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INTERVIEW

NEW YEARS DAY

2024.05.21UPDATE

2024年05月号掲載

NEW YEARS DAY

Member:Ash Costello(Vo)

Interviewer:山本 真由 Translator:安江 幸子

赤と黒がトレードマークのAsh Costello率いるカリフォルニアの5人組ロック・バンド、NEW YEARS DAYが約5年ぶり5作目となるニュー・アルバム『Half Black Heart』をリリースする。本国ではすでに3月に発売されている本作だが、ボーナス・トラックも追加された日本盤が5月22日にドロップされる。アルバムが発表されるたびに、パワフルに進化するサウンド面だけでなく、旧メンバーの復帰によってバンドとしてより強固な結束も手に入れたNEW YEARS DAY。そんなニュー・アルバムやバンドの近況についてはもちろん、個性的なゴス・ファッションでも注目されているヴォーカルのAshに、ヴィジュアル面のこだわりについても語ってもらった。


私たちはポップな音楽もヘヴィな音楽も大好きだし、 その両方を組み合わせることを常に目指してきた


-5年ぶりのニュー・アルバム『Half Black Heart』のリリース、おめでとうございます。日本では5月22日の発売ですが、アメリカではすでに3月1日に発売されていますね。まずは、作品ができあがっての率直な感想を聞かせてください。

まさに望み通りの反応を貰ってるよ。NEW YEARS DAYの長年のファンが今回の方向性を楽しんでくれることを願っていたんだけど、みんなすごく満足してくれているの。

-これまでにも何度かメンバー・チェンジはありましたが、今作の制作にあたってはJeremy Valentyne(Gt)、Brandon Wolfe(Ba)、Trixx Daniel(Dr)の旧メンバーが復帰ということで、メンバー同士のフィーリングというか、コミュニケーション的にもやりやすかったのではないでしょうか。

うわぁ、たしかにそうだね。......彼らがしばらくバンドから離れていたのは、ツアー生活が過酷だったからなの。すごくハードなライフスタイルだからね。で、戻りたいと言い出したとき、ちょうど新しいアルバムを作るのにいいタイミングだったの。彼らが戻ってきたことで、自分たちのサウンドが戻ってきたような気がする。前のアルバム(2019年リリースの4thアルバム『Unbreakable』)が自分たちらしく聴こえなかったっていう意味じゃないけど、このバンドが始まった頃にこのバンドならではのサウンドを作ったのが彼らだったから、そういう意味ではストレスが少し減ったかな。彼らと曲を書くことがとにかく自然なことなの。お互い理解し合っているし、お互いの好みもわかっているから、ソングライティングのプロセスがすごく楽だったし、何しろ楽しかったよ。

-メンバーが復帰したきっかけは何かあったのでしょうか?

特に何かあったわけじゃなかった。ただそのタイミングが来たからという感じ。コロナ禍も関係あったかもしれないし......離れてみて、彼らが望んでいたものはなんだったのかを改めて考えることができたし、お互い成長してまた組むことができたんだと思う。人間関係ってそういうことがつきものだと思うんだよね。1歩下がってみて、全体像を再評価して、違う視点からも見てみたりして。

-彼らがバンドから離れていた頃も連絡を取り合っていたのでしょうか。

ええ、もちろん! ツアー・ミュージシャンとして私たちと一緒にいなかった間も、ソングライティングの一部は担ってくれていたの。私たちとの仕事をやめたことはなかったよ。傍から見るとちょっと違って見えただけでね。

-音楽的にも個人的にも付き合いは続いていたと。

そうなの。だから過渡期もとても楽だった。

-それもあって、今回のアルバムを作っていくなかで自然に以前のラインナップに戻っていったんですね。

そうね。

-今作の制作にはいつ頃着手したのですか?

コロナ禍前のNEW YEARS DAYはツアーの比重がすごく大きかったの。ちょっと燃え尽き症候群みたいになってしまうまでノンストップでツアーしていた。それだけツアーしていると、アルバムとじっくり向き合うってことがあまりなかったんだよね。"よし、3週間地元にいるからアルバムを作ろう"みたいな感じで、その間にできたものをアルバムにまとめていたの。でもコロナ禍があったから、今度は本当に時間をかけることができた。着手したのは2020年だった。すごくカジュアルな形で始まって、いつもより少し実験的なことも増やして......という感じに始めたのが2020年初め。でも本格的に取り組み始めたのは2022年ね。

-2020年から22年の間は、今回戻ってきたメンバーはまだ正式には復帰していませんでしたよね。カジュアルな形でというのは、ケミストリーがどんな感じになるかの様子見?

