INTERVIEW
FROM ASHES TO NEW
2024.06.14UPDATE
Member:Matt Brandyberry(Rap Vo)
Interviewer::菅谷 透 Translator:安江 幸子
FROM ASHES TO NEWが、2023年に発表した4thアルバムのデラックス・エディション『Blackout (Deluxe)』をドロップした。各国のメタル/ロック・チャートで1位を記録した『Blackout』に6曲のボーナス・トラックを加えた本作は、彼らが築いてきたラップ・メタル・サウンドに新鮮なテイストを加えた傑作を、新たな解釈で楽しむことができる。創設メンバーのMatt Brandyberryに、作品のコンセプトや追加収録曲でのコラボ、そして2016年の来日公演の思い出など様々な話を訊いた。
-『Blackout』デラックス・エディションのリリースおめでとうございます。まずはオリジナルのアルバム本編についてお話をうかがっていきます。2023年7月にリリースされており、多くのファンから反応があったと思いますが、印象に残っている意見はありますか?
今回は正直言ってずいぶん早くトップになったなという気がしたね。ファンは俺たちがもともと始まったときのサウンドに戻ったことを喜んでいる人が多かったよ。それは俺たちが意識的にそうしたんだけどね。これまでよりちょっとヘヴィでちょっとエッジを強く効かせてみようと思って。そのインスピレーションがなんだったのかはわからないけど、2020年と2021年は曲を書こうという気にさせてくれた年だったよ(笑)。
-たしかに(笑)。ファンは、バンドがルーツに回帰することを喜んでいたんですね。
もちろんさ! それが俺たちの狙いだったし、実際うまくいった。一番いい形に着地したと思うよ。
-意識的に原点に戻ろうとしたとのことでしたが、それが今回のテーマ/コンセプトだったのでしょうか。
そうだね。まぁ、今までのアルバムはみんなコンセプチュアルではあったけど。例えば1stアルバムの『Day One』(2016年リリース)は再生をテーマにしたものだった。"FROM ASHES TO NEW(灰から新しいものへ)"、不死鳥のように舞い上がるような感じ。再生がテーマだったから、アートワークも惑星の再生をモチーフにしている。新しい惑星に子供が腰掛けているんだ。『The Future』(2018年リリースの2ndアルバム)ではラインナップが変わったこともあって、バンドの未来を見据えたものになった。そのあとの『Panic』(2020年リリースの3rdアルバム)は『Blackout』を前提としていて、『Blackout』は『Day One』の前編だった。という感じでどれもコンセプトがあるんだ。曲単体で見ると必ずしもそのコンセプトに沿っているわけではないけどね。特に「Armageddon」(『Blackout』収録)みたいな曲は、当初......もともとはアルバムのタイトルを"Armageddon"(終末戦争)にするつもりだったんだ。
-そうだったんですね。
そう考えていたんだ。"Black Armageddon"にでもしようかってね。でも"Armageddon"をもっと強烈な言葉で表現したらどうなるだろうと思って、"Blackout"と名付けることになったんだ。
-なるほど。2023年はバンドの結成10周年ということでしたが、メモリアル・イヤーだったことは本作の制作に影響を及ぼしましたか?
(笑)実は今初めて知ったよ! (10周年だなんて)考えもしていなかった。
-そうでしたか(笑)。
君が今教えてくれたんだよ(笑)! 記念日とかそっち方面のことは、俺たちはあまり考えていないような気がするね。世の中の状況に対して、自分たちが人として感じたことを音楽を通じて表現しただけでね。さっきの話になるけど、ルーツに戻ることは意識していた。そのルーツのイメージというのは世界滅亡のあとで、地獄の責め苦に遭っているような感じ。アートワークではそれを表現したいと思った。タイトルもね。"Armageddon"のことが頭にあったし。
-実はメモリアル・イヤーと関連しているのかもと思ったのは、ジャケットが1stアルバム『Day One』のオマージュに見えたからだったんです。要素的に重なるものがいくつかあるような。
そうだね。『Blackout』のジャケットに出てくる少年は、『Day One』と同じ少年ということになっているんだ。『Day One』の少年は新しい惑星の上に腰掛けているわけだけど、バックにある惑星は爆発してしまったんだ。このアルバムは『Day One』の前編だから、少年が座っているところには光がない。ブラックアウト状態の中、彼は遠くにある新しい惑星に向かって手を伸ばしているんだ。ということで、アートワークはコンセプト的に繋がっているよ。
-なるほど。先ほど"前編"という言葉を使っていましたが、"続編"ではないんですね。1周回って『Day One』に戻るという感じで。
その通りだよ。『Blackout』は『Day One』の前編なんだ。すべてがブラックアウトになってね。ストーリー的にもまだまだなんらかの前編があるかもしれないよ。今は次作をコンセプト的にどうするかという話をしているんだけど、この流れを続けるかもしれない。『Blackout』から『Day One』の間にも何か起こっているかもしれないからね。ただ、あまり予言的にはならないようにしたいと思っているんだ。
-本作はバンドのルーツを再確認しつつ、新鮮なテイストも加えられたサウンドに仕上がっていると感じましたが、サウンド面ではどのようなことを心掛けましたか?
