INTERVIEW
PaleNeØ
2024.11.11UPDATE
2024年11月号掲載
Member:ほほ美(Vo) AYARI(Gt) REOTO(Gt/Vo) YONA(Ba)
Interviewer:山口 哲生
-じゃあ顧問の方に"デスボやってみなよ"って言われなかったら......。
ほほ美:もう本当に。最初は恥ずかしかったんですよ。今でもまだちょっとそう思っちゃってる分、まだまだだなって思うんですけど。すごかったんです。部室がでっかい棟を貸し切っていて。ベランダがあって、外が普通にスポーツ用品店なんですけど、そこに向かって歌えって言われてずっと叫んでいて。あの経験がなかったら私は今ここにいないだろうなと思ってます。
AYARI:心が鍛えられた。
ほほ美:めちゃめちゃ見られたから!
-それでは、ここからは今回リリースされるデビュー・アルバム『SCØRE』のお話にいきましょう。どんな1枚にしようと思っていましたか?
ほほ美:アルバムを1つの楽譜に見立てて、そこでPaleNeØのジャンルレスな音楽を表現しようっていう感じでしたね。それで(アー写も)5本線が入ってます。
-パレオ曲とネオ曲をどれぐらいの塩梅にするかも考えられたと思うんですが、そのあたりの選曲はスムーズにいったのか、難航したのか、どんな感じでした?
ほほ美:難航寄りでしたよね?
AYARI:うん。スムーズだったかと言われたらそんなことはなかった。
ほほ美:REOTOはストックから引っ張ってきていて。この方は曲を作るのが本当に速くて、まだ世に出してないものもいっぱいあるんですよ。何曲書いてるの?
REOTO:今年は今のところ43曲(※取材は10月下旬)。
-Xのプロフィールのところでカウントされてますよね?
REOTO:あ、そうです(笑)。自分用のメモで書いているだけではあるんですけど。
ほほ美:1年で何曲作るのが目標なんだっけ?
REOTO:50が目標なんだけど......。
AYARI:おぉー! もうちょっと。
REOTO:とりあえず思いついたことを曲に落とし込んでいこうというのを今年は目標にしているんですけど、最近ちょっと時間がなくて......。
-あと2ヶ月でどこまでいけるかという感じですね。
ほほ美:今回のアルバム(のCD盤)は全11曲なんですけど、この前出したミニ・アルバム『ØCTAVE』に比べて、パレオみが強い曲が多いかもしれないですね。あと、今回は初めてな感じの曲も多くて。私は「in Gloria Dei」っていう曲がすごい好きなんですけど、これはオペラというか、宗教みたいな感じで。バンドを宗教化したいんだっけ?
REOTO:そうです。PaleNeØを宗教にしたいと言うとちょっと大袈裟ですけど、ファンの皆様と、普通のファンとバンドという関係性を超えていきたいという気持ちで書いた曲ですね。作ったのは今年の1月とか2月ぐらいなんですけど、バンドを宗教っぽくしたいなっていうのはずっと前からあったアイディアで、そろそろ作ろうかなと思って取り掛かった曲です。
-様々なタイプの楽曲の中から、アップテンポで爽快感のある「アレグロ」でMVを撮影されていますね。
ほほ美:これはネオ曲で、「PANORAMA」(2023年6月8日配信リリースの楽曲)の続編みたいな感じなんですよ。
AYARI:(「PANORAMA」は)私たちが初めてMVを出した曲ですね。
REOTO:なので、今回は第2のデビュー的な感じで。
ほほ美:そう。歌詞もまさにそういう感じでREOTOが書いてくれていて、この曲を基準にしていろいろ決めていきました。で、MVも撮るので、ちょっとコアな感じではなく掴みやすいものにしようってことで、この曲に関しては私のデスボはなしです。
YONA:この曲、仮タイトルが"疾走感"だったんですよ。それを見てから聴いているので、まさに疾走感! みたいなところがすごく印象的で(笑)。この曲ならいけるって思いましたね。なので、ベースも目立つような音を出したくて。普段はサビであまり動くことはないんですけど、今回は動かしてみたりとか、結構好き勝手にやっている感じです。
-アルバムの最後を飾っているのが「CRAZY & NOiSY & CUTiE MAGiC!」。例えばジャージー・クラブとか、トレンドのビートを取り入れつつも、しっかりとバンド感もあってライヴで盛り上がれる曲になっていて。「アレグロ」と同じくネオ曲ではあるけど、また違うベクトルですよね。こういった楽曲も推していこうと。
ほほ美:私たちは老若男女に聴いてほしいと思っているので、そうなると今の時代的にもTikTokとかショート動画が大事になってくると考えていて。バンドが好きな界隈の人の中にはTikTokってちょっと嫌がる人もいると思うんですけど、拡散的な意味合いでは間違いではないと考えているし、TikTokとかショート動画で使って、踊っていただいてバズらせて認知を増やすというのも間違いではないと思うから、そういったところも踏まえて曲を作ってくれたんですよ。今どきな感じで踊れるものというか、端的に言ったら誰にでも聴いてもらえるような曲にしたかったんです。今PaleNeØを聴いてくださってる方は、普段はバンド・サウンドしか聴かない方がほとんどだと思うんですけど、もっと広く、J-POPが好きな方にも、アニソンを好きな方にも、誰もが聴いて"いい"と思ってもらえるような曲をって。あとはゲーム音楽みたいな要素も入れてますね。
-この曲ではほほ美さんは叫んでますね。
ほほ美:そうですね。盛りだくさんで。
AYARI:一般のお客さんに聴かせようとしているのに(笑)。
REOTO:いろいろ詰め込んでいます。
ほほ美:そうそう。バズらせたい部分では叫ばずに、フルで聴いたら叫んでる感じですね。
-歌詞はほほ美さんが書いていて。
ほほ美:私、歌詞を書くのがそんなに得意じゃなくて。REOTOが本当に素晴らしい歌詞をたくさん書くんですよ。だから、私は私にしかできない私らしい歌詞を書こうと思っているので、この曲はデモを聴いたタイミングで"これ、私が書きます!"って。REOTOも"これはほほ美のほうがいいと思います"って言ってくれて。
REOTO:うん。
ほほ美:私はこういうぶっ飛び系のはじけてる歌詞が恐らく得意なんですよ。詩人のように上手い言葉を書くのは得意じゃないけど、こういうキャッチーなワードとかノリ感を考えた歌詞を書くのは得意だなと。聴いたときに、魔法とかゲームみたいな空間が思い浮かんだので、イカれていてうるさくてかわいい、マジカルな世界みたいな感じのテーマで書きました。まぁ、歌詞を書いてみて思いましたけど、他人からしたらどう思われるか分からないです(笑)。この歌詞どうですか?
