DISC REVIEW
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デビュー当時"サディスティック"と形容された激しさを求めているファンの間では賛否が割れるであろう、ある意味、洗練の追求はもはや凛として時雨の表現の軸となり、その軸においても彼らが新たなことに挑戦していることを、ダメ押しで印象づける6thアルバム。それが如実に表れたのが、「Ultra Overcorrection」などでの顕著なジャズ/フュージョンの咀嚼だろう。もともと、ダンサブルなビートを持ち味にしていた彼らの演奏はそれによって、さらに洗練に向かった印象もある。太くなったグルーヴは本作の大きな聴きどころだ。もちろん、プログレ・メタルな「EneMe」を始めとする轟音と激情もまた凛として時雨らしい。それらが残酷なまでに凍てついた世界観の中で、絶妙のバランスで同居している。 山口 智男