INTERVIEW
CHASED
2025.04.11UPDATE
Member:KZK(Vo) HiRo(Ba) Issei(Gt) ICHIYASU(Gt)
Interviewer:菅谷 透
-ミニ・アルバムのタイトル"weal and woe"の由来を伺えますか?
KZK:"幸せと災い"、"成功と困難"って意味ですね。僕がデザインやタイトルを担当しているんですけど、どういう作品にしようかなってときに、いいことが全くないなと。実際ここ2~3年のCHASEDはいいこともあったんですけど、どっちかと言ったら上手くいかない時期が延々続くループに入ってたんですよね。それに対して怒りやストレスを向けるのは簡単なんですけど、ちゃんと糧にできるような活動をしないことには成長できないなって。いいことも悪いことも全部踏まえた上で、今のCHASEDが全力でできる楽曲はなんやろって考えて、"weal and woe"と付けようかなっていうのが始まりです。
あと余談で、漢字だと"禍福"って書くじゃないですか。僕はアニメがめちゃくちゃ好きなんですけど、楽曲やデザインの面で、アニメとかサブカルチャーから影響を受けることが多くて。僕の一番好きな"攻殻機動隊"のワンシーンでシビれるセリフを田中敦子さんが演じる(草薙素子)少佐が言ってたのが"禍福"っていう言葉を踏まえた文で、そこからも来てはいます。
HiRo:知らなかった(笑)
KZK:でもそれは1パーセントぐらい(笑)。僕個人としては17年歌ってるんですけど、17年やってきてなかなか成功できなくて。一時期は怒りに身を任せてライヴ活動をやったり、"CHASEDをどうにかせな"ってSNSで攻撃的になったり、幸せになれるような音楽活動をしてなかったので、今回は"weal and woe"というタイトルもやし、曲の歌詞やメロディラインから、聴いてて幸せになれる、嬉しくなれるような作品にしようっていうのが一番大きいですね。
-この作品をきっかけに好転していけるような。
KZK:そうですね。
-ミニ・アルバムのイントロダクションになる「Int : P▽P△」は、少年と青年が電話で会話するような音声が収められていますね。
KZK:僕がオタクなので、これには設定があるんですけど。今回はアルバム・デザインも、ツアー・フライヤーやグッズ・デザインにも少年を入れてるんですよ。何か嫌なことがあったとき、しんどくなったときに頭の中で思い出すのは、小学校くらいの当時友達と遊んだ思い出とか、家族との思い出で。初心に帰る、ゼロからもう1回始めるってときに、ガキの頃のあの不死身じみた姿勢を忘れたらあかんなってところから始まってるんです。あの曲は、紛らわしい言葉なんですけど"さなぎ"って意味の"PUPA"ってタイトルにしてて。
少年がいつも通ってる無人の廃墟にあるラジオから、たまに聞こえてくる声と会話してるっていうSF映画みたいな設定です。失敗続きの人生だったので、もし仮に生まれ変われるとするならば、どうにかして転生先であろう別の世界の自分に、"上手くいくように"ってラジオから話し掛け続けるって感じで。少年が"もうそろそろ行かなくちゃ"ってセリフで物語がスタートしてます。パラレル・ワールドのガキの自分に"頼むから失敗せんでくれ"って言うような、ちょっと気持ち悪い設定でやってます(笑)。
-2曲目「VerMili0n」はAimie(Far From Perfect/Vo)さんをフィーチャーした楽曲になってますが、彼女を起用した経緯を伺えますか?
KZK:この曲は最初はライヴのSEだったんですけど、そのバージョンに女の人の声のサンプリングが入ってたんですよ。それが忘れられんくて、なんとかして女の声が出せないか発声の練習もしてみたんですけど、それは物理的に無理すぎて(笑)。それで、この曲を作ったTaisukeと誰をフィーチャリングしたらいいかなって話してるとき、定期的に東京のアコースティック・イベントで一緒にやっていたAimieさんを思い出して、"あの人しかいないでしょ?"ってことで誘わせていただきました。
-曲自体はストレートなラウドロックもありつつ、エレクトロが入っている等新しさもあるんじゃないかなと。
Issei:一番今までのCHASEDっぽいんじゃないですか? CHASEDって感じがしますね。
KZK:エレクトロの部分なんですけど、"鉄拳5"ってゲームがあるじゃないですか。僕、"鉄拳"とかナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)のゲームがすごく好きで。楽曲制作するときにすぐアイディアで"「鉄拳」が~"とか言うんですけど、あのBGMを聴いてると"鉄拳"で対戦してるのが急に頭に浮かんできて。これをもとにどうにかして「VerMili0n」を作れへんかなっていうのがきっかけで、Isseiが言った通り今までのCHASEDの最新の部分と、ゲーム・サウンドを掛け合わせた感じです。
-続く「CRY」はKZKさんの低い声も印象的ですね。
KZK:この曲はHiRoスタートですね。
HiRo:2023年に"TERRA COMBAT"っていうサーキット・イベントを初めて僕等がやったんですけど。終わって"よっしゃ曲作ろう"って、たまたま地元のことを考えてるときに出てきた曲です。歌は後付けでオケだけできた状態で、KZKにメロディを付けてほしいってお願いしてできていった曲ですね。めっちゃ作り込みました。
KZK:一番時間かかったんじゃないですかね?
