INTERVIEW
グラビティ
2023.09.08UPDATE
2023年09月号掲載
Member:六(Vo) 杏(Gt) myu(Gt) リクト。(Ba) 社長(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
音楽がバンドとみんなを繋ぎ止めてくれてる、っていうことなんだと思う
-1巻の終わりで1度失敗しても、諦めなければ2巻目が来る。でも大事なのはその2巻目が来て良かった!! ではなく、繰り返しまた必ず1巻の終わりと同じような不運も来るということですね。ただ単にポジティヴに"ピンチの先には明るい未来が来るよ"ではなく、現実から目を逸らさずに先を考えるところにグラビティらしさが表れています。
六:失敗すること自体は別にダメなことではないというか、人間って意外と失敗したときについ反省とか学習をしないでそのことを忘れちゃいがちだけど、失敗したときに次はそうならないようにする対策がちゃんとできればね。あとはそんなに落ち込みすぎないでいいし、笑い飛ばせばいいよねって俺は思うんですよ。
-これは性別年齢国籍などあらゆるボーダーを超越して、多くの人の共感を呼ぶ歌詞になっていると言えそうですね。
六:いろんな人に当てはまる歌詞にしたいっていうことは意識してました。最初の"おわったー/今目が覚めた"っていうところなんかは、実際に自分が寝坊したときを思い返して書いてるから、基本は自分に当てはまるのはみんなに当てはまると思い込んでるだけかもですが(笑)。
-ついでに、と言ってはなんですが。ここで、各メンバーが経験したことのある"終わった"エピソードもうかがってよろしいでしょうか。
myu:めっちゃあるけど、パッてまず思い出すのは中学のときに先輩たちに囲まれたときの話かなぁ。当時はハンドボール部にいたんですけど、僕は1個上の先輩とすごい仲が良かったんですよ。ただ、その人が高校に上がってからヤバい方向に進んでしまいまして。地元でお祭りがあったとき、その先輩とたまたま久しぶりに会ったんで挨拶しようかなと思ったら、先輩の後ろから8人くらいヤバそうな人たちが出てきてめっちゃ囲まれちゃって。しかも、先輩がそのグループの中では下っ端だからなのか、目で助けを訴えても俺らのことを知らないフリするんですよ。こっちはハンドボール部の3人くらいしかいないのに、すごい"なんだよお前ら"みたいな感じで8人に絡まれて、あのときは"マジ終わった......"って思いました。
-その修羅場はそこからどうなったのです??
myu:8人の中の一番上っぽい人に"お前らいくつなんだ"って聞かれて"中3です"って言ったら、やっと解放されました。たぶん、高校生からすると中坊をシメるのは......っていうのがあったんでしょうね。あれ、もし俺も高校生だったらどうなってたんやろう? って思います。助かって良かったです(苦笑)。
六:寝坊とかじゃなくて今までで一番ヤバかったのは、2022年8月29日にSpotify O-EASTでツアー・ファイナル("バン × U in 力 TOUR FINAL")をやったときですね。正確にはその前日のことなんですけど、本番でヘバらないように前日から身体をちょっと痛めつけておこうと思って、11km走ったんですよ。そしたら、当日の朝に起きたら全身が筋肉痛でめっちゃ痛くて。その状態でライヴやったんで、あのときはあまりにも身体が動かなすぎて"マジ終わった......"ってなりました。普段から3kmくらいは走ってたんで、もうちょっといけるだろうと思ったんですよ。ただ、11kmは完全に逆効果でしたね。でも、なんとかやり切りました。あの経験は自分にとって今でもいい教訓になってます。
-得るものがあって良かったですねぇ。
リクト。:俺の終わった話は、スタジオに入ったときに自分がメインで使ってるベースを機材車から降ろしたときに、別に落としたとかじゃないのにボディが勝手に割れたことですね。あれは"ヤベー!"ってなりました。正直、泣きそうでしたもん。ましてや、当時はお金もないんで。新しいの買うまでは、しばらく友達にベース借りました。
杏:俺はまさに「終わっちゃんちゃん!」の歌詞じゃないですけど、ライヴの3時間前に目が覚めたことがあります。前日がわりと遅い時間までMV撮影してて、メンバーと"俺も寝坊しないようにするわー"みたいな話をしてたんですよ。だから、そのフリをちゃんと回収した形になりましたね(笑)。
-本番の3時間前に起床したとなると、箱入りは何時間前だったのです??
