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INTERVIEW

武瑠

2024.12.09UPDATE

2024年12月号掲載

武瑠

Interviewer:山口 哲生

武瑠が新曲「TO BE LIKE THRILLER feat.IKE,星熊南巫,4s4ki」を完成させた。昨年は自身がフロントマンを務めていたバンド、SuGが期間限定復活。多くのオーディエンスを喜ばせていたが、そこから自身の活動を"深世界"と銘打ち、国内外のアーティストやプロデューサーを招聘して刺激的な楽曲を立て続けに発表。今年に入ってからはワールド・ツアー"SLY DEVIL WORLD TOUR"も開催と、精力的に活動を続けている。今回のインタビューでは、IKE、星熊南巫(我儘ラキア)、4s4kiという圧倒的な個性を持った"教祖"たちと共に制作した最新曲をはじめ、ここ1年間の活動を振り返ってもらった。

-最新曲「TO BE LIKE THRILLER feat.IKE,星熊南巫,4s4ki」は、リリースに先駆けて、11月22日に下北沢シャングリラで開催したライヴ"武瑠 TOUR 深世界 FINAL TO BE LIKE THRILLER"で初披露されていましたが、ライヴでやってみてどんな感覚がありましたか?

今までヴォーカル・グループをやったことがなかったのもあって、人と人の声が重なるパワーみたいなものを感じました。シーケンスで流れている声じゃなく、その場にいる人たちが歌って空気が振動して、それが重なったときの独特のパワーみたいなものって、他のアーティストを観ていてすごく感じてはいたんですけど。それを初めて体感してみて、こんな爆発力があるんだって歌いながら感じたというのが一番ですね。あとは、リハを観ていた関係者が"抜群に曲がいい"と言ってくれていたんですけど、本番でやっていて、やっぱりバラバラのこの4人だからこそできた曲だし、サビも強いし、曲が持っているエネルギーをすごく感じました。リリースする前の初披露もあまりやっていなかったので、みんなに届けたというより、自分等がステージで感動してるほうが強かったかもしれないですね。

-フロアから観ていて、まず単純に豪華だなと思いましたし、ステージから放たれているパワーも強いし、とにかく圧巻だったんですが、ご本人たちとしても"これはすごい"というのを感じながら歌っていたと。

4人ともその感じがありましたね。やったことのないことをやった感というか、初めてバンドを組んだときに近いような、こんな化学反応が起きるのか! って驚いた感じはあったし、こんな新しい感動がまだあるんだなと思いました。あの日はゲストも多かったし、リレー感もあったんで、楽屋が1つになっている感じもすごくありましたね。

-あの日自体がすごかったですもんね。ここまでコラボをしてきた人たちが一堂に介するという。「TO BE LIKE THRILLER feat.IKE,星熊南巫,4s4ki」という楽曲そのものに関してなんですけど、このメンバーでコラボしてみようと思いついたのはいつ頃だったんですか?

去年末ぐらいにTokiとトラックを作っていたんですけど、それこそヴォーカル・グループみたいな感じでやってみたいなと思ったんです。今までラッパーを招いてとか、コーラスとヴォーカルで分かれるとか、そういうのは結構やってきたんですけど、4人で一気に歌うみたいなことをはやっていなかったので。だからトラック先行で、そこから声を掛けていった感じでしたね。

-そのなかでもお三方に声を掛けた理由というと?

