INTERVIEW
ARKTA
2025.10.22UPDATE
Member:Tak(Vo) kenken(Vo/Producer)
Interviewer:菅谷 透
LA出身のTakと、東京出身のkenkenによるハイブリッド・ロック・デュオ ARKTAが2nd EP『As Oneself』をドロップした。2024年の1st EP『From Where the City Lights Burn』から約1年半ぶりとなる今作は、ライヴでのパフォーマンスを念頭に置いて制作されたそうで、よりラウド&メロディックに感情を解放させる全5曲が収められている。激ロックでは日本ツアーを回る2人にインタビューを実施。ライヴの印象や新作について語ってもらった。
"中指を立てて、前に進んじゃおうぜ"みたいな感じのテーマ
-日本でのライヴは去年の11月("JAPAN TOUR FALL 2024")以来になりますね。今回はツアーということで"TOKYO CALLING"、"びわ湖くん×ライブキッズあるある中の人presents「ライブ行きたい湖2025」"、"ZEPHYREN × SHIBUYA THE GAME presents『In The Family FEST 2025』"等シーンの異なるイベントに出演していますが、どんな印象でしたか?
kenken:"TOKYO CALLING"とか"In The Family(ZEPHYREN × SHIBUYA THE GAME presents『In The Family FEST 2025』)"はかなり前からやってるフェスなので、もうバンドが活躍してるシーンがあるじゃないですか。僕たちは初めて出たのでチャレンジングでもあったし、前のバンドからの知り合いもいたので刺激になりましたね。僕たちは日米のメンバーでやってるので、毎回次のライヴは1年後って感じで継続的にできないというのがあった。でもツアーはライヴを続けてやれるので、一本一本やりながら掴んでいってます。
昨日もTakと話してたんですけど、すぐフィードバックして、"じゃあ次はこういうことをしよう"、"「In The Family」ではこうしよう"っていうのができるので、成長を感じながら継続的にできるのがツアーの醍醐味、意義だったりしますね。そういうのを感じながら、すごく充実してライヴをできているのが去年と違うところかなと。いい結果も悪い結果ももちろんあるので、それを噛みしめながらやれてます。
Tak:僕の場合、最初はアメリカと日本のお客さんの違いに合わせて調整していくプロセスがあって。アジャストしていくのが難しかったんですけど、ツアーの本数が多いので今はもうだんだん慣れてきました。"こういう感じなんだ"って新しい発見が出てくるので、すごくいい経験をさせてもらってますね。
-違いというのは例えばどういった部分ですか?
Tak:ノり方もそうですし、反応も違いますね。日本の場合はまず、"サポートしてくれる"っていう気持ちが伝わってくる。アメリカっていいものはいい、悪いものは悪いって感じで、反応も全くしないですし。日本は"とりあえず観てみよう"っていう意思が感じられるので、そういう違いはあります。
-逆にアメリカのほうが、盛り上がらないときは全く盛り上がらないんですね。
Tak:全く盛り上がんないし、お客さんがいいと思ったら盛り上がってくれて、結構分かりやすいですね。こっちはみんなで楽しもうっていうノり方があったので、それも楽しかったです。
kenken:シーンやライヴ会場を楽しむっていうお客さんがいらっしゃるなと。特にあるある(DJライブキッズあるある中の人)さんのイベントでは、ライブキッズDJっていう感じで活動されてるから、シーンが好きな方が来てくださって。そういう中でやるのはたぶんTakとしては初めてだったと思うから、"こんなふうに食いついてくれるんだ"みたいに僕たちは初めての経験で。終演後に、初見で他のバンドさんを観に来てくださったお客さんから"初めて観たんですけど、すごく良かったです"って言ってもらえて。
Tak:もう光栄ですよ。
kenken:僕たちは探り探りやってる感じだけど、いいと思ったものをしっかり伝えられれば聴いてくださる方もいるんだっていうのを感じながらツアーをやれてるなと思ってます。
-ノり方もイベントによって違いましたか?
