INTERVIEW
グラビティ
2023.09.08UPDATE
2023年09月号掲載
Member:六(Vo) 杏(Gt) myu(Gt) リクト。(Ba) 社長(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
現実逃避とは真逆の、現実対向型な思考がここには息づいている。前作『キュートアディクション』(2023年7月リリースの13thシングル)から2ヶ月で届いたグラビティの次なるシングルのタイトルは、なんと"終わっちゃんちゃん!"。やや人を食ったようなタイトル・センスにも思えるが、ここで歌われているのは失敗という名の"終わった......!"というヤバい場面から始まり、そののちに鮮やかな発想転換を果たしていくリカバリー物語。なかでも、歌詞中の"イッカンノオワリは2巻の始まり"という一節は非常に秀逸。これは9月25日にZepp Haneda(TOKYO)で開催される"TOUR FINAL 6 ANNIVERSARY ONEMAN- Want to Taste of GRAVITY"にも期待がかかる。
-現在、グラビティは9月25日にZepp Haneda(TOKYO)で開催される"TOUR FINAL 6 ANNIVERSARY ONEMAN- Want to Taste of GRAVITY"を控えるなかで、全国ツアー"6 ANNIVERSARY TOUR NecRomance -REVIVE-"に勤しんでいるところになりますが、このところは各地でのライヴ動員が着実に伸びてきているそうですね。
myu:そうなんですよ、ありがとうございます! ようやくちょっとずつですけど、今までやってきたことの成果が出てきたのかな? っていう感じではありますね。
-そして、このたびは前作『キュートアディクション』から2ヶ月のインターバルで、14thシングル『終わっちゃんちゃん!』が発表となりました。今作を仕上げていくうえでの狙いや、コンセプトについてはどのように定められていったのでしょうか。
六:この『終わっちゃんちゃん!』に関しては、グラビティのパブリック・イメージをどれだけ詰め込めるか? ということをめっちゃ考えました。もちろん、9月25日にZepp Hanedaでやる"TOUR FINAL 6 ANNIVERSARY ONEMAN- Want to Taste of GRAVITY"の直前に出す音源なんでそのことも踏まえてはいましたけど、それ以上に今回は"自分たちはこれからどうなっていきたいか"っていうのを、今やってるツアーの最中にメンバーと結構話し合ったんですよ。そのひとつの結果がこの作品として形になった、ということなんです。
-なるほど。前作についてのインタビュー(※2023年7月号掲載)で"Zepp Hanedaがあるからとか、先の展望を見据えてとかではなく、これは今やりたいことをそのまま形にしたシングルです"とおっしゃっていたのとは、真逆のアプローチを取られたことになるのですね。
六:実際、前作の『キュートアディクション』は僕らのパブリック・イメージとは少し違った雰囲気の作品だったと思いますからね。簡単に言うと、あれは自分たちが憧れた2010年代あたりのヴィジュアル系バンドが持ってたカッコ良さを、今の時代に僕たちらしさも入れながら形にするっていうこと"のみ"にとらわれながらカッコ良さを求めていました。僕らは自分たちに求められてるものっていうのもわかっているので、今回は自分たちのやりたいことだけじゃなくてみんなの求めてるグラビティ像も意識して、両方を擦り合わせながら作っていく方法を選びました。
-だとすると、表題曲の「終わっちゃんちゃん!」を作曲していく際に柱にしていったのはどのようなファクターだったのでしょうか。
六:グラビティってメッセージも大事にしてるんで、ポップにしつつも歌詞もちゃんと大事にしたかったですし、でも音はめかし込んでいたい。初期に出した「ギラギラ卍系」(2018年2月リリースの1stシングル表題曲)なんかだと同期がたくさん入っててゴチャゴチャしてたのを、今回はもっと今の自分たちが使えるテクニックで音をきれいに整理して入れていきました。ある意味ではこれまでやってきたことの集大成を、グラビティのパプリック・イメージっていう枠組みの中で凝縮した感じですね。我ながら、カッコいいものになったな! という手応えがすごくありますよ。
-では、楽器隊のみなさんが表題曲「終わっちゃんちゃん!」を作曲者の六さんから提示されたときに、どのような印象を受けたのかも教えてください。
