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LIVE REPORT

moreru

2025.12.25 @clubasia

Writer : サイトウ マサヒロ Photographer:小原泰広

12月25日、枕元を確かめずに布団を這い出たが、もしかするとそこにプレゼントがあったのかもしれない。もっとも、その中身が得体の知れない生き物の臓腑であった可能性も否定できないが。とにかくそんな想像をしたくなるくらいに、この日のmoreruのライヴは非現実的で、グロテスクで、でも意外な程まっすぐに優しかった。

4thアルバム『ぼぼくくととききみみだだけけののせせかかいい』が生んだ傷をさらに深く抉るかのごとく、暗黒祭典"evilspa"を含む日程で全国を回ったリリース・ツアー[moreru 4th Album Release Tour "霊霊障障新新感感染染"]。そのファイナルとなる本公演は、キャリア初のワンマンに。ライヴは途中休憩を挟んだ2部制で行われ、ディスコグラフィを大きく二分することで、最新作での彼等の変化がもはや取り返しの付かないものであることを決定付けた。

定刻を迎えステージに現れた岩本雪斗(Noise/Vo)が三上 寛「誰を怨めばいいのでございましょうか」を再生すると、夢咲みちる(Vo)が会場後方から客の頭上を転がり込んでステージに辿り着く。1曲目は最新アルバムと同じく「初恋と戦争の準備」。夢咲は会場を遠く見渡しているが、照明の逆光でその表情は読めない。唐突に何かが爆ぜ続けるようなノイズに飲み込まれて、同楽曲の"曲で過去に戻ります"という歌詞に導かれるように、セットリストは時間を遡行する。

序盤は肉体的で破壊的なナンバーが連投された。手の中に幸せも喜びも余るはずがないから、痛みと怒りの再分配によってこそ、彼等の革命は始まる。「人間讃歌」、「kireta otaku」でモッシュピットがこじ開けられ、オーディエンスたちは互いの存在を拒絶し合うようにその身をぶつけ合う。「闇の軽音楽で包丁を弾く」から間髪入れずに「IAMFINALSATANIST」へ。身体運動の限界を克服するかのような高密度の演奏の中で、夢咲がフロアに飛び込む。

「世界 (あなたが手に入れたもの、花束、あなたからもらうはずのもの)」でtagaのベースラインが生む束の間のグルーヴ、「消えない」で静寂の中に溶け出すか細い囁きとアルペジオ。一瞬、その人間味が共感を誘ったかと思えば、すぐさま絶叫が跳ね除ける。救いの手を自ら断ち切るようにして、みるみる孤独に沈んでいく。内向きな激情ハードコア色の強い活動初期の楽曲も交えて、閉じた世界を舞台上に作り上げた第1部のハイライトは、「夕暮れに伝えて」、「念写」の2曲だった。ひび割れたカノン進行の狭間、一筋の光のように差し込むメロディをなぞろうとも、どうしたって完全には重なり切らないいくつもの歌声。僕僕等等はは霊霊障障系系。1stアルバム『itsunohinikabokunokotowoomoidasugaii そして......』から「わたし かなしい おんなのこですか」の欠損したブレイクが冷たい余韻を残し、メンバーは去った。

20分間にわたり場内にノイズが鳴り響くちっとも心休まらない休憩時間を経て、夢咲が再び現れる。"今、日本で一番セックスが行われてる土地で、中卒が歌を歌う"とこぼし、エレキ・ギターの弾き語りによる「マリア様に大変な懺悔」からライヴが再開された。

いささか不恰好な程に素朴且つ親密なムードで幕を開けた第2部は、『ぼぼくくととききみみだだけけののせせかかいい』の収録曲を中心に展開される。夢咲がギター・ヴォーカルを取るアンセミックなロック・バラード「虐殺水泳」、気恥ずかしい程眩しいメロディの青春パンク「中卒無双」、地獄のテーマパークのようなダンス・ビートの「完全他殺マニュアル」。あらゆる軽薄な快楽を、轟音とブラストビートが蹂躙していく。そうして何かに接近してめちゃくちゃに暴れ散らかすことで自我を確立していくのが現在のmoreruだ。夢咲はフロアに身を乗り出し手を取り合ったかと思えば、そこに唾を吐き捨ててみせる。いずれにせよ、今の彼は誰かに影響を与え、そして誰かから反応を受け取ることを望んでいるように見えた。イントロで大きな歓声が巻き起こった「乙女座最終日」。マイクをどこかに投げ込み、ただステージで身をよじる。やがて、マイクが自然に手元へ返ってくる。

軽音楽に神性を取り戻すためのグラム・ロック・チューン「神の裁きと訣別するために」が、原曲よりも加速を付けて演奏される。岩本のあどけないスキャットと共に、6人が白く強い光に包まれていく。音が止むと、夢咲は"ありがとう"と呟いた。続いてアルバム随一のキラーチューン「ROCKSTAR」。必殺の単音メタル・リフが炸裂し、モッシュ・パートへ突入。神となりロック・スターとなった夢咲は終盤のホーリーなコーラスの前に拍手を促して、そのカリスマを引き受けた。

"moreru、次で最後の曲です"。全てを解放に導くギター・ロック「討死!」が始まって、前方に詰め掛けた観客が拳を掲げる。先般筆者が行ったインタビュー(※2025年11月号掲載)で、夢咲は"ライヴで1つになることに興味が持てない"と語っていた。しかしこの日、そこに確かにあった一体感のようなもの。それは同調というよりもまさに感染と呼ぶべき、彼らが切り裂いた痕の、抗いがたい症状の発現だったのだと思う。

"もっとやれよ!"というアンコールの声を受けて岩本がステージに1人立ち、「あのね」を歌い上げる。先程までの凄絶な演奏とは別世界のアイドル歌謡が刹那的な癒しの時間を届け、正真正銘のラストは「otaku minagoroshi」。ドラムはDHS(ANALSKULLFUCK/ex-moreru)が叩き、Dex(Dr/Vo)と夢咲のツイン・フロントで最終形態に。コジマアツヲがギターを手放してフロアに身を放り、岩本がサンプラー・ブースに跨り金切り声を上げ、彼等は破壊の限りを尽くした。音が鳴り止んでいるにもかかわらず、夢咲は何度もダイブを繰り返す。

終演後の場内に、森田童子「ぼくたちの失敗」、そして"新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に"より「Komm, süsser Tod/甘き死よ、来たれ」が鳴り響く。moreruが辿り着いたエンディングは、心中というハッピーエンド、"気持ち悪い"けど"おめでとう"だった。

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