杏:いやもう、1回とりあえず風呂入って(笑)。スタッフさんがこっちに機材車で迎えに来てくれたんで、メンバーはまだその段階で入りさえしてなかったらしいんですけど、そこから高速飛ばして間に合いました。着いたらすでにライヴ自体は始まってましたけど、そもそもイベントでリハなしだったんでなんとかなった感じですね。みんなは早起きしてくれてたのに、自分だけぐっすりで気持ち良かったです(笑)。あれ以来、朝は早起きして絶対に風呂に入るって決めたんでそういうことはもうなくなりました。使命感を強く感じるようになったのが大きいですね。
社長:僕なんかは常日頃から終わりまくりですけど、要するに終わるときってそれまでの積み重ねで終わることが多いと思うんですよ。前兆があるのにそれを見て見ぬ振りしたり、知らないうちに手を抜いちゃったりとか、そういういろんな失敗の要因があって終わるわけじゃないですか。このメンバーの中だと俺は一番長生きしてますけど、たぶん一番終わった経験を多くしてると思います。俺なんてグラビティの前にはバンドを2個くらい潰しちゃってるし。
myu:話、重っっ!!
社長:いや、でも重いとは思ってないっすね。終わっても「終わっちゃんちゃん!」の歌詞通り、またなんだかんだで次が始まるから。そういう意味でいくと、今は何事に対しても終わってもいちいち"終わった......"ってもう思わないです。これはこれで終わり、じゃあ次行こうみたいな。"あのときはあれがいけなかったんだな"とか失敗から学んだこともたくさんあるし、すべての経験を通して今の自分がいるっていうのもあるし、いっぱい終わったことあるやつのほうがたぶんその先はもっと頑張れます。終わって落ちるとこまで行ったら、あとは這い上がるしかないし、"あとは頑張るしかなくね?"って細かいことはどうでもよくなって開き直れます。
六:だよね、俺もそう思う。人生ってどっちにしろ続いちゃうんで。成功と失敗は分岐してるわけじゃなく、失敗した先にはいつか成功することもあるだろうし、またその先に失敗が来ることもあって、きっとその繰り返しなんですよ。
-いやはや。先ほどから含蓄のあるお言葉を聞けているように感じるのですが、こんなにも強いメッセージ性のある楽曲なのに、なぜタイトルは"ちょけた"ニュアンスの強い"終わっちゃんちゃん!"なのですかね。ある意味、露悪的ではありません?
六:あぁ、これはうちの専売特許です。それこそ最初は"一巻の終わり"っていうタイトルでもいいかな? と思いましたけど、それだとグラビティじゃなくてもできることなんで。他では使われてなくて、SNS検索とかもしやすくて、インパクトがあって、みんなが"何これ!?"って曲を聴きたくなるようなタイトルといったら、今回の場合は"終わっちゃんちゃん!"だったんです。
-もちろん、表題曲「終わっちゃんちゃん!」も最高なパワー・チューンとなっていますけれど、今回もまたカップリングの「盤グルマッチング」(A-TYPEのみ)と「ABUSOLUTE.共鳴-α-」(B-TYPEのみ)とがそれぞれに個性の強い楽曲に仕上がっていますね。
六:「盤グルマッチング」は、最近よく"店グル"っていう言葉を聞くなぁと思って。これはホスト業界用語っぽいんですよ。
-なんでも、ホストクラブのキャストやスタッフが総掛かりでお客さんに対しての営業を強化していく手法のことのようですね。
六:結局、僕らもバンドとしてグラビティのことを好きになってもらいたいわけですからね。それって、ちょっと"店グル"っていうのと近いところがあるなと思って、それで"盤グル"っていう言葉を使うことにしたんです。
-これまた、意図して露悪的な言葉を選ばれたのでしょうね。
六:わかりやすく言うと、ひとりひとりのメンバーの力とかキャラも大事なんだけど、それ以上にバンド全体としてしっかりみんなのことを繋ぎ止める力も大切、っていうことなわけです。その感覚を今っぽい言葉にしたら"盤グル"っていう言葉にしたら面白いかな? って思ったんですよ。例えば、お客さんたちと話をしてたりすると自分とは考え方が違うなって感じるときもあるんですね。だけど、それでもみんな"グラビティの曲が好き"って言ってくれるのが不思議で。でも、それって音楽がバンドとみんなを繋ぎ止めてくれてるっていうことなんだと思うんですよ。そういうのっていいな、って純粋に思ったっていうのもあります。