社長:曲全体としてはキャッチーで聴きやすいし、疾走感もあるし、この曲とっても好きだなって思いました。さっき六も言ってたみたいに、初期の「ギラギラ卍系」とかもそうだし、YouTubeで再生数が多い「人生カワタニエン」(2018年12月リリースの3rdシングル表題曲)みたいな、ポップさとカッコ良さをしっかり両立させた曲になってるところはまさにグラビティならではの特色ですね。あと、ドラム・パートに関して言うと前作の『キュートアディクション』をより研ぎ澄まして洗練させたような曲になってるなと感じたので、自分としても前作よりレベルアップした音を入れたいという気持ちになれました。
リクト。:この「終わっちゃんちゃん!」はセクションが多い曲だし、転調もあったりするんで、俺はそこがいい意味でグラビティっぽいなって感じました。ほんと、これはうちのファンの子たちが好きそうなタイプの曲だなって思ったし、逆に言うと"これで受けなかったら何すればいいかわかんなくなるんじゃ......?"っていうふうにも思いますね(笑)。
myu:あははは(笑)。そうなったら、次は選曲会のときに直接ファンのみんなに意見聞くしかないかもなー。
リクト。:つまり、そのくらい「終わっちゃんちゃん!」はグラビティとして自信を持って出せる曲になってるっていうことなんです。
myu:ちなみに、俺はこの曲が他のメンバーに送られる前の段階で1回先に聴いてるんですけど、そのときは今の完成形と違ったんですよね。イントロもなかったし、サビも今のとは違ったし、ギター・ソロもアウトロもついてなかったんです。その状態から、俺が六に"サビのノリをもっとこうしたほうがいいんじゃない?"とか"ここもこうしたほうがいいと思う"とかって、池袋駅を歩きながら電話で話したのをよく覚えてますよ。そこから作り直してもらったものが、各メンバーに送られたデモだったわけです。
-そうしたmyuさんからのテコ入れも、かなり重要だったことになりそうですね。
六:僕はmyuからの意見を貰って良かったと思ってますよ。
myu:結果論ではあるけどね。もちろん、より良いものにしたいと思って言ったことだし、六に作り直してもらったことで「終わっちゃんちゃん!」はいい仕上がりになったなと僕も感じてるっす。
杏:ギタリストの立場から言うと、この「終わっちゃんちゃん!」はギター・ソロがちょっと長めなんですよ。たぶん、うちの曲の中で1番か2番目くらいにギター・ソロの小節数は多いと思います。
myu:今の時代、珍しいよね(笑)。
-たしかに。昨年あたりはギター・ソロ不要論などという言葉がバズったりもしていただけに、これはひとつの英断を下したと言えるかもしれません。
杏:それに、もともと自分らが好きで聴いてた音楽はギター・ソロが入ってるものが多かったんですからね。だから、自分としてはこういうソロのある曲を作れたことで少し懐かしい気持ちになれました。あとは、雰囲気作りのためにメンバーみんなで曲にガヤ入れしたのも楽しかったし、すごく「終わっちゃんちゃん!」はグラビティっぽさがたくさん詰まった曲になったと思います。とても好きな1曲になりました。
myu:ギター・ソロに関しては、これが入ってるとファンも嬉しいんじゃないかと思うんですよ。しかも、最近は杏とハモることもかなり多いですからね。そうなると、ヴィジュアル系ってライヴでファンが"咲く"っていう文化があるんで、そういう面でも映える曲になるんじゃないかなと思ってます。
-咲く=花が咲くかのように推しメンバーなどに対して両手を広げるような動き(振り)をすることですね。
myu:あれはライヴのときにファンの子が好きなメンバーに対しての愛情表現をめいっぱいできる瞬間なので、ギター・ソロがあると特にギタリスト・チームのファンが喜んでくれるんですよ(笑)。
杏:それに、純粋にギター・ソロってあるとカッコいいしね!
六:そうそう。でもこの読者に重要なことがひとつ。ここまでにかなりパブリック・イメージ的にギター・ソロを入れたほうがいいとか、ファンのために~っていうのを言ってきてしまったけど、勘違いしてほしくないのが、やっぱり「終わっちゃんちゃん!」でやってることはどれも僕ら自身が好きでやりたくてやってることなんです。
-それから、この「終わっちゃんちゃん!」については音としての完成度もさることながら、詞の内容の持つ訴求力も相当に高い印象です。個人的には"イッカンノオワリは2巻の始まり"という一節がまさに目から鱗で大変素敵だなと感じました。
六:言葉遊びが好きで、そう言ってもらえると嬉しいです(笑)。自身のマインドが結構しんどい時期を抜けて、笑えてるときにこの歌詞が生まれたんですけど、振り返ると大事なのはこれだなって。普段ニュースとか見ていると、何かにつまずいて転んじゃったりすると、誰かの手がないと起きられない人っていうのも結構いるんだなって思ったときに、なおさらこの歌詞が効けばいいなと思いましたね。実際そのときの自分が聴かないとそれは答えが出ないけど(笑)。