FEATURE
BiS
2012.10.17UPDATE
2012年10月号掲載
Writer MAY-E
囚人服をモチーフにしたボーダーのワンピースを着て、手にはタバコと釘バット……これが、アイドル!?
アイドル戦国時代と言われる現代、一際異彩を放つアイドル・グループBiSがロック・アルバム『IDOL is DEAD』をリリースする。BiSとは、“Brand-new idol Society”の略称で、別名“新生アイドル研究会”。ちなみにファンは、“研究員”と呼ばれるそうだ。
今作『IDOL is DEAD』の1曲目に収録されているタイトル曲「IDOL is DEAD」は、とにかく刺激的だ。メタリックで荒々しい轟音が鳴り響き、メロディらしいメロディはなく、終始悲鳴のような歌声で歌われている。同曲のミュージック・ビデオでは、メンバーは手に釘バットを持ち、目の周りを真っ黒なアイシャドウで塗りつぶし、まるで何かの中毒者のように体を揺らしながらこちらを睨みつける。アイドルでありながらアイドル・ファンの夢を破壊しにかかるという、挑戦的な1曲だ。シンセを用いた最先端のロック・サウンドとゴシックな要素が融合している点など、ロックの視点からみても非常に興味深い。
今作には、前途したような攻撃的なサウンドのみならず、ガレージ・パンクなナンバー「CHELSEA」や、ポップなエレクトロ・ロック曲「nerve」、切ないロック・バラード「hitoribochi」、そしてミクスチャー・ロック曲「urge over kill of love」と、実に多彩なロックのアプローチが詰め込まれている。
その中でも、本誌読者に最もお勧めしたい曲が「IDOL」だ。「IDOL is DEAD」に次ぐヘヴィな1曲で、疾走感があるがメロディは一際エモい。英語で歌っているようにも聴こえるが、実は日本語詞という仕掛けもユニークだ。宗教風のダークなミュージック・ビデオも必見である。
ポップでキャッチーな「BLEW」など、いわゆるアイドル・ソングのそれを感じさせる節もあるが、BiSの音楽は“ガールズ・ロック”と呼んだほうがイメージしやすいものかもしれない。しかも、そこらのガールズ・ロック・バンドよりBiSの方がよほどパンクの精神を感じさせてくれる。だから、面白いのだ。
BiSは、2010年からインディーズで活動してきた。今ほどハードな要素はなかったが、インディーズ時代のミュージック・ビデオを見る限り、当時からアイドルというシーンの中でも異色のグループだったことが伺える。森の中、全裸で走り回る「My Ixxx」。R指定となったエログロな「primal.」。ダイナミックなロック・サウンドに合わせて、ヘドバンのようにひたすら頭を振っている「パプリカ」には、メンバー同士の濃厚なキス・シーンも。スク水で不良と乱闘する「PPCC」には、血や傷をねっとりと舐め合う姿が映し出されている。少々変態的なそれらのミュージック・ビデオが収録されたDVD付録のバージョンも同発されるので、合わせてチェックしていただきたい。
キラキラとした笑顔で夢を振りまくのが日本のアイドルの決まりごとのようになっているが、同じアイドルという立場にありながら、その儚さや生々しいほどの人間味を感じさせてくれるのが、このBiSだ。彼女たちの今後にも注目していきたい。
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