INTERVIEW
BLOOD STAIN CHILD/DUAL ALTER WORLD
2024.12.10UPDATE
BLOOD STAIN CHILD/DUAL ALTER WORLD:RYU(Gt/Composer)
DUAL ALTER WORLD:小岩井 ことり
Interviewer:サイトウ マサヒロ
"改めましての初めまして"だから、変わらない姿を見せることが神秘的なんじゃないかなって(小岩井)
-なるほど。では今回も、小岩井さんのヴォーカルはイメージ通りに仕上がってきて。
RYU:ですね。こっこちゃんは、レコーディング・データの波形が何回繰り返しても全く同じじゃないかっていうくらい、歌にブレがないんですよ。
-サウンド面に関しては、グリッチやスタッターといったDJ的エフェクトを多用しているのが特徴的ですよね。このアイディアはどのように生まれたのでしょうか?
RYU:ハイパーポップやダリアコアといった、カオスでグリッチだらけのジャンルを普段からよく聴いてるんですよ。でもバンドでその辺りのエフェクトを取り入れてる人ってなかなかいなくて。ライヴで再現できないし、どうするんだよって思うんですけど(笑)。それでもやろうというモチベーションになったのは、グリッチやスタッターの部分で映像をこうしたい、というアイディアでしたね。MVのイメージがあらかじめ根底にあったというか。
-やはり映像制作を始めたことで楽曲の可能性も広がったということですね、非常に面白いです。それにしても、かなりディープなシーンまでエレクトロ・ミュージックを掘り下げていてさすがだなと思います。
RYU:包み隠さずに話すと、僕が講師をやってる専門学校の生徒の影響なんですよ。ダリアコアを作ってる子がいて、"何これ、どうやって作ってるの?"って逆に僕から質問するっていう(笑)。やっぱり20歳前後の若い子たちって、僕らの世代にはない感性を持っていて。いつも学ばせてもらってます。
-個人的な印象としては、これまでのブラステの楽曲って、バンド・サウンドとエレクトロ・サウンドを同じレイヤーに配置して上手く融合していたと思うんです。だけど「STARPEOPLE」はエレクトロがもっと上のレイヤーにある。バンドで組み上げたものを、エレクトロな方法論で解体するというアプローチを取っているように感じました。
RYU:まさにそうですね。メタルやEDMというパレットから色を抜き出して混ぜるよりは、あくまでブラステというパレットの上でメタルやEDMを作るような感じ、と言えばいいんですかね。そんなイメージでした。
-歌詞はどのような内容になっていますか?
RYU:歌詞は、先程話した通り一部を僕が書いて、SADEW(Vo)が歌うパートの言葉選びは彼にお任せしています。コンセプトは僕から彼に伝えつつ。内容については話すと長くなるんですけど......(笑)、人類に叡智を与えたのは違う星から来たスター・ピープルやスターシードと呼ばれる存在だっていう思想がモチーフになっていて。これも映像とリンクしているので、MVを観ればより理解が深まるかと思います。
-続いて、DUAL ALTER WORLDの新曲「GRAVITY2」について聞かせてください。こちらはどのようなコンセプトで制作されたのでしょうか?
RYU:4年の期間が空いたこともあり、改めて自己紹介という意味も込めて、1stアルバム『ALTER EGO』(2019年リリース)と同じ雰囲気を持つ楽曲を選びました。こっこちゃんのヴォーカルをいかに活かせるかというのを大前提に、ファストでサイバーな要素がある、キャッチーだけどロックで、日本語の歌詞を考慮した、DAWならではのサウンドを意識しましたね。
小岩井:初めて聴いたときの印象は、すごく初期のDAWらしい曲調だなって思いました。DAWの曲はいつもDAW(音楽制作ソフト)関係の用語からタイトルを付けているんですけど、今回はHeavyocityというメーカーから発売されているソフト音源"GRAVITY 2"をタイトルにして。私たち2人の才能が重力のように引き合うという意味も込めています。
-DAWがシングルをリリースするのは初めてですよね。これまではコンセプチュアルでストーリー仕立てのアルバムを発表してきましたが、今作にそういったバックシナリオは用意されているんですか?
小岩井:今回は"改めましての初めまして"みたいな、原点回帰の曲にしたいという思いがあって。この曲の前後にストーリーが付くということはなく、私たち自身のことを描いた曲になっていますね。
-あくまで初期衝動を大切にした作品ということですね。
小岩井:そうですね。DAWを結成した当初の気持ちを意識しています。
-レコーディングにはどのような思いで臨みましたか?
小岩井:"改めましての初めまして"だから、今までとあまり変わっていないほうがいいなと思っていました。今までDAWを知らなかった人にも、4年ぶりにDAWの新曲を聴けて嬉しいっていう人にも、同じように楽しんでもらいたかったので。4年という時間をある意味で感じさせない、変わらない姿を見せることこそが神秘的なんじゃないかなって。
-なるほど。RYUさんは、小岩井さんのヴォーカリストとしての強みや特異性をどういった点に感じますか?
