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INTERVIEW

ARKTA

2024.02.24UPDATE

ARKTA

Member:Tak(Vo) kenken(Vo/Producer)

Interviewer:菅谷 透

カリフォルニア州ロサンゼルス出身、QUIETUDEのスクリーマーで新日本プロレス"NJPW STRONG"のリング・アナウンサーとしても知られるTakと、東京出身でDELHEZIやStellarStairsなどのバンドでギタリストとして活動してきたkenkenによるハイブリッド・ロック・バンド、ARKTAが1st EP『From Where the City Lights Burn』を完成させた。ツイン・ヴォーカルを軸に、ダイナミックなサウンドと繊細なメロディを融合させた全5曲は、リスナーの心に火を灯すような激しさと温もりに満ちている。激ロック初登場となる今回は、バンド始動の経緯や、ふたりを繋ぐ意外な共通点など様々な話を訊いた。


今まで培ってきて伝えたかったいろんな思いを凝縮したようなEPにできた


-今回が激ロック初登場となりますので、まずは自己紹介をお願いします。

kenken:kenkenです。ARKTAでは作曲をメインで担当しています。ヴォーカルでもあるし、ギターとか他の楽器のレコーディングもやってますので、サウンド面などは僕が担当ですね。僕は日本の東京に住んでいます。

Tak:Takです。僕は歌詞を書いていて、スクリーム・パートのヴォーカルをやっています。アメリカ生まれ/育ちの日系人で、LAに住んでいます。

-ARKTA結成の経緯からおうかがいできればと思いますが、結成自体はいつごろになるのでしょうか?

kenken:ARKTAという形ができたのは2020年の4月になるんですけど、実は"ARKTAをやろう"と言って始めたバンドではないんですよ。

-そうだったんですね。

kenken:もともとは僕がゲーム(2021年発売の"スロウ・ダメージ")の作曲のお話をいただいて。それが"洋楽っぽいものを作ってほしい"という発注内容で、"うーん、洋楽っぽいものか......"と。歌詞も英語で書く必要があるし、ヴォーカルも英語で歌う必要があったので、もともと友人だったTakに声を掛けたのがARKTAの始まりです。こういう音楽がやりたくて"ARKTAを組もうぜ"と言って誘ったというよりは、"ちょうどいい人がいるな"と思って声を掛けたので(笑)、その流れがあって"活動を続けようか"とバンドができた感じですね。

-Takさんは最初にお話をいただいたとき、どんな印象を受けましたか?

Tak:もう即答でしたね。"あ、やりたい"って(笑)。僕が今こっちでやってるバンド(QUIETUDE)はDjent/プログレッシヴ・メタルみたいなジャンルで、すごい重たい、激しいバンドなんですけど。ずっと日本のラウド・シーンが大好きで、洋楽を取り入れてる日本のバンドのような音楽をやってみたいなって思ってました。kenkenが過去にやってたバンドのことも知ってるし、どういう音楽を作るかも知ってるから、もう"ぜひやりたい"と。

-おふたりとも"洋楽"というワードを出されていますが、ARKTAを作るにあたってのイメージとしてこういうバンドがあった、みたいなものはありますか?

kenken:先方から"こういう感じで作ってほしい"って言われた曲がFEVER 333で、"もろシャウトだな"って思ったんですよね(笑)。シャウトだし、ラップだし、演奏もすごい細かくというよりかはストレートに"洋楽"で、"これ歌える人は知り合いの中にひとりしかいないぞ"と。なので、相談先がもうTakしかなかったですね(笑)。なんで彼に声を掛けたかって言うと、もう10年ぐらいの付き合いなんですよ。前にやってたバンドのときから繋がりがあったし、個人的にも仲が良かったので、こういうシャウトができる人――ということなら、やっぱり洋楽系の楽曲を作ってほしいというお話だったのでアメリカ人に頼みたいなって(笑)。

Tak:アメリカ人ですからね(笑)。

kenken:僕は日本人なのでもちろん日本のバンドマンはいっぱい知ってますけど、やっぱり本場というか、ネイティヴに英語喋れる人というのがあって。そこはもう、選択肢はTakしかいなかったかなと。あと、先方からTakのラップとシャウトがめちゃくちゃ気に入られちゃって(笑)。実は発注された段階では採用されることが決まってなくて、"こういうの作れる人いない?"という話に僕がまだ正式な制作依頼を受けてないのに勝手に作って、"こういうことできるんですけど"って送ったらめちゃくちゃ気に入られちゃったんです(笑)。

-(笑)かなり前のめりになったと。

kenken:めちゃくちゃ前のめりですね(笑)。たぶん、日本人じゃなくて本当にアメリカ人を持ってくると先方さんも思ってなかったんでしょうね。そしたら思ったよりネイティヴで、イメージ通りのことができたという感触はあります。

-それが"スロウ・ダメージ"のキャラクター・エンディング・テーマ曲として提供された「Keep me alive」と「Damaging you」("スロウ・ダメージ"初回生産限定版特典のオリジナル・ヴォーカルCD『スロウ・ダメージ Vocal Collection』収録)に繋がっていったんですね。これがARKTAとして初めての楽曲になりますか?

kenken:そうですね。楽曲をどう使うのかという話をするなかで、僕の個人プロジェクトなのか、それともバンドとかユニット名義でやるのかと言われたときに、僕の力というよりかはTakの力もかなり大きかったので"バンド"という形にすることにしました。そこから、"じゃあせっかく始めたから続けよう"ということでARKTAになったんです。

-曲を作ってみて、おふたりの中でもしっくりくる感覚があったのでしょうか。

kenken:そうですね。どうですか、Takさん?