『Day One』はとても実験的なアルバムだったけど、意図的にそうしたわけではなかった。俺はソングライターとして新米だったし、プロダクション的なことの経験もほとんどなかったんだ。自分の音探しをしていただけでね。クールな響きがするものができたらそれを曲に落とし込んで完成させる、そんな感じだったんだ。君が"10周年"と言ってくれていたけど、10年経って俺もようやく自分のやっていることを熟知できるようになってね。プロダクションのことも、ソングライティングのことも理解が深まったんだ。だから10年前のサウンドを路線的に踏襲したいという気持ちは強くあったけど、より自然体なアプローチにしたいと思った。俺たちの音楽にあるエレクトロニックなサウンドをキープしつつ、自然体なロック・バンドの感触も欲しいと。それは前作でも意識していたことなんだけどね。ということで、基本的にはバンドの進化した点をまとめてスムーズにしたという感じかな。
-そうすることによって、ルーツの要素をさらに前進させているんですね。
その通りだよ。『Day One』の前にやっていたことはやりたくなかったし、『Day One』の路線を踏襲するにしても、ずっと味わい深い、よく考えたものにしたかったんだ。
-そうですね。昔やっていたことの繰り返しというより、それを先に持っていった感があります。
ああ。アーティストたち自身も進化しているからね。ライティングのテクニックも上達したし、俺もヴォーカリストとして前よりずっと良くなったから、自分をもっと流れの中に出せるようになった。昔は"なぁ、ひとつアイディアがあるんだ。ちょっとやってみようよ"みたいな感じで、うまくいくときはいくという感じだったけど、今はそれが自然な形でできているんだ。
-デラックス・エディションでは多くのアーティストをフィーチャーしていますが、それはのちほどうかがうとして、オリジナル版でも「Until We Break」でMEMPHIS MAY FIREのMatty Mullins(Vo)をフィーチャーしていますね。彼が参加した経緯を教えていただけますか?
彼らとは一緒にプレイしたことがあるし、うちのドラマーは同じくMatという名前なんだけど(Mat Madiro)、彼が向こうのドラマーのJake(Garland)と何年も前からの付き合いで、バンドの他のメンバーとも仲がいいんだ。それで、いつか何か一緒にやりたいなんて話がちょっと前から出ていたんだよね。俺たちはフィーチャリングが大好きだよ。アーティストたちが集まれる場だし、すごく楽しいからね。それで今回(デラックス版)もいろいろフィーチャリングをしようという話をしていたんだけど、ヒップホップ的なヴァイブをロックの世界に持って来ようということになったんだ。Mattyは俺たちの友達で、"こんなアイディアがあるんだけど"と送ったらとても気に入ってくれた。素晴らしい仕事をしてくれたよ。うちのヴォーカルのDanny(Case)も彼のことをヴォーカリストとして尊敬しているから、一緒にやらせてみたら、共通点がいろいろ見つかったんだ。声の相性もすごく良くてね。キラー・トラックになったし、彼が参加してくれたことにとにかく感謝しているよ。
-たしかに、ふたりの切り替わりがとてもスムーズですよね。
そうだね。本当に相性が良くて素晴らしいよ。
-すでに『Blackout』を引っ提げた2度目のツアー("The Blackout Tour Pt. 2")を行っていますが、ライヴでプレイして気に入っている曲はありますか?
うーん、ライヴに関しては、俺の意見はちょっと偏っているかもしれないな(笑)。どの曲もすごく楽しいよ。ライヴでは俺の出番がそんなに大々的にはない曲もあって、そういうときは俺は道化師的な役割なんだ。ショーが始まるときにファンを煽って盛り立てる役とか、"俺についてきて"みたいな感じでジェスチャーを促すとか。俺の出番が多いのは「Monster In Me」とか「Heartache」だから、『Blackout』からはそのふたつがライヴでのお気に入りだな。