IKE君とは前から"いつかやろうね"って話をしてたんですけど、去年セッション・バーに行って遊んだときに、実際にやりましょうということになって。最初は2人でやるかもしれなかったり、ロスのアーティストの子が入るかもしれなかったり、いろいろ紆余曲折があったんですけど。それとはまた別で、4s4kiとTokiと3人でいたときに"Tokiのトラックで何かやらない?"って4s4kiが言ってくれて、だったら今進行してるやつがあるよって。バラバラでやるよりもみんなでやったほうが面白いものができるんじゃないかなと。で、他に誘いたい人いる? って聞いたら4s4kiから星熊さんの名前が挙がって、バッチリだなと思ったんです。自分も、「TOKYO 神 VIRTUAL」っていう(星熊が)ソロで出してるMVがめちゃめちゃかっこいいと思っていたし、服装とか音楽性とかやりたいことがたぶんめっちゃ似てるんだろうなと感じていたから、もしかしたら一緒にやってくれるんじゃないかなと考えて。それでたしかワールド・ツアー中だったと思うんですけど、インスタのDMで全然知らない星熊さんにいきなり企画を送ったら、"ぜひやってみたいです"って返事をいただいたという感じでした。

-星熊さんとは今回が初顔合わせだったんですね。

MV撮影のときに初対面って感じでしたね。(星熊は)SuGの名前は知っていたけど、ソロをやっているのは知らなくて、インスタを見たらひとりでこんなに攻めてることをやってるんだ、面白いなと思ったっていうのを、後でお聞きしました。

-4s4kiさんとはいつ頃からの知り合いなんですか?

(4s4kiが)「おまえのドリームランド」っていう曲を聴いてみてくださいみたいなDMをくれて、そういうのよく来るんですけど、その中でもぶっちぎりでいい曲だった印象があって。それで、coldrainのKatsuma(Dr)君とかIchika(Nito/Dios)とか、ミュージシャンの集まりがあるときに誘ってみたんです。で、みんなでセッション・バーに行ったんですけど、4s4kiはセッションも超得意だから、その場でピアノを弾きながら曲をどんどん作り出して。4s4kiがピアノ弾きながら1ヴァース歌って、それに対して自分もその場で歌って、みんなが演奏してっていう、音の上でメロディと言葉をその場で書いて会話するみたいなのを、1時間くらいやったんです、いきなり。

-すごいですね。しかも1時間。

ピアノを弾きながら自己紹介みたいな感じで、SuGの「不完全Beautyfool Days」(2012年リリースのシングル表題曲)がものすごく好きって言ってくれて。そのときに(‎sleepyheadの)『センチメンタルワールズエンド』(2021年リリース)に収録されている「酸欠都市」を一緒に作ろうっていう話をしていたんですけど、コロナでごちゃごちゃしてしまったり、(4s4kiが)ちょうどメジャー・デビューのタイミングだったりもあってできなかったんです。結局お蔵入りにはせずに自分1人で作ったんですけど、それもあっていつか一緒に作りたいっていうのはずっとありましたね。

-ようやくという感じなんですね。

一応後輩というか、聴いてくれていた人ではあるんですけど、それまであまりない感覚で。それまでの自分の中の後輩像って、関係性的にどうしても自分が教える側になることが多かったんですよ。でも、すごく新しくて尊敬できる音楽をやっていて、自分も4s4kiの曲を聴いて学びになったりするし、そういう循環が起こる人がついに出てくるようになったんだなぁと思って。4s4kiと会った年に(sic)boyとも出会ったんですけど、2人にはそういう感覚がありましたね。逆に、そうやってリスペクトできる後輩ができてこそ、続けられる道があるかもしれないなって思って。4s4kiはそういうものをくれた大事な1人でもありますね。

-IKEさんとはかなり古い付き合いですか?

もう13年前ぐらい......もっと前かな。知り合ったときは、IKE君はまだ名古屋に住んでいたので。メジャー・デビューしたタイミングがほぼ同じなんですよ。半年ズレとかそれぐらいなんですけど、歌番組で一緒になったり、定期的に会ってご飯食べに行ったりしていて。やっていることは違うけど、"浮気者のMVみたいな飛ばしてるやつをいつかやってみたい"って言ってくれてたから、もし一緒にやるのであれば、IKE君が普段やらないような世界観のものをやりたいなと思ってました。今回のMVも、4人の化学反応があった上で自分にしかできないものというか。V系出身でJ-POP、K-POP、ヒップホップを聴いてきた人間にしか絶対にできないような世界観になったと思っているし、そういう自分の得意な世界観をやるときにIKE君を招きたかったので、理想的なアート感でできたんじゃないかなって思ってます。