Tak:僕は何より一番に楽しかったです。コロナということもあったので、バンドや音楽に対して諦めかけていた時期だったんですよね。今こっちでやってるバンドも続けるか続けないかみたいな状況だったんです。そのときにいただいたお話だったので。最初もそうですし、今もそうなんですけど、楽しくてしょうがなかったし、すごい作りやすかったです。特に「Damaging you」に関しては、もうスラッとできちゃった曲で。今までそんなことあんまりなかったので、楽しいし、すごくいいものが作れるし、やりたいこともできるし、これはやらなきゃもったいないなと。そしてふたりで話し合って、"じゃあ続けよう"っていう話になりましたね。

-なるほど。そうしてバンドとして動き出したARKTAですが、この名前の由来をうかがえますか?

kenken&Tak:(笑)

kenken:めちゃめちゃ安直なんだよな、これ(笑)。Takさん、説明してもらってもいいですか。

Tak:kenkenの名義で"ARK"っていう――たぶん苗字から来てるんですよね。

kenken:そうですね。A-R-Kで。

Tak:っていうのをよく使ってたんで。俺はTakだし、じゃあくっつけちゃえって。"Ta"を取って"ARKTA"にした、ってだけの話なんですよ(笑)。

kenken:まぁ、ギリギリ英語で読める名前になったんでね。

Tak:それまでバンド名を決めるのに時間かかったもんね。

kenken:そうだね。なかなか決まらなかったんですよ。

Tak:"フィフス・ルナ"(※"機動戦士ガンダム 逆襲のシャア"に登場する小惑星)とかね(笑)。

kenken:(笑)意味わかんないよね。だから"もう名前で良くない?"みたいになって。たぶんメンバーを増やすこともないし、そもそもリモートだし、このふたりで作業していくんだろうなって思ったときに、名前でいいかなと。あとは英語で読みやすいのと、ひとつ僕の中で決め手となったのが、ロゴにしたときに字面が良かったというのがありますね。バランスがいいというか。それってバンド名として重要だなと昔から思ってたので、そこを考えたのもありますね。最初は"ARKTAK"って案もあったんですよ。でも"K"がないほうが文字としてかっこいいなって。

Tak:僕の1文字を割いてまで作った(笑)。

-(笑)でも"K"が中心にあることで両方が表現されていますよね。

Tak:そうですね(笑)。ありがとうございます。

-活動が始まってから、2022年12月に行われた"スロウ・ダメージ"の関連イベント("CHiRAL LIVE 2022 × スロウ・ダメージ")で初ライヴを行っています。Takさんも東京に来てライヴに参加したんですよね。

Tak:話をいただいた瞬間に飛んでいきましたね(笑)。日本のバンド、日本という国に憧れを持ってたんで、すごく影響を受けたバンドとかもいっぱいいて。日本でいつかやってみたいなっていう気持ちは高校のときからずっとあったんですけど、こんな形で夢が叶うとはなと。ライヴハウスでもやってみたい気持ちはあるんですけど、まさかあの規模(KANDA SQUARE HALL)でやれると思ってなかったんで、もう感動ですね。まず楽しみが最初にあって、ステージ乗った瞬間は感動しかなかったです。ひとつ夢が叶ったっていう意味では、本当にkenkenにもニトロキラル(※"スロウ・ダメージ"のゲーム・ブランド)さんにも感謝しかないです。

kenken:僕はTakと感想のベクトルが結構違うんですよ。Takは日系人の中でも特に日本への想いが強かっただろうから、日本でいつかライヴがしたいっていう夢が叶ったのが一番にあったと思うし、もともとヴォーカリストだからヴォーカルとしてライヴをすることにも慣れていて。僕としては......バンド歴は長いんですけど、そもそもヴォーカルじゃないんですよ。10年くらい前に以前のバンド(DELHEZI)で激ロックさんにインタビューしていただいたとき(※2014年11月号掲載)はバリバリのギタリストだったし、そのあとやってたバンドもギターだし。ヴォーカルなんてやったことなかったのに、"スロウ・ダメージ"の曲でヴォーカルをやったがために......と言ったらアレですけど(笑)、ヴォーカルでライヴをすることになっちゃったわけですよね。ライヴハウスじゃなくていきなりホールだし、"えぇ~!?"みたいな感じですよ(笑)。僕としてはかなりチャレンジングではあったけど、ファンの方が温かかった。ライヴとかが普通にできなかった時代から戻ってきた時期なのもあったと思うんですけど、すごく受け入れてくれて。自分たちの作る音楽が誰かの支えになってる、ひとつになってるんだなっていうのを、その人たちを目の前にして知れたっていうのが良かった。もう初めてのことづくしでしたけど、いい経験になりました。

