INTERVIEW
BLOOD STAIN CHILD/DUAL ALTER WORLD
2024.12.10UPDATE
メタル×エレクトロのパイオニアとして国内外から支持を集め続けるBLOOD STAIN CHILD。そして、同バンドのブレーンであるRYUと声優の小岩井ことりによるメタル・ユニット DUAL ALTER WORLD。シナジーを感じさせながら唯一無二の世界を描く両組が、12月2日にニュー・シングルを同時リリースした。DJエフェクトを取り入れたBLOOD STAIN CHILDの新曲「STARPEOPLE」には小岩井ことりがゲスト参加。一方のDUAL ALTER WORLDの新曲「GRAVITY2」は即効性の高いモダン・メタルなキラーチューンに仕上がっている。歴戦のキャリアを経てなおも無限に膨張するRYUユニバースを堪能できる両作について、RYUと小岩井ことりに語ってもらった。
BLOOD STAIN CHILD/DUAL ALTER WORLD:RYU(Gt/Composer)
DUAL ALTER WORLD:小岩井 ことり
Interviewer:サイトウ マサヒロ
メタルやEDMというパレットから色を抜き出して混ぜるより、ブラステというパレットの上でメタルやEDMを作る感じ(RYU)
-BLOOD STAIN CHILDは、今年5月に『METALIA』と『CYBERIA』という2枚のアルバムを同時リリースし、そこから半年余りでのニュー・シングルとなります。
RYU:『METALIA』がメタル路線のアルバムなのに対して、『CYBERIA』はEDMやエレクトロに振り切った内容だったので、ファンの方にも新鮮に楽しんでもらえたんじゃないかなと思いますね。ブラステ(BLOOD STAIN CHILD)にしか作れない作品ができたという手応えは感じました。それから6月、7月とリリース・ツアー([BLOOD STAIN CHILD Release Tour 2024"W"])を行って、8月頃から今回の新作やイベント("METAMTRX x1")に向けての話が動き出して、今に至るという流れです。
-短いスパンでここまで矢継ぎ早に作品を発表するのは、BLOOD STAIN CHILDの長いキャリアの中でも珍しいですよね。
RYU:『METALIA』と『CYBERIA』は、ブラステにとって実に約5年ぶりのアルバムでしたからね。これまではレーベル周りの体制が不安定だったこともあってなかなかコンスタントに作品を出せなかったんですけど、HS Record との出会いを含めバックが整ってきたので、これからはお待たせすることなく活動を進めていけるんじゃないかなということで。自分自身楽しみにしています。
-一方のDUAL ALTER WORLDは、2020年のミニ・アルバム『WORLD DISTONATION』以来約4年ぶりの再始動となります。
小岩井:DAW(DUAL ALTER WORLD)結成以前から、個人でアーティスト活動をするならメタルがやりたかったんです。どうにか叶えられたらいいなと思ってたときに、RYUさんからお声掛けいただいてDAWを結成できて。その後はコロナ禍も含めていろんな逆境がありましたけど、なんとか4年ぶりにライヴ出演と新曲発表ができる(※取材は11月下旬)ということで、今はすごく楽しみですね。
-DUAL ALTER WORLDとしての活動は滞っていたものの、小岩井さん個人としてはImperial Circus Dead Decadenceのアルバム『殯――死へ耽る想いは戮辱すら喰らい、彼方の生を愛する為に命を讃える――。』への参加、kampai bandでのリリース(『Daydream at Daybreak』)&ライヴ出演("カンパイッ! 2次会")等、年々"メタルを歌う声優"としてのプロップスを高めている印象です。
小岩井:やっぱりメタルをやってらっしゃる方って、本当にメタルが好きじゃないとやらないじゃないですか(笑)。だからレコーディングをするたびに、皆さん熱いディレクションをしてくださるんですよ。"俺/私の持ってる技術を全部吸収してくれ!"っていうくらい。おかげさまで、1歩ずつメタル・ヴォーカリストとして成長できてるんじゃないかなと思います。
-お2人は、この4年の間もコンタクトを取っていたんですか?
小岩井:ちょこちょこ連絡してたよね。"早くまたできるといいね"とかって。
RYU:そうね、水面下で。
-RYUさんは、小岩井さんの活躍をどのように見ていましたか?