そうね。とりあえず今のみんなの立ち位置がどんなところなのかを見ようと思って。アーティスティックな意味でも、スタイル的な意味でもそうだし、このアルバムに対してどんな希望や意欲を持っているのか。過去の作品ではアルバムに対して"OK、君はこれで完成だからね"と言い聞かせているようなところがあったけど、今回はアルバムの方から完成時期を決めてもらおうとメンバー同士で言い合っていたの。

-コロナ禍のせいもあったかもしれませんが、いつまでに完成というのを具体的に決めずに進めていったのですよね。

そう。時間をかかるままにさせて、自然に"アルバムができた"と思えるようになるまで流れに任せたの。

-NEW YEARS DAYもそうですが、コロナ禍までツアー三昧だったバンドは、それがコロナ禍でストップして、いつツアーに戻れるかわからない、そんな状況が精神的につらかったと言うバンドが多いです。それまであったものがなくなってしまったわけですからね。でもあなたの場合は曲を書き続けることによって、何があっても続けていこうというモチベーションを保っていられたのではないでしょうか。

そうね。続けていく理由を与えてもらったと思う。やっぱりつらかったしね。たしかに燃え尽きてはいたけど、それしかやっていなかったから、ノーマルすぎるくらいノーマルな生活に合わせるのは間違いなく大変だった。

-ノーマルな生活は楽しいこともあったんでしょうか。

あった。私はこのバンドに人生を捧げてきたから、ママや友達やペットと過ごす時間があまりなかったし、失われた分を取り戻すように一緒に過ごしていたの。

-そういう経験もこのアルバムに生かされているのでしょうね。

もしツアー中にこのアルバムを作っていたら、毎日同じことの繰り返しだったから、あまり(アルバムの中で)語ることがなかっただろうとは思うね。"生活する"ことを自分に許してみたら、自分でも思っていなかったくらいに歌詞のいろんなテーマへの道が開けたような気がしているの。

-『Half Black Heart』は、バンドのテーマ・カラーでもある赤と黒、そしてそれに象徴される半分ヘヴィで半分ポップというようなNEW YEARS DAYの音楽性を表したタイトルにもなっているようですね。本作は、そんな初心に帰るといったテーマがあるのでしょうか? 自分たちの再発見ですとか。

そうね。と言っても私たちは常に前進するように自分たちをプッシュしているけど。同じところにとどまっていたくはないの。"君たちのサウンドは変化が多いね"と言う人が多いけど、それは意図的にやっていること。前進し続けていたいし、同じサウンドを何度も繰り返していくのは嫌だからね。たしかに長年の間に変わり続けてきた。その間に聴いている音楽も変わったし、ものの見方も変わったし、ワクワクする対象も変わったから。私たちは昔から、ひとつのものにとどまっていなかったの。ヘヴィなバンドとツアーするときはヘヴィにならないといけないけど、私たちはポップな音楽もヘヴィな音楽も大好きだし、その両方を組み合わせることを常に目指してきた。

-と言いつつ、旧メンバーが復帰したことは多少関係あったりしますか?

それは間違いないね。このメンバーは全員このバンドを信じているし、だからこそこのバンドに起こったことは起こるべくして起こったんだと思ってるから、自然の流れに任せているの。その流れに乗って、流れが行きたいところに向かっている感じ。

-もちろん初心に帰ると言っても音楽が逆行していると言うつもりではなくて、今あなた自身も言っていたように進化し続けているのだと思います。一方年月を経て落ち着いたサウンドになっていくバンドも多いですよね。

そうよね。最初はヘヴィだったのに、メインストリームに合わせるためなのか、退屈な音に落ち着いてしまうバンドを山ほど見てきた。私たちは真逆だけどね(笑)!

-たしかに2010年に日本デビューした当時と比べると、サウンド的にはどんどんヘヴィになってるという印象もありますが、パワフルな楽曲を生み出すことができるモチベーションになっているのはどんなことですか?

あまりリスナーを念頭に置かずに、自分たちのことを中心に曲を書くことかな。自分たちがスタジオでワクワクできるものをやりたいの。ギター・リフで"オー・マイ・ゴッド! クールじゃない!"なんて言いながら、ワクワクしてヘッドバンギングすることができるっていうのがモチベーションなんだ。自分たちをワクワクさせたいの。

-そのためには年齢と共に落ち着くよりも、刺激や興奮を求めていくということですね。

そうね。ワクワクは絶対必要。自分たちがワクワクしなかったら、他の人がそうすることも期待できない。

-あなたのヴォーカルも年々パワーアップしていますね。激しいシャウトでも喉を傷めないコツを学んだり、感情を爆発させても発声を安定させられるようなトレーニングをしたり、何か特別な訓練をしているのですか?

ありがとう! 素晴らしい才能を持ったアーティストとたくさん仕事してきて、ラッキーだったんだよね。レジェンドでアイコニックで知識も豊富なプロデューサーたちとスタジオを共にしてきた。そうして長年の間に彼らから学んできたの。私はNEW YEARS DAY以外にもいろんなプロジェクトに参加してきて、あらゆるスタイルで歌わないといけなかったから、次のアルバムに取り掛かる頃には自分の道具箱の中身が増えていて、そこからいろいろ引っ張り出すことができた。私の声が多彩だってコメントをたくさん貰うけど、それは自信によるものが大きいと思う。スタジオに入るたびにそのときのプロデューサーが私をプッシュしてくれて、自分でもできるなんて思っていなかったものを可能にしてくれる。それが音楽に影響しているんだと思う。

-体質的にはもともと声帯が健康で、という感じだったのでしょうか。

ヴォーカルの訓練を受けたことはないね。歌いながら学んでいった感じ。

-生まれ持った素質に加えて、向上心を刺激するモチベーションがいろいろあったことの賜物なのですね。

そうね。トライ&エラー、そして経験。