-kenkenさんはこれまで主にギター・プレイヤーとして活動されてきたと思いますが、ARKTAでヴォーカルを担当しようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

Tak:僕がクリーンな歌唱ができなかったので(笑)、それもひとつ(の要因)です。

kenken:全部シャウトだけっていうわけにはいかなかったんですよね。曲としてメロディが欲しいと。Takさんがメロディをそんなに歌えないっていうのは知ってたので(笑)、メロディのヴォーカルはどうしようかなと思ってたんですけど。でも曲を作らなきゃいけないんで、僕がとりあえず仮歌で歌ったんです。こんな感じでいいかなって歌ってTakに聞かせたら、"いいじゃん! kenken歌っちゃえよ!"って言われて(笑)。"えぇ~!?"とは思ったんですけど、僕としてもギター・プレイヤーで作曲もしてきたなかで、自分の書いた曲を自分で歌ってみたい願望は前々からありました。歌も好きだったし、自分の曲を自分の声で、ヴォーカルという楽器として表現してみたかった。あと、実は一番得意な楽器ってないんですよね。ギターをずっと弾いてきましたけど、めちゃめちゃテクいかっていうとそうでもないんですよ。"神様"みたいなギタリストもいないし。じゃあ他の楽器ができないかって言ったら、まぁまぁいろいろできるんですね。楽器自体が全部好きで、だけど極めてるものがないなって――そこは短所でもあり長所でもあるかなと思ってるんですけど。ただ、曲を作ることは好きだし、その一環としてヴォーカルというエッセンスに対してチャレンジしようと。そういう前からあった気持ちがTakのひと言で後押しされましたね。"kenkenやっちゃいなよ!"って(笑)。

Tak:まぁ、僕のおかげですね(笑)。

kenken:トリガーですね(笑)。あと英語なのも、他の人に頼みづらい理由だったんですよ。Takの知り合いのアメリカ人を探すのも大変だろうし、こっちで上手に英語のエッセンスで歌える人を探すのも大変だし、コロナの時期だったのもあって、人と接触することもできないからRECもしづらいし。お互い家で(制作が)できるのも大きかったです。ヴォーカルをやるきっかけになったのは、僕が持ってたちっちゃい火に油を注いだTakさんですね(笑)。

-いろいろ興味深いお話が聞けたところで、ここからは1st EP『From Where the City Lights Burn』についてうかがいます。間もなくリリースされますが(※取材は2月上旬)、今の心境を教えていただけますか?

Tak:もちろん楽しみっていうのはあるんですけど、このEPは初めてのことが多かったので、僕としてはちょっと大丈夫かなっていう不安もありつつ、早く聴いてほしいなっていうのが一番デカいです。で、伝えたいことがあるので、メッセージ性もすごい込めた EPなんですよ。これまでやってたバンドも自分のことを書いていて、それをステージで表現して、というスタイルだったので。ARKTAで作ったこの5曲は本当にいろんな人に伝えたい思いを込めて作ってます。あと一番重要なのが、僕らふたりに共通するものが"ガンダム"なので、このEPには"ガンダム"の要素である宇宙の雰囲気をすごい入れましたね。EPのタイトルは"From Where the City Lights Burn"っていうんですけど、それも僕がLA、kenkenが東京なので、"それぞれの灯火のある街からメッセージを届ける"という意味も込めて付けてます。

kenken:EPにするというのは、ARKTAを始めたころからしたかったことのひとつではあるんです。なんだかんだ始めてから4年になるんですけど、"EP出すぞ"とファンの方に言い続けて3年ぐらい経つので(笑)。やっとその第一歩かなっていうのが僕としては強くて、ここからARKTAというバンドを打ち出していくぞってきっかけのひとつになればいいかなという思いもあります。あとは、やっとライヴ・シーンも去年ぐらいから戻ってきたじゃないですか。フェスとかも2~3年やってなかったなかで、ようやくもとに戻ってきたのもあったので、シーンが戻ってきたタイミングで僕たちもやっていきたいなと。僕たちのバンドというかユニットって、住んでるところも違うし、音楽的にめちゃめちゃバンド・サウンドなのにヴォーカルふたりしかいない特殊な形なので(笑)。LAと東京っていう大都市から、じゃあ日本でやりたいのか、アメリカでやりたいのか――どっちもあるし、どっちでもないんですよね。大きい話になっちゃいますけど、東京とLAから世の中、世界に向けて届けていく気持ちもあるので、このタイトルを付けていて。Takも言ってたようにメッセージ性の強い曲が多いし、僕もヴォーカルとして初めて出すEPなので、今まで以上に作曲や楽器だけじゃなくて、自分の言葉でも表現できるっていうところで、思いはかなり強く持ってるので、今まで培ってきて伝えたかったいろんな思いを凝縮したようなEPにできたかなと思います。