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INTERVIEW

武瑠

2024.12.09UPDATE

2024年12月号掲載

武瑠

Interviewer:山口 哲生

-今回の楽曲に対して、"アーティストとファンの関係はある種宗教的とも言える/だけどその宗教は、支配ではなくて誓いだ"というコメントを出されていましたよね。

アーティストとファンの関係みたいなのは常に考えるんですけど、よく宗教的って言われるじゃないですか。俺もそう思うんですけど、実際の宗教ってわりと否定から入るイメージがあって。入信の仕方が軍隊式というか、今までの自分の罪を認めてから始めるみたいなところがあるじゃないですか。あとは、"生まれてきた時点で罪"とか。そこに対して俺はわりと反対派なんです。人間は穢れているとかそういうのは別にいいんですけど、それを悔い改めよみたいなスタートなのが、なんか全然しっくりこなくて。俺等アーティストがやっている宗教って、今まであったことがすべて過ちだったとしても、それをプラスに変えようとかそういう方向であって、これは作りながら思い浮かんだ言葉なんですけど、宗教だけど支配じゃなくて、誓いなんですよね。その傷を持って、もっとこういうふうに良くしていこうとか、カッコ良くなろうとか。結局、昔から自分が言っている"無理矢理前向き"みたいなことなんですけど、そういう誓いをファンとお互いにして、それぞれが成長し合おうみたいな宗教をやれているし、俺はそうありたいって願いも込めて作ったので、この言葉に出会えたのかなと思います。

-うんうん。

教祖と言うと重たいけど、そんな肯定的な宗教を持っている教祖たちがいて、教義をするんだけど、別に全員が同じ哲学で生きなくていいよねっていうのを表現したかったから、最後は4人バラバラで歌おうと。みんなもそこは体感的にも感覚的にもすごく分かっていることだと思うので、スッと理解してくれてましたね。"なんで? 気持ち悪くない?"とかじゃなく、"そういう意図なんだ。面白いね"みたいな。音的には普通だったら絶対に選ばないと思うけど。

-そこはあえて。

うん。あえて渋滞させました。まぁ、渋滞していても傷つけ合わなければそれでいいよねっていうことですね。

-世の中に対するメッセージとしてもいいですね。このラストって多様性みたいなことだと思うんですけど、多様性って本来はすごくカオスなものであって、決してきれいなだけなわけでもないと思いますし、それをそのまま出して肯定するということを、実際にバラバラの4人がやっているのがいいなって感じました。

でも、シンプルによく賛同してくれたなって思いますよ。大きなレーベルさんの決断的なものもありますけど、こんな好き勝手にやってるソロで自主のやつに(笑)、よく巻き込まれてくれたなって。

-ありがたい話ですよね。楽しそうだからやる! っていう。

ありがたいですね、本当に。

-その最新曲も含めて、ここからはちょっと振り返ってお話をお聞きできればと思っていて。2023年にSuGの期間限定復活があって、それ以降のソロの活動に関しては、"深世界"というワードを掲げていますよね。これはどんなところから出てきたんですか?

自分のクリエーションのロードマップとしては、sleepyheadで出した『センチメンタルワールズエンド』で一旦終わった感じがあって。あの作品は、18歳のときにやりたいと思ったもの、作りたいと思っていたものを15年かけて完成させたのもあって、ある意味夢を叶えちゃったんですよね。それで、この先も音楽を続けるのか考えていたときに、いろんな感情が混ざり合ってきて。これまでの自分は、"悲しい"みたいな感情から全てを生み出してきたんですけど、それがしんどいからやめたいっていう、そこからの卒業みたいな感じで『センチメンタルワールズエンド』を作ったところもあるので、あまりにも大作すぎて、めちゃめちゃスランプに陥ってしまったんです。じゃあ、もしこのままやめるかもしれないのであれば、心残りはなんだろう......喧嘩別れしたSuGを復活しておこうかなって(笑)。

