INTERVIEW
武瑠
2024.12.09UPDATE
2024年12月号掲載
Interviewer:山口 哲生
-たしかに「REQUIEM」はまさにですし、「AFTER THROUGH THE DARK feat. Karan Kanchan」も、タイトルとは違ってまだ闇から抜けていないような雰囲気もあるというか。
それを繰り返しているイメージですね。完全に抜け切るということはなくて、それを繰り返していくし、暗闇にいるときには気付けない存在があるっていうことを、自分としても書き残しておきたくて。ずっと側にいてくれる人も暗闇にいるときは気付けないことを、ファンからすごく感じたんですよ。スランプになっていたときは、自分のことでいっぱいいっぱいになっていて音源も出していなかったけど、ずっと待ってくれている人が横にいたんだなというのを強く感じることができたので。
-そういうメッセージを込めた曲もありますし、作っているときはすごく楽しんでいたんじゃないかなというのを、一連の楽曲を聴いたときにすごく感じたんですよね。今日もセッション・バーの話がありましたけど、純粋に音楽を楽しんでいるところもありますし。実際にいかがです? 曲を作り出すモードというか、発露みたいなものが変わった感じも多少はあるんですか?
しんどいことを外に見せなくなってるっていうのは明らかにありますね。楽しいことをなるべく外に発信しようというのは絶対的にあって。今年は海外に長い間行ったけど、他にも頓挫した海外とのやりとりがあったし、外に出ないけど海外の人との権利分配もすごくややこしくて。日本のシステムがすごく遅れているから、海外の人と曲を作るところまでは簡単に行けるんですけど、著作権の問題がみんなすごく壁になってるんですよね。それをクリアしてくれる会社に頼んじゃうと、再生回数も分からない状態になっちゃうとか(笑)。
-そうなんですね。
日本って外とやることに対して整ってないところがものすごくたくさんあるんですよ。海外にライヴしに行くのもなかなかハードルが高いし、関わる人が多くなると事務的なこと、実務やストレスも増えるから、今年は外からは全く見えないすごく細かいハードルがたくさんあって。抱え切れなくなるような裏方作業が多発してたんで、当然負荷はかかっていたんですけど。
-大変でしたね......。
でも、今年はさすがにちょっとリリースしすぎましたね(苦笑)。タイとインドとやって(※「SLY DEVIL」に参加しているMekはタイ、「AFTER THROUGH THE DARK」に参加しているKaran Kanchanはインドで活動)、国内でもやって、ライヴで南米に行ったりもしたし。それだけやったら無茶苦茶になることは分かっているんですけど。
-今年だけで6曲出しているし、しかも全曲MVをかなりしっかり撮っているし。
そうなんですよ(笑)。ちょっと後半ガス欠になって鬱みたいになりましたけど。
-大丈夫......?
はははは(笑)。やっぱり権利とか契約が大変すぎて。そこは自分自身に甘えちゃいけないところだけど、悩みではありますね。やっぱりどうしても舐められるんですよ。アーティストがやっていると、正しいことを言ったとしても伝わらなかったりするんですよね。
-というと?
例えば著作権のこととか、こっちが知っていて"法律ではこうですよ"って言ったりすると、"アーティストがそんなこと分かってるわけねぇじゃん"みたいに思われるんですよね(苦笑)。そういうのってあるあるじゃないですか。
-まぁたしかに。
こんなにやってるのに、アーティストが何パーセントしかもらえないみたいな話ってありがちだと思うんですけど、これって対大人に対してだったら、チクショー! みたいに終わるんです。でも、アーティスト同士でそれをしちゃうと、俺が嘘をついているみたいな変な感じになっちゃうときが実際あるんですよ。あと、海外とのやりとりも、"日本の仕組みがそんなわけないでしょ?"、"こんな簡単なことなんでできないの?"みたいな、対日本への文句が自分に来るとか(苦笑)。
-それつらいなぁ。
いや、俺も変だと思うしなんでこんなこともできないのか分からないんだけど、日本だとそうなんです、みたいな。そういう一歩間違えたら俺が嘘をついているみたいなヒリヒリすることが多くて。そこら辺は本当に丁寧にやらなきゃいけないんで、めちゃくちゃ大変なんですけど。でも、自分で始めた以上はそこも含めて腹を括らなきゃいけないなって。思っていたよりも大変だなっていうのはありますけど。
-そういったものはあまり見せずに、飄々とクリエーションを見せていこうというモードになっていたと。
あと、昔よりも、共感してもらえないのを分かっているっていうのもあるかもしれないです。ミュージシャンの壁ってだいたい同じようなことだと思っていて。例えば、メジャー・デビューするときに、もうちょっと一般的に分かりやすくしなきゃいけない。でも、"俺はレコード会社が言ってるようにはならねぇ! もっと俺がやりたいことやるんだ! ファン、頑張って付いてきてくれ!"みたいなのが王道というか。俺はどちからというと自由にやらせてもらっていたほうですけどね。でも、そういう壁だったら共有できるけど、"外国との権利問題で向こうに全然伝わらなくて嫌われそう!"って言っても通じないじゃないですか(笑)。
-たしかに(苦笑)。
そういうことが多かったし、あとは相手がいることなんで、言ってもしょうがないよなって。だからその分、ライヴがあって本当に良かったと思いましたね。本当にファンに救われたなっていうのを、この秋冬にすごく思って。ライヴで自分を保てている感じがあったし、これをやるためにこのめんどくさいことをなんとかクリアしてるんだっていう。それに、みんなだってここまで楽しいだけで辿り着いているわけではないじゃないですか。仕事を乗り越えて、頑張って自分でチケット買ってきてくれているんだよなとか、こんな物価高のなかで前よりも全然高い飛行機に乗ってきてくれているんだよなとか。そう思えたし、あとはライヴがどんどん良くなっている実感があったので、合間にツアーがあって本当に良かったなってめちゃくちゃ思いました。