RYU:本当に幅広く活動しているので、とにかくすごいバイタリティだな、よくここまで動けるなって。僕だったら体力的に無理だよって思ってました。
小岩井:ありがとうございます。でもRYUさんこそ、どれだけ新曲書いてるんだって思いますよ。モチベーションも、熱意も、レスポンスの速さもすごくて。さすがだなって思ってます。
RYU:なんかよそよそしいぞ(笑)。
小岩井:いつもはRYUちゃんって呼んでるんだけど、今日は一応RYUさんで(笑)。でも本当に、私も作曲や編曲をやるから分かるけど、RYUさんは曲を作るのがめっちゃ速いよね。
RYU:1日~2日あればだいたい形にはなるかな。
小岩井:あれだけ複雑な楽曲をそのスピードで仕上げてくれるのって、ちょっと信じられないです。
RYU:曲はすぐできちゃうけど、最近は映像制作も始めたからそっちに時間がかかってて。ブラステの『METALIA』と『CYBERIA』から4曲のMVを作ったんですけど、それは2~3年前に作り始めたものなんですよ。
-たしかに、RYUさんは現在多方面で創作意欲が爆発しているような印象です。楽曲だけでなく映像も手掛けるようになったことで、クリエイティヴにはどのような変化がありましたか?
RYU:MVを他人に頼んでも、"このパートでこのメンバーをこのタイミングでこう見せたい"みたいなことって100パーセントは詰められないじゃないですか。それを自分でコントロールできるのは大きいですよね。そもそも、僕が描きたい映像はどうしても実写だと再現が難しいんですよ。宇宙だったり異世界だったり、SFな世界観が好きなので。ただ、そのイメージを他人に形にしてもらうのは、バジェットや時間も含めて不可能に近い無理ゲーなんです。だから自分でやっちゃおうっていう。
-ここからは今回リリースされる2組のニュー・シングルについて伺いたいと思います。まず、BLOOD STAIN CHILDとDUAL ALTER WORLDでの同時リリースというアクションはどのように決まったのでしょうか?
RYU:BLOOD STAIN CHILD、DUAL ALTER WORLD、熊乃ベアトリーチェの3組が出演するイベント"METAMTRX x1"を12月1日に開催することが先に決まりまして、そこで3アーティストとも新曲を初披露するというプランを立てて進めていきました。
-では、まずBLOOD STAIN CHILDの新曲「STARPEOPLE」について。制作を始めたのはいつ頃でしたか?
RYU:8月の終わりくらいですね。9月の半ばにはできあがってたかな。
-当初はどのような完成予想図を描いていたのでしょうか?
RYU:一番大きかったのは、『METALIA』と『CYBERIA』を上手くミックスさせたいっていう発想ですよね。ブラステの持ち味であるサイバーな質感や四つ打ちのリズムを取り入れつつ、ややこしいドラムやメタリックな感じを盛り込んで。
-ゲスト・ヴォーカルに小岩井さんが参加されていますが、起用のきっかけは?
RYU:『METALIA』と『CYBERIA』に続いて、女性ヴォーカルは絶対に入れたいなと思っていたんです。海外のEDMやエレクトロの楽曲を日々聴いて影響を受けるなかで、そういう音楽ってほとんど女性ヴォーカルが入ってるんですよね。男性ヴォーカルだけでは表現できない爽やかさ、エモーショナルさもありますし。で、せっかくDAWと同発だから、これはこっこちゃん(小岩井)にお願いするしかないなと。無理なスケジュールのなかで歌っていただきました。
-小岩井さんは、依頼を受けたときにどのような思いを抱きましたか?
小岩井:やっぱりブラステさんは長い歴史がある、いろんな時代を経てここまで続いてきたバンドなので、参加できて光栄でしたね。楽曲もすごく素敵で、繊細さや透明感、儚さを歌声に乗せることでマッチするんじゃないかと考えながら歌いました。星と星が遠い距離を隔てて喋ってるようなイメージで。私が歌ってるパートの歌詞はRYUさんが書いてくれたんだよね?
RYU:そうそう。
小岩井:そこも、ザ・RYUさんワールドが表れてて。たしかに女性の声が加わることで世界観を広げることができる楽曲だったので、花を添えられたことが嬉しいです。
-RYUさんとはこれまでもDAWで活動を共にしてきましたが、ブラステ本隊に加わるということで、一味違う"認められた感"みたいなものも感じられたんじゃないかなと。
小岩井:そうですね。実際に参加させてもらうと、ファンとして味わっていたのとは違う、内部からじゃないと触れられない世界観のようなものがあって。歌ってみることで初めて女性ヴォーカルが必要な理由が分かったりとか。いろんな意図や意味が組み合わさって1曲ができあがってるんだって感じられました。そのパズルの1ピースになれたようで、心地よい体験でしたね。
-小岩井さんのレコーディングは、RYUさんがディレクションを?
RYU:いや、ディレクションはしていないです。
小岩井:私たちの制作方法は独特で、RYUさんは関西、私は関東で拠点に距離があるから、お互い自分のスタジオで成果物を作って共有するっていうスタイルなんです。よっぽどのことがない限りは直しはなくて。信頼し合って、まさにパズルを組み合わせていくように作ってますね。