-そして、「盤グルマッチング」はノリ的にライヴで楽しく盛り上がれそうな曲でもありますね。
六:途中に"今キてるバンド『グラビティ』に足りないものと言えば?/解:俺"っていう歌詞のところでコール&レスポンスをする場面もあるんで、そこは男女関係なしでみんなに思いっきり"自分"っていう意味で"俺!"って叫んでほしいです。つまり、これは聴いてくれる人や観てくれるみんながいてこのバンドは成立してるんだよ、っていうことを歌ったものなんですよ。
-ライヴ映えという点では、熱さとエモさが凝縮された「ABUSOLUTE.共鳴-α-」も大いに活躍してくれそうな楽曲ですね。
六:「ABUSOLUTE.共鳴-α-」のほうはもともとあった曲(2020年リリースの6thシングル『決意ゼロヒャクMAX!!』収録「ABUSOLUTE.共鳴」)をリアレンジしたもので、サビのコーラスでファンのみんなと一緒に歌えるような曲になってるんですけど、コロナ禍ではそれが難しかったんで封印してたんですよ。で、封印している間にもっとこの曲はカッコ良くできるねという話になって、今回は楽器も歌も諸々録り直しました。
-9月25日のZepp Haneda公演"TOUR FINAL 6 ANNIVERSARY ONEMAN- Want to Taste of GRAVITY"では、この「ABUSOLUTE.共鳴-α-」でオーディエンスのみなさんの歌声が共鳴することになってくれそうですね。
六:今年の4月にZepp DiverCity(TOKYO)でやったとき("47都道府県ONEMAN TOUR FINAL「電撃スクリーンショット」")はまだ声出しができない状態だったんですけど、次のZepp Hanedaではやりたいと思ってるんで、今このタイミングで新録してこのシングルに入れたのはそれも意識してます。
-さて。そのZepp Haneda公演では一般席とは別に、無料の自由席エリアも設けられることになっているそうですが、より多くの方にグラビティのことを知っていただく場となるであろう"TOUR FINAL 6 ANNIVERSARY ONEMAN- Want to Taste of GRAVITY"で、今みなさんは観衆に対して何を届けたいと思っていらっしゃいます?
リクト。:グラビティは自分たち自身で"キラキラバンド"っていうことを言ってるんですけど、今って"キラキラバンド"でZepp Hanedaのステージ立てるバンドってほんとに少ないと思うんですよ。ということは、このタイミングで自分たちがひとつの希望の星になれたのかなとも思っているので、キラキラ代表として相応しいライヴをZepp Hanedaでやるのはもちろん、ヴィジュアル系業界をもっと盛り上げていきたいです!
myu:でもさ、俺らは『ギラギラ卍系』っていうシングル出してるでしょ?
リクト。:あぁ、ってことは枠で言うと"キラキラ"で、"系"で言うと"ギラギラ"です(笑)。
myu:実を言うと、セットリストはこの取材のあとミーティングして決めるんですよ。このところはすでにZepp Hanedaの先のことまでいろいろ考える機会が多かったんで、本格的なZepp Hanedaに向けてのスイッチは今日これから入れます!
杏:まぁ、まずは普段のライヴみたいに楽しみたいですね。ちょっと、春のZepp DiverCityのときはあとから映像を観たときに"無駄にカッコつけすぎてるな"って感じたんですよ。緊張もしてたのか、変に涼しい顔とかしてて許せなかったんで(笑)、次はいつも通りの自分のまま楽しみたいと思ってます。
社長:自分としては、届けたいというよりは今の感覚だと"応えたい"っていう気持ちのほうが強いかもしれません。自分たちに関わってくれている人たちや、応援してくれている人たちの気持ちにしっかりと応えたいです。
六:とにかく、絶対俺らは4月にやったZepp DiverCityのときより良くなってるんですよ。照明とかセットとかの面もこだわってるし、パフォーマンスとしても進歩してるところを発揮したいし、自分自身で"俺らヤベー! めっちゃカッケー!!"って思いながら演奏したいですね。そして、それをたくさんの人に観てもらえたら嬉しいです。今のグラビティができることを全力でやります!