Issei:ライヴでもやったし、セクションも大幅に変えていって。
KZK:CHASEDが"ラウド疲れ"してる最中やったんですよ。そのときにこの音源が来て、"あぁ、これをやろう"と。もともと好きやったアンビエント要素もあって、しっかり歌い上げられそうな楽曲でもあって。僕はハイ・トーンがイメージされやすいんですけど、一番の武器は低いトーンやと思ってて、それをふんだんに伝える楽曲やなと。HiRo君からデータをもらってすぐにメロを付けて。
HiRo:マジで早かったよな。2時間ぐらいできたもん。
KZK:"これや、これや"ってすぐ浮かんで。どちらかと言ったらライヴで育てていった楽曲かもしれないです。
-たしかに、バンドとしてもともと持っていた要素を、さらに違う見せ方で提示しているような感じですよね。
KZK:新しいCHASEDとして見てもらえるかなと思いました。
-それもあって、この曲をMVにしたんでしょうか?
KZK:そうですね。というかMVがなさすぎて"作ろう"ってなって。最初は「VerMili0n」みたいなアッパーな曲のほうがいいっていう話もあったんですけど、もう僕はラウド疲れとアッパー疲れもあったので"バラードにさせてくれ"って言って(笑)、あの楽曲にしました。
-"アッパー疲れ"というワードが出たタイミングですけど、次の「H0PE」はCHASEDの中でもかなりアッパーな曲で(笑)。
KZK:めっちゃアッパーですね(笑)。
-スラッシュ・ビートやブラストビートが入ったりと、アグレッシヴな楽曲ですよね。
KZK:この曲はどっちかって言ったら、楽器のほうが主役って考えていて。
Issei:あんなにテンポの速い曲は珍しいですよね。「Light of Hell」(2023年1月リリースの会場限定シングル表題曲)ぐらいじゃないですか。
HiRo:この曲は「CRY」ができたタイミングで"激しいのもいるな"って、対比の感じで極端に自分の中で速く激しくしてみたんです。曲の感じも「CRY」はちょっとネガティヴな要素があるけど、真逆のポジティヴな感じに作ろうってしてみて。最初のデモの段階でコードは決まってたんですけど、ギターをIsseiにお願いしたら、まぁあんな感じの演奏が出てきて"弾ける?"みたいな感じに(笑)。
KZK:思ってた10倍は弾いてたんで、最初は"大丈夫か?"と思いながら聴いてました。
-トラックリスト順に聴くと、かなりギャップがある印象になりますよね。
HiRo:情緒不安定な感じで(笑)。
KZK:たしかに第三者の方から言われてみると、あのトラックリストって意味分かんないですよね(笑)。「VerMili0n」と「CRY」は先行して出してたんで、頭のほうにないとなっていうのがあって。「weal and woe」は表題曲やけど、絶対最後にしようと思ったんですよ。そうなったときに「pray」が玄人向けというか、スルメサウンドな楽曲やったので、「H0PE」を真ん中に持ってきて。一番分かりやすく作った楽曲と、今までで一番揉んだ楽曲の間で、真ん中の存在になるのは「H0PE」しかないなと思って、あそこに持ってきたんですよ。でもたしかにそう言われてみると、奇天烈なトラックリストになってるなと思いますね(笑)。
Issei:「H0PE」は過去曲をサンプリングみたいな感じで入れたりもしていて。
HiRo:セルフ・マッシュアップで、主に間奏のセクションなんですけど。そこをどうしようか悩んでたときに、たまたまうちらの「FEAR」(2018年リリースのシングル表題曲)のMVを観て"これや"ってなって。そこからフレーズとサビのメロディを取ってみて、KZKも入れようって言ってくれた感じですね。"どうしよう"って思ってたところで、自分たちの曲に助けられたみたいにアイディアが浮かんできて。
KZK:当初はあんなにテクニカルになる予定ではなかったんですけど。過去曲の「RISE or FALL」(2023年7月リリースのデジタル・シングル)や「EMPIRE」(2021年リリースの3rdミニ・アルバム『RELOADED』収録曲)で竿隊がガーって弾くアレンジが多かったり、ギター2人もそっち系の音が好きだったりするので、それを間奏でやったらみたらって。
Issei:ギターで言うとイントロのリフがすごく気に入ってて。僕はイージーコアみたいな感じがめちゃくちゃ好きで。僕のルーツの1個で「Story of Hope」っていう仙台のバンドがいるんですけど、そのバンドの雰囲気に近いものが出せて、結構気に入ってますね。過去曲のマッシュアップって部分では、「FEAR」のサビのメロディをそのまま歌ってるセクションがあるんですけど、コードが原曲と変わってて。原曲より明るいコード進行になってて、その辺も"H0PE"っていう題名に紐付いてて、個人的に好きですね。
ICHIYASU:僕の場合、Isseiが考えてくれるフレーズを弾くのが多くて。そのフレーズが難しくて、手癖も人それぞれあるので、リズムになかなかハマらなくて苦戦しましたね。何回も(Isseiに)聞いて、いざバチっとハマったときに"なるほど"と。今までのCHASEDの曲に比べるとギターの手数が多いので、やっぱり弾いてて楽しい曲ですね。
Issei:この曲が一番ムズいかもですね。
ICHIYASU:僕もちょっと系統は違うんですけど、音数があるのが好きなので。
-ラウドロック系なのにツイン・ギターでここまでガッツリと弾いてるのは、シーンでも結構少ないですよね。
KZK:そうですね。シャウトも一切してないですし。
-この曲はラウドな分、メロディを大事にされてる印象がすごくありました。
KZK:たしかにシャウトはないけど、楽曲だけ聴くともしかしたらメタルコア寄りになるかも。僕が無理矢理歌モノに引っ張り出してるイメージがあるかもしれないです。「H0PE」とかは特に。
-そこがCHASEDとして重要な部分なのかなと。
KZK:そうですね。このバンドは"あなたたちがシャウトするなら、私は歌います"っていう気持ちではあります。