kenken:ツー・ステップをしてるお客さんを見るのは、Takはたぶん初めてじゃないかな。
Tak:こういう音楽でツー・ステップしてるのがカルチャー・ショック......っていうのも変ですけど(笑)。
kenken:対バンがアイスクリームネバーグラウンドさんだったから、もうバリバリツーステするお客さんで。そういう方たちはもうそれが楽しくてライヴに遊びに来てるだろうから、僕たちの曲で"あ、ここでやる?"みたいなのを(Takは)感じたと思うんですよね(笑)。いい意味でのカルチャー・ショックがあったんじゃないかなって。
Tak:みんなで楽しむ感がすごくて、それはアメリカにない楽しさかなと。
-"ここでツー・ステップするんだ"ってところを、次のライヴで逆に煽るみたいな応用もできますね。
Tak:たしかに、ちょっとずつ分かってきました。ライヴの本数が増えるごとに"ここらへんなんだな"っていうのは掴めてきましたね。
kenken:ただ僕たちとしては(ツーステを)してもいいし、もちろんしなくてもいい。楽しみ方は自由なので。そういうふうに楽しんでくれる人もいるんだなっていう新しい発見ですね。
Tak:もうアイスクリーム(アイスクリームネバーグラウンド)さんに感謝ですよ。学ぶことのほうが多いですね、今は。
-逆に昨日(※取材は10月6日)はファンクラブ(メンバーシップ)のイベント("ARKTA'S SPACE VOL.5 -Tak's kitchen special-")を行っていたそうで。
kenken:あれはもう、本当に立ち上げのとき、ライヴをやる前から応援してきてくださってるような方たちの集まりだったので。もう温かいお声掛けしかない、みたいな。
Tak:ただただ楽しいだけのイベントでしたね。
kenken:(笑)そういう方たちは、僕たちが出た"TOKYO CALLING"や"In The Family"みたいな界隈に普段は行かないかもしれないですけど、全会場来てくださる方とか、本当に熱狂的に応援してくれる方がいて。
Tak:めちゃくちゃ心強いよね。
kenken:本当にありがたいですし、対バンがなんだろうと、どんなイベントだろうとARKTAというものを愛してくださる方たちなので。"このライヴはこういうところが良かったです"とか、新しい音源を聴いてくれて"この曲が良かったです"って直に感想を聞けて、僕たちも直にお礼を言える。ミュージシャンだからライヴがもちろん一番なんですけど、お客さんとの交流は絶対なくしたくないって思ってて。だから、来日するたびに絶対ファンクラブ・イベントをやるようにしています。
-安心できる場があって、その一方で挑戦もできてるんですね。
Tak:僕はアメリカで別のバンド(QUIETUDE)をやってるんですけど、全然違いますね。向こうだとファン・イベントみたいなことはないんで、2倍楽しいです。
-日本でのツアーだけでなく、2nd EP『As Oneself』も発表となりました。1st EPは結成してから約4年でリリースしていますが、今回は1st EPから1年半と短期間でのリリースになっていますね。
kenken:ガチの制作期間で言うと、1st EPは4年間かけて作ったわけでもなくて。"EP作ろうか"ってなってから作った感じなので、制作にかけた時間としてはそんなに変わらないですね。ただ、1st EPはまだ活動を本格的にしてない状況で作ったものだったんですけど、今回はライヴもやり始めたのと、あとEPを1枚出したので、僕たちの中で作る感覚の変化が大きかったのはあります。1st EPはある意味つぎはぎというか、"できた曲をとりあえず入れていこう"、"とにかくまず1枚出さなきゃ"みたいな感じだったんで(笑)。
Tak:コンセプトもそこまで決まってなくて。
kenken:2nd EPはツアーに向けて作っていったというのもあるので、目的がはっきりしていて。制作期間というよりは目的意識の違いが大きくありますね。
-たしかに今回のEPは、ライヴを意識されている部分が大きいのではないかと感じました。
kenken:僕の中ではかなり大きくありました。
-アグレッシヴな要素もかなり強くなっていて。例えばギターの音もかなりラウドになっているように感じましたが、どういった狙いがあったのでしょうか?
kenken:1st EPのときは一曲一曲のコンセプトが違っていて。僕たちはデュオであってバンドじゃないから、バンド・サウンドに特にこだわりがなかった。エレクトロに行ったり、逆に打ち込みを使わないでオーガニックに作ったりとバラバラな感じだったんです。ギターやドラムの音等を意識したのはライヴをやり始めてからですね。ライヴでやったときにかっこ良く聴こえるようにっていうのは僕の中でのサウンドメイクのコンセプトとしてありました。 あと、僕はもともとギタリストで、去年のライヴを経てギター・ヴォーカルをやるという流れになって。今回のツアーからほぼ全曲でギターを弾くようになったので、僕がギターを弾きながら歌うことを意識して作ったのもかなり大きいですね。ギターを押し出した、パフォーマンスも考えたギター・フレーズ......弾きながら歌えるって言ったらちょっとアレですけど(笑)。ライヴを経ているので、頭を切り替えて作った感じです。
-今回のEPは、全5曲を通して1つのストーリーになっているそうですね。
kenken:最初からストーリー仕立てにしようとしたわけでもなくて。僕たちの作曲コンセプトとして生きることや命、死生観とか、己として生きるとは何かというのが全部の曲に共通していて――それは1st EPもそうなんですけど。そうやって作っていくうちに、一曲一曲の持っている感情が違ったんですよ。でも芯の部分は変わらないから、曲順を考えることによって、一本芯を通すための道筋を作れるなって思ったんです。なので、こういう話の流れになるように曲順を提案してEPにしました。コアの部分が変わらないから、結果的にストーリーになったという感じですね。
Tak:そうだったんだ(笑)。
kenken:僕が考えてこうしようって言ったから、あまりTakの中ではなかったかもしれないです。
Tak:僕は来たものを作るだけなんで(笑)。
-(笑)歌詞に関して言うと、Fワードとかもかなり入っていて、強烈な表現になっているように感じました。
Tak:このEPには不満やイライラをぶつけてたので、自然と出たんでしょうね(笑)。普段から......この歳なので控えなきゃいけないんですけど(笑)、よく使う言葉なのでたぶん自然と出ちゃうんでしょうね。
kenken:乗り越えなきゃいけないものであったり、葛藤、不満であったり――そういうものがあってこそ、自分らしさや人間らしさみたいなのが出てくるというのが全体的なテーマとしてあって。そういう嫌なものを乗り越えていこうってことで、強い言葉も出たんじゃないかな。
Tak:Fワードよりは、どちらかというと中指をもっと意識していて。"中指を立てて、前に進んじゃおうぜ"みたいな感じのテーマだったんで。僕の中では、一曲一曲のイメージは中指が多いですね(笑)。
-自分らしく進んでいくために、不満等を声に出して中指を立てていくような。
Tak:すごいきれいごとですけど、いろんなものに対して中指は立てられるので(笑)。自分の中の負の部分にも中指を立てられるし、世間にも立てられるし、上司にも立てられる。たぶんそういうことですよね、そこまで僕は深く考えてはいないんですけど。結構シンプルですね。