RYU:やっぱり......上手い(笑)。シャウトやグロウルができるっていうのも大きな武器ですし、クリーンの表現力や引き出しの多さはさすが声優さんだなと。ロック・ヴォーカリストには出せないバリエーションの広さと表現力は、いつ聴いてもすごいです。
小岩井:嬉しい! たしかに今回は、声を張り上げて歌うだけじゃなくて、音量を抑えたときにこそできる表現をやってみようということで、繊細な部分にもこだわって録りました。
-歌詞にはどのような思いを込めましたか?
小岩井:楽曲から受け取った宇宙や星のイメージを思い浮かべながら、DAWの2人が合わさったときに何ができるかを想像しました。作詞しながら、この4年間にあったことをいろいろと思い返しましたね。思うように活動できないコロナ禍の厳しい状況を経て、今日この日に辿り着けたというストーリーを抽象化して描くことで、多くの人に自分を重ねて聴いてもらえるんじゃないかと思って書きました。あとは、RYUさんのすごいところをいっぱい歌詞にしていますね。私はいろんなお仕事をするなかで、どうしても目の前のことで精一杯になってしまうんですけど、RYUさんはいつも叶えきれないほどの夢を見ていて、それを語ってくれるんです。その願いさえあれば、周りのみんなも協力してくれて辿り着けると思う、っていうことも言葉にしてみました。
RYU:ありがとう。僕がすごく気に入っているのが、サビの"GRAVITY "っていうフレーズで。ここしかないっていうタイミングで入ってくるんですよね。"うおー! これは全員で歌わなきゃいけないだろう!"ってことで、思わず僕のコーラスも入れてしまいました(笑)。
-2バンドの楽曲を並行して制作したRYUさんですが、それぞれサウンドメイクにおいてはどのような差異を持たせていますか?
RYU:DAWでは本当にストレートなメタルコアやモダン・メタルなサウンドを作っているんですけど、ブラステの場合はダンス・キットの音と生ドラムの音を半分ずつ織り交ぜていたりして、その兼ね合いでギターやベースの音をどうするかがパートごとにめちゃくちゃ変わるんですよ。そこが一番大変ですね。
-先程も話題に上りましたが、2作ともMVは現在RYUさん自身の手で制作中なんですよね。
小岩井:「GRAVITY2」のMVには私も出演させていただいてて。撮影時点ではグリーンバックだったので、どんなふうに仕上がるのかすごく楽しみです。私もちょこっと映像を作ったことがあるんですけど、本当に大変な作業ですよね。
RYU:何よりの救いは、メンバーがその大変さを理解してくれてるってことですね。細部のディテールや3Dカメラの動きをかなり詰めて制作しているので、前回より格段にクオリティが上がってると思います。普通に、業務レベルです(笑)。
-公開が楽しみです! ところで作品とは関係ない質問なのですが、最近は音楽でも映像でも生成AIの進化がたびたび話題になりますよね。お2人は生成AIについてどのような印象を抱いていますか?
RYU:僕も試しに触ったりしてるんですけど、本当にすごい進化ですよね。あと数年で、人間のレベルを超えるんじゃないかなっていう気はしてます。混沌とした世の中がもうそこまで来てますけど......でもAIはあくまで既存のものを参照しているので、本当にオリジナルのものは生み出せないと思うんですよ。だから僕はこれからも新しいものを作り続けて、AIに参照される側に立ち続けていたいですね。生成AIのプロンプトに"ブラステ"って入力されるような存在にならないと。
小岩井:私はかなり早い段階からAI分野に興味を持っていて、明治大学さんとの共同研究で合成音声のAI技術についての論文("レアなモーラを含む日本語歌唱データベースの構築と基礎評価")を出させてもらったこともあるんです。ただ、AIはあくまで道具なので、ハサミと同じく、危険な使い方をしてしまう人もいれば、上手に日々のパートナーとして付き合っていく人もいると思います。みんなが上手にAIを扱えるようになってほしいですね。
-では最後に、お2人のアーティスト活動について今後の展望を聞かせてください。小岩井さんいわく、RYUさんは多くの夢を持っているということでしたが。
RYU:夢なんて大それたことではないんですけれど、とにかくクリエイターをずっと続けていければいいかなと。自分のやりたいことをやって、それに賛同してくれる人を少しでも増やして、DAWもブラステも末永くやっていけたらいいなと願っています。まずは12月1日の"METAMTRX x1"が成功しますように。そして、今後もそのようなイベントをどんどん打ち出していけたらと思っていますので、どうぞご期待ください。
小岩井:メタルをやらせてもらえる環境を探すのって難しいと思うんですけど、ありがたいことにこうやって機会をいただいて活動させてもらえているので、私も可能な限り続けられたら嬉しいですね。そして、DAWはまだまだ自分たちのフィールドの外に飛び出せていないので、例えばフェスだったり、いろんなところで実力を試せたらいいなと勝手に思ったりしています。RYUちゃん、どうですか?
RYU:ぜひ、出ていきましょう。
小岩井:たくさんの人に見てもらって、武者修行というか、メタル修行をしたいです!
RELEASE INFORMATION
BLOOD STAIN CHILD
NEW SINGLE
「STARPEOPLE」
ERKD-0011
[HS Record]
NOW ON SALE!!
DUAL ALTER WORLD
NEW SINGLE
「GRAVITY2」
ERKD-0012
[HS Record]
NOW ON SALE!!