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LIVE REPORT

黒曜日

2024.12.06 @渋谷Star lounge

Writer : 杉江 由紀 Photographer:A.Kawasaki

無彩色であり、光をほぼ反射せず、自然染料が存在しないことから、かつては希少にして高貴な色ともされていたのが"黒"という色なのだそうだが。黒曜日というバンドが、このたびの1stワンマン・ライヴ"黒ノ乖離世界(黒曜日 ONEMAN『黒ノ乖離世界』)"で見せてくれたものは、異彩なる存在感と、いい意味で現実離れした幻覚世界的パフォーマンスであったような気がする。
2022年に始動して以来、ここに至るまでには音源&映像の制作と発表を主体としながら活動してきた黒曜日にとって、まずは今回のライヴが新たな始まりを体現する場となったはずだ。当然それは単に楽曲たちを生演奏するだけの空間にとどまるわけもなく、端的に言えば"黒ノ乖離世界"は、ライヴというよりも実験性と企画性を兼ね備えたショーケース的な空間として、多くの要素を盛り込んだものになっていたのである。

なお、タイミングとしては、12月22日に 2ndフル・アルバム『UGLY BORDER』の発表を控えたなかでの公演だったので、個人的には勝手に、"アルバムの内容や曲順に沿ったスタイルでのライヴになるのかな"と予測していたものの、実際には、1stフル・アルバム『ENDORPHIN』の収録曲たちも交えながらのセトリが組まれていた上、なんと構成としては2部制で、衣装もがらっとお色直しをしての実演というかたちが取られていた。1stライヴからして正攻法ではなく、いきなり変化球で勝負を懸けてくるあたりがなんとも黒曜日らしい。
かくして、1部は、観衆たちを異世界へと誘うSEとシンクロしたイメージ映像が上映されたところから幕開けし、事実上の1曲目として演奏されたアッパーチューン「Asymmetry」のイントロでは、ヴォーカリスト 黒葉が、歌詞中の"Welcome to the fantasy world"というフレーズになぞらえて、"Welcome to the sensational world!"と咆哮してみせる一幕が。かと思うと、ドラマチックなバラード「Catharsis」をじっくりと聴かせる場面もありつつ、キャッチーなメロと殺伐とした雰囲気が混在した「Scarlet dystopia」では、7弦ギターを操るCRAYのソロが炸裂。

その後、メンバー全員が一旦ステージからはけると、場内にはインストゥルメンタル的なSEが響き渡り、数分のインターヴァル後には、先程までは黒ずくめだった衣装が"血染めの白衣"へとチェンジして、アグレッシヴな「ブロックノイズ」から第2部がスタートとすることに。ちなみに、この"血染めの白衣"というインパクトある出で立ちは、1990年代のヴィジュアル系シーンで、いくつかのバンドがその時々によって用いていたことのあるスタイルで、おそらく黒曜日からしてみると、これはそうした歴史や文化へのリスペクトの念を込めての演出だったのではなかろうか。
そして、再び黒の衣装に戻ってのアンコールでは、1曲目にプレイした「Asymmetry」をあえてまた聴かせることで、冒頭よりも"黒曜日の1stライヴという空間"に慣れてきたオーディエンスをより盛り上げ、ライヴ空間に漂う熱量をしっかりと高めてみせた点も、手腕として的確であったと言えるだろう。黒色には熱を吸収する特性があるというが、黒曜日もまた観客の放つ熱を吸収してここから成長していくことになるのかも。
CRAYのMCによると、黒曜日は年明けに早くも17thシングル「月光」を発表するそうだが、今回のライヴを無事に成功させた事実も踏まえつつ、ここからの彼等は"黒ノ乖離世界"を凌駕する新世界へとさらに歩みを進めていくに違いない。

[Setlist]
1. Asymmetry
2. EMPEROR×AI
3. Ephemeral
4. 不完全な世界
5. Catharsis
6. Scarlet dystopia
7. GAMBIT
8. ブロックノイズ
9. 深紅アクアリウム
10. 忘却と深淵のドレス
11. 異次元ニヒル
12. MAYHEM
En1. Asymmetry
En2. ACID

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