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INTERVIEW

MUCC

2017.03.16UPDATE

2017年03月号掲載

MUCC

Member:ミヤ(Gt)

Interviewer:杉江 由紀

究極にして至高のベスト盤がここに完成! これはもはや、MUCCにとって金字塔そのものと言ってよかろう。3月29日に発表される『BEST OF MUCC Ⅱ』&『カップリング・ベスト Ⅱ』は、今年で結成20周年を迎えるMUCCが"ここ10年"の中で紡いできた楽曲たちにリマスタリングやリレコーディングなどを施したアーカイヴ的な作品となっているのである。このあとMUCCは結成20周年を記念した日本武道館での2デイズ公演"MUCC 20TH-21ST ANNIVERSARY 飛翔への脈拍 ~そして伝説へ~"を行うことも決定しており、6月20日には"第Ⅰ章 97-06 哀ア痛葬是朽鵬6"、同21日には"第Ⅱ章 06-17 極志球業シ終T"を開催する。

-収録されている楽曲数といい、豪華なアートワークといい、MUCCにとって10年ぶりのベスト作品となる今回の『BEST OF MUCC Ⅱ』&『カップリング・ベスト Ⅱ』は、このめでたい20周年の節目を飾る貴重なアーカイヴに仕上がったようですね。

たしかに、曲数はかなり多いです。前回のベスト(2007年リリースの『BEST OF MUCC』&『WORST OF MUCC』)が2007年5月までのシングル曲とインディーズ時代の代表曲みたいなのを順不同で入れたものだったのに対して、今回は2007年10月から10年分のシングル表題曲と、カップリングをそれぞれ時系列に沿って入れていったんですよ。それに加えてアルバムのリード・トラック、初回版同包盤にはリミックス曲たちも入れてあるので、全部で51曲ですからね。とにかく、マスタリングがマジ大変でした(笑)。

-異なる時期に様々な状況で作られた各曲たちを、ひとつの盤の中に収めていくにあたり、ミヤさんがマスタリングをしていくうえで留意したのはどんなことでしたか。

例えば、シングルの曲たちに関して言うとただでさえ時期によってミックスの雰囲気も違うし、毎回プロデューサーが違ったりするのもあって、それをただ同列に並べようとすると音にすごいバラつきが出てくるんですよ。まずは、そこの違和感をなくすというのが大前提としてはありましたね。そういう意味で、普段だとアルバムのマスタリングは海外に出すことが多いんですが、さすがに10年分のMUCCの音を一括して外国人のエンジニアにマスタリングしてもらうというのは少し無理があるなと思ったので、今回はもともとメジャー・デビューのころからお世話になっている前田康二さん(Bernie Grundman Mastering Tokyo)に、改めて頼んでやってもらいました。結果として、すごく良い仕上がりになったと思います。当時よりも、音がより鮮明になった曲も出てきたくらいです。

-特にその傾向が強くなったのは、具体的に言うとどのあたりの曲になりますか。

特に、と言うと「梟の揺り篭」(『BEST OF MUCC Ⅱ』の【DISC-1】Track.2)かな。これはアルバム『志恩』(2008年リリースの8thアルバム)のリード・トラックで、当時はアルバムとしてのカラーの方を優先してマスタリングしたところがあったぶん、後々"もうちょっとこうしておけばよかったな"と思ったところが出てきていたので、今回はそこをクリアすることができたのかなと。あとはやっぱり、全体的に10年前と比べるとマスタリング自体の精度が上がっているので、そこの差も意外と大きいんじゃないかと思いますよ。