REOTO:え? うん。いいんじゃないですか?
ほほ美:薄っぺらい(笑)。
REOTO:いや、語り出すと長くなっちゃう。でも覚えやすいというか、それこそキャッチーだし、サビの"CRAZY & NOISY & CUTiE MAGIC!"のところも、踊って歌ったら楽しいんじゃないかなってすごく思うので、それこそ令和のZ世代の女性の方とかにも聴いてほしいなと思います。
-お2人の歌詞の作風が違うのは間違いなく武器だと思いますし、REOTOさんとしてもほほ美さんの歌詞には自分とはまた違ういいところがあると。
REOTO:もちろんです。「CRAZY & NOiSY & CUTiE MAGiC!」もそうだし、ミニ・アルバムに入っている「Moment.」も、デモが送られてきた時点でこれはもう歌詞を書いてもらおう! って投げちゃったんですけど。やっぱりノリが良くてライヴ映えする曲は本当にほほ美が強いと思うので、これからも書いてほしいです。
ほほ美:頑張ります......!
-ほほ美さんはREOTOさんの書く歌詞の好きなところというと?
ほほ美:めちゃめちゃありますよ! そもそも語彙力がハンパないというか。高校の軽音部のときにオリジナル曲を作ったからこそ分かるけど、私じゃ思い浮かばない言葉が多いし、ストーリー性もしっかりしていて。「スキゾイド」(2023年9月リリースの2ndシングル表題曲)とか「独占エレジー」(『ØCTAVE』収録曲)みたいな、主人公を女性としたときに、その子の頭の中を思い浮かべやすい歌詞を書くから、私も歌っていて気持ちが込めやすくて。話していると長くなっちゃうんですけど、本当にいい歌詞を書いてくれますね。
-お互いが歌詞の説明をするときに"長くなってしまう"と言い合える関係性が素敵ですね。では、AYARIさん。『SCØRE』の収録曲の中で、例えばこの曲が好きとか、この曲のここを聴いてほしいというものを、パレオ曲とネオ曲、それぞれ1曲ずつ挙げていただければと思うんですがいかがでしょうか。
AYARI:難しいですねぇ......ネオ曲はやっぱり「アレグロ」になるかなぁ。「PANORAMA」の続編というのもあって、ギター・ソロの構成も似せているんですよ。スウィープから始まって、速弾きがあって、ペンタトニックがあって、みたいな。歌詞も共通している部分があって、リード曲としてかなり考えられているなと思うし、MVもここはちょっと「PANORAMA」っぽいなとか、いろんなことを考えながらたくさん聴いてほしいなって思う曲はやっぱり「アレグロ」ですね。
ほほ美:パレオ曲は? パレオ、パレオ。
AYARI:静かにしてください。パレオは「七月七日」ですかね。PaleNeØは意外と(ギターの)ハモリのフレーズがそこまで多くなかったんですけど、「七月七日」のイントロや間奏のフレーズは、私とREOTOがハモっていてすごくエモいギターなんで、ここは聴いていただきたいですね。あと、「盲導歌」もスケールをなぞるようなネオクラシカル的な要素が結構入ってるギター・ソロなんで、これはライヴで弾くのも楽しみだし、みんなにもぜひコピーしてもらいたいなと思うパレオ曲です。
-「七月七日」はREOTOさんが作曲をされていますけど、ここ1年で作った曲なんですか?
REOTO:そうです。
-それこそ7月7日に作ったとか?
REOTO:ではないんですが、七夕に向けて作った曲ではあります。特に七夕にライヴをしたとかではないんですが、いつかそのあたりの時期にライヴをすることがあったら、こういう曲があったら面白いかもなぁくらいの気持ちで書きました。あと、今までほほ美のアカペラから始まる曲ってあんまりやったことがなかったから、そういう曲があってもいいんじゃないかなっていう構想から入っていった曲ですね。
-先ほどルーツにクラシックがあるとお話しされていましたが、最後にバッハの曲(「主よ、人の望みの喜びよ」)のメロディを入れていて。
REOTO:もともとキリスト教のミッション・スクールに通っていたので、讃美歌にもすごく馴染みがあるんです。そういう要素も入ってたら面白いなと思ったのと、現代サウンドで賛美歌を演奏するというのにもすごく興味があって。そこにも挑戦してみた曲ですね。