-(笑)それで動き始めたと。

音楽的なことというよりは、自分の人生的なところで動き出した感じでしたね。それが大成功に終わって。そうなったら、もっと軽い気持ちといったらあれだけど、今までみたいにただただ身を削り過去のトラウマを思い出し、それを擦り込んでみたいな(笑)、そういう作り方じゃないものをやってみようと。ベースを始めたのはそれも大きいんですけど、このキャリアがあるんだったら音楽的にもっとレベルアップしなきゃダメだなとか、フィジカル的なところを鍛えようとか。とにかくもっともっと音楽のこと知らなきゃダメだなっていうことも含めて、もっと深く世界を知ろうと思って。

-それで"深世界"だったんですね。

あと、これまでもライヴで海外に行ってはいたけど、その国のことをあまり知れなかったんですよね。観光の時間もせいぜい10時間ぐらいしか取れずに帰ってきてしまう感じだったから、音楽を生産するルートにただ乗っているだけで、人生としてはものすごくもったいないことをしてるなと思って。"次のリリースがあるんで早く帰りましょう"って、ツアー・ファイナルの次の日もレコーディングみたいなことを繰り返して、大量消費みたいな。

-昔はそういう活動ペースだったと。

そういうときも大事だとは思うんですけどね。プロモーションも含めてずっと走り続けるっていう。でも、それはもう1回経験しているので同じことをやる必要ないなと思って、今年のワールド・ツアーも、ブラジルに1週間ぐらい滞在して、メキシコにも1週間以上いて、その土地のことを知ったり、カルチャーに触れたりしていて。そういうのも含めて、知っているはずの世界を深掘りしていこうって意味でも"深世界"と名前を付けて、そのタイトルでフル・アルバムを作ろうと思っていたんです。

-おお。もう次作の構想が。

でも、結局自分のアイデンティティってなんだろうなと思ったら、フィジカルなところで作る人なんていくらでもいるし、もっと上手い人もいくらでもいるし。結局、10代の頃から感傷的に世の中を見てきた自分のベーシックを全部捨てる必要はないし、自分で切り替えようと思っても、本当に腐ってる事件とか悲しい出来事が世の中に溢れすぎているから、無理に変わろうとせずにそれを栄養素にするっていう、自分が得意なやり方で作ろうかなと思ってきて(笑)。だから"深世界"というのは、この前の11月22日のライヴで一旦終わりにして、また違うテーマで次のアルバムに向かっていこうかなと考えてます。

-SuGの復活以降で言うと「不道徳」(2023年)、「怠惰 feat.GOMESS」(2024年1月)、「悪党 feat.ADE SARIVAN」(2024年3月)、「SLY DEVIL feat.Mek from Saint After Six,BLVELY」(2024年5月)、「REQUIEM」(2024年9月)、「AFTER THROUGH THE DARK feat. Karan Kanchan」(2024年11月)、そして最新曲の「TO BE LIKE THRILLER feat.IKE,星熊南巫,4s4ki」と全7曲を発表されていて。この楽曲たちは、ネガティヴな感情からものづくりをすることをやめようと思いながら制作したものだったんですか?

そうしようと思ったんですけど、やっぱりできなかったなっていう感じですね。

-例えば「不道徳」や「怠惰 feat.GOMESS」あたりも?

そのあたりは、これまでと切り替えようと思っていたんですよね。もっとフィジカルに、音楽をただシンプルに楽しもうみたいなところでいけたんですけど、「悪党 feat.ADE SARIVAN」、「SLY DEVIL feat.Mek from Saint After Six,BLVELY」ぐらいから、やっぱり世の中キモいことが多すぎるよなぁっていう感じになっちゃって(笑)。

-ははははは(笑)。

自分で世界を変えられることなんてやっぱりないし、この気持ち悪いことを一つ一つちゃんと見て、傷ついて、自分のフィルターを通してなんとか無理矢理前向きなものに変えて作るっていうスタイルが、やっぱり自分なんだなと思い知らされた感じでした。それ以降は題材が感傷的なものになってるような気もするし。