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INTERVIEW

グラビティ

2025.10.24UPDATE

2025年11月号掲載

グラビティ

Member:六(Vo) myu(Gt) 杏(Gt) リクト。(Ba)

Interviewer:サイトウ マサヒロ

今年1月にそれまでの活動を清算するベスト盤『tUrn OFF』をリリースし、同作収録の新曲「the LI3ght_ON/OFF」で、それまでのイメージを刷新する新たなバンド像を打ち出したグラビティ。ユーモアと共感を武器にしてきた彼等は、内省と挑戦をアイデンティティとするロック・バンドへと生まれ変わった。それから2作目のシングルとなる『黒』には、ドラマチックな展開の中で六が心の内を叩き付ける表題曲を筆頭に、バンドの現在のモードを反映した楽曲たちが収められている。

-グラビティは、今年に入ってからサウンドとヴィジュアルの両面で新たな方向性を打ち出していますよね。改めて、現在の方向性を突き進むことになるまでの経緯をお聞かせいただけますか?

六:前のやり方では僕がもうやれなくなってしまって。うちはライヴの本数が多いから、考えてる余裕もなく次へ次へと進んできたんですけど、『匂わせ最高最悪リーグ』(2024年リリースのシングル)を出した頃に"このままでいいのかな"っていう思いが大きくなってきたので、メンバーに話しました。前々から"売れたい"が根底にある状態で活動していて、それも間違いではなかったと思ってるんですけど。

-本来のバンドでやりたいことを見失っていたと。

六:そうですね。だから、できればこのメンバーとともに別の方向性で続けたいけど、それが難しいならあと2年間ぐらいやって、その間に先の人生に向けてのお金を貯めたら、グラビティを終わらせようって。

-メンバーの皆さんは、六さんの思いを聞いてどのように感じましたか?

杏:僕は、途中でバンドの雰囲気が変わっても別にいいんじゃないかと思ってて。続けていたらそういう変化の時期が絶対に来ると思ってたんですよ。好きなものもみんな違うし。だから、いろいろなものを試せるうちに試すのも大事なんじゃないかって。

リクト。:いずれこういうことが起きるとは思ってたけど、"もう来たか"みたいな(笑)。個人的には以前のやり方でもうちょっと戦えたような気がしますけど、六がやりたくないならもう変えようと。グラビティを続けたいし、いつかは訪れる決断のタイミングが今来ただけかっていう感じでした。

-バンドというものが、ずっと同じ形で続いていくとは限らないと悟っていたんですね。

リクト。:そうですね。おじさんになったときに前のグラビティみたいな活動はできないだろうし、やりたくないだろうから(笑)。受け入れることができました。

-六さんが最初に話を切り出したのはmyuさんだったそうですが。

myu:グラビティが終わるんだなって思いましたね。ヴォーカルがやめるとバンドって終わるじゃないですか。だから最初に六と話したときには、人生についてめっちゃ考えました。どうやって生きていこうかなって。

-それでも結局は、グラビティという名前のままでバンドは続いている。

myu:話し合いの中で、それぞれの思いを擦り合わせて行って。

六:そもそも、メンバーがこんなに僕に同意してくれると思ってなかったんです。でもちゃんと話をしたら、案外みんな同じような方向を見てくれて。

-現在のスタイルでもリリースやライヴを重ねてきましたが、徐々に今のグラビティが身体に馴染んできたような感覚はありますか?

六:今のほうが雰囲気がいいですね。メンバーも、それぞれ前よりもさらに音楽に向き合うようになってるのをひしひしと感じます。

myu:昔は、SNSでウケる曲を作らないといけないとか、絶対にキャッチーな曲じゃないといけないとか、そういう縛りを感じながら曲を作ってたので、最近は自由度が増しましたよね。好きな曲をちゃんと作る、みたいな。

リクト。:前よりちゃんと演奏しなきゃいけないなっていう気持ちにはなりました(笑)。向ける層が変わってきてるんで、上の人たちに負けないようにライヴしないといけない。以前は奇をてらってたというか、別の方向で勝負してたんですけど、今は真正面から戦わないといけないんで。

杏:楽器に触る時間が増えましたね。やってることも小難しいことが増えたし。もっと音楽をやりたいなと思って、いろいろ勉強してます。

myu:杏は最近、曲も作るようになりましたね。

杏:はい、提出してます。

-以前のインタビュー(※2023年7月号掲載)では、六さんが"高校生のときに感じてた「自分だったらこうするな」っていうあの感覚を、1つずつ形にしていけるような力が欲しい"と語っていました。そういう意味では、今のグラビティは10代の頃の純粋な思いを取り戻したようなものなんじゃないかと。

六:そうですね。活動を重ねていくなかで理想と現実のギャップが生まれると、それをどうやって埋めていくかに目が向きすぎちゃって。今はその視点をちゃんと戻せてる感じがします。余計なことを考えなくなったというか。

-まっすぐにやりたいことを追求できている?