-なるほど。もしかしたらこの後に聞くお話と繋がってくるかもしれないんですが、先程からセッション・バーというワードがちょこちょこ出てきてるんですよね。

しょっちゅう行ってますね。全然違うジャンルのミュージシャンで集まって。会話しないときもあります。ずっと音が続いていて、たまたま来たラッパーが歌って、そのまま外に出て帰っちゃうみたいな(笑)。パートもリレーみたいな感じで、じゃあドラムだけ変わってみようとか。そういう遊びを去年、一昨年からわりとやってます。結局一番楽しいのがそれなんですよ。あと、自分がベースを始めたからっていうのもデカいかも。

-ベースはいつから始めたんですか?

1年ちょっと前だったかな。でも、本当にたまに遊び程度でやってるだけなんで、"やってる!"って感じでもないんです(笑)。

-でも、なぜベースをチョイスしたんです?

自分がベースから一番音を取ったり、メロディを考えたりしてるからだと思います。たぶん、俺の本当のベーシックって、ロックとかじゃない気がしていて。音の聴き方もビートとベースがメインだし、ロックの中でもギター・ロックよりは、例えばサカナクションみたいな、エレクトロ要素が入っているものがメインになっている気がするし。あと、ライヴのときもいつもベースを大きめに返しているので。

-自分のそういった部分も含めて、一度やってみようと。楽曲のほうにお話を戻して、この4人でやるということが決まってから、曲のコンセプトを決めていった感じでしたか?

そうですね。ちょっと収集付かなくなるかもと思ったので、先にタイトルとかを考えていきました。映像としては、それぞれのファンがいる"教祖"が集まって首脳会議みたいなことをしているんだけど、結局1つの意見にまとまらなくて、全員それぞれ自分の主張をしているっていう。それで、音楽的にはあんまりやらないと思うんですけど、最後のヴァースは全員が違うメロディ歌って、わざとごちゃつかせていて。そこは映像表現も含めて最初からそうしようと思ってましたね。そういった企画書みたいなのと、アートワークのイメージも一緒に送って、そこからそれぞれで広げてもらうって作り方でした。

-"教祖の首脳会議"という案はどんなところから出てきたんですか?

この4人でやるならこれだなってのが、ファースト・インプレッションですぐに出てきたので、何かから着想を得てとか、そういう感じでもなかったです。その枠の中でみんながいろいろ作ってくれて。基本的に本人が歌っているところに関してはその人がメロディを付けているんですけど、俺じゃ絶対に思いつかない声の重ね方を4s4kiはしてきてたし、星熊さんのメロディもやっぱりこう来るよねって、ちょっと高貴というか、リッチな感じで広げてくれて、IKE君は俺が最初に用意していたメロディをだいぶ変えてきたんですよ。

-どの部分ですか?

サビの前半ですね。最初からあったメロディだったんで一瞬悩んだんですけど、素直にそっちのほうがいいなと思ったからそっちを採用して、IKE君が書き直したメロディに俺が歌詞を書くとか、そういういろんな相互作用があったし、4人それぞれが持っているものを掛け合わせて作っていった感じでした。だから、自分が総意的なプロデューサーではあったんですけど、こっちは押し付ける気も全然ないし、みんなもこれがいいとかハッキリ言ってくれたので、自分の想像以上のものがしっかりできたなって実感はありますね。

-めちゃくちゃ理想的なコラボレーションですね。

そうですね。自分も年齢的なところもあるのか、いい意味でエゴとか我が取れてきていて。若いときだったらできなかったかもしれないです。最初に作ったメロディがやっぱりよく聴こえちゃうっていうところがあったから、昔だったら冷静に判断を下せなかったかも。今はIKE君が持ってきてくれたメロディにして良かったなってすごく思っているので。