-ただ単に曲を寄せ集めただけのベストとは、わけが違うわけですね。

そうなんですよ。当時の曲をただそのまま入れた、というのとは全然違います。実際、あえて細かく表記を変えたりはしていませんけど、中には"当時は使わなかった歌の音量が少し大きいバージョン"になっている曲だとか、"ハードディスクじゃなくてアナログのテープで録ったバージョン"とかで入れた曲なんかも入っているので、事実上は初めて世に出るかたちの音になっている曲も今回は結構あるんです。『カップリング・ベスト Ⅱ』の方に入っている「WateR」(Track.15)とかも、これは"ヴォーカルがノー・エフェクトのバージョン"になってますね。だから、当時の音源と聴き比べてみてその違いを楽しむっていうのもなかなか面白いんじゃないのかな。

-つまり、マニアックでコアなファンほど深く楽しめるベストになっていると。

いやー、細かく言い出すとほんともうキリがないですよ。「フリージア」(『BEST OF MUCC Ⅱ』の【DISC-1】Track.6)もシングルで出したものとはテイクが違っていて、これは元の音よりもドラムの音が大きいです。ちなみに、この曲はプロデューサーがkenさん(L'Arc~en~Ciel)で、当時これとシングルで出した方の音と、どっちを出すかというので2時間くらい話し合ったんですよね。最終的にあのときはkenさんの意見を尊重するかたちになって、そのとき"もし、将来的にベストとか出すならそのときは今回出さなかった方のミヤ君バージョンを入れたらいいんじゃない?"って言われたんですけど、たぶんkenさんはそのことをもう忘れちゃっているでしょうね(笑)。

-そうした一方、「ジオラマ -20th 飛翔 Ver.-」(『BEST OF MUCC Ⅱ』の【DISC-1】Track.7)のようにしっかりと別バージョンであることを明記している楽曲も、今作には収録されていますね。

そうやって明記してあるものは、すべて新しく録音し直してあります。まず、「ジオラマ」に関しては、2009年当時にMUCCのスタッフをやってくれていた人間が亡くなってしまって、その方に宛てて作った曲だったので、時間をかけてどうこうというよりも、すぐにかたちにして出すことと、それを直後の武道館公演("MAVERICK DC GROUP PRESENTS 『JACK IN THE BOX 2009』")で演奏することに大きな意味があった曲だったんですよ。リリースも配信限定で、録音も自分たちだけでやりましたから、"あのときもし、もっと時間があって細部まで作り込めていたならこうしていただろうな"というのが、今回のこの生オーケストラを入れたかたちなんです。そうすることによって、この曲はきちんと"飛翔"することができただろうし、意味合い的な面でもあれからだいぶ時間も経っていることで、おそらくその人も成仏してるんじゃねぇかな? という思いもここには込めてあるんですよね。彼の死を乗り越えたうえで、"今もこうして俺らは頑張れてますよ"という部分を今改めて表しておきたかったというか。この飛翔というのは、もともとMUCCの20周年を象徴する言葉ではあるんですが、これに限っては"曲が飛翔した"というニュアンスの方が強いです。

-では、「暁 -20th 飛翔 New Take Ver.-」(『BEST OF MUCC Ⅱ』の【DISC-1】Track.10)については、なぜこのたびリレコーディングをされたのでしょう?

「暁」は2011年の東日本大震災が起きたあとに作った曲で、その年にやった武道館(「TOUR "Chemical Parade" FINAL」「MUCC history GIG 97~11」)のときに簡素な紙パッケージで500円で限定販売したものだったんですよ。

-その収益が義援金として全額寄付されたことは、今でもよく覚えております。

この曲は「ジオラマ」以上にDIYな曲で、録ったのは普通のリハスタでしたからね。その日のうちにミックスして、当時はいろいろと節電とか謹慎ムードみたいなものもあったから、急遽中国でプレスをすることにして、それをすぐに武道館で販売という流れだったんですよ。そして、これに関しても今回は"もう飛翔しているであろう"ということで、あれから時間も経って今のMUCCだから出せる音で録り直しをしました。ちゃんとしたスタジオで録っているというのもありますけど、それ以上にバンドとしての技術的な部分で当時ではまだ表現しきれていなかったところも、今回はちゃんと音にできた気がします。聴いたときの印象も、元の「暁」とはだいぶ違うはずです。