六:はい。当時は、大事なものが分からなくなってたから。

-バンドをやっていく上で一番大切なものが、ちゃんと見えるようになったんですね。

六:そしてそれが、曲を通していろんな人に伝わってるんじゃないかなと思います。最近"曲いいね"みたいなことを言われることが増えて。

-以前からのファンにも届いている実感はありますか?

六:届いてはいますね。でも、好きかどうかはちょっと別なのかもしれない。さすがに前とはギャップがあるから。だけど時間が経ったときに、そういう子たちもグラビティのやりたかったことに気付いてくれたら嬉しいですね。

-まだまだ皆さんも試行錯誤が続いている段階でしょうしね。

六:僕等としては試行錯誤っていうのとはちょっと違う気がしてます。

-悩みながらやってるっていう感覚ではないと。

六:そうですね。潔くぶつかって潔く散れるものに心血を注ぎまくってるので。これからの俺たちならこれがダメだったら良くも悪くもキッパリ終われる。

-届きやすくするために表現の形を変える必要はないということですね。

六:うん、そうですね。それが長い目で見ても自分たちにとって絶対にいい選択だと思うし、ファンに対しても正しい向き合い方なんじゃないかなって僕は思います。

-さて、10月22日にリリースされる"NEW 2nd SINGLE"『黒』は、どのような作品になっていますか?

六:歌詞の面で、素直に最近自分が考えていることを自信のある形に昇華できましたね。以前の自分たちだったら書けなかったような内容だと思います。

-近作では新しいジャンルやサウンドへの挑戦が目立っていましたが、今回はヴィジュアル系らしさ、バンドらしさが前面に押し出されているような印象を受けました。

六:黒というものを届けるのにはこのスタイルが良かったなと直感的に思ったって感じです。別に前作(2025年7月リリースのシングル『ピンク・ドーナツ』)で取り入れてたハイパーポップ要素が入ってないのはそれに縛られてないだけで今作は入れる必要がないっていう認識になったからかな。ロックって何をしてもいいじゃないですか。

-表題曲の「黒」はmyuさん作曲ですが、どのようなイメージで制作し始めたのでしょうか?

myu:今年の2月くらいにはできてましたね。『ピンク・ドーナツ』のリリースが決まってたので、その先に出そうっていうことになりました。もともと表題曲にするつもりで作ったわけではなく、単純に"カッコいい曲を作ろう!"で作って、六に聴かせたら"いいね。表題曲にしよう!"って。だから、何か意図があったというよりは、そのときの感覚や感情が絡んでできた楽曲です。

六:表題曲になったのは直感だね。ビビッと来た。聴いててMVが浮かんだし、"これはいい詞を乗せたいな"と思った。選ばれたね。

myu:選ばれました。ありがとうございます!

六:選ばれたのは"綾鷹"だけじゃなかったね。

一同:(笑)

-各パートに繊細な感情表現が要求されるような楽曲ですが、レコーディングにはどのように臨みましたか?

杏:歪んでるギターの音がほぼ入っていないので、音作りはもちろん、ピックの当て方1つで全然変わるニュアンスを掴むのにすごく時間がかかりましたね。

-たしかに、ここまでデリケートなプレイが要求される曲はグラビティ的に珍しいかも。

杏:ってか、初めてですかね? 「ピンク・ドーナツ」もクリーン・トーンが多かったけど、この曲はほとんどそれだけなので。ピックを強く当てすぎちゃうとキーンとした音が出てくるから大変でした。あと、レコーディングのときに僕がサビだと思ってた部分がサビじゃなかったんですよね。

リクト。:それ俺もあったわ。

杏:六さんに確認を取ったら、自分の捉え方次第でいいよって言われて。

-リクト。さんのベースに関してはいかがでしょうか? 多彩な奏法が駆使されている印象です。

リクト。:そうですね。スラップもコード弾きも入ってるし。でも実は、昔の曲でも結構いろんな奏法を使ってて。

六:過去の曲たちでいろいろ鍛えられてるところはあるよね。そのときの引き出しがあるからできることでもある。

リクト。:次はさらに目新しいことができるように頑張ります(笑)。