では爆裂シンセ・リフで一気にロックの枠の飛び越えるサウンドスケープとパワフルなヴォーカルに圧倒されてしまった。特に度肝を抜かれたのは「ERROR」。イントロからかなりいかついメタルコアで、松隈ケンタのサウンドの許容範囲に改めて感服。そして彼女たちの歌もしっかりとサウンドと馴染んでいるのだからさすがだ。やはりそれだけ強い芯を持っていないと、この音に負けない歌を歌うことなんてできない。ポップやロック、メタル、ハードコアを自由自在に行き来できるのは彼女たちだからこそだ。高速ドラムが突っ走る「nasty face」に、現メンバーで再録したライヴの定番曲「Hide out cut」、THE YELLOW MONKEY「プライマル。」のカヴァーと、まさに15曲全てが、彼女たちの歩んだ軌跡を示す、圧倒的な楽曲たち。アイドルになりたい6人組は、規格外の活動や音楽活動で普通のアイドルでは手に入れられないものを手に入れた。『WHO KiLLED IDOL?』はその証明と言うべき名盤だ。BiSは7月8日に"BiSなりの武道館"と銘打ち、横浜アリーナで解散ライヴを行う。彼女たちのラストをしっかりと見届けたい。

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